自分に救われたと言ってくれる人がいる
──ムーランが本当の自分と偽りの自分の間で葛藤する姿も本作の見どころの1つですが、アイナさんは自分らしさを出せずに葛藤したことはありますか?
けっこうあります。私は生活していくうえでの人間力が100点満点中、2点ぐらいしかないと思っていて、生きていて申し訳ないと感じることが多々あるんです。もはや地球に向いていないと思うこともあるんですよ。でも生きていきたい理由があるとしたら、両親が小さい頃からダンスを習わせてくれて、今BiSHというグループで歌わせてもらっていて、私に救われたって言ってくれる人がいるからなんです。生きていて申し訳ないと思う自分に救われたと言ってくれる人がいるんだ、じゃあ別に生きててもいいのかも、って。生きていることに対する葛藤を受け入れてくれる人がいるのは幸せですし、じゃあもう少しここで生きようかなと思ったんです。
──考えが変わったのは、何かきっかけがあったんでしょうか?
わりと最近の話なんですが、認めることにしたんです。話したいことがあるのに言葉が出てこないし、テレビに出ると、私がうまく話せていないから傷付く言葉を投げかけられることもあって。「この言葉ヤバくない? ギネスに載るぐらいひどくない?」と思うぐらいひどいときもあるんですよ。でもそのときに認めました。自分は何者でもないし、なんにもできないんだと。せめて歌とダンスは認めてくれる人がいるなら、そっちに力を全振りしようと思って。それを自覚してから今は楽なんです。言葉がすらすら出るようになったり、素直にしゃべれたり。映画を観て「よかった!」と言えることもうれしいんです。
──そうだったんですね……。本作の主題歌はアニメーション版と同じく、クリスティーナ・アギレラが歌う「リフレクション」で、自分らしく生きることを伝える内容です。日本語吹替版は城南海さんが歌い、新たに訳詞したバージョンで、「私を生きる」という歌詞が盛り込まれています。
「リフレクション」の歌詞は、心の深いところにある葛藤を描いていると思います。私も含め、人は生きやすくするために、ときに嘘をついちゃうことがあると思うんです。悪くないけど、それって自分を苦しめることですよね。
──そうですね。アイナさんはBiSHの振り付けや、作詞も担当されていますよね。心の中を歌詞や振り付けとして表現する際に、何か気を付けていることはありますか?
歌詞って、つらいことにとことん向き合って生まれると思うんです。実際に私もそうで、楽しいだけのことからは何も生まれないと考えているので、つらいことがあったときには周りの人にあまり言わず、自分の中でひっそりと溜めておくんです。
──自分のつらさや悲しみに向き合うということでしょうか。
そうですね。自分のできるところまで最大限向き合ってみて、そこから表現するんです。人に話しちゃうとその分楽になっちゃって、つらさの濃度が薄くなるんですよ。楽になっちゃったら表現する意味がないですし。歌詞はまだ難しいんですけど、振り付けを考えるときには、溜めて溜めて、バッと表現したいと思っています。
大胆に生きられる勇気が出る
──本作はディズニープラスで独占配信されますが、「ムーラン」を一番お薦めしたいBiSHのメンバーは誰ですか?
リンリンですね。たぶん強い女性に憧れていると思いますし、リンリンってけっこう勇気があるんですよ。へなちょこなときはかわいいんですけど、勇気を出す場面ではメンバーの中でも圧倒的にかっこいいので、ムーランに影響される部分があるんじゃないかと思います。
──ぜひリンリンさんと一緒に観ていただきたいです! たくさんお話を伺ってきましたが、アイナさんがもっともお薦めしたいポイントを教えていただけますか?
難しいですね……。でもやっぱり、ムーランが本当の自分を認めていくシーンです。めちゃめちゃかっこよかったですし、感銘を受ける方は多いんじゃないかと思います。特に女性は、一歩引いて自分らしく生きられていないと感じる部分が心のどこかにあると思うんですよ。そういう方はムーランを観たら大胆に生きられる勇気が出るんじゃないでしょうか。実際に私も勇気をもらえましたし、お薦めです。