「みんなのものになっちゃうんだ」という寂しさ(松居)
──松居監督にお聞きしたいのですが、「くれなずめ」はご自身の経験やご友人とのエピソードをもとに2017年にオリジナル演劇として上演されました。今回映画化したことで、何か新しい発見はありましたか?
松居 そもそも何かを見つけようとしてこの映画を作っていたわけではなかったので、発見というよりは映画としての「くれなずめ」をみんなで一生懸命作ったという事実のほうが印象深いですね。クランクインする前に1週間ぐらいリハーサルという名目の時間をいただいたんですが、読み合わせをすることもなく雑談やダンスの練習をしているうちに、なんとなくみんなの雰囲気ができあがっていきました。ですので、僕が逆に映画「くれなずめ」はこういうお話なんだとキャストの皆さんに教えてもらいながら作っていった感じです。
──作品が完成したとき、どういうお気持ちだったんでしょうか?
松居 まずはこの物語を映画にさせていただけたことが本当にありがたかったです。でも正直、完成した今でも不思議な感じなんですよ。
目次 僕も松居と同じく「くれなずめ」に出会って4年くらい経つんですが、与えてもらうものがこんなに多い作品って、ほかにはないなと思いました。
松居 撮影を終えて編集して、「もう微調整できないのかな」「みんなのものになっちゃうんだ」という寂しさもあったんですが、今は早く届けたいという気持ちのほうが強いです。
──なるほど。では最後に、成田さんから封切りを心待ちにしている方々に向けてメッセージをお願いいたします。
成田 この映画は、観る方が今人生のどういうタイミングなのかということで、印象が変わってくる物語だと思います。僕は吉尾たちと同じ世代なので、アラサーあるあるも共感できましたし、若気の至りみたいなものがかわいく感じました。何かが足りないけど前に歩いていこうとする人たちがもがく、本当に小さな物語で、僕は彼らのことを否定も肯定もしません。皆さんにも楽しんで観ていただけると思います。
一同 (うなずく)
- 「くれなずめ」
- 2021年5月12日(水)全国公開
- ストーリー
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優柔不断だが心優しい吉尾、劇団を主宰する欽一と役者の明石、既婚者となったソース、会社員で後輩気質の大成、唯一地元に残ってネジ工場で働くネジら、高校時代の帰宅部仲間たちも今やアラサー。かつて文化祭で披露した赤フンダンスを友人の結婚式で披露したものの、盛大にスベってしまう。2次会までの長い長い3時間を持て余す6人は、学生時代のしょうもない思い出話に花を咲かせ、外見も中身も変わらないある人物に疑問を投げかける。「それにしても、お前ほんとに変わってねーよな。なんでそんなに変わらねーんだ? まいっか、どうでも」。彼らは認めなかった。ある日突然、友人が死んだことを。
- スタッフ / キャスト
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監督・脚本:松居大悟
主題歌:ウルフルズ「ゾウはネズミ色」(Getting Better / Victor Entertainment)
出演:成田凌、高良健吾、若葉⻯也、浜野謙太、藤原季節、目次立樹、飯豊まりえ、内田理央、小林喜日、都築拓紀(四千頭身)、城田優、前田敦子、滝藤賢一、近藤芳正、岩松了ほか
©2020「くれなずめ」製作委員会
- 成田凌(ナリタリョウ)
- 1993年11月22日生まれ、埼玉県出身。2013年よりMEN'S NON-NOの専属モデルとして活動。2018年に出演した「スマホを落としただけなのに」「ビブリア古書堂の事件手帖」で、第42回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。2019年には「チワワちゃん」「翔んで埼玉」「愛がなんだ」「さよならくちびる」「人間失格 太宰治と3人の女たち」「カツベン!」などに出演し、第44回報知映画賞の助演男優賞や第32回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞新人賞に輝いた。2020年は「窮鼠はチーズの夢を見る」「糸」などに出演し、第44回日本アカデミー賞助演男優賞や第63回ブルーリボン賞などを受賞。放送中の連続テレビ小説「おちょやん」に出演しているほか、2021年には主演作「まともじゃないのは君も一緒」や「ホムンクルス」が公開された。
- 高良健吾(コウラケンゴ)
