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アニメ「pet」特集 山本幸治プロデューサー×TK from 凛として時雨×眩暈SIREN│とがったものを作り続けるクリエイターたちの共鳴

2020年1月より放送されるTVアニメ「pet」は、三宅乱丈の同名マンガを原作とするサイキックサスペンス。他者の脳内に潜り込み、記憶を操作することができる特殊能力を持つ少年たちの絆を描くSFヒューマンドラマだ。

アニメのオープニングを飾るのは、「PSYCHO-PASS サイコパス」や「東京喰種トーキョーグール」などの主題歌を担当してきたTK from 凛として時雨の楽曲「蝶の飛ぶ水槽」。またエンディングテーマは「からくりサーカス」の第2クールエンディングを務めた眩暈SIRENが、TKによるサウンドプロデュースのもと贈る「image _____」に決定している。

コミックナタリーでは本アニメの企画・プロデュースを手がけるツインエンジンの山本幸治プロデューサーと、TK、そして眩暈SIRENのボーカル・京寺とピアノ&ボーカル・ウルによる座談会を実施。「pet」をアニメ化しようと思った理由やそれぞれが感じた原作の魅力、楽曲制作の過程やアニメと音楽というジャンルを越えたクリエイティブのあり方についてまで、じっくりと語り合ってもらった。

取材 / 金子厚武 文・構成 / 鈴木俊介

「PSYCHO-PASS サイコパス」のタッグ、再び

──山本さんとTKさんは、アニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」で一緒にお仕事をされたのが最初ですよね。ナタリーでもそのとき、おふたりの対談取材をさせていただいて(参照:TK(凛として時雨)×山本幸治(フジテレビ「ノイタミナ」プロデューサー)対談)。

山本幸治 7年ほど前ですね。ちょうどフジテレビを辞めようかと考えていた頃で、自分の悩み相談みたいなものが7割だった気がします(笑)。

TK 確かに、あんまり作品の話をした記憶がないですね(笑)。

山本 クリエイティブと売れることのバランスとか、そんな話ばかりでした。

──今や「PSYCHO-PASS サイコパス」とTKさんの結びつきはすごく強いものになりましたし、実際に山本さんはそれから程なく独立して会社を作られて、今回こうして再びタッグを組まれるというのはなかなか胸アツですよね。

TK from 凛として時雨

TK 山本さんが会社を立ち上げられたときに、「また一緒にやりましょう」とご連絡いただいていたのですが、それから全然オファーがなくて(笑)。今回はやっと来たか、やっと思い出してくれたかと。

山本 劇伴もお願いしたいなとか、そういうのを含めてオファーしたかったんですけど、お忙しいかと思って。

──その辺りは追ってお話いただくとして、まずは山本さん、なぜ今「pet」をアニメ化しようと思われたのかを伺わせてください。

アニメ「pet」より。左からヒロキ、司。

山本 僕はもともとフジテレビの「ノイタミナ」枠を担当していたのですが、その頃から“いかにとがった企画をやるか”ということを自分のポリシーとして心がけていて。それはほかの局との差別化とか、存在感をどれだけ示せるかみたいなことで、アーティストさんとかも普段から考えていることだとは思うんですけど。そういう“トガリ”の象徴みたいな企画の1つが「PSYCHO-PASS サイコパス」で。「pet」は、そういう意味ではずっとやりたいと思っていたんですけど、話も難解ですし、「東京喰種トーキョーグール」みたいに誰が見ても「あ、これ売れるな」というタイプの絵ではないですから、なかなか企画を通すのが難しくて。

──でも企画としてはかなり前から話に挙がっていたと。

山本 そうですね。映画の「インセプション」(2010年公開)が公開されたときに、仲間内で「あれ元ネタは『pet』だよね」「パクりやがって!」なんて言っていたので(笑)。そもそも僕に「pet」を教えてくれたのは大森(貴弘)監督で、大森監督とはアニメ「海月姫」で初めて一緒にお仕事をさせていただいたんですが、その頃から「『pet』をやりたい」とおっしゃっていて。「面白いよ。たぶんできないと思うけど」と言われて、僕も「そうですね、これは通らないでしょうね」なんて答えてたんですけど、アニメのビジネスモデルがビデオを売る時代から配信──NetflixとかAmazonプライム・ビデオとかの時代に変わってきたので、今ならやれるかなと本格的に動き出して。ようやく実現しました。

──なるほど。テーマ曲をTKさんと眩暈SIRENさんにオファーしたきっかけは?

