映画ナタリー Power Push - 「マネー・ショート 華麗なる大逆転」×エグスプロージョン
歌って踊って華麗に理解! 経済映画の楽しみ方教えまーす
Wikipedia片手に観ました(笑)(おばら)
おばらよしお いやあ、正直難しかったです。Wikipedia片手に、自分なりに解釈しながら観ました(笑)。
まちゃあき いろいろ考えさせられてしまいましたね。「そこに幸せはないのか?」とか。
森永卓郎 そうですね。リーマンショックやサブプライムローンについてこんなに詳しく描いた映画はこれまでなかったんじゃないでしょうか。私はこれまでずっと言い続けてきたんですが、お金はお金を生まない。人間は働いて稼がないといけないんです。お金を右から左に動かして巨万の富を得ようなんて考えを持っていると、必ず最後に破綻してしまう。この映画は“経済破綻の危機を予見した男たち”の話ですが、冷静に考えたらはなからおかしかったんですよ、金融業界のシステムが。
まちゃあき 確かに。映画観てたら、おかしいことだらけでしたもん。
軽めの闇金?(まちゃあき)
おばら そもそもリーマンショックの発端はなんだったんですか?
森永 アメリカの銀行が、住宅ローンの返済を受ける権利を証券化して、たたき売っちゃったの。
おばら 本編中に出てきた単語ありましたよね? なんだっけ?
森永 MBS。モーゲージ債って言ったりもするんですけど。例えば、怖ーいお兄さんたちから借金したとき、返せないともっと怖ーいお兄さんに債権譲渡されて、どんどん取り立てが厳しくなることあるでしょ?
まちゃあき・おばら (笑)
森永 それと同じような仕組みを住宅ローンに導入したわけですよ。どんどん売っちゃうの。で、普通だったら銀行は審査するわけです。芸人さんってなかなか住宅ローンを借りられないでしょ? 危ないと思われるから(笑)。ところがですね、実際には危ないやつに片っ端から貸しちゃったの。
まちゃあき それ映画に出てきた! サブプライムローン!
森永 アメリカの住宅ローンは極端に分けると、“プライム”っていう高収入のサラリーマン向けのものと、“サブプライム”っていう低所得者向けのものがあるんです。普通だったら、サブプライムローンって危ない人に貸すので20%くらいの高金利で貸さないと採算が合わないんですよ。
まちゃあき なるほど、軽めの闇金ってわけですね。
おばら 何、軽めって!? 怖いわ!
森永 でもサブプライムの人たちにはそんな返済能力ないんです。そこで銀行はインチキを思い付いた。最初の数年間は5%くらいの低金利で貸すけど、何年か経ったところで金利をドーン!と15%くらいに引き上げる。
おばら 何年後かに金利を上げるってちゃんと伝えて貸すんですか? 返せなくなるのが目に見えてるわけですよね。
森永 こう言って納得させるんです。「大丈夫! 今、住宅価格はどんどん上がってるから、5年経ったらあなたの買った家はものすごい金額になる。そのとき売れば手元にとてつもない利益が残るんですよ!」って。そういう詐欺なんです。それで低所得者たちにも高価な住宅をどんどん売ったわけ。
おばら 怖ー。でもそれちょっと「買おうかな?」ってなっちゃいますね。
政府を巻き込んだ大詐欺事件!?(森永)
森永 サブプライムローンを作った時点で、破綻するなんていうのは簡単に予想できたわけですけど。ただね、彼らはさらにインチキを思い付いたわけ。リスクの高いサブプライムローンをいろんな債権と混ぜて、かやくごはんみたいな金融商品(CDO)にして売ったんです。
まちゃあき 何が入ってるかわからないようにして? 福袋みたいやなあ。
森永 いやいや。ひどーいやつをまとめたミンチみたいなものです。そして格付け会社もグルになって、むちゃくちゃな腐ったミンチに「トリプルA」って最上位の格付けをして、「さあ皆さんトリプルAですよ! 高利回りですよ!」ってバンバン売って回った。それがリーマンショックの大きな原因だったんです。
おばら とんでもない話ですね!
森永 格付け会社は銀行から金をもらってるわけですから。そりゃあ「トリプルA」付けるに決まってる。銀行の人たちは真面目な知的エリートっていうイメージ持ってるでしょ? それは我々の大きな思い込み。実際はこういう詐欺めいたことして、(以下、ここには書けない話が続く)。
まちゃあき そこまで言って大丈夫ですか!? 自主規制しときましょう!
