「ブルーサーマル」をモグライダーが鑑賞 人生を楽しめるきっかけになる青春アニメ (2/2)

子供の頃は誰もが空を飛びたかったですよね(芝)

──「ブルーサーマル」はグライダーを扱うアニメということで、やはり空を飛んでいるシーンが見どころかと思うんですが、そのあたりはいかがでしたか。

 2、3年前に1回、カミさんと2人でパラグライダーの半日体験をやったんですよ。軽く浮き上がるぐらいのとこまでしかやってないんですけど、それでも「こんなに気持ちいいもんか!」と。お金と時間さえあれば趣味にしたいと思うぐらいでした。気流を見つけさえすればどこまでも行けるらしくて、上級者は茨城から仙台まで行ってたから、「こんなの魔法じゃないか!」って(笑)。

──その体験を踏まえて、この映画の空のシーンはどうでした?

 上昇気流を見つけて進んでいくっていうのをそのときに習いましたし、映画を観て「この感じ!」と思ってめちゃめちゃ気持ちよかったです。子供の頃は誰もが空を飛びたい気持ちってありましたよね。

ともしげ あったねえ。

 それが大人になって、現実的に考えるとなくなっていくんですけど、それをあきらめなかった人はこんなに気持ちいい体験ができるんだなと思いましたね。あの驚きと感動を食らったら、のめり込んでいくのはわかりますよ。

──では映画を観て「グライダーに乗ってみたいな」という気持ちはありますか?

 思いましたね。でも、ともしげは苦手だもんな。

ともしげ 高所恐怖症なので。でも、映像できれいな景色を観る分にはいいなと思いました。もちろん、物語的に「危ない!」っていうシーンもあるんですけど、そういうリスクがあるからこそ、すごい景色が見られるんでしょうね。

 空から見た街が映ったとき、実写みたいですごく映像がきれいだったもんね。

「ブルーサーマル」

「ブルーサーマル」

ともしげ タイトルの「ブルーサーマル」っていうのは、捕まえたら幸せになれる上昇気流のことなんですよね? 幸せを求めてるっていうのがいいと思いました。僕たちもブルーサーマルを捕まえて、羽ばたいていきたいですよね。

 え? なんですか?(笑)

──急にまとめっぽいコメントをありがとうございます。

ともしげ 僕たちも上昇していきたいなって。

 そりゃあもちろんですよ。我々で言うところの「M-1グランプリ」っていうのがね、ここ最近ではそうだったのかもしれないですけど。

──お二人は今、芸人としては上昇気流に乗っていると思うんですけど、現状についてはどんな気分でしょうか。

 いやー、フワフワしてますね(笑)。

ともしげ まさに、風に乗ってる感じはありますね。自分たちで歩いているというよりは、「M-1グランプリ」っていう強い風があって、それに押し出されてるだけみたいな。「うわ、飛んでるけど大丈夫かな」って。自分で操縦できてるのかどうか……そこを芝くんがうまいことやってくれてるんだと思うんですけど。

 自分は、風にうわーっと流されてる最中ではあるんですけど、「ブルーサーマル」に絡めて言うなら「ドライバー落っことしてないかな」みたいな、細かいことをマジでちゃんと確認していかないと、この先よくないことが起きるんだろうなってことはめっちゃ思いますね。

──今は特に、ちょっとした発言きっかけで仕事を失うっていうこともありますし。

芝大輔

芝大輔

ともしげ

ともしげ

 時代もそうだし、俺らなんて年齢もいってるし。これが10代、20代の、つるたまちゃんぐらいの子だったら若さとか楽しさだけで、そのまま飛べるとこまで飛んでいっちゃうんだろうけど、そんな歳ではないなって(笑)。高く上がれば上がるほどリスクはありますしね。

ともしげ でも、この先どうなるかわからないからこそ楽しみ、っていうのはあります。

──先ほどともしげさんが「芝くんがうまくやってくれてるんだと思う」とおっしゃってましたけど、芝さんは「ともしげをうまく操縦しないと」みたいな感覚ってあるんでしょうか。

