音楽ナタリー Power Push - BURNOUT SYNDROMES

“リスナーの耳”で作り上げたメジャー1stフルアルバム

BURNOUT SYNDROMESが11月9日にメジャー1stフルアルバム「檸檬」をリリースした。

テレビアニメ「ハイキュー!!」のオープニングテーマを2クール連続で務めたことで話題を集めるBURNOUT SYNDROMES。熊谷和海(G, Vo)が好きな小説である梶井基次郎「檸檬」からタイトルを付けたというアルバムには、「ハイキュー!!」テーマである「FLY HIGH!!」「ヒカリアレ」のほか、クラシックに歌詞を乗せた表題曲、エッジの効いたサウンドと女性目線の歌詞が特徴的な「アタシインソムニア」「エレベーターガール」、石川大裕(B, Cho)がラップに挑戦したカントリー調の「君のためのMusic」といった全13曲が収められる。バラエティ豊かな今作がどのように完成したのか、メンバー3人に話を聞いた。

取材・文 / 石橋果奈 撮影 / 西槇太一

バンド人生の中で一番忙しかった

──前回は3月にリリースされたシングル「FLY HIGH!!」のタイミングでインタビューさせていただきました(参照:BURNOUT SYNDROMES「FLY HIGH!!」インタビュー)。このアルバムが完成するまでは、どんな日々でした?

石川大裕(B, Cho) 「FLY HIGH!!」を作ったあとは、ツアーを回って、制作してっていう感じで……。

熊谷和海(G, Vo) これまでのバンド人生で一番忙しかったですね。

──ツアーの手応えはいかがでしたか?

BURNOUT SYNDROMES

石川 皆さんが自分から歌ってくれることもけっこうあって、曲をたくさん聴いてライブに来てくださったんだなあという感じがしました。特に「FLY HIGH!!」はテレビアニメ「ハイキュー!!」のオープニングテーマなので、フェスとかツアーでどこに行っても歌ってもらえましたね。楽しいツアーでした。

──そして今回、メジャー1stフルアルバム「檸檬」が発売されます。インディーズ時代にも2014年に「世界一美しい世界一美しい世界」、2015年に「文學少女」とアルバム作品はリリースしていましたが、「フルアルバム」と銘打った作品は初めてですよね。

熊谷 今までのアルバムは8曲入りだったんですけど、今回は確実にフルアルバムと呼べるものを作ろうって感じで、13曲入れて。タイトなスケジュールの中でめちゃくちゃ曲を書きまくりました。

ビッグバンを起こすようなきっかけに

──今回のアルバムタイトルは「檸檬」ですが、これは梶井基次郎の小説タイトルから?

熊谷和海(G, Vo)

熊谷 まさにその通りです。僕は梶井の「檸檬」が大好きで。この小説ってストーリーはそれほど大げさなものではないんですけど、そこに付随した主人公の心理描写の精緻さに、世代を超えていろんな人が魅了されてるのかなって思うんですね。もちろんストーリーっていうのは大事なんだけれども、僕もこのアルバムで主人公たちの心が変わる瞬間、何かを決意する瞬間であったり、切り捨てたりする瞬間を重視して描きたいなと思いました。アルバムを聴いてくれた方の中でなんらかのビッグバンが起きるようなきっかけになってほしいっていう思いも込めてます。

──「檸檬」は最初からアルバムのタイトルとして決まっていたんですか?

熊谷 実はアルバムのタイトルも最後まで決まってなかったし、1曲目が表題曲なんですけど、その曲も最初は「檸檬」じゃなくて「創世記」っていうタイトルだったんです。アルバムのタイトルに悩んでいるときに、アルバムと曲のタイトルを一緒にしたいなと思って。それで「創世記」を聴いていたときに、歌詞の内容的にも「『檸檬』にしたらどうだろうか」って思ったんですよね。

──そうなんですね。この曲の歌詞は小説の「檸檬」からインスピレーションを受けて書いたものだと思っていました。

熊谷 もともとこの曲は「ヒカリアレ」と合わせて書いていたので、「ヒカリアレ」の世界観をより広げるようなサブ的な作品になればいいなと思ってたんですけど。思ってたよりもメインの曲になっちゃいましたね。

──アルバムと曲のタイトルを一緒にしたいと思ったのはなぜですか?