おばら すべての銀行のことを言ってるわけじゃないですからね、皆さん!
森永 いや、みんなですよ。アメリカの大手投資銀行はすべて。
まちゃあき・おばら (笑)
森永 そのうえ、これだけひどいことをやってもリーマンショックで逮捕された人は1人もいなかったんです。お金は失ったけど全員無罪。むしろアメリカ政府は税金を突っ込んで彼らを救ったんですよ。リーマンショックは政府を巻き込んだ大詐欺事件でもあった。
まちゃあき 本当に平気ですか!? 先生、CIAに目を付けられるんじゃ……。
小さく稼いで大きく育てる(森永)
森永 正直言うとね、私もやる気になれば何百億なんてすぐ稼げたんです。仕組みはわかっていたので。きっと今頃、お城建てるなんてなんともなかった(笑)。
おばら マジですか!?
森永 ただ私が言いたいのは、お金にお金を稼がせちゃダメだということ。一晩で何十億なんて手に入ったら人間ダメになっちゃうんですよ。働く気なんかなくなっちゃう。だから小さく稼いで大きく育てる。細かい仕事をいっぱいやって、そこそこの暮らしをする。これは芸人さんも一緒。一発大もうけしようなんて考えるとロクなことないから。
まちゃあき 営業がんばりたいと思います! 身を粉にして! この映画ではマイケルたちがCDSを大量購入し、空売りという賭けに出て、結果的に大もうけするじゃないですか。でもその裏でほかの人は不幸になってしまったっていうところも描かれていましたよね。
おばら 40万人くらいの人々がリーマンショックによって失業したとか。
森永 そう。物語の中心となる彼らはまだまともなんですよ。お金中毒になってないから、人の不幸を思いやる心が残っていたわけです。でも投資銀行の側は完全にお金中毒で、人々が泣こうが苦しもうが、「知ったこっちゃねえ! 稼いだやつが勝ちなんだ!」って。私は当時から「全員逮捕しろ!」って言ってたんですけど、誰も聞いてくれなくて……。まあ私だったら逆手に取って稼ごうなんて思わず、こん棒持ってそういうやつらを殴りにいきますけどね。
おばら コツコツ稼ぐって言ってたじゃないですか!(笑)
まちゃあき 武力解決はまた別の問題だと思います!
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あらすじ
2005年、ニューヨーク。金融トレーダーのマイケルは、ハイリスクな住宅ローンを含む金融商品が数年以内に債務不履行に陥る危険性に気付く。しかし銀行や政府に主張するも、まったく聞き入れてもらえない。そこでマイケルは「クレジット・デフォルト・スワップ」という金融取引に目を付け、バブル崩壊の際に巨額の保険金を受け取る契約を投資銀行と結ぶ。一方、銀行家ジャレドらもまた経済破綻の予兆を察知し、ウォール街を出し抜くべく動き出した。
スタッフ
監督:アダム・マッケイ
原作:マイケル・ルイス「世紀の空売り 世界経済の破綻に賭けた男たち」(文春文庫刊)
脚本:アダム・マッケイ、チャールズ・ランドルフ
製作:ブラッド・ピット、デデ・ガードナー、ジェレミー・クライナー、アーノン・ミルチャン
製作総指揮:ルイーズ・ロズナー=マイヤー、ケヴィン・メシック
キャスト
マイケル・バーリ:クリスチャン・ベール
マーク・バウム:スティーヴ・カレル
ジャレド・ベネット:ライアン・ゴズリング
ベン・リカート:ブラッド・ピット
©2015 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.
エグスプロージョン
まちゃあき
1981年10月9日、山口県生まれ。
おばらよしお
1982年3月12日、神奈川県生まれ。
2002年に結成されたダンスユニット。ダンス番組「スーパーチャンプル」で初代殿堂入りし、2010年によしもとクリエイティブ・エージェンシー入り。YouTubeに投稿した動画「踊る授業」シリーズが話題を呼び、2015年3月に公開された「本能寺の変」は、2016年6月時点で4800万回以上の再生回数を記録。アーティストへの振り付けをはじめ、小・中学校でのダンス講師、舞台などでの役者活動とフィールドを広げて活躍している。
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森永卓郎(モリナガタクロウ)
1957年7月12日、東京都生まれ。経済アナリスト。獨協大学教授。専門分野はマクロ経済学、計量経済学、労働経済、教育計画。テレビ番組「情報ライブ ミヤネ屋」「がっちりマンデー」などにレギュラー出演中。
2016年7月22日更新