眩暈SIREN

山本 「pet」の繊細でとがった感じをどう表現するか、というときに思い浮かんだのが皆さんでした。眩暈SIRENさんから先に言わせていただくと、以前に「からくりサーカス」でご一緒させていただいたので、そのときに接点を持たせてもらったというのが大きいですね。TKさんに関しては、ソニー・ミュージックの方には最初「(バンドの)時雨さんでお願いしたい」って考えていたんです。ただ、時雨の曲は音の密度が高いというか、隙間がない感じだと思うんですよね。「pet」の世界を表現するにはけっこう静寂も要るんです。静寂というか、考える余地というか。TK from 凛として時雨のほうがそれがあるように感じられて。どちらの曲も「pet」に必要な“トガリ”がきちんとあって、すごく綺麗にハマったなと思ってます。

ウル オファーをいただいて、「pet」という名前だけ聞いたときは、「……ほのぼの系?」って思いました(笑)。

山本 (笑)。検索すると動物の映画が出てきますもんね。

ウル でも我々もこういう世界観が好きなので、ぜひ関わらせていただきたいと思いましたし、本当にうれしいです。

「pet」は展開がものすごく秀逸

山本 皆さんは普段、マンガって読むんですか?

TK 僕は……「あさりちゃん」とか「特攻の拓」とかで止まってます(笑)。お話をいただいてから初めて手に取る感じですね。「pet」もそうでした。読み始めると止まんなくなっちゃうので、読んでないというのもあるんですけど。だから何が流行ってるとかはあんまりわかんなくて。

山本 確かに、TKさんが「このマンガがすごい!」のランキング順に読んでたら嫌ですよね(笑)。

アニメ「pet」より、悟。

ウル 僕はけっこう読むほうだと思います。マンガボックスってアプリを何年も前からずっと入れていて。でもあんまり王道なものは好きじゃなくて、ラブコメとかグロいやつとか読んでますね。最近だと「モンキーピーク」とか、うんと昔だと「バトルロワイヤル」とか好きです。

京寺 自分もマンガは好きなんですけど、最近のはそんなに読んでないですね。Webマンガだったら、「ヘテロゲニア リンギスティコ」とか、「公爵令嬢の嗜み」とか……。

山本 濃いタイトルばかりで、あんまり王道なところが出なかったね。

京寺 TKさんが「特攻の拓」って、人柄的にあんまり想像がつかないです(笑)。

TK 世代なんで(笑)。あと住んでいた場所にヤンキー文化があったから。

──今回の「pet」は読まれてみていかがでしたか。

「ペット リマスターエディション」1巻

TK 正直、最初1回読んだときは全然頭に入ってこなくて。でも読み進めていくと、だんだん「これはものすごく面白いかもしれない」となってきて、どっぷり浸かるタイプのマンガなんだなと感じたんです。読解力がある人は最初からすんなり入れるのかもしれないですけど、そもそもこれアニメにできるのかなって思いましたし、できたとして、その世界観がちゃんと伝わるのかなって思って。なので、オープニングの段階で物語の深いところが感じられる、引き込める感じの楽曲にしたいと思い、特にイントロはそういう空気感を意識して作りましたね。

──「そもそもアニメ化できるのか」というのは、山本さんはどうお考えでしょう?

