「World of Glory with JOE INOUE」でバンドとしての品質保証はできた

──そう考えると今回のアルバムって、バンドとしての新たなアイデンティティが確立された作品なのでは？

Jose　作ってるときはあんまり意識してなかったけど、改めて聴いてみるとそうなってるなって気がします。自然に吸収してきた部分がうまく出たってことだと思うんですよね。

Shun　今度ビデオクリップを撮る予定の「Damage」とか、ロカビリー調の「Jack is a Punk Rocker」とか、アルバムを聴いた人にはフックになるような曲が増えてるし。こういう曲が今後、TOTALFATの新しい魅力になるって感じていて、ファンのみんなや世間にどう受け取られるか、今からすごく楽しみなんです。

──確かに「Damage」は今までになかったタイプの曲ですし、ライブで聴いたら相当面白いと思います。

Shun　しかもこの曲でビデオを作るっていうのも、けっこう勝負ですよね（笑）。

──そうですね、今までのイメージからガラリと変わりますし。そもそもなぜ「Damage」のビデオクリップを作ろうと思ったんですか？

Shun　「World of Glory with JOE INOUE」が作れて、それをシングルで出すことができて、さらに「World of Glory with JOE INOUE」でビデオクリップを撮れたことで、自分たちの中でちゃんとTOTALFATとしての品質保証はできたって感じて。シングルでこれだけTOTALFATの色を出せて、しかもいい作品が作れたから、じゃあアルバムではそれとは逆の要素を打ち出そう、両極面を攻めようってみんなで決めたんです。

Jose　あとは、周りのスタッフから「Damage」の評判が良かったっていうのもあるかな。「この曲が世間で鳴ってたらみんな驚くぞ」って言われたんで、「驚くんスか？ じゃあそれで！」って（笑）。なんか、みんなピンときたんですよ。

「今の誰ですか？」「これ？ TOTALFATだよ」

──例えば、この曲が海外のラジオやMTVで流れていても違和感がないと思います。

Shun　それはめっちゃうれしいっスね。

Jose　で、聴いた外国人に「ダセェバンドだなぁ！」とか言われそうだよね（笑）。

Shun　今までの曲で一番洋楽的でもあるんだけど、音階やコード進行を分析すると聴く人によっては和モノっぽくもある。聴いた人によっては、盆踊りっぽい雰囲気とかジャジーな雰囲気とかいろいろ言われます。

Jose　歌はブルースだって言われたし。

Shun　女友達に聴かせたら「海賊みたい」って言われたり。聴く人によって思い浮かぶシチュエーションが違って面白い曲だなって。でもそれって要するに、一般的に確立されたステレオタイプ的な曲ではなくて、ほかにはない新しさがあるから聴く人によって思い浮かぶものが違うのかなって僕は解釈してるんです。だから、この曲に映像を付けて世間にお届けするのが待ち遠しくてしょうがないですね。

──ビデオの仕上がりも楽しみにしてます。それにしても、このアルバムは特に終盤に進むにつれてどんどん曲の振れ幅が大きくなっていきますね。

Jose　続けて聴くと笑っちゃいますよね（笑）。

──ロカビリーの「Jack is a Punk Rocker」がきて、クラシカルなメタルナンバー「Revelation」があって、アコースティックギターの弾き語り「See You Later, Take Care」から、最後に王道ロックチューン「All for You」で締めくくる。ジャンルで言ったら全部バラバラですもんね。

Shun　それについては面白い話があるんですよ。スタジオで僕らが立ち会う前にレコーディングエンジニアがあらかじめ全曲トラックダウンをやってくれたんですけど、作業中横にアシスタントの人がいて「今の誰ですか？」って訊かれると「これ？ TOTALFATっていうバンド」って答えて。で、次の曲をトラックダウンしてると「今のは誰ですか？」ってまた訊かれて、「これ？ TOTALFATだよ」と返す（笑）。で、また次の曲をミックスしてると「これは誰ですか？」って訊かれて、「いや、TOTALFATだよ」って（笑）。全部別々のバンドの曲に聞こえたみたいで、これはスタジオ内では笑い話でしたね。