映画ナタリー Power Push - 「ぼくのおじさん」

白鳥久美子(たんぽぽ)/ 山下敦弘インタビュー ダメダメだけど癒やしてくれる、“おじさん”の不思議な魅力

白鳥久美子(たんぽぽ)インタビュー

白鳥久美子(たんぽぽ)

寅さんになりたかった

──普段から映画はご覧になりますか?

いやいやそんな……いわゆる映画オタクの皆さんほどは観れてないです。

──ブログを拝見する限り、休日のたびに美術館や映画館に足を運ばれていますよね。

白鳥久美子

あらあらすみません! 私なんかのブログに時間を割いていただいて……。話題作は観に行くので、最近は「シン・ゴジラ」を観ました。最後は意味深な感じだったので、きっと「シン・ゴジラ2」もあるんだろうなって。もう庵野秀明監督は「エヴァンゲリオン」作らなくていいんじゃないかな?ってくらい面白かったです! エヴァは作っててつらいだろ!って個人的には思いますし。

──特にお好きな映画はありますか?

ジブリは好きです。一番好きなのを選ぶとしたら……うーん……「風の谷のナウシカ」ですかね。マンガ版も好きですし。強くて優しくて猛々しい感じがカッコよくて、昔はナウシカに憧れてました。あとは映画だと……「男はつらいよ」が好きです。リピートして何回も観てるのは寅さんくらいかもしれない。

──寅さんをリピートですか!

はい。初期のほうが好きなんですよね。最初の5作くらいを延々と観てます。

──たしか白鳥さんは大学の頃、教授に就職をどうするか聞かれて「寅さんになりたい」とおっしゃったとか。

「ぼくのおじさん」より。

そうなんですよ(笑)。演劇学科だったので、それを聞いた教授は「渥美清さんみたいな俳優になりたいのか?」って言ってきたんですけど、私は「違くて、ああいうふうに旅をしながら稼げる仕事ないかなあって」って。そしたら「それをやるなら学生時代だよね」って返されて……。「ああー! やっぱ教授ってすごいなー! なんで私、学生時代にやらなかったんだろう!」って目からうろこな感じでしたね(笑)。子供の頃はナウシカになりてーって言ってたのに、大人になったら夢が寅さんになっちゃった(笑)。

──この「ぼくのおじさん」に松田龍平さんが出演すると発表されたときに、「松田龍平が21世紀版寅さんに!」とニュースになったんですよ。

ああ、ほっとけなくて、情けなくて、ちょっと面白い。そう言われれば確かに寅さんだあ。

──白鳥さんは、このおじさんのような生き方に憧れていたということですかね?

そうそう、こういう生き方すごく好きです。なんにも気にしてないじゃないですか。周りの評判とか、社会性とか(笑)。屁理屈だけでその場を切り抜けたり、哲学者を自称して我が道をひた走ってたりする感じ。ただ、雪男くんくらい歳の差がある関係性だったらいいけど、タメくらいだったらすげえムカつくんだろうなあ(笑)。

松田龍平さんが、ちゃんとおじさんでした

──映画全体のご感想としては、いかがでした?

最近歳のせいで、映画を観るのにも意味を理解しなきゃとか、探らなきゃとか考えて疲れるようになってきちゃって。でも「ぼくのおじさん」は誰も傷付けないし、クスクス笑ってたらあっという間に観れちゃいました。あと、こういうおじさんいたよなあってちょっとノスタルジックな気持ちになりましたね。

白鳥久美子

──実際に、親族にこういう人がいたということですか?

そうです。お母さんの弟なんですけど、家もわりかし近くに住んでいたので、ちっちゃい頃よく遊んでたんですよ。お父さんとかお母さんって自分と距離が近いから冷静に見れなかったりするけど、おじさんのことはすげえ観察してたなと思って。なんでピクニックに革靴履いてくるの?みたいな(笑)。なんでそこで売り子のお姉さんにカッコつけたんだろう?とか、いろいろ見てたんですよね。この映画で松田さんがやってるみたいに、子供を利用してカッコつける感じとか、あったわー!って(笑)。今考えればそういうおじさんが好きだったんですけどね。みんな、親戚に1人は変なおじさんいるんじゃないかなあ?

「ぼくのおじさん」より。

──松田さんがおじさん役をやるっていうのも斬新なのかなと。ご自身でもイベントで「とうとうおじさん役が来たか」って感慨深げにおっしゃってたんですけど(参照:松田龍平、「ぼくのおじさん」舞台挨拶で「とうとうおじさん役が来たか」)。

確かにそうですね! おじさん役やってないですよね。子供と関わってる画が見えなかったですし。「御法度」のときから観てるので、そう考えるとびっくりです。当時は松田優作の息子! 美少年!って感じでしたけど、今回はちゃんとおじさんでしたね。

──ちゃんとおじさん(笑)。

褒めてるのかわからないか(笑)。ちゃんとおじさんでした。

「ぼくのおじさん」

映画『ぼくのおじさん』

ストーリー

「自分の周りにいる大人について」をテーマに、作文の宿題を出された小学4年生の雪男。そこで、居候している父親の弟、“おじさん”を題材にすることに。そんなある日、おじさんにお見合いの話が舞い込む。気乗りしないおじさんだったが、そこに現れたハワイ生まれの日系4世で絶世の美女・エリーに一目惚れ。しかしエリーは、亡き祖母のコーヒー農園を継ぐため、ハワイへ帰国してしまう。彼女と再会するためになんとかしてハワイへ行こうと、おじさんは策を練り始める。

スタッフ / キャスト

監督:山下敦弘
原作:北杜夫「ぼくのおじさん」
脚本:春山ユキオ
出演:松田龍平、真木よう子、大西利空、戸次重幸、寺島しのぶ、宮藤官九郎、キムラ緑子、銀粉蝶、戸田恵梨香

白鳥久美子(シラトリクミコ)

1981年12月11日生まれ、福島県出身。川村エミコとともにお笑いコンビ・たんぽぽとして活動中。日本大学芸術学部演劇学科を卒業後、舞台で役者として活動し、26歳でお笑い芸人に転向する。2010年にオーディションを勝ち抜き、バラエティ番組「めちゃ×2イケてるッ!」のメンバーに。2012年には、初のエッセイ「処女芸人」を出版した。女優として、「サビ男サビ女」「男子高校生の日常」などに出演。現在は、ドラマ「メディカルチーム レディ・ダ・ヴィンチの診断」にレギュラー出演中。