映画ナタリー Power Push - ずっと前から好きでした。~告白実行委員会~
HoneyWorksインタビュー 劇場版アニメーションという集大成
より美しくなったHoneyWorksの世界(shito)
──今のお話を聞くと、映画の制作スタッフとディスカッションを重ねたようですね。
Gom はい。でも我々は脚本などはプロではないので、そういう部分はお任せしました。ただ監修というか、先ほど言った通り映画化するうえでいろいろとアイデアがあるのでぜひキャッチボールをさせてほしいと早い段階から伝えていました。
shito 映画のスタッフの方々は原作を尊重してくれた印象ですね。自分たち的にはせっかくの大きなお話なので、新しいストーリーや物語があってもいいんじゃないかと思っていたんですが、HoneyWorksが作ってきた世界をより美しく描きたいとおっしゃってくれて。うれしかったです。あと新しいストーリーを入れてほしいという要望も聞いてくれて、しっかりとキャッチボールができましたね。
──ミーティングは密に?
shito そうですね、顔を見合わせて話すことは多かったです。真面目な話だけじゃなくて、飲みながら砕けた形で話せたのもよかったですね。
Gom 監督(柳沢テツヤ)が僕らのキャラクターをすごく愛してくれて。(早坂)あかりのことを“もちた”(望月蒼太)みたいに“あかりん”って呼ぶんですよ。もうテンション的にもあかりんに恋するもちたで(笑)。「あかりんがー」ってグイグイきてくれて。あと(瀬戸口)雛とか、(榎本)虎太朗とか次の世代のことも、こうしたら面白いよねとかいろいろ話して。
自分の頭の中で動き回っていたキャラクターが目の前に(ヤマコ)
──神谷浩史さん、戸松遥さん、梶裕貴さん、緑川光さんと声優陣の豪華さに驚きました。
Gom CDやそれに付属するDVDでも皆さんに参加していただいているんですが、そのときはバラバラに収録してたんです。けど今回はほとんどのキャストさんが一堂に会して、その場にいたんですけど、ただただ感動というか。現場は緊張感があってすごかったですね。
shito 自分では思ってもいなかった解釈を皆さんしてくださって、そっちのほうがいいなと思うシーンばかりでした。現場で生まれてくる空気感や、セリフのニュアンスなど自分たちの辞書にないものが見れて刺激になりましたね。あと、脚本にアドリブと書かれている箇所があったんですが、本当にアドリブで会話をしていて。しかもその内容が面白くて、ずっと笑ってました。
Gom 僕はすべてのキャラクターに思い入れがありすぎて、セリフの多くに含みを持たせようとしてしまうんですけど、プロの皆さんはもっと客観的に見たうえでキャラクターに命を吹き込んでくれて、それが個々のキャラクターの心の動きに繊細さを与えてくれました。
shito あと、もちたを演じる梶さんが、“ちび悪魔もちた”と話す1人2役の場面を、タイミングをつかむためにリアルタイムで両方を演じていたんですけど。本当にすごくて……どっから声出てるんだろうと思いました(笑)。
──ヤマコさんは主題歌「恋色に咲け」が流れるOPの絵コンテを担当されたと聞いているのですが。(参照:HoneyWorks「ずっと前から好きでした。」OPムービー公開、イベントの生中継も)
ヤマコ 構成は3人で考えたんです。そのとき3人で「(瀬戸口優たち)上の世代を全員出したいね」と話していて。ハニワはストーリー性のあるMVを作ってきたのでその流れの中で考えました。みんなの関係をうまくまとめられたかなと思ってます。
──OPでもキャラクターが元気よく動きまわってますね。それを観ていかがでした?
ヤマコ MVを作るときに、自分の頭の中ではキャラクターがしっかりと動いているんです。でもいざ映像に落とし込んだときに動かすことができないもどかしさを常に感じていて。1枚絵だからこそできることもあるんですが、動くことで初めてできることもあると思っていたので、それが実現されていて感動しました。
「告白実行委員会」シリーズの始まり(shito)
──本作に登場するキャラクターの中で特に思い入れのあるキャラクターはいますか?
shito 懐かしいのは(合田)美桜ですね。自分たちが離れたところに住んでいたときにスカイプで話し合って決めたキャラクターなんですけど、ヤマコがラフで描いた絵が採用されたんです。そのあとに清書してもらったんですがラフのほうがよくて(笑)。
ヤマコ そのときのラフがそのままMVのサビに使われていて。私は「手抜いてる!」ってコメントこないかヒヤヒヤだったんですけど、そういうコメントがなくてよかったです(笑)。
Gom 黒板に相合い傘を描かれて“春カップル”っていじられてる場面を描きたくて。そのときはまだ「告白実行委員会」はできてないんですけど、そこからどんどんキャラクターが生まれていった感じですね。
──映画の中で印象的なシーンはありますか?
