堂本剛が“未来への思い”をつないだ14回目の「平安神宮 奉納演奏」、愛と感謝に満ちた90分

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堂本剛が9月19~21日の3日間にわたり京都・平安神宮で単独公演「平安神宮 奉納演奏2025」を行った。堂本が平安神宮で奉納演奏を披露するのは今年で14回目。この記事では初日19日の模様をレポートする。

堂本剛(撮影:冨田味我)

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堂本剛のライフワークとしての奉納演奏

2010年に初開催して以来、自身のライフワークとして平安神宮での奉納演奏に取り組んでいる堂本。昨年の公演は台風の接近に伴い、中止を余儀なくされたが、今年は残暑の影響も和らいだ時期に実現する運びとなった。

この日の京都市の最高気温は30.6℃。開演時刻を迎える頃には30℃を切り、鈴虫の繊細な声が境内いっぱいにこだましていた。朱色にライトアップされた蒼龍楼と白虎楼が見守る中、玉砂利を踏み締め次々と着席する観客たち。いつしか夜の帳も落ち、厳かな空気が強まる中、大麻(おおぬさ)を手にした宮司が舞台に現れ、これから始まる公演に向けてお祓いを行った。

堂本剛(撮影:冨田味我)

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その後、凜とした鈴の音とともに明かりが落ち、大極殿を覆う縦に並んだ純白の幕に水面の映像が浮かぶ。秋らしいひんやりとした風が幕を揺らしていると、舞台中央に堂本の影が。神殿に向かって深く一礼をした堂本は、マイクを口元に近付けると、きらびやかなシンセサイザーの音色と柔らかなギターの旋律に導かれるように「彼方(タイムマシーン)」を歌い始めた。「彼方(タイムマシーン)」は約10年前の2014年に堂本が自身の故郷であり、京都に隣接する古都・奈良を思い書いた1曲。過去につづった言葉を1つひとつ噛み締め、何かを慈しむように穏やかな声を空に向かって放つ姿を観客はじっと見つめる。曲の終盤で舞台が明るくなると、堂本がまとっているのが、紫を基調とした和風の衣装であることが判明し、その雅やかな佇まいにため息が漏れた。

堂本剛「平安神宮 奉納演奏2025」の様子。(撮影:冨田味我)

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すうっと息を吸い込む音が聞こえたのに続き、いけだゆうた(Key / BREIMEN)が奏でるピアノの旋律から「瞬き」へ。過去の奉納演奏でも披露されている「瞬き」だが、今回はジャジーなアプローチが取り入れられ洒脱な雰囲気に。悲しみの色合いが強いオリジナルバージョンに比べ軽やかさをまとい、それに呼応して堂本の声にもそこはかとない力強さが宿っていた。

耳と視覚の両方を刺激するひととき

堂本のエレキギターが唸りを上げたのを合図に、松明に火が灯り、幻想的なムードに拍車がかかる。憂いたっぷりの雅楽スパイスの効いた旋律を高らかに鳴らし、「あたらしい 次元へ ゆこう」と歌う「に ひ」を披露。淡々としながらも艶かしく熱を帯びた声と、ダイナミックなギターサウンドが境内一帯をサイケデリアへと誘った。

堂本剛「平安神宮 奉納演奏2025」の様子。(撮影:冨田味我)

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噴水を背に歌う堂本剛。(撮影:冨田味我)

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序盤では“歌”を際立たせる静謐な演出が続いたが、このあたりから耳と視覚の両方を刺激するショー的な側面が強まっていく。「tecnologia-意思」では扇状に広がったレーザーにスモークが重なり、オーロラさながらの景色を描き出す一方で、堂本の衣装にもレーザーが当たり“テクノロジー”のイメージを具現化。続く「LOVE VS. LOVE」や「Tearful melody」でも、大極殿の屋根にまで及ぶほどの高さまで上がる水柱と、極彩色の照明のコラボレーションが展開され、噴水レーザーショーさながらの演出がオーディエンスの視線を奪う。

スペクタクルな水の演出も光った「平安神宮 奉納演奏2025」。(撮影:冨田味我)

スペクタクルな水の演出も光った「平安神宮 奉納演奏2025」。(撮影:冨田味我) [拡大]

その水柱は歌声に合わせて形を変え、まっすぐに天に向かったかと思えば、次の瞬間には美しい放物線を描き、飛沫を上げながら舞台に落ちていく。一瞬の美学を突き詰めた、はかなくもスペクタクルな光景にオーディエンスは固唾をのんで見入った。

クライマックスを彩った芳醇なセッション

興奮したムードを落ち着かせるように、ここで堂本は舞台の上手に置かれたキーボードの前へ。ピンク色の照明を浴びた彼は、星が瞬く空の下、たった1人で「月-ツク」をゆっくりと紡ぐ。そして「PINK」を歌う声が聞こえた瞬間、驚きに満ちた密やかな歓声が客席のあちこちから起こった。2004年にリリースされた「PINK」は、「負けないで」「闘って」「逆らって」といった歌詞が象徴するように、当時の堂本の葛藤や切実な思いを煮詰めたバラードだ。旧知のメンバーが奏でるアンサンブルに乗せて、過去の自分を肯定し、包み込むように歌い上げる堂本。その姿を観客は真剣な眼差しで見つめ、アウトロの余韻が残る中、演者たちに大きな拍手を送った。

