ナタリー PowerPush - TOTALFAT

メジャー2作目でさらなる進化 パンクの枠を超えた名盤完成

現場に第5のメンバーがたくさんいる良い環境

──プロデューサーは前作から引き続き岡野ハジメさんですが、改めて仕事してみてどうでしたか?

Shun 間違いなかったッスね。

Jose 前回はTOTALFATにとってメジャー1作目で、岡野さんとも初めての仕事だったんですけど、粗いところも出しつつなるべくバンドの持ってるいいものだけで勝負する作品にしたいっていうコンセプトが岡野さんにはあったそうなんです。で、「OVER DRIVE」を作ってるときから「もし次のアルバムを自分がやらせてもらうなら、俺はこうする」っていうイメージが見えてたみたいで。そんな話をスタッフから聞いてたし、前回一緒に仕事して岡野さんはすごく素敵な人だって思ってたんで、今回もお願いしたんです。

インタビュー風景

──岡野さんは今回、どんな感じでレコーディングに参加したんですか?

Jose 今回は「曲ができたらすぐに聴かせてよ」って言って、作曲の段階から意見を出してくれたんです。ピアノを入れてもらったり、アレンジやコード進行を手伝ってもらったりした結果、すごく満足のいく音になりましたね。

Shun 僕らはわりと無意識で曲を作ってたんですけど、岡野さんの中では「TOTALFATは次、こういう音でしょ」みたいにイメージができていて。スタートの段階で一番明確なイメージを持っていたから、俺らが迷ったときでもちゃんと岡野さんが思い浮かべていた方向に導いてくれて、それがすごく良い結果を生んだなって。しかも、極上の環境で生まれたTOTALFATの新しい一面っていうのがとてもクオリティが高いもので、これはバンドマンとしてすごく幸せなことだなって思いましたね。

Jose あと、岡野さんが何より素敵だなって思ったことは、僕らをいちアーティストとしてちゃんとリスペクトしてくれたことですね。「俺はこうしたいんだけど、もしバンド的になしだったら全然クビにしてもらって構わないから、1日だけそれをやる作業日をちょうだい」ってピアノを入れたアレンジを作ってきて、僕らが「いいッスね!」って感想を言うと岡野さんもすごくうれしそうなんです。そういうところも岡野さんならではというか。

Shun ご自身もかつてバンドマンだったから、外部メンバーの音が加わることに対するアレルギーみたいなものもわかってくれた上で、ちゃんと僕らのところまで目線を一回下げて物事を考えてくれた。それがすごく気持ちいいんですよ。で、僕らもそうしてくれる人に対しては嘘をつけないから、ないと思ったことに対しては正直に「これよりは自分らで作った音のほうがいいです」って言わせてもらってるし。人間としてすごく尊敬できる人ですね。

──プロデューサーではあるけども、バンド内では「第5のメンバー」みたいですね。

Shun 確かにそういう感じですね。ほかにもディレクターとかマネージャーとか、メンバーに近い形でTOTALFATのことを考えてくれる人に僕らは恵まれていて。現場に第5のメンバーがたくさんいる、良い環境だと思います。

岡野さんと仕事したことで得た自信がライブに大きく反映

──そういった環境で制作されたからか、今作からはバンドとしての柔軟さが感じられました。そのへんは意識してましたか?

Kuboty まったく。

Bunta できないことはあんまりやってないですからね。でもきっと、環境っていうのはデカイと思います。例えばリズムの取り方でも、同じフレーズの中で俺が4分で取ってたら岡野さんに「そこは8分で取れ」って言われて。こんなに速い曲を8分で取れないよとか思いながら、そのテイクだけ1時間ずっと8分で取ってましたね(笑)。

