2022年の虹のコンキスタドールは、さまざまなドラマが渦巻いていた。悲願であった東京・日本武道館でのワンマンを4月に実現させ、その公演をもって長年グループを牽引してきた根本凪と的場華鈴が卒業。2カ月後には新体制でのツアーをスタートさせたが、そこには研修生的ポジションの“虹コン予科生”として復活した的場の姿があった。また予科生の中には、かつてアイドルネッサンスのメンバーとして虹コンとたびたび競演していた原田珠々華の姿も。異例の復活劇、初の舞台公演、夏のアイドルフェス出演……そんな1年を締めくくる大一番として、虹コンにとって武道館と並ぶ目標の地であった東京・日比谷公園大音楽堂(日比谷野音)でのワンマンライブ「愛の三角関数おしえてよ♡ in 日比谷野外音楽堂」の開催が決定した。
この特集では、メンバーの大和明桜、岡田彩夢、蛭田愛梨、予科生の的場と尾林結花にインタビュー。怒涛の2022年を振り返りつつ、野音公演に向けての意気込みや注目ポイントを語ってもらった。
取材・文・撮影 / 臼杵成晃
虹のコンキスタドール 2022年の主なレポート記事
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虹のコンキスタドール「全国美味いもの征服ツアー」開幕!的場華鈴「もう一度虹コンの太陽になりたい」
まだ振り返れない武道館
──まもなく2022年が終わろうとしていますが……虹コンにとっては、なんかすごい1年でしたよね。
岡田彩夢 すごい1年でした。何年分も凝縮されたような1年だよね。
──2021年の年末に日本武道館2DAYSの開催を発表して、そこから春にかけては武道館に向けて一直線。4月の武道館公演をもって的場さんと根本凪さんが卒業しました。根本さんは直後に「別の次元にお引越し」という予想外の展開がありました。そして……。
的場華鈴 すごい見られてる(笑)。
──6月に開幕した全国ツアーの初日には的場さんが予科生として戻ってくるという異例の復活劇があり。7月には舞台もありましたし……。
蛭田愛梨 わ! あれも今年かー。
大和明桜 ツアーと並行してやってたんだよね。
──夏には「TOKYO IDOL FESTIVAL」や「@JAM EXPO」など大型アイドルイベントがあり、6月から続いたツアーが10月に終了。そこで12月の野音公演が発表されました。10月には武道館公演を収めた映像作品もリリースされましたが、観返してみてどう感じましたか?
岡田 私、まだ観る勇気がなくて観てないんですよ……。
蛭田 私も観れてない……。
大和 ちょろっとだけ観た(笑)。
岡田 観たい気持ちはあるんですけど、観てしまったら過去のものになってしまいそうなのが怖くて。1人では絶対に観れない。
──なるほど。では、今の皆さんにとってあの武道館公演はどのようなものになっていますか?
岡田 過去イチいいライブだった、というわけでは個人的にはなくて。めちゃめちゃ緊張してたから、楽しかったという記憶もないんですよ。過去イチ練習して、セットリストもああじゃないこうじゃないと何度も練り直して、ステージ構成も自分たちでめっちゃ考えて……みんなで作った、すごく大事なライブになった。だからこそ、もっとできたんじゃないかという悔しさもあって。でも、武道館公演はアイドルにとって1つの大きな区切りになるし……それが嫌なんですよ。もっとできるしがんばれるのに、あれを私たちにとっての1つの区切りにしてしまうのは悔しい。的場さんの複雑な様子とかも見てたので、100楽しいライブではなかった。それでも100%がんばったライブだったからこそ、映像で客観的に観たときの気持ちを知るのが怖いんです。楽しい、うれしい、悔しい、もっとできた……ぐちゃぐちゃな感情があったはずなのに、映像で振り返るとあのとき感じたいろんなことを忘れちゃいそうで。だからブログでもまだ書けないんです。言語化したくない。
──岡田さんは武道館2日目の公演で、アイドル人生で初めて泣いてしまったと言ってましたけど。
岡田 それもあるから見たくないんです(笑)。
的場 自分の泣いてるとこ見るのヤだよね(笑)。
──大和さんは初日の初っ端、出てくるなり1人で大泣きしてましたよね。
大和 はい(笑)。虹コンはずっと武道館武道館と言ってたけど、本当に決まったときは正直「まだやめといたほうがいい」と思うくらい、不安だったんですよ。自信のなさもあって、私はガチの反対派だったんですけど……。
蛭田 ガチの反対派(笑)。
大和 でも、みんなでたくさん練習して、いざ本番!とスタンバイしているときに、まずチャンス(山崎夏菜)が泣いてたんですよ。それを見て「あ、ヤバい」と。つられて泣いちゃうんです。それでステージに出た瞬間に、「これが夢が叶った瞬間なんだ」と思ったら、泣けてきちゃって。夢を叶える瞬間に、人生で初めて立てた。「武道館に立つ」は虹コンの夢で、それが自分の夢だとは認識していなかったので、あの景色を見たときに「これは自分の夢でもあったんだ」って。お客さんは声を出しちゃいけないルールだったんですけど、思わず漏れた「おおおっ!」というお客さんの声が、イヤモニ越しに聞こえてきたんです。
蛭田 聞こえた聞こえた!
