僕らの知っている「転スラ」が凝縮された劇場版(野田)
──ではここからは劇場版の感想についてお話を伺います。公開前なのでネタバレ禁止なのがつらいところですが、いかがでしたか?
村上 いやもう、キッチリ泣きましたよ。面白かったですし、感動しました。どこまで言っていいのかわかりませんが、最後は怒涛の展開で、「ええー?」ってなって「ギャー!」ってなって、また「ええー?」ってなるんですよ(笑)。何を言っているかわからないかもしれませんが、観てもらえたら絶対にわかると思います。
野田 わかる。まさか●●が●●して●●するなんて思わなかったよな?
村上 全部言っちゃってるじゃん!(笑)
野田 ダメだった?(笑)
村上 ダメだよ。なんとかオブラートに包んでたのに。まあ、とにかくすごい展開で感情が上下左右に揺さぶられまくりました。それでいて最後はちゃんと素敵なお話として終わっていて、そこはやっぱり「転スラ」らしいなとも思いましたね。
野田 劇場版のオリジナルキャラクターが何人も登場するんですけど、それでも「転スラ」らしくないところが1つもないっていうのがスゴいですよね。
村上 オリジナルストーリーなのにね。
──原作者の伏瀬さんがストーリー原案を担当していますから、劇場版もまさに「転スラ」なんですよね。
野田 そうそう、「転スラ」って、すごく小さい問題と大きな問題が同時並行で動いているじゃないですか。種族間や国同士が揉めているかと思えば、魔王という世界の頂点たちまでが暗躍していて、そういうスケールの異なる問題が重なっている構造は劇場版でもまったく同じなので、僕らの知っている「転スラ」がそのまま凝縮されたような感覚で楽しめました。
──劇場版から「転スラ」の世界を体験しようという初心者に対しても、とても優しい作りになっていますよね。
野田 何も知らなくても普通に楽しめますよね。登場キャラは多いですが、決してわかりにくいストーリーではないので、「転スラ」の魅力を手っ取り早く知りたいという人にはいいんじゃないかなと思います。
村上 最初は「この人誰?」ってなると思いますけど、劇場版の本筋に関わってくるキャラクターはごく一部なので、混乱はしないと思います。気になるキャラクターは、あとからテレビアニメを観てもらえれば「なるほど、そういうことだったんだ」と合点がいきますしね。
野田 キャラクターの見せ方が秀逸なんですよね。たわいのない会話一発で、そのキャラクターのなんとなくのポジションや立ち位置がすんなりわかりますから、そのあたりはうまくできているなと思います。
──本作のテーマは「絆」です。劇場版オリジナルキャラクターのヒイロが登場し、ベニマルたちとの絆がたっぷりと描かれていますね。
野田 僕は最初、てっきりヒイロとベニマルが敵対する展開なのかなと思ったんですよ。ヒイロからすれば、大鬼族(オーガ)の里を滅ぼしたゲルドと親しげなベニマルを許せるはずがないんじゃないかなって。でもベニマルの話を聞いたヒイロは「お前がそう言うなら、オークはもはや仇ではないのだろう」と一瞬で復讐心を殺すんですよ。このシーンで本物の絆というものを見せられた気がしましたね。信頼度がMAXじゃないとこんな言葉は出てきませんから。再会の時点ですでに揺るぎない絆が築かれていて、観ていて心地がよかったです。
村上 ゲルドって本当にいいやつですよね。振る舞いが武士というか紳士というか。見た目こそ怖いけど、僕の中ではけっこう癒やしキャラですね。あとヒイロとベニマルの絆という意味では、絶対に観たいシーンはちゃんと用意してくれていて、そこも期待を裏切らないなって思いました。
野田 ●●が●●しちゃうシーンね。
村上 また全部言っちゃった!(笑)
僕らのお笑いコンビとしての「絆」は……(村上)
──「絆」というテーマが出たところで、お二人の「絆」についてもお聞きしたいと思います。
野田・村上 うーん…………(笑)。
──そんなに悩みます?
野田 まあまあ、あるんじゃないですか? プライベートでもよく一緒にメシに行くしね。
村上 最近はいつ行ったっけ?
野田 15年前?(笑)
村上 そんなになるっけ(笑)。
──過去には「楽屋ではほとんど話さない」ともおっしゃっていますが、2020年にテレビで放送された解散ドッキリの際には野田さんは村上さんのことをかなり真剣に引き止めていましたよね。
野田 「M-1グランプリ」で優勝した直後ですよ? それで引き止めないやつはいないでしょ(笑)。
村上 でも僕らの関係って、「よくも悪くもお笑いコンビだな」と思っていますけどね。それを「絆」と言われるとゾワっとしますけど(笑)、舞台に上がったり収録が始まると、それまでがどんな状態であれ、ちゃんとうまくやれるんです。それがまさにお笑いコンビとしての「絆」なのかなと思っています。
野田 僕の感覚だと、「自分がスベらないために相手を利用し合っている関係性」なのかなと思います。スベりたくないから村上を使うし、スベったときには「もう1人スベったやつがいるぞ」と思えるのはデカいですね。スベるのはすごく嫌なんですけど、村上と一緒にスベったんだと思うと、ダメージが分散されるんです(笑)。
──喜びは倍、悲しみは半分というのは理想的なコンビですね。
野田 いやいや、そんなに大したものではないですけどね(笑)。ただ僕らは2人ともNSC(吉本総合芸能学院)には通っていなかったので、マヂカルラブリーとして吉本興業に所属したときにやっぱり孤立しがちだったんです。なので、当時はなんとしてもこの2人でやっていくしかないっていう雰囲気はありましたね。
──環境的に、いやが応にも結束せざるを得なかったんですね。
野田 そうですね。
村上 ただ僕が持ち前のコミュ力を発揮して友達をたくさん作ったことで、わりとすぐに野田を裏切る形になりましたけどね。「俺はこっちだから!」って(笑)。
野田 そのおかげで僕自身はネタ作りに専念できたので、結果的にはwin-winだったと思うんですよね。
村上 コンビって役割分担が必要ですからね。
野田 そうそう、2人とも飲み歩いていたらネタなんて作れませんから。
──本作は「転スラ」初の劇場作品です。アクションシーンも多いですし、ぜひ映画館の大きなスクリーンで観るべきというポイントを教えてください。
村上 リムルがスライムから人間に擬態する際に、衣服はいったいどこから出しているのかが気になります(笑)。僕は事前にいただいた映像データをスマホで観たので、そこの詳細がわからなくて。映画館ならそこがしっかりと見れるのかなと思って楽しみにしています。
──アクションよりも細かいところが気になるタイプなんですね。
野田 スクリーンが大きいということは、ヴェルドラが読んでいるマンガ雑誌の詳細もわかるかもしれませんよね。僕はそこに注目しています(笑)。
──野田さんも細かいところが気になるタイプなんですね。
村上 あとリムルが強大な魔法を使うときって、低い音で「ドゥーン」っていう効果音が入るじゃないですか。この重低音を映画館で聴くとすごいんじゃないかなって。
──あの……絶対にアクションが見どころだと思うんですが!