- 1987年11月12日生まれ、熊本県出身。2005年にテレビドラマ「ごくせん」で俳優デビューし、翌年「ハリヨの夏」で映画初出演を果たす。以来多くの作品で活躍し、主な出演作は「蛇にピアス」「ソラニン」「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」「白夜行」「横道世之介」「シン・ゴジラ」「万引き家族」「止められるか、俺たちを」「多十郎殉愛記」「あのこは貴族」などの映画や、連続テレビ小説「べっぴんさん」、大河ドラマ「花燃ゆ」、フジテレビの“月9”枠「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」といったドラマなど多数。現在、大河ドラマ「青天を衝け」に出演している。
- 若葉竜也(ワカバリュウヤ)
- 1989年6月10日生まれ、東京都出身。2016年に「葛城事件」で、第8回TAMA映画賞最優秀新進男優賞を獲得。近年の出演作として映画では「サラバ静寂」「パンク侍、斬られて候」「愛がなんだ」「台風家族」「ワンダーウォール 劇場版」「生きちゃった」「朝が来る」「罪の声」「AWAKE」「あの頃。」「街の上で」があり、ドラマでは「ブラックスキャンダル」「コールドケース2 ~真実の扉~」「令和元年版 怪談牡丹燈籠」、連続テレビ小説「おちょやん」がある。
- 浜野謙太(ハマノケンタ)
- 1981年8月5日生まれ、神奈川県出身。在日ファンクのボーカル兼リーダー。俳優としても活動しており、「婚前特急」で第33回ヨコハマ映画祭の最優秀新人賞を獲得した。映画「望郷」「おいしい家族」「ロマンスドール」「酔うと化け物になる父がつらい」のほか、連続テレビ小説「とと姉ちゃん」と「まんぷく」、「面白南極料理人」、大河ドラマ「いだてん〜東京オリムピック噺〜」、「ラジエーションハウス〜放射線科の診断レポート〜」「おしゃれの答えがわからない」などのドラマに出演している。
- 目次立樹(メツギリッキ)
- 1985年10月29日生まれ、島根県出身。慶應義塾大学入学後、演劇サークルに入団し、松居大悟とともに劇団ゴジゲンを旗揚げ。2011年からのゴジゲン活動休止期間の3年間は農業に従事。近年の出演作に舞台「君が君で君で君を君を君を」「民衆の敵」「みみばしる」「朱春」、映画「アルプススタンドのはしの方」「幕が下りたら会いましょう」など。そのほか、to R mansion「にんぎょひめ」の脚本、「はたらかないせんとうき」の監督・脚本などクリエイターとしても活躍している。
- 松居大悟(マツイダイゴ)
- 1985年11月2日生まれ、福岡県出身。 慶應義塾大学在学中の2008年に自身が主宰する劇団ゴジゲンを結成。演劇、ドラマ、映画など多岐にわたって活躍する。主な監督作に「私たちのハァハァ」「アズミ・ハルコは行方不明」「君が君で君だ」「#ハンド全力」、ドラマ「バイプレイヤーズ」シリーズなどがある。2020年に小説「またね家族」を上梓。2021年にはドラマ「バイプレイヤーズ~名脇役の森の100日間~」が放送され、映画版「バイプレイヤーズ〜もしも100人の名脇役が映画を作ったら〜」が公開された。
笑った?泣いた?
試写会参加者から届いたコメント
まさかの展開。昔を思い出して青春を懐かしんでる、男子のワチャワチャ映画と思っていたら、途中訳が分からなくなり、最後泣かされました。結末わかった上で見返したくなりました。キャストは全員文句なし!
(ひなひな / 30代)
上映時間96分とは思えないくらい濃密。結婚式の披露宴から二次会に行くまでの間の話だけど、彼らにとってはかけがえのない時間。この時間がずっと永遠に続けば良いのに…まだ終わらないで…と強く思いました。学生時代の青春を一緒に過ごした友達に逢いたくなった。大人になってもくだらないことで騒いで馬鹿みたいに笑いたい、そう思わせてくれる素敵な映画でした。
(さな / 30代)
全く事前情報をいれずに観ました。初めは、よくある男のバカっぽい笑える青春ストーリーだと思って笑いながら観ていて。でも序盤のセリフに引っかかりがあって…そのしこりを持ったまま見進めていくと……まさかの展開でギャップがすごい。めっちゃ泣きました。あんなに泣かされるとは。ストーリーの構成が凄すぎて、この感情を上手に言葉に出来ません。ここ数年で見た映画の中で1番心掴まれる映画でした。
(ゆ☺︎ / 30代)
最高だ!青臭くてだらしなくて男ってバカだなあ。なのにこんなに愛しくて切なくなるなんて、アイツらみたいにヘラヘラフワフワして生きていけたらな。一番くだらない赤フンの余興で泣いた自分に驚いた。松居大悟監督の群像劇には祝祭の味がする。それが答えだ!
(sail / 50代)
深刻になり過ぎず、たまにはヘラヘラと生きてみようかなと思わせてくれる温かい映画。6人の個性が豊かで、観ていてそれぞれに感情移入することができました。
(バナナナナナ / 20代)