小袋成彬の5カ月ぶりワンマンをエムオン!独占放送 市長選を経て得た気付き、音楽に対する愛とモチベーション

小袋成彬が9月5日に大阪・BIGCAT、22日に神奈川・KT Zepp Yokohamaでワンマンライブを開催。このうち神奈川公演の模様が、10月21日22:00よりMUSIC ON! TVにて放送される。

小袋成彬(Photo by Asami Nobuoka)

小袋成彬(Photo by Asami Nobuoka)

大きなサイズで見る(全12件)

小袋成彬(Photo by Asami Nobuoka)

小袋成彬(Photo by Asami Nobuoka)[拡大]

Zatto

小袋成彬「Zatto」
Amazon.co.jp

Zatto(アナログ盤)

小袋成彬「Zatto(アナログ盤)」

小袋は今年1月に3年ぶりとなるフルアルバム「Zatto」を発表すると、3月から約6000人動員のライブツアー「Nariaki Obukuro Japan Tour 2025 "Zatto"」を開催。ツアーの折り返しとなった3月22日の東京・LIQUIDROOM公演の翌日に、さいたま市長選挙に立候補することを突如発表して音楽ファンを騒然とさせた(参照:小袋成彬、さいたま市長選挙に立候補)。そんな小袋がミュージシャンとして、約5カ月ぶりにワンマンライブを行う──。この5カ月を短いと捉えるか、長いと捉えるかは人それぞれだが、未知の業界に飛び込み人生をかけた挑戦に臨んだ小袋にとっては濃密なものだったに違いない。音楽ナタリーでは、8月下旬に都内某所で行われたワンマンのリハーサルの合間に小袋へのインタビューを実施。怒涛の日々を経て得たものや現在の心境、ワンマンに向けての意気込みを語ってもらった。

さいたま市長選挙を終えて

小袋成彬(Photo by Asami Nobuoka)

小袋成彬(Photo by Asami Nobuoka)[拡大]

小袋は立候補発表の2日後、地元・埼玉にあるヘリテイジ浦和 別所沼会館中庭で決意表明の記者会見を実施。「さいたま市のリニューアル」をスローガンに掲げ、「市民が誇りに思う街」「自然と共に生きる街」「国際的な新都心」といったビジョンを提示した(参照:小袋成彬はなぜ出馬するのか?ロンドン帰りの彼が語った地元・さいたまの課題と可能性)。その後は選挙用のタスキをかけるのではなく、トラッドなファッションに身を包み、選挙カーで名前を大音量で連呼するのではなく、ジャズのレコードを流しながら演説を行うなど、独自のスタイルで選挙活動を展開。小袋らしいスタイリッシュな自己表現の方法だが、選挙終了後に公開された彼のnoteの記事を読むと、それが泥臭いトライ&エラーを経て編み出されたものだということがわかった。そんな試行錯誤の中で行われた初の選挙戦は、候補者5名のうち4位で落選という結果に終わったが、小袋は全体の8.5%にあたる32836票を獲得し、確かな爪痕を残した。

「とにかく疲れましたね(笑)。音楽だけをやっていたら絶対に交わらないであろう人にたくさん出会いました。社会にはいろんな人がいると理解してたつもりだったけど想像以上で。もちろん、音楽を必要としていない人がいるのも理解しています。ただ、音楽に限らず文化を大切に思っていない人が多かったのには驚きました。さいたまスーパーアリーナを埋められるほどの票を集めたわけだから、8.5%という結果は我ながら健闘したとは思います。もちろん、その中にもグラデーションはあって、文化と関係なく『小学校をきれいにしよう』というような政策が響いた人もいる前提ですけどね。あと協力してくれたボランティアは比較的に若い方が多くて、『少しでも文化に興味がある』という人が集まってくれた。逆に政治の部分でコネクトした人たちが途中から離れていったりもしました。だから結局、俺の考え方ってよくて8.5%なのかなと、そのことを身を持って知れたのは自分にとって大きな経験でした」

リスナーが予想だにしない新しい音楽を

小袋成彬(Photo by Asami Nobuoka)

小袋成彬(Photo by Asami Nobuoka)[拡大]

