劇場作品「劇場版 転生したらスライムだった件 紅蓮の絆編」が11月25日に封切られる。本作は異世界で1匹のスライムに転生した主人公リムル=テンペストが知恵と度胸で仲間を増やしていくテレビアニメ「転生したらスライムだった件」の劇場版で、原作小説の作者・伏瀬がストーリー原案を担当。魔王に進化したリムルが治める魔国連邦(テンペスト)の西に位置するラージャ小亜国を舞台に、リムルの仲間であるベニマルと、劇場版オリジナルキャラクター・ヒイロを中心とした“絆”の物語が展開される。
ナタリーでは同作の公開を記念して映画、音楽、コミックの3ジャンルで特集を展開。映画ナタリーでは2人そろって「転スラ」ファンだという芸人・マヂカルラブリーに作品をいち早く鑑賞してもらい、その感想を聞いた。「『転スラ』はアニメ好きの必修科目」とまで語る2人は作品を楽しんだうえで、まだ「転スラ」を知らない層に向けても「作品の魅力を手っ取り早く知りたいという人におすすめ」「劇場版を観ればテレビシリーズも観たくなる」と推薦している。
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取材・文 / 岡本大介撮影 / 笹井タカマサ
僕がなろう小説を読み漁っていた頃から注目されていた「転スラ」(野田)
──お二人とも、もともと「転スラ」のファンだとお聞きしました。
野田クリスタル ごく自然に2人ともチェックしていましたね。
──先に好きになったほうが相方に薦めたわけではなく、それぞれが自然に「転スラ」にたどり着いたんですか? すごいですね。
村上 だってこれだけの話題作ですよ? そんなに不思議なことじゃないですよね。
野田 異世界転生モノのトップですよ? たどり着くもなにも、むしろ知らないほうがおかしいです。
──なるほど。お二人とも思った以上にアンテナを張っているんですね。
村上 僕はそもそも「異世界転生」かつ「主人公最強」っていう属性が大好物なので、配信サイトなどでそういう作品を見かけたら片っ端から観ているんです。「転スラ」もその流れで観始めた感じですね。
野田 僕は「なろう小説」が好きで、昔はよく異世界転生モノを読み漁っていたんですけど、その当時から「転スラ」は注目されていましたね。そのときはたまたま別の作品を読み進めていたので、いつか読もう読もうと思っていたらいつの間にかマンガ化されていて。マンガ喫茶のお薦めの棚で見かけて、これはもう読むしかないと思って読みはじめたらこれがめちゃめちゃ面白くて、一気にハマりましたね。
──お二人は異世界転生モノのどんなところに魅力を感じますか?
野田 僕は若かりし頃にネトゲ廃人だった時期があって、四六時中ずっとオンラインゲームばかりプレイしていたんです。そのときは「もし自分がこのゲームの世界に転生したらどうやって生きていこうか?」っていう妄想ばかりしていて。異世界転生モノって、その頃の妄想がそのまま具現化している感じで、だからなのかすごくなじみがあったんですよ。なんなら僕も異世界転生モノの小説を書こうとしたことがあるくらいでしたから(笑)。
──そうだったんですね。でも結果的には書かなかった?
野田 一度本気で書こうとしたんですけど、異世界の世界観を作るためには、魔法とか種族とか、異世界特有の用語を学ぶ必要があるじゃないですか。それが難しすぎてあきらめました(笑)。
村上 だいぶ序盤でつまずいたな(笑)。
野田 現実世界の物語は無理でも異世界ならイケるだろうと思ったんですけど、ちょっと舐めてましたね。
村上 僕が異世界モノが好きな理由って、とにかくストレスがないことですね。例外もありますけど、結果的に無双することはほぼ確実じゃないですか。ときには負けたり追い込まれることがあっても、まあ結局勝つことはわかっているから、安心して観ていられるんですよね。ストレスフリーな今の時代に合っているなと感じます。
「そうか、僕はまさにこれが観たかったんだ!」っていう感覚(村上)
──数ある異世界転生モノのなかで「転スラ」の特徴を挙げるなら、主人公・リムルのキャラクター性だと思います。転生前はサラリーマンで、わりと成熟した大人であるという点が、他作品とはちょっと違いますよね。
野田 やっぱりそこは大きいですよね。考え方が大人だし、なんならちょっと疲れているんですよね(笑)。ため息をつくのが似合うというか、そもそもスライムのため息っていうのが新鮮で面白いですしね。事件が起こっても冷静で、ギャーギャーとうるさくないのが心地いいなと思います。僕が考える理想の主人公像かもしれません。
村上 ドワーフの王国(ドワルゴン)を訪れたリムルが、キャバクラ的なお店ではしゃぐエピソードがありますよね(第4話「ドワーフの王国にて」)。スライムになってもやっぱり普通の成人男性なんだということが垣間見れて、かわいいいやつだなって(笑)。めっちゃ強いのに武力に頼るばかりではなく、交渉で他国と共存共栄を図るとか、わりとリアルなのも説得力がありますよね。一国を率いるリーダーとしての能力も高くて、そういうギャップもいいなと思います。
──現在テレビシリーズは第2期までが放送されています。お二人は特に印象深いエピソードはありますか?
野田 リムルが人間の姿に擬態ができるようになって初めての食事シーンです(第10話「オークロード」)。肉の串焼きをほおばって、しばらく身体を震わせたあとに最高の笑顔で「うまーい」って喜ぶんですよね。
──異世界に転生して、初めて「味」を感じた瞬間ですね。
野田 そうです。食事というのは生きるうえで大きな快楽なんだなというのが身に染みてわかりますよね。僕はアニメやマンガにごはんのシーンを求めるタイプで、いわゆる「飯テロ」の感覚を味わいたい人間なんですけど、このシーンはリムルが本当においしそうに食べるので、ついつい何回も観てしまうんです。自分が実際にこれから焼き鳥を食べるという直前に、このシーンだけを観てテンションを高めることもあります(笑)。
村上 僕は物語の冒頭が最高にワクワクしましたね。通り魔に刺された主人公が、薄れゆく意識のなかでどんどんと謎のスキルを習得していって、気が付くと謎な洞窟の中にいて、本人の理解が追いつかない中でどんどんと強くなっていくあの感じがたまらないんですよ。なかなか地上に出ないので、リムルがこの世界においてどんだけ強くなってるのか、それが観ているこちらにもわからないんですよね。そういう演出もツボで、ゾクゾクしてました。「そうか、僕はまさにこれが観たかったんだ!」っていう感覚を味わいました。
──個人的に好きなキャラクターはいますか?
野田 ハクロウです。おじいちゃん剣士ってそれだけで好きになっちゃうんですけど、ハクロウは圧倒的に強くてかっこよすぎです。
村上 最近まではシュナが1位でした。第2期のアダルマン戦(第45話「示指のアダルマン」)で大好きになったんですけど、シュナってそれまでは戦うキャラクターっていう印象じゃなかったですよね? だからアダルマンと戦うシーンでは「え? シュナがひとりで? 大丈夫?」っていう心配もあったんですが、いざフタを開けてみたら圧倒して勝っちゃって。そこがめちゃめちゃ気持ちよくて好きになりました。
──今は1位ではないんですか?
村上 今はディアブロがアツいんですよね。まだまだ強さの底が見えない感じで、気になりますね。
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僕らの知っている「転スラ」が凝縮された劇場版(野田)