コンテを切っているときから自分の中では音楽が鳴っている(湯浅)
高杉 僕まだアニメーションの声優経験がなくて。やってみたいという思いはあるんですけど……声優さんへの憧れが強いので自分ができるかどうか不安になります。「乙女」に出ていらした神谷浩史さんが大好きなんですけど、今まで聞いたことのない演技をされていて本当にすごいなと思いました。「ルー」のキャストは声優さんではない方も多いですよね。
湯浅 キャストを選んだ基準は、できそうな方です(笑)。
高杉 (笑)。すごく自然で、アニメーションの世界でしっかりと生きている人物だと思える演技でした。声優の方々も含めて素敵でしたし、そんなふうに演じられる皆さんに嫉妬しました。ルーのパパが火に包まれながらも、ルーのために走るシーンが好きなんですけど、篠原信一さんの演技がすごかったです。
湯浅 いつからあんな声出せるようになったんですかね?(笑) ここまで演じられるとは思ってなかったです。僕は、収録で煮詰まったら直接お声がけしますけど、それ以外は基本的に音響監督さんを通して指示を出していくんですね。でもカイが歌うシーンの収録では、下田翔大くんに「力いっぱい歌ってくれ」って直接伝えました。それでもうまく声が出ていなかったので、実際に僕が歌って参考にしてもらったりしましたね(笑)。
高杉 カイが歌うシーンは鳥肌が立ちました。歌ってるんですけど、同時に自分の感情を叫んでいるようにも聞こえて。観ているこちらにもその感情が突き刺さりました。クライマックスということもあり動きもすごかったです。
──音とのシンクロがすごかったです。「ちびまる子ちゃん わたしの好きな歌」で湯浅監督が担当された「1969年のドラッグレース」などと同じぐらい衝撃を受けました。
湯浅 音楽と動きを合わせるシーンは作っていて気持ちがいいんです。「ちびまる子ちゃん」で担当したシーンがすごく褒められて、めちゃくちゃうれしかったという思い出もあって(笑)。そのとき、音楽に合わせるのは向いているのかもって思いましたね。あとコンテを切っているときから自分の中では音楽が鳴っているんです。観ている方々にも僕と同じように音楽に乗ってほしいなと思って作ってます。
原作のキャラクターに似せることがすごく大切(高杉)
──高杉さんはマンガがお好きなんですよね?
高杉 はい、月に少なくとも30冊以上は読んでます。持っていたい欲が強くて全部買ってしまうので、家の中が大変なんですが、いつかマンガ喫茶みたいにしたいんです。湯浅監督はマンガをよく読まれますか?
湯浅 マンガはあまり読まないです。周りの人にオススメされたものを読む感じですね。自分が映像化したい作品と考えると古い作品ばかりになってしまうんですけど、諸星大二郎先生の「暗黒神話」とかかな。
高杉 今度「デビルマン」をアニメーション化されますね。もともと読まれていたんですか?
湯浅 読んでいましたし、衝撃を受けた作品です。
高杉 僕、マンガの実写化作品に出演させていただくとすごく緊張するんです。湯浅監督も「デビルマン」をアニメーション化することに緊張しますか?
湯浅 それはしますよ(笑)。
高杉 一緒でよかった(笑)。
湯浅 作っている最中なんですが「デビルマン」はアニメーション化しづらそうなんですよ。なおかつ大名作なので、間違えば大批判されるじゃないですか。あとこの作品に限りませんがマンガをアニメーション化するときは、原作が描かれた当時と今との時代的な違いを意識して、その落差をどうするか考えます。
高杉 僕は実写化作品に出るときは原作を読み込むのはもちろんですが、台本と原作の違いを書き出します。その違いを明確にしたうえで、原作のキャラクターに似せられるところを探していきます。顔が変わるわけではないので難しいんですが(笑)、僕にとって似せることがすごく大切なんです。
多くの方にルーに会いに来てほしい(湯浅)
──これから作品を観る人たちにメッセージをいただけますか?
