映画「キャッツ」葵わかな|感情を探るアフレコは“探偵の推理”みたい

役者の心情をみんなで推理

──なるほど。監督が現場にいないので、フランチェスカさんの歌が役作りのうえでも重要になるわけですね。だから歌を手がかりにして、ヴィクトリアの気持ちを想像していく。

映画「キャッツ」ワールドプレミアで対面したフランチェスカ・ヘイワード(左)と葵わかな(右)。

そうなんです、みんなで探偵みたいに推理していく。「ここはちょっと声が震えているけど泣いてるんじゃない? それってうれし涙なんだろうか、悲しいんだろうか?」とか。それで、それぞれの気持ちで歌ってみて、聴き比べてみたりしたんです。

──大変な作業ですね。

だからワールドプレミアでフランチェスカさんにお会いできたときは感動しました。ずっと追っかけていた人に会えた!と思って(笑)。

──「こういう気持ちで正解でしたか?」って確認したくなりますね。

聞きたいです! 歌を録っているときに、本人に聞けたら一番早いのになって思ってましたから。でも、お会いしたときは時間があまりなくて。日本が好きで何度も来られているということだったので、いつか猫カフェに一緒に行きましょう!ってお誘いしました(笑)。

映像に合わせてジャンプしながら収録

──楽しそうですね(笑)。そういえば吹替のアフレコでは、撮影で役者がやっていたように、頭にマイクを付けて歌われていたとか。気になりませんでした?

葵わかな

軽いから全然気にならなかったです。普通、声を録るときはマイクの前にずっといなきゃいけないのが、マイクのほうが自分に近付いてくれる。どんなふうに動いても絶対音が録れてるっていうのは心強かったです。ヴィクトリアが飛んだり跳ねたりして歌っているところがあるんですけど、そういうシーンは自分も体を動かしたほうが、声が震えたり切れたりしていい感じになるんです。だから、映像に合わせて一緒にジャンプしたりしながら歌っていました。ただ、収録のときは映像が完成していなくて。CGを付ける前の状態で、役者さんが同じようにマイクを頭に付けて歌っている映像だったんです。完成したらどんな映像になるんだろう、と思っていました。

──イメージを膨らませながらの作業だったんですね。その後、オリジナルの完成版はご覧になりました?

観ました。初めて観るような気持ちで観られたんですけど、すごく素敵でした。ちゃんと映画版のストーリーがあったし、ヴィクトリアが成長していく様子を観られたのがうれしかったです。あと、歌と踊りのシーンが次々に変化しながら続いていくのにワクワクさせられて、子供が観ても面白いだろうなって思いました。CGもすごかったです。

──印象に残ったシーンはありますか?

ラム・タム・タガーが歌うシーンです。かっこいいんですよー。あと、スキンブルシャンクスのタップダンスがすごくうまくて。ダンスをするとき、周りの猫がスキンブルシャンクスの足を目で追っているのがすごくかわいかったです(笑)。

映画「キャッツ」より、スティーヴン・マックレー演じるスキンブルシャンクス。

──猫は動くものから目が離せないから(笑)。いろんな猫が出てくるので猫好きにはたまらない作品ですね。

観ていて、あんな猫がいる! こんな猫もいる!って楽しかったです。「捨てられた猫たちにも、ああいう幸せな世界があるかもしれない」と思って安心する人もいるだろうし、「猫の社会も共存していくうえで、いろんな関係があって大変だな」って哲学的なことを考える人もいるだろうし。観る人それぞれが自分の視線で楽しめる作品ですよね。

「キャッツ」の猫と暮らすとしたら……

──葵さんが一緒に暮らすとしたら、どの猫と気が合いそうですか?

映画「キャッツ」より、ミストフェリーズ。

うーん。マジック猫のミストフェリーズかな。一緒にいたら楽しそうだし、懐いてくれそう。マンカストラップはリーダー猫だから、全然懐いてくれなくて“孤高の俺”みたいな感じになりそうですよね。バストファージョーンズはすごい食費がかかりそうだし(笑)。

──食費が心配(笑)。昨年、葵さんは舞台「ロミオ&ジュリエット」でミュージカルに初挑戦されて、このたび映画「キャッツ」に参加。新作ミュージカル「アナスタシア」への出演も控えています。ミュージカルが続きますが、葵さんにとってミュージカルの魅力はどんなところでしょう。

音楽は万人共通というか、みんなが楽しむことができるし、気持ちを盛り上げてくれる。音楽があるだけで、なんでもないシーンで涙が出たり、テンションが上がったりするんです。だから、音楽って人間には必要なものなんだと思います。その音楽がお芝居と組み合わさることが、すごく刺激的で楽しいです。ミュージカルを通じて学んだことは、今後いろんなことにつながっていくと思っています。

葵わかな