熊谷 アルバムタイトルと曲名を合わせることで、キャッチーというか、僕たちのことを知らない人を作品に入りやすくさせるファクターになる気がして。広く知ってもらえるアルバムになるといいなと思って作った作品だったので、「今からどうなるかわからないけど」ぐらいの感じで急遽変更しました。

アメリカで観た教会の景色

──最後の最後に「檸檬」という楽曲がアルバムのメインになったんですね。

廣瀬拓哉(Dr, Cho)

廣瀬拓哉(Dr, Cho) そうですね。この曲のど頭の「雨は零時過ぎに降り出して」っていうフレーズは、もともと中3の頃から熊谷が歌ってたんですよ。でもその曲はデモとしてはずっと熊谷から送られてくることがなくて。だから今回、「あ、このタイミングでやっと昇華してきたんだ」って思いました。今回は1stフルアルバムですけど、収録曲にはどっかで熊谷がちょっと歌ってたり、小耳に挟んだフレーズがあったりして。「檸檬」に関してはけっこう寝かせてたんだろうなって思いました。

熊谷 「檸檬」のメロディと構成は、中学生の頃には頭の中にできあがってたので。

──歌詞以外はそんなに前からできあがっていたんですね。

熊谷 歌詞はどんな曲にも合うように、頭の「雨は零時過ぎに降り出して」だけ固定してあって、来たるべきときにと思ってたんです。

──この曲は「雨 雨 雨」とつぶやくようなパートから始まりますけど、これはどのようにしてできたのでしょうか?

熊谷 これは僕が中3のときにアメリカでホームステイをしたときに、ステイ先の人に教会に連れて行ってもらったことがあって。そこで神父の説教が終わったあとに信者の皆さんが「アーメン」って言うんですけど、全員で一緒に言うんじゃなくて、各々のタイミングでぽつぽつと言うんですよ。自分と神とのタイミングで「アーメン」って言うから、「アーメン、アーメン、アーメン」っていう言葉がバラバラバラバラっと響いていくところに敬虔の念を感じて。その景色がずっとあったので、それをイメージして書きました。

──「アーメン」を「雨」に変換するところが面白いですね。

熊谷 なんかそういうふうに聞こえたんですよ。バラバラっと響く「アーメン」の言葉が、バラバラって雨が地面に当たる音みたいで。雨もその祈りのイメージと共通するなあと思ったんです。

メジャー1stフルアルバム「檸檬」/ 2016年11月9日発売 / EPICレコードジャパン
「檸檬」
完全生産限定盤 [CD+グッズ] / 3500円 / ESCL-4735~6
初回限定盤 [CD+DVD] / 3500円 / ESCL-4732~3
通常盤 [CD] / 3000円 / ESCL-4734
CD収録曲
  1. 檸檬
  2. Bottle Ship Boys
  3. FLY HIGH!!
  4. アタシインソムニア
  5. エレベーターガール
  6. ナイトサイクリング
  7. 君は僕のRainbow
  8. 君のためのMusic
  9. ヒカリアレ
  10. 人工衛星
  11. エアギターガール
  12. タイムカプセルに青空を
  13. Sign
初回限定盤DVD収録内容
  • 「FLY HIGH!!」ミュージックビデオ
  • 「ヒカリアレ」ミュージックビデオ

※副音声にメンバーがMVを解説するオーディオコメンタリー付

最新シングル「ヒカリアレ」/ 2016年10月26日発売 / EPICレコードジャパン
初回限定盤 [CD+グッズ] / 1500円 / ESCL-4717~8
通常盤 [CD] / 1000円 / ESCL-4719

全国ワンマンツアー「ヒカリアレ~未来への祈りを合図に火蓋を切る~」

2016年11月11日(金)
愛知県 ell.FITS ALL
2016年11月13日(日)
宮城県 enn 3rd
2016年11月16日(水)
大阪県 梅田CLUB QUATTRO
2016年11月20日(日)
新潟県 CLUB RIVERST
2016年11月25日(金)
東京都 渋谷CLUB QUATTRO
2016年12月3日(土)
広島県 HIROSHIMA BACK BEAT
2016年12月4日(日)
福岡県 Queblick

<料金>
前売り:3500円 / 当日:4000円(ドリンク代別)

BURNOUT SYNDROMES(バーンアウトシンドロームズ)
BURNOUT SYNDROMES

2005年に結成された熊谷和海(G, Vo)、石川大裕(B, Cho)、廣瀬拓哉(Dr, Cho)による関西在住の3人組ロックバンド。“青春文學ロックバンド”というキャッチコピーで活動しており、熊谷による日本語の美しさを大切にした文学的なリリックで支持を集める。2010年に開催された音楽コンテスト「閃光ライオット」では準グランプリを獲得。2012年に無料CD「リフレインはもう鳴らない」を全国各地のCDショップやライブハウスなどで1万枚配布する。2014年にはタワーレコード限定シングル「LOSTTIME」、初の全国流通アルバム「世界一美しい世界一美しい世界」をリリースし、2015年5月にいしわたり淳治プロデュースのもと2ndアルバム「文學少女」を発表。2016年3月にはテレビアニメ「ハイキュー!! セカンドシーズン」第2クールのオープニングテーマを表題曲としたシングル「FLY HIGH!!」でEPICレコードジャパンからメジャーデビューを果たした。10月には「ハイキュー!! 烏野高校 VS 白鳥沢学園高校」のオープニングテーマ「ヒカリアレ」をシングルリリースし、11月にはメジャー1stフルアルバム「檸檬」を発売した。