ディズニー最新作「ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界」から犬山紙子が受け取った3つのメッセージ (2/2)

思想や価値観は異なる、でも手をつなぐ

──犬山さんが「自分で決め付けずに子供の話を聞くようにしている」と言っているのを読んだことがあるのですが、子供の考えを無視して自分本位な行動を取ってしまうことがあるサーチャーやイェーガーにイライラしましたか?

そんなこと言っておいて、私も子供に「とりあえず親の言うことを聞きなさい」みたいな乱暴な発言をしてしまうことがあるので……。サーチャーとイェーガーを見てギクッとする親御さんは多いと思います。私もしました。

「ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界」

「ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界」

──親だって人間なので、感情に流された発言をしてしまうことがありますよね。

でもサーチャーは、あとでイーサンに謝れるところが偉いと思います。大人としてなかなか引き下がれないことってありますが、きちんと謝罪して仲直りすることで、子供からの信頼を取り戻している。そこまで描いているのが好きでした。私はもちろん、温厚な夫ですら感情的なことを言ってしまうことがあるほど、子育てはしんどいときもあります。でも子供からは教えられることばかりなんですよね。

「ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界」

「ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界」

──映画はサーチャー目線で観ていましたか?

完全にサーチャーでした。みんなの意見を尊重してるよって顔をしながら、実際は子供の意見を聞いていなかったりとか。

──映画を観て、お子さんとの関係性に生かせるような学びや気付きはありましたか?

子供に何かを言われたとき、「それはこっちが正しいよ」と大人として返してしまうことがあるんですが、そのあとに子供の発言を反芻して、実は自分が間違えていたんじゃないかという目線を持ち続けることの大切さですね。サーチャーの謝り方は心から謝罪しているのが伝わってきました。イーサンはサーチャーを「子供の話を聞いてくれる人」と認識したと思うし、それは子供が健全に暮らすうえで大事なこと。あとは自分の親の嫌なところは受け継がないぞと意固地になってしまうが故に、逆に突っ張ってしまうと言いますか。

──サーチャーにもそういう部分がありますよね。冒険家の父・イェーガーに反発しているから、イーサンに冒険家になってほしくないという気持ちが強い。コンプレックスがあるから思いを押し付けてしまいます。

子供が将来何かになりたいと言ったときに、それを尊重したいと考えながらも、「それはなしじゃない?」と感じてしまうのは親あるあるだと思います。息子が父親を乗り越える話はたくさんあると思うんですが「ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界」はそうではなくて、親子が寄り添い合っていく物語。思想や価値観は異なるままなんですが、でも手をつないでいるのが素敵でした。

「ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界」

「ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界」

世界の秘密を知ったとき「ああ!」

──終盤では“もうひとつの世界”のある秘密が明かされます。予想はできなかったですか?

できていなかったです。秘密を知ったとき「ああ!」と。そのあとに飛んでいる生き物を見て「なるほどなあ」と思ったり、ちゃんといい視聴者でした(笑)。最初に観たときとは世界の見え方が変わると思うので、アニメーション美術に注目しながら2周目をしたいです。

「ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界」

「ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界」

──薦めたい方はいますか?

若い人だけでなく、子供を持つ親にも観てほしいですね。子供や孫の話をもっと真剣に聞こうという気持ちになれたらいいし、次の世代につなげることがテーマの物語だと思うので。イェーガーは「男は強くあれ」という時代の象徴なので、何か気付きを得られることもあるかもしれません。あとはやっぱり子供と観たいです!

──5歳のお子さん、「ズートピア」や「アナと雪の女王」シリーズがお好きなら、同じディズニーの映画として今作も楽しく観られるんじゃないでしょうか。

2歳のときの誕生日プレゼントがエルサのドレスでした。最近娘と一緒に初めて映画館に行ったんですけど、最後までちゃんと観てくれたんです。ポップコーンは最初の10分で全部食べちゃってたんですけど(笑)、これから娘と一緒に劇場に行けるんだという喜びがあって。私は好きな映画を繰り返し観るのが大好きなので、「ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界」も娘と行きたいと思います。

──旦那さんも一緒に、ぜひご家族で。

あははは、夫も絶対好きですね。実際今日ここに来る前に「絶対好きだと思う映画を観てくる」と言ってきました。うちの夫はゴミの分別の鬼なんですよ。おもちゃを捨てるときもなるべく細かく解体してパーツをリサイクルに回しているので、激刺さりだと思います!

犬山紙子

犬山紙子

プロフィール

犬山紙子(イヌヤマカミコ)

1981年12月28日生まれ、大阪府出身。エッセイスト。2011年、女友達の恋愛模様をイラストとエッセイで描いたブログ本を出版しデビューを果たす。近年の著書に「私、子ども欲しいかもしれない。」「アドバイスかと思ったら呪いだった。」「すべての夫婦には問題があり、すべての問題には解決策がある」がある。現在はテレビ・ラジオ・Webなど多方面で活動している。