Gom キャラクター同士がぶつかり合うシーンですね。MVなどでは直接的に衝突するシーンはほとんど描いてこなかったので。声優さんたちの演技も相まってグサッとくるような、緊張感のあるシーンになっています。
ヤマコ 絞るのが難しいです。ただHoneyWorksの女子メンバーと一緒に映画を観たとき、展開もセリフも知っているのに、告白シーンはみんなでキャーキャー言いながら楽しめましたね。劇場で大きなスクリーンといい音響で観たとき、私たちどうなっちゃうんだろう、耐えられるのかな……(笑)。
──メインキャラクター6人それぞれにお風呂のシーンがありますね。あれはサービスなんですか(笑)。
ヤマコ ファーストアルバム(「ずっと前から好きでした。」)に付属しているコミックの中で描いていたんですけど。限られた時間の中でまさか全員のお風呂シーンを入れてもらえるなんて。あと春輝だけシャワーなのもコミックに忠実です(笑)。
shito 背筋が美しかったー(笑)。
HoneyWorksの集大成(Gom)
──先日行われた「AnimeJapan 2016」のステージイベントで続編「好きになるその瞬間を。~告白実行委員会~」の公開が発表されましたね。見どころは?(参照:HoneyWorks「ずっと前から好きでした。」続編決定、代永翼が花江夏樹のライバルに)
shito ストーリーが(瀬戸口雛たち)下の世代の話になるんです。第1弾の最後の場面とつながるような構成になっています。「ずっと前から好きでした。~告白実行委員会~」のチェックは忘れずに(笑)。あとハニワ的にも今後は、下の世代の楽曲もどんどん作っていきたいですね。
Gom 下の世代は「告白予行練習」の2人(瀬戸口優、榎本夏樹)の関係みたいに単純ではないので、一筋縄ではいかない複雑なストーリーになるかと。第1弾とは違う魅力を生み出せそうです。
ヤマコ 下の世代は片思いが多くて。でもみんな相手のことを思って自分の思いを言えない子たちなので、共感できる人も多いかなと思います。
──では最後にこれから作品を観る人に一言ずつお願いします。
ヤマコ 多くの人にキュンキュンしてもらいたいです! 恋愛や青春をしている人たちが、私たちが生み出したキャラクターと同じようにがんばろうと思ってもらえたらうれしいです。ニコ動やYouTubeでも「この動画を観て告白しました」ってコメントをもらったりするので、この映画もそういう人に勇気を与えられる作品になったらいいなと思ってます。
shito それぞれがいろんな感情を持って絡まっていく群像劇に仕上がっています。キャラクターに共感してもらい、観てくれた方の背中を押すような作品になったらうれしいなと思います。また劇伴、挿入歌、OP、EDすべてHoneyWorksが担当していますので、そこも楽しんでいただければ。
Gom HoneyWorksは音楽だけでなく映像も手がけているグループなので、この映画が1つの集大成になるのではないかなと思っています。自信を持って送り出せる作品になりました。ぜひ観に来てください。
- 「ずっと前から好きでした。~告白実行委員会~」2016年4月23日より全国公開
桜丘高校3年の榎本夏樹は、幼なじみの瀬戸口優に片思い中。勇気を振り絞って告白したものの、素直になれず「告白の練習」と嘘をついてしまう。そんな夏樹を「本番まで練習に付き合うよ」と応援する優。しかし優も彼女のために自分の気持ちに嘘をついていた。夏樹と同じ美術部に所属する早坂あかり、合田美桜、優とともに映画研究部で制作を行う望月蒼太、芹沢春輝らを巻き込みながらも一向に進展しない2人の関係。お互いにホントの気持ちをごまかし続ける中、夏樹はクラスメイトの綾瀬恋雪にデートに誘われ……。
スタッフ
原作・音楽:HoneyWorks
監督:柳沢テツヤ
脚本:成田良美
キャラクターデザイン・総作画監督:藤井まき
キャスト
瀬戸口優:神谷浩史
榎本夏樹:戸松遥
望月蒼太:梶裕貴
早坂あかり:阿澄佳奈
芹沢春輝:鈴村健一
合田美桜:豊崎愛生
綾瀬恋雪:代永翼
瀬戸口雛:麻倉もも
榎本虎太朗:花江夏樹
明智咲:緑川光
成海聖奈:雨宮天
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HoneyWorks(ハニーワークス)
コンポーザーのGom、shito、イラストレーターのヤマコのほか、Oji、モゲラッタ、ろこるといった多数のサポートメンバーからなるクリエイターユニット。2014年1月にボカロ曲で構成されたアルバム「ずっと前から好きでした。」を発表し、メジャーデビュー。同年8月にはボーカリスト・CHiCOを迎えたユニット・CHiCO with HoneyWorks名義でシングル「世界は恋に落ちている」をリリースした。
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CHiCO with HoneyWorks「恋色に咲け」
2016年4月13日発売 / ミュージックレイン
2016年5月13日更新