大和 それで「本当に夢が叶ったんだ」と実感しました。でも1日目は……あんまり覚えてないんです(笑)。「武道館って、こんなにお客さんとの距離が近いんだ!」と驚いたのは覚えていて。2日目は華鈴先輩とねも先輩が卒業するのもあって、「このライブで今後の印象が決まるぞ」というプレッシャーもありました。「今後につながるライブにしなきゃ」っていう。
岡田 確かに。帰りのタクシーでもう次のこと話してたよね。
“武道館新規”めっちゃ多いんですよ
蛭田 私は武道館をやるって聞いたとき、本当にドッキリだと思ってたんですよ。でも練習とかゲネとかをしているうちに「あ、これ本当にやるんだな」とだんだん実感して。当日はすっごい緊張で……1日目は緊張しかなかったです。最初にステージに出たときに、武道館いっぱいのサイリウムの海を見て「きれいだな」と思ったことは覚えてるけど、それ以降はなんにも覚えてない(笑)。気付いたら2日目になってましたね。2日目も……私、虹コンだいすきマン(虹コンファンの呼称)なんですよ。メンバーなんですけど。もうなんか……やだ、思い出したら泣いちゃう。やだー!
的場 わあー!
蛭田 (泣きながら)だからライブ映像も観たくないんですー。虹コンが好きなんで、誰かが卒業してしまうのが悲しいんですよ。でも、自分の目標に向かってがんばるために卒業するんだし、やめてほしくはないけど、メンバーの思いを受け入れようって。まあ、的場さんは結果戻ってきたんですけど。
──(笑)。
蛭田 これからも虹コンは続いていくけど、このメンバーでライブをやるのは最後だし、ずっとお休みをしていた根本先輩が帰ってきてくれたのにこれが最後のライブなんだと思うと悲しくて。1日目は記憶がなくて、2日目は悲しかったです。思い出しただけでもこんなにびちゃびちゃに泣いちゃうから、映像で観たら心がなくなっちゃう。もしこの先「みんなで鑑賞会をやります!」と言われても、私だけ不参加になります。その日だけ体調不良になって休みます(笑)。
──的場さんに関しては、それはそれはもう複雑な思いを持っていると思いますが。
的場 あの武道館ライブで、だいすきマンもメンバーも、その他もろもろ全部含めて、心がぐわーっとなったと思うんです。その後の自分の復帰だとかいろいろなことは差し置いて、あのライブは虹コンが武道館の先に進んでいく過程として、すごく意味のあるものだった。だいすきマンのみんなが「もっと虹コンと一緒に夢を見ていたい」と思えるライブになったと思うし……“武道館新規”めっちゃ多いんですよ。
──武道館が初の虹コン現場で、そこからファンになった人。
的場 はい。それは武道館という歴史のある場所でライブをやれたからこそだと思うんです。あと……私の父が家で武道館の映像めっちゃ観るんですよ。ペンライト振りながら。まあ推しは石原愛梨沙さんらしいんですけど(笑)。すごく楽しんで観ていて。私がライブの前にもあとにもいろいろ悩んでいたことを知っている父があんなに楽しんでいるのは、きっとあの時点での虹コンが「今の私たちです! ドン!」と名刺代わりになるようなライブができていたってことなんじゃないかなと思うんです。早く私も観返せるようになりたい(笑)。
──尾林さんは的場さん復活というすごいタイミングで、同じ予科生としてグループに加入することが発表され、しかもそこにはかつて別のグループで活躍していた原田珠々華さんもいるという。トピック満載の中に入っていくのもまたすごいプレッシャーですよね。
尾林結花 はい。私は武道館を客席で観ているんですよ。武道館のステージにいる虹コンの方々が……。
蛭田 方々(笑)。
尾林 虹コンの方々がすごく輝いていて。人生で体験した時間の中で一番キラキラしたものを見た、というくらい輝いて見えたんです。今はまだ予科生から昇格できるかもわからないし、自分がこの先どうなるかわからないけど、あのキラキラを思い出すと、まっすぐ前に向かっていける。ときどき予科生も含めて16人全員でパフォーマンスさせてもらう機会があるんですけど、やればやるほど差を感じるところがすごくあって。あのとき武道館に立っていたメンバーの方々は憧れだし、追いつかなくちゃいけないし、でもめちゃくちゃ遠い……と感じています。
辞めるのを止めた
──おそらく的場さんの中には「あれだけ盛大に見送られたのに」という後ろめたさがずっとあり、そこから抜け出すのは大変だとは思うんです。それも覚悟のうえのことでしょうし。ただ、的場さんやその前の大塚望由さんの復活は(参照:虹コンに新メンバー2人!大塚望由が復帰し、元WILL-O'桐乃みゆもアイドルとして再出発)、アイドルシーン全体においてはすごく希望のある、素敵な決断だと思うんです。もう一度やり直すことだってできる、という道筋を作った。的場さんはどうしてその決断をしたんですか?
