映画ナタリー Power Push - 「映画 みんな!エスパーだよ!」

園子温×池田エライザ×真野恵里菜インタビュー 性春映画、あっぱれ! Wヒロインと監督の意外な信頼関係

園さんが、「いや、真野は触らないでいい」って(真野)

──私も豊橋の撮影現場に取材でお伺いしたんですが、かなり特殊な現場でしたよね? 例えばTENGAがいっぱい置いてあったりとか。

「映画 みんな!エスパーだよ!」のワンシーン。

池田 そうですね。でも面白いからいいんじゃないですか?(あっさりと)

真野 あはは(笑)。

──真野さんはドラマ版で初めて現場に入ったときに戸惑いはありました?

真野 いやー、最初はためらいました! ドラマの顔合わせのときにTENGAが目の前に置いてあって、そのとき初めて見たんですよ! それで、興味本位で持ってみようと思ったら、園さんが「いや、真野は触らないでいい」って(笑)。今となってはもう、この間の映画の現場でも「へえ、こんなのもあるんですね」って普通に触っている自分がいて。そういう普段の生活でやったら周りから白い目で見られるようなことも、「エスパー」の現場では許されちゃうので、普段と違うことができて楽しかったですね。

──現場にお伺いしたとき、園さんが取材陣に対して直々に池田さんを紹介されていたことがすごく印象的でした。

2015年5月、「映画 みんな!エスパーだよ!」撮影現場の様子。左から園子温、池田エライザ。

 あれ、よく覚えてますね。彼女はせっかくこの映画でデビューするのに、取材の人たちがあんまりそこに突っ込まなかったので、これは俺がなんとかしなきゃと思って。それで急遽もう1回彼女を紹介する場を設けようと。

──今回、オーディションで演技経験がほとんどない池田さんを選ばれた決め手っていうのはなんだったんでしょうか? 監督はコメントで「今後業界を揺るがすとんでもない存在になる」って断言されていましたよね。

 最後はしゃべりが面白かった。かわいい子はほかにもいっぱいいたんだけど、個性があった。10代にしては知的な面がたくさんあったし、面白そうだなと。……本人の前でいろいろ言うのってなんか恥ずかしいね(笑)。

池田 私も恥ずかしいです!

 もう本当にすごい人ですよ。偉いなあ、エライザって感じですよ。これ、ダジャレ。

真野 ダジャレ(笑)。

「私が美由紀だし」って思ってました(池田)

──池田さんご本人は、ドラマ版で夏帆さんが演じられていた役(平野美由紀)っていうプレッシャーはありました?

「映画 みんな!エスパーだよ!」のワンシーン。

池田 ドラマは観ていたんですが、いざ自分が演じるときはあんまり考えないようにしてました。いろいろな声は耳に届くけど、「私が美由紀だし」って思ってて。プレッシャーを感じてなかったって言ったら嘘になるけど、現場に入って皆さんと会っていくうちにどんどんそれもなくなっていきました。

真野 私も、夏帆さんとエラちゃんの違いは意識しませんでしたね。映画では物語もみんながエスパーに目覚める一番最初のところに戻るので、今回の美由紀はエラちゃんって思って。初日の朝、エラちゃんと移動の車が一緒で、私は20分間爆睡したんですけど、彼女は寝れないしご飯も食べれないって状況だったみたいで。男性キャストが多い中で、一番歳が近い同性の私がみんなとしゃべるきっかけになるべきだと思って、エラちゃんに「ちょっとご飯行こうか」って誘って一緒に行ったりしました。19歳で若いけど考え方がしっかりしてるし、話してると私も影響受けることがあったりして、頼もしかったです。

池田 すごい助けてもらってました。真野ちゃんは映像の現場に慣れていたので、ゼロの状態からのスタートだった私は学ぶことがすごく多くて。「あっそういうことだったんだ!」って馬鹿丸出しで真野ちゃんに教わってた感じです。

左から池田エライザ、真野恵里菜。

真野 意外と甘えん坊だもんね?

