ナタリー PowerPush - TOTALFAT
メジャー2作目でさらなる進化 パンクの枠を超えた名盤完成
同級生っぽいノリで「じゃあ一緒にやればいいじゃん」
──アルバムの前には、バンドにとって初のシングル「World of Glory with JOE INOUE」がリリースされました。1stシングルってだけでなく、他のアーティストとのコラボも初めてなんですよね。どういうきっかけで井上ジョーさんとコラボレーションしてみようと思ったんですか?
Shun レーベルメイトってこともあって、前作「OVER DRIVE」のときから英語詞と発音の指導をジョーくんにやってもらってたんです。アメリカ生まれアメリカ育ちだけあって、ものすごくノリのいい英語を指導してくれて、「こういう表現をしたくてこう書いたんだけどどうかな?」って言うと「でも、今のLAではこの言い方は古いッス」って(笑)。「今、一番最新型のLAでの言い回しはこっちッス」って教えてくれるんです。東京とLAを行き来していて、どっちの流行も知ってる人なんてなかなか出会えないですよ。しかも音楽に精通していて、かつTOTALFATと同じようなバックグラウンドがあって、音楽を通して見てる将来もすごく似てるし。
──2組とも年代が近いですものね。
Shun そう。で、そんな彼と一緒にスタジオで作業してるとだんだん同級生っぽいノリになってきて、「ここ、こういう歌詞だったら面白いッスよね」「あー、そうだね。で、ここにこういうビートが乗ってさ」ってやり取りをしているうちに、「じゃあ一緒にやればいいじゃん」って話になったんです。それでお互いエンジンがかかって、「World of Glory with JOE INOUE」のデモをワンコーラス分作ってみんなに聴いてもらったら「ああ、これいいね!」って。アルバムと同時期にレコーディングしたら出来が良かったからシングルにしようって話になったんです。
──その場のノリで曲ができて、曲が完成した瞬間に「これはシングル曲だ」と。
Shun そうです。カップリング曲のことも考えずに「これシングルっしょ」って(笑)。だから、先にシングルを出そうって決めてから作ったわけじゃないんですよ。
ジョーくんの歌詞は「輸入品みたいな日本語」
──日本語詞で歌うことに関して抵抗はなかったですか?
Shun TOTALFATとして日本語詞で歌ったことはなかったし、今まで守り続けていたって言ったらちょっと変ですけど多少のアレルギーもあって、この曲を作るにあたってはみんなで話し合いました。でも、ジョーくんが書いてきた歌詞をブースに入って歌ったときに、みんな「これはアリだな」って。いい意味で輸入品みたいな日本語で独特の「from LA感」もあって、それをジョーくんがグルーヴィに歌ったものを聴いたら、僕ら4人にあった免疫みたいなものが一気になくなって、このままジョーくんの歌詞でいこうってことになったんです。
Jose 1日で書いてくれたもんね。
Shun 正確に言うと3時間ぐらいなんだよね。「一緒に歌詞を書こう」って2人で部屋に入って、まず自分のデモを聴かせて。言葉遊びをテーマに、意味を伝えるというよりは歌詞のリズムを重視して「ここで面白い韻の踏み方、できる?」って訊くと「任せてください!」って答えるし(笑)。Aメロは何通りも書いた歌詞から実際に歌ってみて選んだんですけど、ホントにすごい奴だなと思いましたね。
Bunta ジョーくんの日本語の捉え方が英語的な感覚だから、ずっと英語詞でやってきた俺らの楽曲に乗せても違和感なくて。彼は音の響きを意識して歌詞を作ってるんですよ。だから、俺らも抵抗なく「ああ、いいじゃん!」って言えたのかなって気がしてます。し込める環境ができたっていうのはすごくデカイし、今回の作品に大きな影響を与えてるんじゃないかなって気がします。
日本語詞の突破口をジョーくんが開いてくれた
──もし仮に、自分たちだけで日本語詞を書いていたら、こうはうまくいかなかった?
Shun 全然違うものになっていた上に「こりゃねぇな!」ってボツってたんじゃないかな(笑)。
Bunta だから、その突破口をジョーくんが開いてくれた感じはあるよね。
Shun 今後、もしTOTALFATだけで日本語詞を書いて歌うことになったら、この曲がお手本というかひとつのルールになるかな。
Bunta こういうやり方があるっていう、ひとつのフォーマットとしてね。それがアリなんだっていうことを、彼のおかげで見つけることができた。個人的には、日本語詞を一番否定していたKubotyが、今回の日本語詞は良かったって言ってくれたのがうれしくて。やっぱりジョーくんの力がデカイなって思います。
Kuboty この曲は本当にカッコいいです。
Bunta 最後まで日本語詞はどうかなって言ってたのに、今じゃ「DJでかけるんだったら一番良いタイミングで流したい」「一番前に押し出したい」って一番言ってるのはKubotyだから(笑)。それはうれしかったですね。
CD収録曲
- Livin' for The Future
- Sky of California
- Across The Chance
- Ball and Chain
- World of Glory with JOE INOUE (DAMN HERO Ver.)
- Damage
- Highway 3
- Sweet
- Dance On, My Friends
- Longest Dreamer
- Jack is a Punk Rocker
- Revelation
- See You Later, Take Care
- All for You
DVD収録曲
- World of Glory with JOE INOUE (Music Clip)
- Summer Frequence (Music Clip)
- Overdrive (Music Clip)
TOTALFAT(とーたるふぁっと)
2000年、同じ高校のメンバーにより八王子で結成。都内のライブハウスを中心に、精力的なライブ活動を展開する。2002年から全国ツアーを敢行。ライブバンドとしてその頭角を現す。2003年に1stアルバム「End on Introduction」をリリース。2004年、ギタリストのKubotyが正式メンバーとして加入し、Shun(Vo, B)、 Jose(Vo, G)、Bunta(Dr)、Kuboty(G)の4人でパワフルな活動を継続中。数々のコンピレーションアルバムへの参加を経て、2005年にミニアルバム「Get It Better」を発表。2007年にはミニアルバム「Hello&Goodnight」をリリースし、Good Charlotteの来日公演オープニングアクトに出演した。 2008年には「PUNKSPRING 08」に初出演を果たし、アルバム「ALL THE DREAMER,LIGHT THE DREAM」を発表。THE OFFSPRINGのジャパンツアーで日本人最多の7公演のオープニングアクトを務めた。2009年にはアルバム「FROM WHOM THE ROCK ROLLS」をリリース。「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2009」「SUMMER SONIC 09」といった夏フェスに出演し、注目を集めた。2010年6月にKi/oon Recordsからメジャー1stアルバム「OVER DRIVE」を発表。