SABUがEXILE NAOTOに求めたのは“かっこ悪さ”、「DANCING MARY ダンシング・マリー」対談&ソロインタビュー (2/2)

EXILE NAOTO ソロインタビュー

SABU監督の作品に出る側、しかも主演!?

──もともとお好きだったSABU監督の作品の世界に入れると聞いたときはいかがでしたか?

自分がずっと観ていた、憧れていたEXILE──まったく手の届かない人たちのグループに入れたみたいな感覚の、映画バージョンという感じでした(笑)。完全に観る側として楽しませてもらっていたSABU監督の作品に出る側、しかも主演!?みたいな。そういう特殊な出来事がEXILEに入ってから多々起きています。

EXILE NAOTO

EXILE NAOTO

──普段から映画はご覧になるんですね。

そうですね。どちらかと言うと海外の映画のほうが多いかも。メジャーな映画館もそうですが、渋谷のミニシアター系もよく1人で行っていました。

──演じられた藤本は普段のEXILE NAOTOさんからは全然違っていたので驚きました。オーラを全消しされて、冴えない男性に見えました。

ははは。自虐ですけど、そんなにもともとオーラないんで(笑)。普段、歩いていても気付かれないですし、ステージ上でがんばってオーラを出すようにしてるだけです。

──いやいや、そんな。

がんばらなくてもオーラは消えるので大丈夫です(笑)。藤本は何事にも本気になれなかったりすぐあきらめてしまったり、どうにもこうにもやる気が出ないとか、自ら動くことが苦手な人。でもそういう一面って誰しも持っていると思うんです。面倒くせえなあ、やる気出ねえなあみたいな感情になることはみんな経験したことがあるはずで、そこで一歩を踏み出すとか、自分の中で何かが変わる瞬間を描いた映画だと思いました。だから藤本の気持ちと自分の経験を照らし合わせていくことが役作りだったと思います。

──では共感できるところは多かったですか?

めちゃくちゃありました。

「DANCING MARY ダンシング・マリー」

「DANCING MARY ダンシング・マリー」

気持ちだけが先走って体が追い付いていない感じを表現

──SABU監督の作品はクライマックスでダメ主人公が激走するとか爆発することが多いですが、藤本も感情を爆発させますね。

SABU監督はあまり細かく言わず、重要なポイントだけはポンッと言って、あとは委ねてくれるスタイルだったんですが、あのシーンは細かくこだわられていて、ここではこういうことをやりたい、見せたいということを明確に伝えてもらいました。とにかくかっこ悪くというか、キレたことがない人間がキレた瞬間、自分にびっくりしちゃって制御できていない感じってあるじゃないですか。喧嘩をしたことがないからパンチの仕方もわからない。気持ちだけが先走って体が追い付いていない感じを表現しました。

──確かにやたら動き回って自分でもコントールできないような感じでしたね。

藤本にとってあんなに感情を出すのは人生で初めてだったと思うので、そういう人間をどう表現するか考えました。普段はパフォーマーとして自分の体がどう動いたらかっこよく見えるかをひたすら意識していますが、今回はその真逆。この形だったらかっこ悪いだろうとか、体幹のすべてを無にして全部の動きがチグハグになるようにしました。

──SABU監督はNAOTOさんの身体能力がすごかったとおっしゃっていました。

僕、「ニンゲン観察バラエティ『モニタリング』」という番組に出演していて。アスリートの方が最初は下手なふりをして、突然うまくなる設定のVTRを観ると、皆さん下手に見せるのはうまいんです。だから僕も下手にすること自体はそんなに難しくなくスッとできた感じはありますね。

──そのシーンの撮影はいかがでしたか?

気持ちよかったですねえ(笑)。なかなかあんなに暴れることはないんで。違う作品でのアクションシーンはかっこよくとか美しくとかいろいろな表現でやりましたが、あそこまでがむしゃらに自分の体をコントロールできてない人物をやったのは初めてだったので、新しい挑戦でしたし楽しかったです。

メンバーは、自身と役が共鳴した演技を見せてくれる

──今作が長編映画初主演でしたね。

座長として作品を引っ張っていく責任感がのっかるような感覚は初めてでした。でも映画で主演させていただくことは夢の1つだったので、毎日毎日現場でその夢が叶っている瞬間を噛み締めていました。もっと経験を重ねたら、主演としてのプレッシャーを感じる時期が来るのかもしれないですけど、初めてすぎて、そこの境地に到達するよりもうれしい!っていう気持ちのほうが強かったです(笑)。

「DANCING MARY ダンシング・マリー」

「DANCING MARY ダンシング・マリー」

──SABU監督はNAOTOさんの演技が日々よくなっていったとおっしゃっていましたが、ご自身ではそういうステップアップを現場で感じていらっしゃいましたか?

