日本の映画業界に玉城くんの存在を知ってもらいたい(谷)
──映画公開までまもなくとなりましたが、改めて撮影を振り返ってみていかがでしたか?
谷 それはもう殺伐としてましたね(笑)。
玉城 ははは!(笑)
谷 淡々と撮り進めていました。なにせ時間が限られてましたから。
──どのくらいの期間で撮影されたんですか?
谷 ご想像にお任せします……。でも映画の現場ってだいたい殺伐としてるんじゃないかな?
玉城 確かに、短期間で仲良くなるのって難しいですよね。そんな中で綾女ちゃんが気を回してくれて、現場の空気を明るくしてくれていたのが印象的でした。
──舞台だと稽古期間が1カ月くらいあることで、打ち解けやすいというのもあるかもしれませんね。
谷 舞台と映像の違いで言うと、この前「舞台『刀剣乱舞』」を観させてもらったときに思ったんだけど、3時間半の公演を1日2回やるのってすごく大変じゃない……?
玉城 作品にもよりますけど、会話劇だと相手との掛け合いだからセリフが出てきやすくてわりと楽なんですよ。でも説明ゼリフが多い作品だと、もっと集中力が必要になってくる。あとは、セリフを一言一句間違っちゃいけないお芝居のときもかなり気力を使います。
谷 なるほど。ドラマ、映画、舞台……それぞれ作り方も現場の雰囲気もまったく違うんでしょうね。
──谷監督は舞台を中心に活動されている俳優さんともお仕事をされていますが、舞台出身の方、映像出身の方、それぞれにどのような印象を持たれていますか?
谷 舞台に出ている役者さんは引き出しが多いなって思います。だから現場で修正が利きやすい。舞台の人って、長い時間をかけて1つの役を作り込むことが多いから、バリエーションが豊富なんでしょうね。一方で映像メインで活動している人は、映像向けの細かい演技が得意な印象があります。あとは舞台、映像に関係なく、自分から演技プランを提示してくれたり、求めた以上のことをやってくれる方がいると、現場がスムーズに回るし、作品の世界も広がっていくなって。そういう方がいわゆる“いい役者”なんじゃないかなって思います。
──玉城さんは、今後も映像作品に挑戦していきたいという思いはありますか?
玉城 (マネージャーに向かって)もちろんです! 映画がやりたいっていうのはずっと言ってます。それこそ役者を目指そうと思ったきっかけは映画なので。舞台ももちろん好きなんですが、やっぱり根本には映画に出たいという思いが強くあります。
谷 玉城くんと一番最初に話したとき、窪塚洋介さん主演の「GO」が好きだって言ってたけど、これから玉城くんは、窪塚さんとか安藤政信さんとかああいうポジションを目指すのがいいのかなって思う。「一人の息子」を機に、日本の映画業界に玉城くんの存在を知ってもらいたいですね。
“息子”と“父”を演じる(谷)
──製作が発表された当初、本作には「2人の受取人」という仮題が付けられていましたが、そこから現在の「一人の息子」という題名に変更になりました。これにはどんな意図があったのでしょうか?
谷 「2人の受取人」だと少しサスペンスっぽい印象を与えてしまうかもと思って、撮り終わってから編集しつつ考え直したときに、「一人の息子」というタイトルがしっくりきて。あと敬愛する小津(安二郎)監督の作品に「一人息子」という映画があって、その作品への憧れという意味合いもあります。
──なるほど。観終わったあと「『一人の息子』とはこういう意味だったのか」と腑に落ちるようなラストシーンになっていました。それでは最後に、作品を楽しみにしている方々にメッセージをお願いします。
谷 玉城くんや馬場くんのように、舞台を中心に活躍している役者さんが映画に出たらこんな芝居をするんだぞ、というのを自信を持って提示できるような仕上がりになりました。そしてこの作品が、少しでも家族のことを考えるきっかけになればと思います。
玉城 普段の生活を少し違った角度から見てみると、生きていることが楽しくなるかもしれません。この作品を通して「せっかく生まれてきたんだから、楽しく生きよう」と思ってもらえたらうれしいですね。
谷 そういえば「舞台『刀剣乱舞』」で玉城くん演じる小烏丸が、“(刀剣たちの)父”を自称していたのが印象的だったな。僕の映画では“息子”の役なのに(笑)。
一同 ははは(笑)。
- 「一人の息子」
- 2018年7月7日(土)より東京・ユーロスペースにて4週間のレイトショーののち全国順次公開
- ストーリー
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東京の映像制作会社に勤務する山内樹は父が倒れたという知らせを受ける。一方、群馬で引っ越し業者として働く倉田歩は父親を知らずに育った。職業も住む場所も異なる青年2人の人生はある書類をきっかけに交錯していく。
- スタッフ / キャスト
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監督:谷健二
脚本:佐東みどり
主題歌:ReN「Lights」
出演:馬場良馬、玉城裕規、水崎綾女、弓削智久、篠原篤、根本正勝、高崎翔太、関口アナム、三城千咲、森本のぶ、双松桃子、橘美緒、三坂知絵子、新津ちせ、竹下景子ほか
©『一人の息子』製作委員会
- 玉城裕規(タマキユウキ)
- 1985年12月17日生まれ、沖縄県出身。21歳から数多くの演劇に出演し、2011年に全労済ホールスペース・ゼロで上演された「少年ハリウッド」で注目を浴びる。舞台「弱虫ペダル」の東堂尽八役で人気を博し、ドラマ「弱虫ペダル Season2」にも同役で出演。舞台「ライチ☆光クラブ」では、“奇人で変人”のジャイボ役を演じ、テレビアニメ版の声も担当した。舞台のみならず「血まみれスケバンチェーンソー」「のぞきめ」「ゼニガタ」など数々の映画にも出演している。「舞台『刀剣乱舞』」シリーズの集大成となる「舞台『刀剣乱舞』悲伝 結いの目の不如帰」が、7月29日まで上演中。
- 谷健二(タニケンジ)
- 1976年7月24日生まれ、京都府出身。大学でデザインを専攻後、映画の世界を夢見て上京し、多数の自主制作映画に携わる。長年広告業界で勤務したのち、2014年にフリーに。2013年に「リュウセイ」で劇場映画デビュー、2016年に劇場映画第2作「U-31」を発表した。オリジナルビデオ「さとるだよ」、欅坂46・渡辺梨加の個人PV「ベリカ2号機」など作品は多岐にわたる。日本映画監督協会会員、武蔵野映画祭の発起人でもある。