中沢啓治によるマンガ「はだしのゲン」の誕生から現在を見つめるドキュメンタリー映画「はだしのゲンはまだ怒っている」が、11月に東京・ポレポレ東中野、広島・サロンシネマほか全国で順次公開される。
これは2024年9月にBS12 トゥエルビで放送されたテレビ番組「『はだしのゲン』の熱伝導 ~原爆漫画を伝える人々~」を映画化したもの。「はだしのゲン」では、広島に落とされた原子爆弾で被爆し家族を失った少年ゲンが、貧困や偏見に苦しみながらも力強く生き抜く姿が描かれた。同マンガは週刊少年ジャンプでの連載が始まった1973年から半世紀、25カ国で翻訳出版され世界中で親しまれている。しかし近年は「描写が過激」「間違った歴史認識を植え付ける」と、学校図書館での閲覧制限を求める声が上がったり、広島市の平和教材から削除されたりするなど大きな議論を呼んでいる。
監督を務めたのは、ドキュメンタリー番組「春想い ~初めての出稼ぎ~」「生きてます16歳 ~500gで生まれた全盲の少女~」で知られる込山正徳。これが映画初監督となる。制作は、特別番組と同じく東京サウンド・プロダクションが担う。込山を敬愛する
込山正徳 コメント
私の祖父は東京大空襲で殺され、骨も出てこなかったそうです。母親はその悲惨な出来事を、私が子どもの頃、何度も語っていました。現代は、あの戦争のことを語る方が高齢になり、戦争によって苦しんだ記憶を皮膚感覚で知る機会が、極端に減りました。辛い記憶が伝承されないことに危惧を感じています。また戦争が起こるのではと。戦争によって命を落とすのは一般人なのに、なぜ我々は戦争を止められないのでしょうか。未だに核兵器によって、他国を脅すことが普通に行われています。人類は、ヒロシマ、ナガサキから何を学んだのでしょうか。「はだしのゲン」から学ぶことは、たくさんあります。この映画から感じ取っていただけたら幸いです。
高橋良美(プロデューサー)コメント
2024年に放送したテレビ番組「『はだしのゲン』の熱伝導 ~原爆漫画を伝える人々」が、より力強い内容になり、映画となりました。BS12が自ら映画を作ることはこれが初めてです。この作品のテーマは、「怒り」。「なぜこんな目に合わなければいけないのか」というゲンの怒り、その怒りを今に伝える人々の熱を感じてほしい、その思いで映画化までたどり着きました。ゲンの怒りは、2025年のこの今にこそ伝えるべきものだと、思いはますます強くなっています。
大島新(共同プロデューサー)コメント
込山正徳監督とはもう30年の付き合いになる。ずっと尊敬する先輩ディレクターだったが、目標にするのは早くから諦めた。なぜなら「込山スタイル」は、とても真似ができないから。込山さんは、人懐こい笑顔と優しい人柄で、難しい被写体とも自然体で向き合う。差別に苦しむ人たちや難病患者、百姓家族や悪ガキたちにカメラを向け、数々の傑作ドキュメンタリーを作ってきた。そんな込山さんが初めて映画に挑んだのが「はだしのゲン」だ。ところが今回の込山さんは、いつもとちょっと違う。果てしない優しさに、静かな「怒り」が加わった。映画は叫んでいる。「日本人よ、人類よ、これでいいのだろうか」と。
會川 昇 @nishi_ogi
先日の新プロジェクトXでも扱われていたがネタ元はこちら。映画化は素晴らしい!
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