池田 ……うるさいなあ(笑)。

真野 かわいい、かわいい!(笑)

──今後も、園監督の作品に池田さんが出演されることはありますかね。

 いや、終わったあと彼女に「どう?」って聞いたら、「どうですかねえ」とか言われて(笑)。もしかしたら僕が断られるかもしれない。

池田 あはは(笑)。

この子はちょっと面倒みなきゃいかんなと思いましたね(園)

──真野さんは園さんともう4作品ほどご一緒されてますよね。

真野恵里菜

真野 そうですね。その分プレッシャーもあります。次も呼んでもらえるかなとか、もし呼んでもらったときに自分がどう応えられるのか、これまでとは違う球を返さないといけないなっていうのが。でも、園さんの作品の純粋なファンの方からも「今回も真野ちゃん出てるんですね」って言っていただけるのがうれしいですし、やっぱり一度ご一緒させていただいた監督とまたお仕事できるっていうのは、何か1つ気になってもらえているということなので。だからこそ次会うまでにいろいろ経験して、成長してなきゃなって思います。

──園さんがご自身の作品に真野さんが必要だと思う理由はどんなところですか?

 真野さんは、なんていうか、付き合いが長いから親族みたいになってきた(笑)。昔からよくがんばってるし、この人はプロだなと思いますね。一番のきっかけっていうか、真野恵里菜っていう存在のすごさがわかったのは、僕が素人を相手にワークショップをやってたときなんですよ。そのとき受講者の中に彼女が紛れ込んでいて、「ん? あれは真野恵里菜じゃないか?」って。

真野 はい、行きました(笑)。

 素人っていうのはやっぱり素人で、事前に渡してあった台本を覚えずに、紙を持ったまま立ち稽古するのよ。でも彼女だけは、プロだから当然って言えば当然なんだけど、ちゃんとセリフを入れて完璧な芝居をしてきて。真野恵里菜ってやっぱりすげえなって、こんなところまでわざわざ来て俺にアピールしてるって思って。他の人よりも椅子の片付けなんかもきちっと参加してたし、偉い子だなと。この子はちょっと面倒みなきゃいかんなと思いましたね。

──そんなことがあったんですね。真野さんはどうしてそのワークショップに参加されたんですか?

真野 いやもう、監督に会えますし、自分の芝居を見てもらって、いろいろ教えていただける機会だったので。普段はワークショップに行くこともなかったし、監督さんによってはいろんなワークショップに行くことによって変な癖がつくことがあるから行かないほうがいいっていう方もいらっしゃるんですよ。でも本当にこの方の作品に出たい、この人とお仕事がしたいって思ったので、これは行くしかないと思って。

──事務所の指示でもなく、ご自分の意志で。

真野 たまたまそのワークショップの情報を知ったんです。それで、どうしても行きたいからその日のスケジュールをどうにか空けてくださいって事務所にお願いして。行ってよかったです、本当に。

 いやもう、本当によかったね。あれがなかったらこうなってなかった。

池田 すごい……。

真野 あのときの稽古内容は「愛のむきだし」のワンシーンだったので、すごく観ていた作品だからセリフも自然と覚えやすかったんです。だけど満島(ひかり)さんがやられているお芝居を真似してもいけないなと思って……。とにかく必死でした! 周りの方には「真野恵里菜が来てる」という目で見られていたので、ここで自分がポンコツなところ見せて、あとで「真野恵里菜来てたけど、めっちゃ下手くそだったよ!」って言われたら嫌だなっていう負けず嫌いな気持ちもあって。

園子温

 ほかの素人さんはみんなぼんやりしてたけど、1人だけ眉間にシワ寄ってたもんな。

真野 あはは、すごいギラギラしてたんだと思います(笑)。

 まあ、あれを続けてれば誰だってそれなりにのし上がれると思うけど、普通の人はそれを実行できないんだよ。

──そのガッツが「エスパー」での体を張った演技にも通じている気がします。

「映画 みんな!エスパーだよ!」2015年9月4日より全国公開

「映画 みんな!エスパーだよ!」

若杉公徳のマンガを原作に、2013年に深夜ドラマが、2015年4月にスペシャルドラマが放送された青春コメディシリーズの劇場版。監督の園子温、主演の染谷将太のほか、真野恵里菜、マキタスポーツ、深水元基、柾木玲弥、神楽坂恵、安田顕といったレギュラーメンバーがテレビシリーズから引き続き出演し、オーディションで選ばれた新キャスト・池田エライザがヒロインを務める。さらに高橋メアリージュン、冨手麻妙、サヘル・ローズ、今野杏南、星名美津紀、篠崎愛、清水あいり、星名利華ら豪華女優陣が集結する。

