ルパンたちが悪者に見えないのは、それぞれの矜持があるから(大塚)
──演じられるうえで、テレビシリーズと「LUPIN THE IIIRD」シリーズで変えていることなどはありますか?
大塚 このシリーズでは、「よりハードボイルドな空気感をまとうように」という意識は、常に頭にありましたね。
栗田 僕は先日、ルパンナタリーの鼎談でも話したけど、やっぱり山本沙代監督の「LUPIN the Third~峰不二子という女~」が大きかった。それまで初代ルパンの山田(康雄)さんを意識してピアノのこっち(音域の高いほうの鍵盤を弾くジェスチャーをしながら)ばっかり弾いてたけど、こっち(音域の低いほうを弾くジェスチャーをしながら)を弾くという手があったんだと気付かされたんですね。
大塚 確かに、あそこからのルパンはドスが利いて、より凄味が加わった。あそこで栗田ルパンが完成したんですね。しかし考えてみれば、ルパンは泥棒だし、不二子はすぐ人をだますし、次元はガンマンだし、五ェ門はなんでもバサバサと斬っちゃう。みんなけっこうな極悪人なんですが、なぜかルパンたちは悪者に見えない。それぞれの矜持というか、どこかでやっていいことといけないことの区別を各々が持っている。美学がクリアだから美しいのでしょうね。
栗田 それは(原作者の)モンキー・パンチ先生がルパンを生み出した当初から、徹底した美学を設定されていたからだろうね。そのうえで、「うちのルパンたちでどうぞ遊んでください」というスタンスの御方だったので、小池監督をはじめいろいろな人たちが自由にルパンを作って、ルパンワールドが1つのジャンルのようになるまで開拓されてきた。そこが「ルパン三世」という作品の魅力のもっとも大きな秘密なのかもしれないね。
──この「LUPIN THE IIIRD」シリーズのルパンたちは、特に年齢設定は言及されていないものの、全員若くてギラギラしています。お二人は、あのルパンたちぐらいの頃に、彼らと同じようにギラついていたような思い出などはお持ちでしょうか?
栗田 そりゃもうギラつきまくってましたよ!(笑)
大塚 貪欲でしたね。スタジオでは毎日が勝負だと思っていたし。「絶対、俺のほうが役者が上だぞ?」と主張しなければ、という感じだったな。
栗田 ああ、明夫さんは仕事の面で、か。僕は違う面で、だったけど、ここじゃちょっと話せないかな(笑)。
大塚 (笑)
「ルパン三世 カリオストロの城」を今のメンバーで演じてみたい(栗田)
──小池ルパンは本作にて完結ということですが、小池監督や今後のルパンワールドについてのお二人の思いは?
栗田 小池監督は、このシリーズに12年もの間入れ込んで、本当に死ぬぐらいギリギリの極限までとことん自分を追い込んで作ってきた。だから、「また新しいの、作ってくださいよ?」なんて軽々しく言ったら、えらい剣幕で怒り出すか、失踪でもされちゃいそうでちょっと怖いね(笑)。でも、またやりたいな。僕の本音としては、この映画のその後の小池ルパンも見てみたい。
大塚 同感ですね。寂しいし、やっぱり一味でそろって活躍する小池ルパンもやってみたいし。
栗田 僕はたまに冗談っぽく言うんだけど、それこそ宮﨑駿監督がどう思うかはさておき、例えば「ルパン三世 カリオストロの城」とか、先代の皆さんがバリバリお元気だった頃の作品のリブートを、今のメンバーで演じてみたいなあ、なんて夢も見るんですよ。もっとも、それをやると、僕が「捨てちまおう。偽札だよ」とか、すべて山田さんの口調でセリフをまねちゃうから、お客さんから「意味ねえじゃねえか!」と怒られちゃいそうなんだけどね(笑)。
大塚 もしくは、まったく新しいクリエイターの方が手がける新たなルパンが生まれるのか? はたまた、違う世界線のルパンが生まれるのか? 興味が尽きませんね。
栗田 もしもモンキー先生が今もご健在だったら、この映画の感想をぜひお聞きしてみたかったな。「お前たち、すげえの作ったなー!?」と喜んでくださるのか、「お前ら、やってくれたな?」と皮肉を言われるのか(笑)。僕は、喜んでくれる気がするんですよ。
プロフィール
栗田貫一(クリタカンイチ)
1958年3月3日生まれ、東京都出身。KDエンタテインメント所属。1983年に「日本ものまね大賞」でデビューして「ものまね四天王」としてものまねブームの中心的存在となり、その後テレビ、舞台など活躍の場を拡大する。1995年に「ルパン三世」で声優に初挑戦。「ひょっこりひょうたん島」ドン・ガバチョや、ドラマ「バーン・ノーティス 元スパイの逆襲」マイケル・アレン・ウェスティンの吹替を担当した。
大塚明夫(オオツカアキオ)
11月24日生まれ、東京都出身。マウスプロモーション所属。アニメ「攻殻機動隊」シリーズでバトー、「ブラック・ジャック」シリーズでブラック・ジャック、「ONE PIECE」で黒ひげ / マーシャル・D・ティーチ、「バキ」で範馬勇次郎、ゲーム「METAL GEAR SOLID」シリーズでスネークを演じた。洋画の吹替ではアントニオ・バンデラス、スティーヴン・セガール、ニコラス・ケイジなどを担当。