的場 完全に武道館ですね。武道館のステージではなくて、その前の準備期間があったから……こういうことになったんです(笑)。
──卒業の舞台に向けて準備しているうちに、グループへの愛がより強くなってしまった。
的場 はい。もともと「卒業ライブっぽくしたくない」という気持ちがあって。最後に花束をもらうなんて思わなかったし、ねもちゃんと2人で花道に残って挨拶をするのも「なくていいよね」って話してたんです。2人だけドレスを着て、みたいな“ザ・卒業ライブ”にはしたくなかった。あくまで虹コンが憧れの武道館に立つ、そのタイミングでたまたま2人がいなくなるだけっていう。そういう気持ちでライブを作っていたんです。メンバーみんなと一緒にいたその時間が、私にとってはすごいものすぎて。未知の大きなステージに立ち向かうことで、ここまで団結したことはなかったという団結力を感じて、どんどん複雑な気持ちになっていったんです。
──「だから言ったじゃん!」という言葉で再会を歓迎したメンバーもいましたし、ファンも概ね歓迎ムードでしたけど、中には「あのときの涙を返せ」という心情の人もいると思うんです。
的場 もちろんそういう声もあります。やっぱりこの判断は間違ってたかなと後悔したことも……やだ泣いちゃう。
岡田 この話してると感情が無理になっちゃう(笑)。
的場 復帰するときとか、その準備段階で、めっちゃ後悔したこともあったんですよ。「これで虹コンの印象を悪くしてしまうかもしれない」って。復帰のときのステージで1歩目を踏むのが本当に怖かった。でも、メンバーが背中を押してくれて……。
岡田 涙を化粧水みたいに伸ばさないで(笑)。
的場 バシャバシャ(笑)。
岡田 私も1回、卒業するという話をしているんですよ。しかも的場さんと同じタイミングで。そうとは知らず、明日には会議で言う?というところまでいってたんですけど、そんなときに武道館をやると聞いて。そのあとの虹コンがどうなるのか想像もつかなかったけど、私は逆に「楽しいことになりそうだな」と思って、辞めるのを止めたんです。武道館があって、的場さんとねも先輩が卒業して……そこまでいくと、もう責任とか肩の荷とかなくなってるんじゃないかなって。もはやイチからやり直すようなものなので。それまでずっと的場さんに頼りっきりだったけど、武道館の準備をする中で、みんなが意見を出すようになったんです。そういう状況になって初めてメンバーが主体性を持ち始めたというのも申し訳ないなという気持ちもあるんですけど……。
的場 いやいやいや。
岡田 6月からのツアーもみんなでセットリストを考えて。そんなのやったことなかったから、けっこう無駄に時間をかけたりもしてるんですけど、みんなでやることによってより団結力が強固になって、もともとよかった仲がさらに深まりましたね。それを的場さんが予科生という立場で見ているのも……私の中ではちょっと感情がまとまらない(笑)。ずっと的場さんがやってきたことを私たちが全員でやっていて、それを的場さんが予科生の立場で見ているという。きっと的場さんも「辞めるのを止めたい」と思っていた時期があっただろうし、私はあのときひよって「辞めます」と言い出せなかっただけで……それなのに、予科生に戻るという一種の罰のようなものを背負っているのは、本当に的場さんにとっていいことなのだろうか?って。私も予科生を経験して本科生になった身だし、同じタイミングで卒業を考えていたのもあって、どうしても感情移入しちゃうし、客観的な気持ちになれない。
──複雑ですね。
岡田 でも、今の的場さんが予科生のみんなのことをめちゃめちゃ大事に思ってるのもわかるし、守るものが増えるともっとつらいだろうなって……なんとかすべてうまく立ち行かないものなんでしょうか。
的場 人生相談になってる(笑)。
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冬の野音で「トライアングルダッシュ」復活!