天を仰ぐ堂本剛。(撮影:冨田味我)

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アカペラによる歌い出しが印象的な「愛を叶えたい -RAION-」では、温もりのある照明が楽曲の世界を彩り、Chicaのコーラスをはじめ、バンドメンバーの音が堂本に寄り添う。そんな一幕を経て、奉納演奏はクライマックスとなるセッションコーナーへ。クリエイティブプロジェクト.ENDRECHERI.のライブにおけるセッションと言えば、ファンク色全開の奔放さが特徴だが、この日は奉納演奏とあって少し違う趣に。ギターを構えた堂本は伸びやかな音色で口火を切ると、バンドメンバー1人ひとりにソロのバトンをつないでいく。

堂本剛(撮影:冨田味我)

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個々が平安神宮という場にふさわしい、一期一会の音色や歌声を奉納するセッションは、噴水、照明、レーザー、シャボン玉、炎とすべての特効を盛り込んだめくるめく時間に。奏でられる音色にあわせて変わっていく演出の数々は、オーディエンスの心をとらえ、高揚した空気を醸成していく。そして、メンバーのソロ回しが一巡したところで、堂本はたぎる思いを指先に込め、突き抜けるようなギターの音色を響かせた。

今年のテーマ「つなぐ」に込めた切なる願い

セッションを含め全10曲。70分近くにおよぶパフォーマンスを終えたところで堂本は、この日最初で最後のMCを始めた。まずはバンドメンバーと観客とともに二礼二拍手一礼で、奉納演奏を完遂できた感謝を捧げる。そして、「今年は開催できたらと強く望んではおりましたけれども、望みすぎることとか願いすぎることというのはまた違ったものにつながるなといつも思っているので、平常心を保ちながら今日にたどりついたという感じでございます」と無事開催できた喜びを言葉ににじませた。

堂本剛「平安神宮 奉納演奏2025」の様子。(撮影:冨田味我)

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堂本が2025年の奉納演奏のテーマとして掲げたのは「つなぐ」。「今日、皆様に聴いていただきました曲は、人生のことを深く歌ってる歌が非常に多かったと思います。平安神宮さんも次の時代へと続くために今の時間を過ごされています。僕たちもまた同じく歴史があって、その1つひとつをつないでいくものです」とテーマに込めた思いを説明する。

当初は気丈に話していた堂本だが、込み上げる感情をこらえ切れず、言葉に詰まる場面も。「悲しいですけれども、人は傷付け合ったりもするし、愛し合うができるはずなんですが……」と絞り出した彼は、「人は天から降りてきて昇っていくまでの間にそういう時間を過ごしたりして。この数年も、日本だけではなくて世界中のたくさんの方々が天に昇られています。そういう人たちのことを思いながら、たくさん思いを込めて本日も奉納演奏をさせていただきました。この世の中が少しでも、平和へとたどり着くように、毎日自分らしく生きていけたらと思ってます」と、この場に来ることが叶わなかった人たちへの思いを馳せた。

堂本剛「平安神宮 奉納演奏2025」の様子。(撮影:冨田味我)

堂本剛「平安神宮 奉納演奏2025」の様子。(撮影:冨田味我) [拡大]

続けて「平安神宮に最初に立たせていただいたときのことを振り返ると、本当にすごく感謝の思いでいっぱいですし、不思議な気持ちもたくさんあります。こうしてつないでくださっているのは、皆さんのお気持ちだし、僕がこういう時間を過ごせることは生きているからこそ」「この『生きているからこそ』ということを、これからも一緒に感じ合いながら、優しく強く生きていけたらと思ってます」と自身の死生観を明かす。さらに「皆さんも今日のこの奉納演奏で感じた気付きや人間の生きる喜び、そういったものをぜひ忘れずに、これからも1日1日を大切にしていってください。僕も今日の奉納演奏のステージに立たせていただいて、感じ取ったすべてを未来につなげていこうと思いますので、皆さんもご自分の未来につなげていただけたら」と呼びかけた。

最後に堂本が口にしたのは、再会を約束する言葉だった。「また皆さんとこうしてお会いできること、楽しみにしております。またこのような機会がございましたら、皆様どうぞ会いに来てください。今日は本当にたくさんの愛をありがとうございました」と感謝の思いを伝えた。

なお、OPENREC.tvでは本日9月21日に行われた最終公演の模様をアーカイブ配信する。視聴チケットは10月21日17:00まで購入可能。

セットリスト

堂本剛「平安神宮 奉納演奏2025」2025年9月19日 平安神宮

01. 彼方(タイムマシーン)
02. 瞬き
03. に ひ
04. tecnologia-意思
05. LOVE VS. LOVE
06. Tearful melody
07. 月-ツク
08. PINK
09. 愛を叶えたい -RAION-
10. セッション

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MAGA 🇺🇸 🇺🇸 🇺🇸 🇺🇸 @Maga_GSA

@natalie_mu それは本当にとても良いです

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