「プライムたちの夜」PR

「プライムたちの夜」宮田慶子&プロデューサー・三崎力|人工知能を前に、人間は自分の人生の何が残せるのか?

人工知能を巡る問いを軸に、老いと家族の問題に迫った「プライムたちの夜」。同時代の海外戯曲を、日本初演することにこだわった新国立劇場の企画シリーズ第5弾が、11月に登場する。ステージナタリーでは、同劇場芸術監督で本作の演出を手がける宮田慶子と、宮田と共に同シリーズの制作に携わってきた新国立劇場演劇制作の三崎力による対談を特集。シリーズに込めた思いや「プライムたちの夜」のアクチュアリティについて語ってもらった。

取材・文 / 熊井玲 撮影 / 川野結李歌

ニュースでなく肉体を通して、時代を捉える

──「世界は今…」をキーワードに、現在の海外の演劇シーンから上質な戯曲を紹介してきた新国立劇場の企画シリーズ。エリアム・クライエム作「負傷者16人-SIXTEEN WOUNDED-」(2012年上演)、ドナルド・マーグリーズ作「永遠の一瞬ーTime Stands Still」(2014年上演)、ラジヴ・ジョセフ作「バグダッド動物園のベンガルタイガー」(2015年上演)、アニー・ベイカー作「フリック」(2016年上演)に続き、5作目としてジョーダン・ハリソン作「プライムたちの夜」が登場します。まずは、この企画シリーズに込められた思いから伺えますか?

宮田慶子 海外で今やられている、一番新しい旬な作品を探して日本に紹介しようというのが最初の発想です。そのうえで、その時々に社会が抱えている問題ときちっと向き合った作品を選ぼうという意識で取り組んできました。なので、これまではどうしても紛争地域を扱った作品が多かったと思います。

──数ある新作戯曲の中から、具体的にはどのようにお選びになっているのでしょう?

左から宮田慶子、三崎力。

宮田 新国立劇場ではロンドンとニューヨーク、韓国にそれぞれ調査員がいて、彼らを通して新作のレポートが上がってきます。それらに目を通しながら「これは面白そうだな」とか、「これはどうやっても日本には入って来にくそう」など、スタッフと話をして、面白そうなものには目星を付けてシノプシス(あらすじ)や台本を取り寄せます。そして粗訳してもらったものをひたすら読むんです。実際に台本を読むと、面白い作品だけれど新国立劇場のサイズでは戯曲のよさが出ないのではないかと思われるものや、例えば移民問題のように世界の抱えている問題であっても日本ではあまりピンとこないものもある。その中で、日本のお客様にも自分たちに引き寄せて問題意識を持っていただけるような、さらに “世界ではこんなことが起こっている”ということを、ニュースを通してではなく、人間の肉体を通した人間のドラマとして観ていただけるような作品をチョイスしていきます。

──宮田さんが演出家、芸術監督として作品をお読みになる一方で、プロデューサーの三崎さんはどのような視点で作品を選ばれるのですか。

三崎力 このシリーズに関しては、題材がシリアスだったり、重いテーマを扱っている作品が多いので、制作者としてこだわるのはキャスティングですね。とっつきにくいテーマだけに皆さんがよくご存知の俳優さんとか、ちょっと面白い味の俳優さんに出ていただき、エッジの尖った作品をまろやかにしていくという感覚です。

新国立劇場 2017/2018シーズン
開場20周年記念公演 「プライムたちの夜」
新国立劇場 2017/2018シーズン 開場20周年記念公演「プライムたちの夜」
2017年11月7日(火)~26日(日)
東京都 新国立劇場 小劇場
2017年11月29日(水)
兵庫県 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
  • 作:ジョーダン・ハリソン
  • 翻訳:常田景子
  • 演出:宮田慶子
  • 出演:浅丘ルリ子、香寿たつき、佐川和正、相島一之
宮田慶子(ミヤタケイコ)
宮田慶子
1980年、劇団青年座 文芸部に入団。1983年青年座スタジオ公演「ひといきといき」の作・演出でデビュー。翻訳劇、近代古典、ストレートプレイ、ミュージカル、商業演劇、小劇場と多方面にわたる作品を手がける一方、演劇教育や日本各地での演劇振興・交流に積極的に取り組んでいる。主な受賞歴に、第29回紀伊國屋演劇賞個人賞、第5回読売演劇大賞優秀演出家賞、芸術選奨文部大臣新人賞、第43回毎日芸術賞千田是也賞、第9回読売演劇大賞最優秀演出家賞など。2010年に新国立劇場 演劇部門の芸術監督に就任、16年4月より新国立劇場演劇研修所所長。また公益社団法人日本劇団協議会常務理事、日本演出者協会副理事長も務める。
三崎力(ミサキチカラ)
新国立劇場演劇制作。京都市出身。これまで、パナソニック(現、東京)グローブ座、Bunkamuraシアターコクーン、兵庫県立芸術文化センター、さいたま芸術劇場で演劇制作に携わる。2009年4月より、現職。