ストーリー

愛知県東三河。いつの日か運命の彼女に出会えると信じている平凡な高校2年生・鴨川嘉郎は、ある日突然人の心の声が聞こえるテレパシー能力に目覚める。東京からの転校生・浅見紗英に心惹かれつつ己の能力に翻弄される嘉郎だったが、テレキネシスでスカートめくりをする喫茶店マスターの輝光、全裸でテレポーテーションする露出狂の榎本、透視能力で相手の臓器を見ることで快感を得る矢部、そして自分と同じテレパシー能力を持つ幼なじみの美由紀たちの存在に気づく。そんな中、東京からやってきた超能力研究の第一人者で紗英の父・浅見教授と助手の秋山により集められたエスパー一同は、悪のエスパーによってこの街に危機が迫っていることを知る。それまでエロいことにしか力を使っていなかったものの、自分たちの使命を自覚する嘉郎たち。そして教授の予見通り、街中の女性たちがエロ化していくという事態が発生し……。

スタッフ

監督:園子温
原作:若杉公徳
脚本:田中眞一、園子温
音楽:原田智英
主題歌:岡村靖幸「ラブメッセージ」

キャスト

鴨川嘉郎:染谷将太
平野美由紀:池田エライザ
浅見紗英:真野恵里菜
永野輝光:マキタスポーツ
榎本洋介:深水元基
矢部直也:柾木玲弥
秋山多香子:神楽坂恵
浅見教授:安田顕
ポルナレフ愛子:高橋メアリージュン
その他キャスト:柄本時生、冨手麻妙、サヘル・ローズ、今野杏南、星名美津紀、篠崎愛、清水あいり、星名利華 ほか

©若杉公徳/講談社 ©2015「映画 みんな!エスパーだよ!」製作委員会

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園子温(ソノシオン)

1961年、愛知県豊川市生まれ。1987年、「男の花道」でPFFグランプリを受賞。2008年「愛のむきだし」の第59回ベルリン国際映画祭フォーラム部門 カリガリ賞・国際批評家連盟賞受賞を筆頭に、2011年の「冷たい熱帯魚」「恋の罪」、染谷将太が主演した2012年の「ヒミズ」、2013年の「地獄でなぜ悪い」などが各国の映画賞に輝く。2015年には「新宿スワン」「ラブ&ピース」「リアル鬼ごっこ」など監督作が次々と公開された。「みんな!エスパーだよ!」や「時効警察」などで深夜ドラマの脚本・演出も手がけている。

池田エライザ(イケダエライザ)

1996年、福岡県生まれ。2009年にニコラモデル・オーディションで1万4000人の中からグランプリを受賞、同誌の専属モデルとしてキャリアをスタートさせる。2013年6月にCanCamの専属モデルとなってからは、“自撮りのカリスマ”と呼ばれ注目を集め、自身のTwitterアカウントはフォロワー18万人を超える(2015年8月現在)。女優としては2011年の「高校デビュー」と2013年の「絶叫学級」に出演しているが、本格的な演技に挑むのは本作が初となる。

真野恵里菜(マノエリナ)

1991年、神奈川県生まれ。2009年にハロー!プロジェクトよりソロ歌手としてデビューし、2013年に同プロジェクトを卒業。女優としての出演作に、テレビドラマ「SPEC(スペック) ~警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿」や、映画では2013年の「劇場版 SPEC~結(クローズ)~」や2015年の「THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦」などがある。2015年は「新宿スワン」「ラブ&ピース」といった園子温監督作へ立て続けに参加し、「リアル鬼ごっこ」ではトリプルヒロインの1人を務めた。

スタイリスト / 宮本茉莉

ヘアメイク / 南野景子(池田エライザ)、野中真紀子(真野恵里菜)