ええー! それはうれしいです。日々成長できたかは自分ではわからないんですけど、ただ間違いなく、現場に長くいればいるほど、藤本を“演じている”というよりも藤本としてそこに自然と“いる”という感覚が強くなってきました。撮影中、いったん東京に帰ってほかの仕事をしたときもあったんですが、すごく恵まれた状況の中で撮影が行われたので、切り替えが大変だったということもなく映画に集中できていました。北九州での滞在中、役者チームや制作スタッフの方とも交流を深めて、すごくいいチーム感でしたね。

──ご自身の中に役者スイッチとEXILEスイッチはありますか?

それはあると思います。パフォーマンスではすべてが発散。自分の中のものを──100持っているものをそのまま100、全部バーッと外に出していい作業で、いたってシンプル。自分の中の100をどれだけ濃いものにしておくかという準備をすればいいと思います。けど役者さんはこのシーンだったら100出したほうがいいし、このシーンだったら50にしたほうがいいとか、その使い分けがもっと繊細だと思います。

──三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEの中には、岩田剛典さんなど、ほかにも役者をされるメンバーがいらっしゃいます。演技について話したりしますか?

ほぼほぼ皆無ですね(笑)。あえてしないとかでもないんですけどね。でもメンバーの演技を見て、ここがすごいとか、これは俺にはできないと思うことは全員にあります。演じる人によってキャラクターの作り方って100万通りあると思うんですけど、みんなそれぞれの人間性やそれまで生きてきた人生が反映されたキャラクターになっていると感じるんです。自身と役が共鳴した演技を見せてくれるというか。メンバーとはもう10年くらい一緒にいるので、だいたい理解していますから。メンバーの映画はちゃんと観ますよ。岩ちゃんの作品は映画館にも行ったし、感想も言います。この作品もメンバーに観てほしいですね。

──最後にNAOTOさんが本作で伝えたいことを教えてください。

劇中に「人には1人ひとり、生まれた時点でお役目がある」というセリフがあります。今はSNSが普及してみんな自分と他人を比べる機会が圧倒的に多くなっていて、あの人はすごく充実してそうとか、自分は他人に比べたら大したことないとか不幸なんじゃないかとか思うことが増えちゃってるなと感じるんです。でも本当に大事なのは自分の役目を見つけてそれをいかにまっとうできるかだと思います。あの言葉はいろんな捉え方ができるけれど、自分はそう捉えました。藤本もこれまでなあなあで生きてきて、自分には別に役目なんてないと思っていたけど、あの言葉が響いたことで自分の人生にも役目があると悟って、必然的にあの状況に陥るし、だからこそ少しだけ変われたんじゃないかと思います。今だからこそそういうメッセージを皆さんに受け取ってもらえたらいいですね。

左からEXILE NAOTO、SABU。

左からEXILE NAOTO、SABU。

プロフィール

SABU(サブ)

1964年11月18日生まれ、和歌山県出身。1986年の森田芳光監督作「そろばんずく」で俳優デビュー。役者として活動する一方、1996年に初監督作「弾丸ランナー」を公開した。以降「ポストマン・ブルース」「アンラッキー・モンキー」などを手がけ、「MONDAY」で第50回ベルリン国際映画祭国際批評家連盟賞に輝く。そのほか監督作に「うさぎドロップ」「天の茶助」「砕け散るところを見せてあげる」など。ショートフィルムプロジェクト「CINEMA FIGHTERS project」の第4弾「昨日より赤く明日より青く」にも参加しており、6作品のうち「BLUE BIRD」で監督を務めた。同作は11月26日より全国公開。

EXILE NAOTO(エグザイルナオト)

1983年8月30日生まれ、埼玉県出身。2007年、二代目 J Soul Brothersに加入。2009年にEXILEにメンバー入りし、2010年からは三代目 J SOUL BROTHERSのリーダーを小林直己とともに兼任している。また俳優としても活動し、ドラマ「ナイトヒーロー NAOTO」「ブスの瞳に恋してる2019~The Voice~」には主演として参加した。ファッションブランドSTUDIO SEVENのクリエイティブディレクターを務めるほか、TBSテレビ系「ニンゲン観察バラエティ『モニタリング』」にレギュラー出演中と活躍の場を広げている。