Shun 「キャリーオン!」って(笑)。

Bunta 「ハイハットで、16分の4個目をしっかり鳴らせ」とかあったな。

Kuboty でも岡野さんの言っていることは的確で。自分たちだけでは引き出せなかった部分を、岡野さんのおかげでどうにか短時間で引き出せるようになったしね。

Bunta 何十年と積み重ねてきた岡野さんならではのロック論みたいなものがあって、例えばDEEP PURPLEのイアン・ペイス(Dr)はどうだとか、昔のTHE BEATLESはそんな8ビートは8分で取ってたんだよとか。俺はテンポが速い曲だと4分で取っちゃうことが多かったから、逆に新鮮でしたね。そういったことを実践したことで、この「DAMN HERO」はちゃんとしたロックアルバムになったと思う。

Shun 岡野さんの音楽脳がとにかくすごいんですよね(笑)。僕らがたかだか10年15年くらいで培ってきたものをはるかに凌駕して僕らに新しい考え方をどんどん植え付けてくれる。そして、どういう言葉をかければ次のテイクが変わるかっていうのを岡野さんは知っているんです。そうやって若い人間を納得させる力ってすごいと思うし、大学の先生になってほしいぐらいですよ(笑)。

Jose いい先生になると思うよ(笑)。岡野さんのおかげで、遠慮せず思いっきりできたし。

Shun 実は、前作「OVER DRIVE」のレコーディングで岡野さんと仕事したことで得た自信がその後のライブに大きく反映されて、プレイやライブに対する姿勢が変わったのもあって。だから、「DAMN HERO」では岡野さんに与えてもらったもののおかげで、すごく柔軟性が増してると思います。

──じゃあ、「DAMN HERO」のレコ発ツアーを経験することで、より大きく成長することができそうですね。

Bunta そうですね。このアルバムには「TOTALFATが今やるべき音楽、伝えるべき曲」を100%、いや120%詰め込むことができたので、それをそのままライブで表現できれば、俺たちがこれからやりたいと思ってることに近づけるんじゃないかなって思います。

インタビュー風景

ニューアルバム「DAMN HERO」 / 2011年5月25日発売 / Ki/oon Records

  • 初回限定盤[CD+DVD] / 3100円(税込) / KSCL-1800~01 / Amazon.co.jpへ
  • 通常盤[CD] / 2800円(税込) / KSCL-1802 / Amazon.co.jpへ
CD収録曲
  1. Livin' for The Future
  2. Sky of California
  3. Across The Chance
  4. Ball and Chain
  5. World of Glory with JOE INOUE (DAMN HERO Ver.)
  6. Damage
  7. Highway 3
  8. Sweet
  9. Dance On, My Friends
  10. Longest Dreamer
  11. Jack is a Punk Rocker
  12. Revelation
  13. See You Later, Take Care
  14. All for You
DVD収録曲
  1. World of Glory with JOE INOUE (Music Clip)
  2. Summer Frequence (Music Clip)
  3. Overdrive (Music Clip)

アーティスト写真

TOTALFAT(とーたるふぁっと)

2000年、同じ高校のメンバーにより八王子で結成。都内のライブハウスを中心に、精力的なライブ活動を展開する。2002年から全国ツアーを敢行。ライブバンドとしてその頭角を現す。2003年に1stアルバム「End on Introduction」をリリース。2004年、ギタリストのKubotyが正式メンバーとして加入し、Shun(Vo, B)、 Jose(Vo, G)、Bunta(Dr)、Kuboty(G)の4人でパワフルな活動を継続中。数々のコンピレーションアルバムへの参加を経て、2005年にミニアルバム「Get It Better」を発表。2007年にはミニアルバム「Hello&Goodnight」をリリースし、Good Charlotteの来日公演オープニングアクトに出演した。 2008年には「PUNKSPRING 08」に初出演を果たし、アルバム「ALL THE DREAMER,LIGHT THE DREAM」を発表。THE OFFSPRINGのジャパンツアーで日本人最多の7公演のオープニングアクトを務めた。2009年にはアルバム「FROM WHOM THE ROCK ROLLS」をリリース。「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2009」「SUMMER SONIC 09」といった夏フェスに出演し、注目を集めた。2010年6月にKi/oon Recordsからメジャー1stアルバム「OVER DRIVE」を発表。