小袋は2019年から2024年までの5年間、活動の拠点をロンドンに移し、世界各国のミュージシャンとのコラボを通して表現者としての感性を磨いてきた。実際、最新アルバムの「Zatto」は、彼がロンドンのミュージシャンたちとのセッションを経て完成させた1枚だ。小袋はさいたま市が抱える問題と向き合う中、同市がグローバル化に遅れをとっている要因の1つとして、多様な文化や価値観を尊重する姿勢が欠如しているとし、「国際的な新都心」というビジョンのもと「隠れ待機児童ゼロ」「教育改革」「パスポート取得助成金」「姉妹都市制度の活用」といった政策を掲げた。

しかし、7月の参議院選挙では“外国人問題”が争点になるなど、今の日本にはどこか排外主義的な空気が蔓延し始めているのが現実だ。小袋はこのことに触れて「今は胸を張って『国際化していこうよ』『みんなで仲良くカッコいい街を作ろう』と言えないムードがありますよね。これが今の時代の流れなんだろうけど、それを見誤っていた時点で、俺自身がさいたま市のことを理解できていなかったのかもしれない」と述べ、“政治家・小袋成彬”の今後については「時代の流れと俺の考え方や政治を通してやりたいことがあまりにも合っていないので、これからのことはわからないですね」と現在の心境を正直に語った。

小袋成彬(Photo by Asami Nobuoka)

小袋成彬(Photo by Asami Nobuoka)[拡大]

初めての選挙、小袋は普段とは異なるコミュニケーションの取り方で政策や自身の信念を有権者に届けたわけだが、その経験からミュージシャンとしての活動に還元できるものや、気付きはあったのだろうか。

「もっといい歌詞を書けるようになるんじゃないかな。俺はそもそも売れることを考えて曲を作ったことはないけど、そうなるきっかけはたくさんあったんですよ。メジャーから作品を出していたし、テレビで歌わせてもらったりもあったし。でも、それは自分にとってリアルじゃなかったんですよね。選挙活動中もそのスタンスは崩しちゃいけないと思ったし、今回の8.5%が自分にとっていかに大事な存在かを痛感しました。それに俺の音楽が響く人の解像度がめちゃくちゃ上がっているような気がするんです。だからこそリスナーを大切にしなきゃいけないし、その人たちがまったく予想だにしないような新しい音楽をどれだけ作れるか、今はそのことに興味があります」

5カ月ぶりのワンマン、コンセプトは?

小袋成彬(Photo by Asami Nobuoka)

小袋成彬(Photo by Asami Nobuoka)[拡大]

さて、ここからはいよいよ今週末に幕を開ける5カ月ぶりのワンマンに話題を戻そう。筆者は「Zatto」ツアーに2度足を運んだが、泥臭くシャウトする小袋の姿やバンドメンバーたちのテクニカルな掛け合い、彼らのソウルフルな演奏にあてられたオーディエンスの熱狂ぶりを見て、このステージをツアーだけで終わらせるのはもったいないと思ったのを覚えている。そのため今回のワンマン開催が発表された際、バンド編成で出演する聞いて「Zatto」ツアーの再演かと勝手に想像していたのだがどうやら違うらしい。想定されているセットリストのうち、いくつかの楽曲のリハーサル風景を覗かせてもらったところ、いずれも体が自然と動いてしまうような、軽やかでダンサブルなアレンジとなっており、「Zatto」ツアーとは趣向の異なる特別なライブになるのだろうと確信した。

「選挙中はそれまで日常にあったジャズが聴けなくなって、代わりにブルースが響くようになったんです。社会のしがらみや不条理さを感じていた期間だったから、ブルースが自然と体に入ってきたんでしょうね。それでこの2カ月くらい自分でもブルースの曲を作りまくっていたら、今度は逆に重たく感じるタイミングがあって(笑)。それを機にこの2年くらい避けていたハウスを聴き始めたんですよ。ハウスを聴けなくなったのは戦争がきっかけで、当時は『踊ってる場合じゃねえだろ』って感じだったんだけど、なぜか今すっと入ってきて『音楽はもっと気軽でいいよな』と思えるようになった。だから次のワンマンでは、今ある持ち歌を軽やかにできないかと試行錯誤してるところです」

小袋成彬(Photo by Asami Nobuoka)

小袋成彬(Photo by Asami Nobuoka)[拡大]