 操縦というか、僕がこいつを右に曲げようと思って曲げてるわけじゃなくて、勝手に右に曲がったからそこに合わせていくだけですよ。備えはするけど、起きることは起きるし、付き合っていかなきゃいけないし、自然災害みたいな感じですよね(笑)。航空機に乗る人だって、風を自分で起こしてるわけでもないじゃないですか。そこに乗るだけという感覚は、もしかしたらグライダーと同じかもしれないです。

僕らって、感覚がまだ大学生みたいな感じなんです(ともしげ)

──「ブルーサーマル」は大学生の青春を描いたアニメですが、お二人は部活以外で「あのときが青春だったな」と思うことってありますか?

 自分は学生時代に「部活を思いっきりやった」っていう自覚もないし、それ以外でも何かに打ち込んだ期間はなかったので、やっぱり芸人をやってる今じゃないですかね。

ともしげ 確かに、初めての大会とかに出ると、何かのライバルキャラみたいな、最初は「やなやつだな」「こいつムカつく顔してるな」って思う芸人もいるんですよ。だけどライブが終わったあとにそいつと話すとめっちゃいいやつで、すげえ仲良くなるんですよ。

左から芝大輔、ともしげ。

左から芝大輔、ともしげ。

──それは青春っぽいですね。

 そうですね。でも「しゃべると全員いい人」っていうのは芸人になってから思うようになりました。あとは信頼感というのかな、「この人がいるなら思いっきりやってもどうにかなる」みたいなのも。

──部活のときはそういう感覚はわからなかった?

 はい。そこまで本気になってなかったからだと思います。

ともしげ 僕も今が一番青春だと思います。仲良しの友達もいるし、ライバルもいて。僕らって、感覚がまだ大学生みたいな感じなんです。20代から脳みそが固まっちゃって。大人になりきれてないので、いろんな人に迷惑を掛けっぱなしではあるんですけど、楽しいですね。

──楽しくなったのは、M-1決勝出場後、メディア出演が増えてからというのが大きいですか? それとも、それ以前からずっと楽しいですか?

 昔から、お金がない頃から楽しかったです。

ともしげ 意外に楽しいですよ。「バイトってつらいでしょ」みたいに思われるんですけど。

 もちろん好きなことだけでお金稼ぎたいっていう思いはずっとありますけど。お金を超えてくるものが優先順位としてあるから辞めてないんですよ。

「ブルーサーマル」

「ブルーサーマル」

──最後に、この作品をどういった人に観てもらいたいですか?

ともしげ 僕はグライダーというものを知らなかったですけど、前知識がなくても楽しめたので、誰が観てもわかりやすい作品だと思います。スポーツものでは珍しく、男女が両方いる部活なのもいいと思いましたね。男の人でも女の人でもできる。「ちはやふる」みたいな感じ。

 「自分は何も才能ないな」とか「何もやりたいことないな」っていう若い人は多いと思うんですけど、そういう人に観てもらいたいですね。つるたまちゃんだって最初は「グライダーに乗ろう」とはまったく思ってなかったけど、部活に入ったことで楽しいことやドラマチックなことがいろいろ起きてたので。

──やりたいことがなくても、何かを始めてみたら楽しいかもしれないですよね。映画がそのきっかけになるかもと。

ともしげ もしかしたら「航空部ある学校に行こうかな」っていうモチベーションになるかもしれないし。

 「つまんねーな」って思って生きてる人も、何かを始めたら何かが起きるんじゃないですか。人生が楽しみと思えるきっかけになるんじゃないかなって思いますね。

左から芝大輔、ともしげ。

左から芝大輔、ともしげ。

プロフィール

モグライダー

芝大輔(シバダイスケ)
1983年7月25日生まれ、愛媛県出身。

ともしげ
1982年5月31日生まれ、埼玉県出身。

それぞれ別コンビでの活動を経て、2009年にコンビを結成。2014年には「THE MANZAI」認定漫才師となる。2021年には「M-1グランプリ」の決勝に初進出。トップバッターとして歴代最高得点となる637点を記録するなどインパクトを残した。