映画ナタリー Power Push - Netflix「火花」

白石和彌×沖田修一インタビュー ハリウッドとも戦える小さな世界の豊かさ

Netflixオリジナルドラマ「火花」全10話が現在、世界190カ国で配信されている。第153回芥川賞を受賞した又吉直樹(ピース)の同名小説を、総監督の廣木隆一をはじめとする5人の監督が実写化。林遣都、波岡一喜、門脇麦、染谷将太、田口トモロヲ、小林薫らが漫才の世界で生きる若手芸人と、彼らを支える人々を演じている。

映画ナタリーでは又吉と親交の深い西加奈子へのインタビューに続き、監督を務めた白石和彌(3話、4話)と沖田修一(5話、6話)の対談を実施。出会いのエピソードや互いの監督回の印象、世界配信への思いなどを率直に語ってもらった。なお、お笑いナタリーでは廣木へのインタビュー、林、波岡らによる座談会などを掲載中。あわせてチェックしてほしい。

取材・文 / 伊東弘剛 撮影 / 小原泰広

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どういう人なのか、ずっと気になってた(白石)

──お二人は、今までに現場でご一緒したことはあったんですか。

白石和彌 ないです。最初に会ったのはTAMA映画祭(映画祭TAMA CINEMA FORUM)で、沖田監督が「横道世之介」で来ていて、僕が「凶悪」で行って。そのとき吉高由里子と、付き合ってる感じで会場にいて(笑)。

左から沖田修一、白石和彌。

沖田修一 彼女なんです!(笑)……嘘です嘘です、やめてくださいよ。僕は話しかけていいんだかわからない人が、1人でいるなって、殴られたりしたら嫌だなって思ってました(笑)。

白石 ははは。

──お互いの作品はすでにご覧になってたんでしょうか。

沖田 「凶悪」はまだ観てなくて、映画祭のあとに観てやっぱり話しかけなくてよかったなって(笑)。どんな表現でも突き抜けたものって、やりたくてやってるって感じが伝わってくる。それをすごく冷静にやっている感じが面白かった。あのとき観ておいて、もう少し話をすればよかったなと思いましたね。

白石 僕は沖田さんの映画はずっと前から観てました。独特の間の取り方や着眼点のオリジナリティに触れて、どういう人なのかすごく気になってました。

僕のところに話があると思ってたら、まんまと来た(沖田)

──まず又吉直樹さんの原作小説の感想から教えてください。

白石 これだけの超大型コンテンツ(の映像化)の話がまさか自分のところに来るなんて思ってもいなかったので、オファーを受けてから慌てて読んだんですけど、面白かったです。又吉さんは優しいなと。

──どんなところがですか?

白石 「挫折して舞台から降りても、一度でも漫才やってたら、これからの漫才に影響を与えている」という考えがすごい優しい。又吉さんは、挫折してやめていった人をたくさん見てきたと思うんですね。僕たちも映画を作りながら挫折して消えていく人をいっぱい見てきたわけですよ。だからその考え方にすごい共感できましたし、又吉さんの人としての優しさを感じましたね。

「火花」より。

沖田 僕はもともと、テレビとかいろんな場所でお笑い芸人さんを目にするし、漫才の世界がすごく身近なところにあるのに、それを題材にした作品がそんなに多くないなと思っていて。その中で、「火花」という小説は芸人の又吉さんが書かれて、しかも芥川賞を獲っている。だからその世界を大々的に取り上げるいいチャンスだと思いました。僕は白石監督とは逆に、なんか(僕に話が)あるんじゃないかなと思っていて。

白石 それがすごいよね! それはあれですか、自分の世界観に若干近いなって感じてたってこと?

沖田 そうなのかもしれないですね。笑えて、照れがちゃんとある物語で。わりと僕もそうなので、できるのではという小さな根拠みたいなものがあったんですよね。だから来ればいいのにと思っていたら、まんまと来たっていう(笑)。

白石 それは寄せてるよ。さすが天才監督!

沖田 やめてくださいよ、確実に潰そうとしてるじゃないですか!(笑) 映像にしたら絶対面白いだろうなと思う場面が、原作を読んだときからあって。しかも、これを10話のドラマでやるってことにすごく興味を持ちました。

自分の思い付きが引き継がれる衝撃(白石)

──その10話のドラマを、お笑いコンビ・スパークスのボケ徳永を林遣都さん、同じく漫才コンビあほんだらのボケ神谷を波岡一喜さんが演じ、5人の監督で演出すると聞いたときどう思いました?

