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本作は飛行機事故で島に不時着した少年が、黒い影に追われる物語。ラトビア出身のジルバロディスはこれまで手描きアニメーション、3Dアニメーション、実写など7本の短編を制作してきた。「夏の間はアイスランドで過ごしてきたので、それが映画にも反映されていると思います」と自然描写に富んだ自身の作品の原点に言及する。
本作を4章構成にした理由を「章ごとに違った特徴を追い求めていきたかった」と述べたジルバロディス。「第1章はミステリアスに、第2章はアクションを多くし、第3章は夢見るような雰囲気で、第4章は結論に導く存在として描きました。ただこの長編プロジェクトを最後までやれるのかがわからなかったので、セーフティネットとして、独立したショートフィルムとしても楽しめるようにしたんです」と明かした。
またジルバロディスは制作においては“シンプルさ”が重要だと語る。完全な個人制作で3DCGアニメーションを作るためにデザイン上で大きな制限をしたと言い、「群衆を使うのはやめて、ロングテイクで撮影。岩などの風景は繰り返しのパターンを用いて、音楽はシンプルなフレーズをリピートしました」と説明する。「制限を作らないと永遠の可能性があるので迷ってしまいますよね。劇中に登場した数多くの猫も、それぞれさまざまなデザインや個性のキャラを考えたのですが、結局1つのデザインに決めて何匹も登場させました。そのほうがシンプルですし、効果は同じなんです」と述べた。
脚本を用意せずに進められた本作では、音楽が導き手の1つになった。「アニメーションが完成する前に音楽を作りました。あとから作ると時間の中に収めるのに苦労してしまうんですね。音楽のリズムが映画のテンポを作るという効果も生まれます」とジルバロディスは語る。続く観客からの質疑応答の時間には、カメラワークについて質問が。「1つのファイルに1つの風景を入れ、アングルを変えて撮影しています。アニメーション作りと撮影は基本的に同時進行でやっていて、キャラクターを見ながら背景とミックスさせました。3Dでは画がパーフェクトになりすぎることがあるので、わざとカメラを揺らしたりもしたんです。カメラマンが失敗してしまったときにできるような画を狙いました」と繊細な舞台裏を明かした。また「会話をなくしたことでカメラの表現が非常に強調されるんです」とも。
今回はビデオゲームから影響を多大に受けたと言い、「風ノ旅ビト」「INSIDE」「ワンダと巨像」の名を挙げたジルバロディス。「会話がない中でストーリーを語っているし、キャラクターが環境の中でどのように動くかを見せている」と参考にした点を述懐した。また日本のアニメでは「未来少年コナン」も好きだという。最後には次回作は小さなチームで製作することが決まっていると話し、「最初に作った短編『Aqua』をベースとした、水を怖がる猫の話です」と期待を煽ってイベントをあとにした。
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脚本がないのか。- ラトビアのアニメ作家が3DCG制作の裏側語る「わざとカメラを揺らした」(イベントレポート) - 映画ナタリー https://t.co/8jHFxK4n2U