野田・村上 ……確かに(笑)。
マンガやアニメを嗜む人にとって「転スラ」は必修科目だと思う(村上)
──「転スラ」はリムルのサクセスストーリーを描いた作品ですが、お二人は今後のご自身の展望についてどんな夢を思い描いていますか?
野田 僕は一刻も早く「人生勝ち確」な状態にたどり着きたいですね(笑)。今後生きるためには充分なお金を稼いでしまえば、あとは何をして生きてもいいわけじゃないですか。そうなれば、なんのストレスもない状態で仕事をすることができると思うんです。もう無理してボケなくてもいい(笑)。
──できる限り自然体でいたいということですね。
野田 そうですね。「気が向いたらボケようかな?」くらいのマインドで生きてみたいです(笑)。
村上 僕の目標は「目指せ不労所得!」です(笑)。何もしなくても生活できるだけの所得を確保しつつ、週3くらいは劇場に行って友達と交流したいなっていう感じです。
野田 わかるわ。もう「仕事」っていう感覚じゃないよね。
村上 そうそう、友達に会いに行ってる感覚がいい。「今日は○○と会えるぜ。やったー!」って思いたい。……「ゴールデン番組のMCが夢」とかではなくてすみません(笑)。
野田 ゴールデンのMCも、気楽にやれるんだったらやりたいよね。
村上 気楽にやれるならね。決してがんばりたくはないです。
──とにかく「ラクをしたい」という切実な気持ちがヒシヒシと伝わってきます。ある意味でとても芸人らしいですよね。
野田 将来ラクをするためにも今は馬車馬のように働こうって思っていて、それがモチベーションにもなってますね。
村上 僕は株式投資を勉強中で、これからはそっちを軸にがんばりたいです(笑)。
──やり方は違えど、将来の夢や価値観はかなり似ていますね。意外と似た者同士なのでしょうか。
村上 そうかもしれません。「転スラ」もそうですけど、エンタメの好みもだいたい同じなんですよ。
野田 そうですね。よく村上から面白いアニメを教えてもらうんですけど、観たらだいたい面白いですから。
村上 2人とも同じようなマンガやアニメで育ったので、そこは共通の原体験があるんだと思います。
──これだけマンガやアニメに詳しければ、専門番組のMCもできそうですよね。
野田 仕事になるとどうしても「勉強」になってしまうので、それはちょっとイヤかもしれないですね。
村上 放送されているすべてのアニメを観るとか、ストレスでしかないですよね(笑)。あくまで趣味として楽しんでいるので、好みの作品を、好きなタイミングで、好きなだけ観るっていうのがいいんですよ。
野田 休み時間の雑談がしたいだけで、知識量を競う全国模試に参加したいわけじゃないんです(笑)。
──では最後に、「転スラ」の劇場版が気になっている方に向けてメッセージをお願いします。
村上 今の時代、「転スラ」を観てないっていうのは正直マズイですし、恥ずかしいことだと思ってください(笑)。多少なりともマンガやアニメを嗜む人にとっては必修科目だと思うので、もしまだ観ていないよという人は、劇場版からでもいいのですぐに観てほしいです。
野田 友達で「転スラ」を知らない人がいたら、みんなまとめて映画館に連れていってもいいと思いますよ(笑)。劇場版を観れば本編も観たくなるし、そうなればハマるのは確実なわけで、最後にはみんなから感謝されるはずです(笑)。みんなで協力してでっかいムーブメントを起こしましょう!
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プロフィール
マヂカルラブリー
野田クリスタル(ノダクリスタル)
1986年11月28日生まれ、神奈川県出身。
村上(ムラカミ)
1984年10月15日生まれ、愛知県出身。
大学のお笑いサークルで活動していた村上が、ピン芸人だった野田クリスタルを誘い2007年1月に結成。2017年に初めて決勝進出した「M-1グランプリ」は10位に終わったが、2020年大会を制し「M-1」第16代王者の座に就いた。「キングオブコント」では2018年に決勝進出、「R-1ぐらんぷり」(現「R-1グランプリ」)では2020年に野田が自作ゲームを使ったネタで優勝。2018年、2021年には「キングオブコント」で決勝に進出した。