白石 普段、自分の作品では本(脚本)をある程度イジるんですけど、それはそんなにできないなって。

沖田 僕もそれ思った。

白石 廣木総監督なり、脚本家チームが作ったもので演出勝負!と思ったし、あと僕が呼ばれた理由はどこにあるのかなと考えましたね。違った味付けをしてほしいのかな?とか、いろいろ。

沖田 白石監督の名前を聞いたときワクワクしました。

白石 人を殺すシーンあったかなって、原作を読み返しました(笑)。もちろん普段から人を殺す映画ばかり撮りたいわけではなく、僕にはもっと演出の幅がある!って勝手に思っていたので(笑)。大きなチャンスをいただけましたね。

──5人で演出したことで何か発見はありましたか?

白石 僕の回(3話、4話)って最初のほうだから、加藤鷹の名言とか、ホームレスの人が足で地面を叩く場面とかその場で思い付いたことをけっこう入れれて、「あー面白かった」って感じで、やりっぱなしで終わったんですよ。その後、しばらくしてから次の沖田監督の回(5話、6話)を観たら引き継いでて(笑)。

「火花」より。

沖田 僕が無理やり引っ張ったんですよ。そうしたら次の7、8話の久万(真路)監督もやらざるを得なくなって(笑)。

白石 衝撃でした。「えーその場で思い付いただけなのに、なんでみんなそれやってるの?」って。

沖田 でも、そうやってできていった部分も多いですよね。

白石 あと、監督をやっていると苦しいことのほうが多かったりするんですが、この作品はミスっても全然大丈夫なんじゃないかと、妙な余裕のようなものがあって。廣木総監督もいてくれるし、編集で撮り忘れに気付いても、沖田回に行って撮れるんじゃないかと思ってて(笑)。羽を伸ばしてやれました。廣木総監督も「好きなことやれ、どんどん遊べ」と言ってくださっていたんで。まあその言葉通り、廣木総監督なんて自分の演出回でぶっちぎってますからね。もう廣木節全開。

視聴はこちらから

Netflixオリジナルドラマ「火花」

Netflixオリジナルドラマ「火花」

第153回芥川賞を受賞したピース又吉の中編小説「火花」を全10話でドラマ化。漫才の世界に身を投じた若者たちが現実と夢の狭間で苦しみながらも、自分らしく生きる様を描く。

スタッフ

総監督:廣木隆一
監督:廣木隆一(1話、9話、10話) / 毛利安孝(2話) / 白石和彌(3話、4話) / 沖田修一(5話、6話) / 久万真路(7話、8話)
原作:又吉直樹「火花」(文藝春秋刊)
主題歌:OKAMOTO'S「BROTHER」
挿入歌:SPICY CHOCOLATE「二人で feat. 西内まりや&YU-A」

キャスト

林遣都 / 波岡一喜 / 門脇麦 / 好井まさお(井下好井) / 村田秀亮(とろサーモン) / 菜 葉 菜 / 山本彩(NMB48)/ 渡辺大知(黒猫チェルシー) / 高橋メアリージュン / 渡辺哲 / 忍成修吾 / 徳井優 / 温水洋一 / 嶋田久作 / 大久保たもつ(ザ☆忍者) / 橋本稜(スクールゾーン) / 俵山峻(スクールゾーン) / 西村真二(ラフレクラン) / きょん(ラフレクラン) / 染谷将太 / 田口トモロヲ / 小林薫

Netflixとは

世界最大級のオンラインストリーミングサービス。190カ国以上で8100万人を超える会員を抱え、オリジナルシリーズを含めたドラマや映画、ドキュメンタリーを数多く配信している。

「火花」

又吉直樹「火花」
2015年3月11日発売
文藝春秋
1296円

Amazon.co.jpへ

白石和彌(シライシカズヤ)

1974年12月17日生まれ、北海道出身。若松孝二に師事し、フリーの演出部として行定勲、犬童一心らの監督作にスタッフとして参加する。2010年「ロストパラダイス・イン・トーキョー」で長編監督デビュー。2013年、長編第2作「凶悪」が評価され、新藤兼人賞2013の金賞をはじめ多数の賞に輝く。監督最新作「日本で一番悪い奴ら」が6月25日に封切られる。

沖田修一(オキタシュウイチ)

1977年8月4日生まれ、埼玉県出身。日本大学芸術学部卒業後、自主短編映画「鍋と友達」で第7回水戸短編映像祭グランプリを獲得する。2006年「このすばらしきせかい」で長編監督デビューを飾り、以降「南極料理人」「キツツキと雨」などを監督。長編第4作「横道世之介」で第56回ブルーリボン賞の作品賞ほか多くの賞を受賞する。現在、松田龍平が主演を務める「モヒカン故郷に帰る」が公開中。