高杉 「ルー」で描かれている「好き」という気持ちを正直に話せないというのは誰もが抱いたことのある感情だと思います。だから観客の皆さんにはルーという女の子に出会って「好き」を叫んでほしいです。
湯浅 すごくいい言葉ですね(笑)。僕もそう思って作りました。多くの方にルーに会いに来てほしいです。
高杉 ファンタジックなのにリアルさもある世界が、ルーは本当にいるんじゃないかと思わせてくれました。
湯浅 うれしいです。王道の長編アニメーションを作れたと考えています。上の世代の方々にとって泣ける作品になっているんじゃないかなと思っています。
高杉 本当にどの年齢の方でも楽しめる作品ですよね。アニメーションを通じて観た方々の世界が広がっていってくれたら素敵ですね。僕にとっては上映が終わったら終わりではなく、現実にもつながっていく力を感じる作品でした。
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キャラクター紹介
- 「夜明け告げるルーのうた」
- 2017年5月19日(金)全国ロードショー
- ストーリー
-
中学生の少年カイは、寂れた漁港の町・日無町(ひなしちょう)で父親と祖父との3人暮らし。両親の離婚によって東京から父と母の故郷に引っ越してきたカイは、鬱屈した気持ちを抱え自分の殻に閉じこもっていた。そんなある日、カイはクラスメイトの遊歩と国夫に彼らが組んでいるバンド・セイレーンのメンバーに誘われる。しぶしぶ練習場所の人魚島に行ったカイは、不思議な歌声を聞き、その声に惹かれる。その夜、自宅に帰ったカイは水を操る人魚の少女ルーと出会う。楽しそうに歌い、無邪気に踊り、自分の思いを正直に話すルーと一緒に過ごすことで、少しずつ自分の気持ちを口に出せるようになっていくカイ。しかし、あるきっかけからルーと町の人たちとの間に大きな溝が生まれてしまい……。
- スタッフ
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脚本・監督:湯浅政明
キャラクター原案:ねむようこ
キャラクターデザイン・作画監督:伊東伸高
共同脚本:吉田玲子
音楽:村松崇継
主題歌:斉藤和義「歌うたいのバラッド」(SPEEDSTAR RECORDS) - キャスト
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ルー:谷花音
カイ:下田翔大
ルーのパパ:篠原信一
遊歩:寿美菜子
国夫:斉藤壮馬
カイの祖父:柄本明
- 「夜明け告げるルーのうた」公式サイト
- 「夜明け告げるルーのうた」(@lu_no_uta) | Twitter
- 「夜明け告げるルーのうた」(@lunouta) | Instagram
- 「夜明け告げるルーのうた」作品情報
© 2017ルー製作委員会
- 湯浅政明(ユアサマサアキ)
- 1965年3月16日生まれ、福岡県出身。九州産業大学芸術学部美術学科を卒業後、アニメーションスタジオ亜細亜堂に参加し、テレビアニメ「ちびまる子ちゃん」などを担当。その後フリーになり「映画クレヨンしんちゃん」シリーズに第1作から携わる。2004年に公開された初監督作品「マインド・ゲーム」が、第8回文化庁メディア芸術祭のアニメーション部門で大賞に輝くなど高い評価を受ける。続いてテレビアニメ「ケモノヅメ」「四畳半神話大系」「ピンポン THE ANIMATION」などを監督。アメリカのテレビアニメ「アドベンチャー・タイム」の中のエピソード「Food Chain」を手がけるなど国際的に活躍している。2017年4月に「夜は短し歩けよ乙女」が公開され、現在Netflix配信の「DEVILMAN crybaby」を制作中。
- 高杉真宙(タカスギマヒロ)
- 1996年7月4日生まれ、福岡県出身。2009年上演の「エブリ リトル シング'09」で俳優デビュー。2012年公開の「カルテット!」で映画初主演を飾り、その後テレビドラマ「35歳の高校生」「仮面ライダー鎧武/ガイム」などで注目を集める。2014年公開の主演作「ぼんとリンちゃん」で第36回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞を受賞。公開待機作に「逆光の頃」「トリガール!」「散歩する侵略者」「プリンシパル~恋する私はヒロインですか?~」などがある。
ヘアメイク(高杉真宙):堤紗也香
衣装協力(高杉真宙):
ブルゾン(ロット ホロン/wjk base 03-6418-6314)、Tシャツ(wjk/wjk base 03-6418-6314)、ネックレス(アンプ ジャパン 03-5766-8570)