上段から時計回りに「山河令」ビジュアル、「長歌行」ビジュアル、「バッド・キッズ 隠秘之罪」ビジュアル。

「陳情令」「長歌行」「山河令」「バッド・キッズ」話題作を次々OA | WOWOW中国ドラマラインナップ担当者が語る“作品を届ける喜びと難しさ”

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今、日本でかつてないほど熱い人気を呼んでいる中国ドラマ。一口に時代劇と言っても本格歴史劇だけではなく、ファンタジー、ブロマンス、ラブストーリーと多彩な作品を楽しむことができ、現代ドラマも人気を集めている。

今回、映画ナタリーでは日本でも大ヒットしたブロマンス時代劇「陳情令」、中国で社会現象となった「バッド・キッズ 隠秘之罪」、Priestの耽美小説「天涯客」をもとにした「山河令」、夏達による同名マンガを原作とする「長歌行」など話題作を次々と放送するWOWOWの中国ドラマラインナップ担当者・森ふみよ、作品担当・陸正妍にインタビューを実施。作品を決めるときに大切にしていること、仕事の喜びや難しさ、そして今後チャレンジしたいことをたっぷり語ってもらった。

取材・/ 金子恭未子

最終回を迎える前に権利元に交渉

──森さんは中国ドラマだけでなく、WOWOWで放送されるアジアドラマ全般を担当されていると聞きました。

森ふみよ 映画部という部署に所属しているのですが、そこでアジアドラマの放送権の調達とラインナップをまとめる仕事をしています。

──近年は以前より中国ドラマのラインナップに力を入れている印象です。

 アジアドラマというと、これまでは韓国ドラマがメインだったんです。以前は、史実にもとづいた歴史ものの中国ドラマを年に1本放送する程度で。ただクオリティが高くて面白い作品がたくさんあるので、2、3年前に中国ドラマに力を入れようという方針を決めました。きっかけとなったのは「三国志~司馬懿 軍師連盟~」と「如懿伝(にょいでん)~紫禁城に散る宿命の王妃~」です。視聴者の方の反応がよくて、とても手応えがありました。そこから少しずつ放送作品を増やしています。

──中国ドラマの情報はどのようにリサーチしているんですか?

 中国ドラマのチームには私を入れて3人メンバーがいるんですが、それぞれが日々、SNSで中国の最新情報をキャッチしたり、日本の方たちの間で人気を集めている作品をリサーチして情報を持ち寄っています。メンバーの陸は中国出身なので、中国で盛り上がっている作品があれば権利元にすぐにアプローチすることもありますね。

「バッド・キッズ 隠秘之罪」ビジュアル

「バッド・キッズ 隠秘之罪」ビジュアル

──「バッド・キッズ 隠秘之罪」がWOWOWで放送されると知ったときは、日本上陸のスピード感にさすがだなと思いました。

 「バッド・キッズ」は陸がかなり早い段階でやりたいと言っていた作品で、直接弊社で権利を獲得したんです。彼女の熱意の結果ですね。

陸正妍 中国での配信当初から作品に引き込まれて、そのクオリティに震えた記憶があります。寝ずに作品を観たぐらいで。ぜひ放送したいと思ったので、最終回を迎える前に権利元にアプローチしていました。

SNSの反響は本当に驚きました

「山河令」ビジュアル

「山河令」ビジュアル

──2021年に日本で放送された中国ドラマの中でもWOWOWでオンエアされた「山河令」は屈指の盛り上がりだったと思います。

 最初に作品を観たときは日本語字幕が付いていない状態だったんですが、映像美とテンポのよさにどんどん引き込まれました。武侠作品としても面白いですし、ミステリー要素もある。主人公2人の関係性はもちろん、そのほかの登場人物も魅力的で、作品全体のクオリティがとても高いと感じました。

 壮大な世界観を築いているものの、人物の善悪や、キャラクターの関係性などを決め付けず、あえて想像の余地を残す描き方がスタイリッシュだと思いました。捉え方によって楽しみ方もいろいろなので、考察するかいがあり、観れば観るほど「山河令」から離れられなくなりますね。

──WOWOWで放送しようと思った決め手はどこにあったんでしょうか?

 配信当初から中国国内でもすごく話題になっていましたし、それと同時に日本のSNSでも「山河令」の情報がたくさん投稿されていたんです。その中に「WOWOWで放送しないかな?」というつぶやきもあって。これはなんとしても放送させていただきたいなと、早い段階から、動き始めていました。

 主人公の周子舒と温客行が醸し出す圧倒的な相性のよさ、「知己」の魅力が、中国で配信されて早々に日本にも伝わった印象があります。

──放送開始前はもちろんですが放送開始後の反響も大きなものでした。予想されていましたか?