山本 そうだなあ……。まあハードルは高いといえば高いですよね。

TK アニメーションにすることで、基本的にはマンガの内容ってわかりやすくなると思うんですけど、わかりやすくしてしまうことが果たしていいことなのか、というのも難しい問題じゃないですか。「pet」は展開がものすごく秀逸な作品だと思うんですよね、読み進めるごとに「そういうことだったのか」と謎が解けていく。わかりやすくしてしまうとその差異が薄れてしまうというか、最初がわかりにくいからこそ後半の爆発力が生まれている気がして。そこをアニメでどうするかというのは興味がありました。

胸が締め付けられる作品だった

──眩暈SIRENのおふたりは、「pet」を読んでみての印象はどうですか。

ウル 僕、読む前にネットでどんな作品か調べる派なんですけど、紹介文に“裏の世界”とか“潰し屋”とか書いてあったので、相当悪い奴らの話だろうと思ってしまって(笑)。でも読んでみたら、すごく胸が締め付けられる作品だったんですよね。登場人物がみんな苦悩しているというか、「これでいいのかな」と悩みながら懸命に生きている。それでも大事な人と引き離されたり、結局報われなかったり。嫌な奴だと思ってた人にもせつない過去があって、だんだん感情移入しちゃったりして……(京寺を見ながら)ね?

アニメ「pet」より、桂木。

京寺 ね(笑)。私は電子書籍で買ったんですけど、作品概要に「人の脳内に潜り込み、記憶を操る能力を持つ者達」の話だって書いてあったので、能力者たちのバトルものだと思って読み始めたんですよ。SFとかファンタジーとかけっこう好きで、普段ライトノベルも読むんですが、異能者系ってその能力を使ってバトルしたり困難を乗り越えたりするイメージで。でも「pet」は、言葉にするのは難しいんですけど、能力の強さとかよりも、能力を持った人とそれを利用する人の相互関係によって生まれる悲しみとか、そういう部分に焦点を当てた作品だなと思ったんです。

──能力を題材にしつつも、描いているのは人間の本質的な部分だと。

京寺 記憶を変えただけで、人格まで変わってしまう。すごく面白いなって思うのと同時に、もしそういう能力が実際にあったら怖いなって思いました。

山本 人間って普通に生きていても、思い出を美化してしまったり、記憶を都合よく書き換えたりしていることってあるじゃないですか。反対に、嫌なことをなるべく思い出さないようにしていても、ふと思い出しちゃうことってありますよね。「pet」の“記憶を操る能力”って、設定として突飛ではあるんですけど、そういう人間がもともと持っている部分を強調しているだけというか。能力がなくてもみんな少しずつやっていることなんだから、もし能力者がいたらいとも簡単にやられるだろうなって感じがするんですよね。

京寺 強い能力を持ってる人がそうでもない人たちに利用されていたりするから、単純な力だけではない作品なんだなって。記憶操作できるなら最強なんですけどね、普通。

アニメ「pet」より。

山本 力がある人はその分感受性も高いから、他人の力に影響されやすかったりしてね。これも人間社会に置き換えると、作品作りにだけ集中したらいいものを作れるけど、安定して生産できないとか、クリエイティブ界隈のことなんかに近いのかなと思うんです。そういう、一見難解ではあるんですけど、人間の心理の複雑さと複雑さの中にある傾向みたいなものを上手に捉えていて。そこに考える余地があるし、人によって見るところが違ったりする。そのファンタジー領域が、TKさんや眩暈SIRENさんの世界観の奥行きと非常に合うと思うんです。

TK 面白いですね、聞き入っちゃいました。確かに、読んでて最初難しいなって思ったんですけど、決して難しくない設定だなっていうことにだんだん気付くんですよ。「自分たちもそうかもしれない」って思って読んでいくと、だんだんと怖くなってくる。話の内容としては、人を喰らう喰種が出る「東京喰種トーキョーグール」とかのほうがわかりやすくインパクトがあって怖いじゃないですか。「pet」はそういう話じゃないのに、ずっとこの怖い気持ちが抜けなくて……。アニメの1話に、幼少期の悟がぼーっとテレビを観てるシーンがあるんですけど、なんでもないシーンに見えて僕にはものすごく狂気を孕んで見えたり。温度感の低い描写の中にもふとシンクロしたりすると引きずり込まれるような怖さがある。