「コンセプトをひと言で語るのは難しいけど、前回のツアーと変わらずソウルっていうのは1つのテーマになっています。最近気付いたんですけど、“心と体”がつながっているというのは間違いで、どうやら“心と頭”がつながっているみたいなんです。で、体とつながっているのは魂=ソウル。だから体を動かせるっていう形のソウルをやりたいんですよ。それはソウルミュージックもそうだけど、ダンスをするとか、体が震えるみたいな、そんな体験を提供したい。メンバーは『Zatto』ツアーとほぼ同じだけど、前回とは全然違う、カッコよくて踊れる、そんなライブになるような気がします」

セトリは“いいDJ”のイメージで

リハーサルの様子。(Photo by Asami Nobuoka)

リハーサルの様子。(Photo by Asami Nobuoka)[拡大]

MUSIC ON! TVでライブの模様が放送される神奈川公演には、バンドメンバーとしてKOBY SHY(B)、上原俊亮(Dr)、渡辺翔太(Piano)、磯貝一樹(G)、MELRAW(Sax)、石川広行(Tp)が参加(※大阪公演のトランペットは山田丈造)。そのほとんどは小袋とともに「Zatto」ツアーを回った面々で、日本の音楽シーンの第一線で活躍するプレイヤーばかりだ。しかし、今回のワンマンは構成がかっちりと決まっているわけではない。曲によっては小袋がDJをしながら歌い、バンドメンバーはそのビートとジャムりながらシームレスに演奏をつなげていくのだ。リハーサルでは普段と勝手が違う形式に、腕利きのメンバーたちも戸惑った様子だったが、小袋は指揮者のように腕を振り、細かく指示を出すことで自身が考える理想のライブのイメージを共有していた。

「セトリは決まっているけど、誰がどんな演奏をするかまでは固めてないんです。みんな百戦錬磨のプレイヤーで曲の構成をしっかり頭に入れるタイプなんだけど、俺はジャムのノリだから演奏がよかったら『それもいいじゃないですか』って言っちゃう。でも、向こうからしたら『“それもいい”って何?』という感じで困ってました(笑)。今日のリハーサル、最後の40分はすごくよかったけど、もう少し時間が必要ですね。『Zatto』ツアーはインプロもあったけど、ある程度の地図は用意してたんですよ。今回はそれがまったくない、ゼロの状態からみんなで作っていて、俺はこの時間がめちゃくちゃ楽しいです」

バンドメンバーに指示を送る小袋成彬。(Photo by Asami Nobuoka)

バンドメンバーに指示を送る小袋成彬。(Photo by Asami Nobuoka)[拡大]

また今回の公演では、小袋の代表曲はもちろん、前回のツアーで演奏されなかった「Piercing」(2019年発表の2ndアルバム)の楽曲も披露される。さらに彼の現在のモードが反映されているであろう新曲のパフォーマンスも予定されているので、すでにチケットを手に入れているファンは楽しみにしておこう。

「セトリは“いいDJ”をイメージして組みました。“いいDJ”っていうのは、例えば持ち時間が90分だったら、その中にちゃんとストーリーがあるんですよ。曲がシームレスに変わって、観客はいつの間にか踊らされている。上げきるんじゃなくて最後のクールダウンの時間もある──そんなイメージですね。ライブに遊びに来てくれる人たちへのメッセージは……特にないかな。伝えたいことは曲に込めているし、ステージで魅せるしかないと思っているので。強いて言うなら初めて俺のライブを観るって人も多いだろうから、シンプルに楽しんでほしいし、バンドメンバーの演奏に期待しておいてほしいです」

ワンマンのチケットは各プレイガイドにて販売中。会場に足を運べない遠方のファンは、MUSIC ON! TVでの放送をチェックしよう。

小袋成彬(Photo by Asami Nobuoka)

小袋成彬(Photo by Asami Nobuoka)[拡大]

この記事の画像(全12件)

「M-ON! LIVE 小袋成彬 at KT Zepp Yokohama」の番組情報

放送日時

MUSIC ON! TV 2025年10月21日(火)22:00~23:00

小袋成彬 ワンマンショー

2025年9月5日(金)大阪府 BIGCAT
2025年9月22日(月)神奈川県 KT Zepp Yokohama

リンク

関連商品

あなたにおすすめの記事

このページは株式会社ナターシャの音楽ナタリー編集部が作成・配信しています。 小袋成彬 / MELRAW の最新情報はリンク先をご覧ください。

音楽ナタリーでは国内アーティストを中心とした最新音楽ニュースを毎日配信!メジャーからインディーズまでリリース情報、ライブレポート、番組情報、コラムなど幅広い情報をお届けします。