 リアクションをいただけることは予想していたんですが、想像以上でした。特にSNSの反響は本当に驚きました。ダイジェスト映像をSNSで投稿したんですが、すごく注目していただいて。あとは毎週の放送に寄り添う形で弊社のTwitterアカウントから作品に関する投稿をしていたんですが、毎回皆さんに喜んでいただけて本当にうれしかったですね。

──森さんはお仕事柄多くの中国ドラマに触れてきたと思いますが、「山河令」が日本で人気を得ている理由をどのように捉えていますか?

 武侠という独特な世界観、アクションシーンの魅力など作品の持つ力が一番大きいと思います。セリフに漢詩を用いていたり、余白を残すような描き方をしているので視聴者の想像力も掻き立てられますよね。魅力的な登場人物たちにどっぷりハマる方も多いと思います。弊社で放送させていただいた「陳情令」もずっと話題が途切れず、ファンを広げているので、中国のブロマンス作品の認知度が上がってきたことを感じています。

──「山河令」は今まで中国ドラマを観たことがなかった方の入り口にもなっています。

 そうですね。また、今までブロマンス作品を観たことがなかったという人にも興味を持っていただけている印象です。陸も「山河令」にどっぷりハマりまして、彼女はプロモーションにも携わっているんですが、愛情を持って毎週投稿案を考えていました。

 「山河令」は単純に話としても面白いですし、どこか奥ゆかしさのあるタッチでさまざまな感情を描くところが素敵でした。山場はちゃんとアクションと音楽で盛り上がるところが印象的で、衣装も控えめの配色ですが、ストーリーに合わせたデザインになっていて、とても見応えがありました。

──ツイートを拝見していて“中の人”のすごい熱量を感じていました。

 陸がダイジェスト映像やツイートの投稿内容も毎回熱い思いを持って考えていたので、そういった熱量を視聴者の皆さんと共有できたのはよかったと思います。

  1話1話たくさんの感情が詰まっていて、漢詩の使い方やセリフの表現も素晴らしく、思わず毎週投稿してしまいました。

──「山河令」は中国でも日本でもヒットしましたが、中には中国で話題になっても、日本ではウケない作品もあると思います。

 そこがとても難しいと感じているところです。中国では再生数が多く評価が高い作品でも、必ずしも日本の視聴者の方に楽しんでいただけるとは限らない。もちろん逆もあって、中国ではそこまで話題になっていない作品が、日本で人気を集める場合もあります。そのギャップを埋めていくのが、ラインナップを決めるときの大切なポイントですね。

──そのほか重要視していることはありますか?

 作品のキャスト情報、中国での話題性、予告編だけではわからないことも多いので、必ず本編映像をしっかり観るようにしています。最初に観るときはほとんど日本語字幕が付いていないんですが、作品全体の雰囲気はつかめますし、作品の面白さに気付くことも多いです。

──3人でラインナップを決める際、意見が食い違うことはないのでしょうか?

 3人いるのでいろんな意見は出ますね(笑)。でもだからこそバランスが取れていると思います。私と陸のほかに、20代の男性がいるんですが、WOWOWで放送している中国ドラマは年齢もバックボーンもバラバラな3人が満場一致でやりたいと思った作品がほとんどなんです。それぞれ作品の見方は違うのでこういうポイントが視聴者に受け入れられるんじゃないかなど話し合うようにしています。あとは、その作品に熱い思いを持ったメンバーの意見は尊重していますね。

──意見が割れた作品はないですか?

 意見が割れた作品は……そんなにはないですね(笑)。作品を観ながらこういうポイントが視聴者に楽しんでもらえるんじゃないかといった前向きな話が多いです。中国ドラマの放送枠は現状3枠と限られているので、ぜひ放送したいという作品をラインナップしています。

──もともと固定のファンがいる歴史劇だけではなく、WOWOWでは最近、積極的に現代ドラマも放送しています。

 どうしても中国ドラマというと時代劇のイメージが強いので、現代ドラマはこれから面白さや認知度を広めていく段階という印象はあります。ただ、今年放送した「バッド・キッズ 隠秘之罪」は視聴者の評価が本当に高くて。日本とも韓国とも違う中国のサスペンスを楽しんでいただけたと思っています。豪華キャストであったとしても、日本での認知度はまだ決して高くないので、どうやって作品に興味を持っていただくか、どう作品の面白さを伝えていくのかとても難しいですね。常に試行錯誤しています。

「上陽賦~運命の王妃~」ビジュアル

「上陽賦~運命の王妃~」ビジュアル

──一口に中国ドラマと言っても宣伝の仕方は作品によって違うと思います。

 史実をもとにした歴史劇であれば歴史好きの方に興味を持っていただきやすいですし、「上陽賦~運命の王妃~」であれば主演のチャン・ツィイーは皆さんご存知なので、彼女の作品であるということを押し出していくことになります。時代劇でもブロマンス作品と史劇ではファン層が違うので、それぞれに合わせてプロモーションの方法は考えていますね。

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現在進行形でずっとファンを獲得し続けている特別な作品

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コットン @CottonSherlock

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