映画ナタリー Power Push - 「ぼくのおじさん」
白鳥久美子(たんぽぽ)/ 山下敦弘インタビュー ダメダメだけど癒やしてくれる、“おじさん”の不思議な魅力
おじさんは将来、雪男に食わせてもらうんじゃないですかねえ
──ストーリーの中では、おじさんと戸次重幸さん演じる“青木さん”が恋敵という関係性でした。もし白鳥さんが、真木よう子さん扮するマドンナ・エリーの立場になったとしたら、どっち派ですか?
絶対に青木さんじゃないですか。
──即答ですか!
おじさんは本当に、“叔父さん”でいる距離感が一番ちょうどいいですよね。結婚相手とか恋人になったらめっちゃ面倒くさいですよ! 大学の非常勤講師とは言えほとんど働いてないし、兄の家に居候して……って、ほぼヒモですからね(笑)。
──消去法で青木さんですか?
いや、俄然青木さんじゃないですか? 20歳くらいの若い頃だったらおじさんに行くと思うんですけど。もうこの歳になったら行かないよねえ。面白い人だから、友達とか、たまに飲んだりするのには全然いいんですけど。頼れる場所が1個もないですからね。
──老舗和菓子店の若社長である青木さんは、エリーを口説くのにもお金に物を言わせようというところがありますけど。そこは気にならないですか?
いや、気にならないですね(キッパリ)。ハワイの農園を守るっていう夢があるエリーにとって、金銭的だろうとなんだろうと手助けしてくれるパートナーはでかいですよ。きれいごと言って、例えおじさんが農園の仕事を手伝ったって、そんな1人の労働力でどうにかなるもんじゃないから(笑)。おじさんの哀愁もいいんですけどね。かわいかったなあ、おじさん。こういう大人、いいよなあ。家族に食べさせてもらって。
──この人、将来どうするんですかね。
雪男に食わせてもらうんじゃないですかねえ? たぶんそうだと思うなあ。雪男頭よさそうだし、大学に行ったら、おじさんはそっちの部屋に上がり込んで……。おじさんにもう1回会いたい! またやらないのかなあ? 続編できそうですよね?
──おじさんの珍道中を追いかけていけば、ストーリーはできそうですよね。
ハワイから帰ったあと、どうなるんだろうって気になりますもん。それこそ寅さんみたいに、どんどん続いて新しいマドンナを見つけていってほしい。シリーズ化したらずっと続けられますよ!
自分よりも駄目な人を見つけたい方に、ぜひ観てほしい
──この映画を観た方の感想として、女性からは特に「癒やされた」っていう声が多かったんです。毎日お忙しく働かれている白鳥さんから観て、いかがでしたか?
私はこれを観て、がんばらなくていいやって思えました。おじさんみたいに、これだけむちゃくちゃな屁理屈を並べて、なんか面白くて、それなりに生きていける方法もあるんだなって、いい意味で気が抜ける映画でした。「気い張るの、やめよっ!」みたいな。普段肩に力入ってるなって人は、これを観ておじさんの駄目っぷりに癒やされたらいいと思います。こんなやつでも大丈夫だよっていう。
──最近仕事できつかったことはありますか?
なんだろう。自分の中でいつも100点が出せないなって……。今日もできなかった、完璧じゃなかったなみたいな日が多いから。それがなんの仕事かって言われると、全部なんですけど。
──真面目ですねえ……。
そうですかね? 一般のOLさんとかでも「今日100点だったな」みたいな日ってあるのかなあ?
──今日はがんばったから自分へのご褒美を買おう、みたいなことはあると思いますけどね。
へえー! 私は全然ないなあ。あそこがうまくできなかったなってことばっかり考えちゃう。芸人なので、ウケたかウケなかったかっていう結果がわかりやすいせいもあるかもしれないですけどね。
──「今日はウケたな」っていい気持ちで帰ることもないんですか?
ないなあ……。あそこの返し間違えたなとか、いちいち考えちゃいますね。60点でいいほうだ……みたいな。
──そうやってネガティブに考えてしまうような人にはぜひ「ぼくのおじさん」を観てもらいたいですね。
そうですね! この人、毎日うまくいってないから(笑)。でも気にせず、屁理屈ですべて乗り越えてますしね。
──本当ですよね。おじさんは毎日100点だと思って生きてますからね。
思ってますよねえ。自己採点基準が甘いんでしょうね(笑)。
──では最後に、これから「ぼくのおじさん」を観る方にメッセージをお願いします。
いつの間にかサササーって入っていけて、心がザワザワしない、ずっとクスクス笑って観ていられる映画です。しんどい映画を観たくない人、ガハハじゃなくていい、クススの笑いが欲しいという人に観ていただきたい。あと、自分よりも駄目な人を見つけたいと思っている方はぜひ! それで癒やされてほしいです(笑)。
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- 「ぼくのおじさん」
ストーリー
「自分の周りにいる大人について」をテーマに、作文の宿題を出された小学4年生の雪男。そこで、居候している父親の弟、“おじさん”を題材にすることに。そんなある日、おじさんにお見合いの話が舞い込む。気乗りしないおじさんだったが、そこに現れたハワイ生まれの日系4世で絶世の美女・エリーに一目惚れ。しかしエリーは、亡き祖母のコーヒー農園を継ぐため、ハワイへ帰国してしまう。彼女と再会するためになんとかしてハワイへ行こうと、おじさんは策を練り始める。
スタッフ / キャスト
監督:山下敦弘
原作:北杜夫「ぼくのおじさん」
脚本:春山ユキオ
出演:松田龍平、真木よう子、大西利空、戸次重幸、寺島しのぶ、宮藤官九郎、キムラ緑子、銀粉蝶、戸田恵梨香
- 映画「ぼくのおじさん」公式サイト
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- 「ぼくのおじさん」作品情報
©1972 北杜夫/新潮社 ©2016「ぼくのおじさん」製作委員会
白鳥久美子(シラトリクミコ)
1981年12月11日生まれ、福島県出身。川村エミコとともにお笑いコンビ・たんぽぽとして活動中。日本大学芸術学部演劇学科を卒業後、舞台で役者として活動し、26歳でお笑い芸人に転向する。2010年にオーディションを勝ち抜き、バラエティ番組「めちゃ×2イケてるッ!」のメンバーに。2012年には、初のエッセイ「処女芸人」を出版した。女優として、「サビ男サビ女」「男子高校生の日常」などに出演。現在は、ドラマ「メディカルチーム レディ・ダ・ヴィンチの診断」にレギュラー出演中。