音楽ナタリー PowerPush - 銀杏BOYZ写真集「純血」

“ドキドキジャンキー”村井香が銀杏BOYZと駆け抜けた11年

銀杏BOYZのオフィシャルカメラマンとして、2003年から現在まで撮影してきた村井香。何においても過剰で、オン・オフの区別なく常に音楽にあふれていたこのバンドを撮り続けることは誰にでもできることではない。このバンドのメンバーがそうであったように、村井もまた持てるものすべてを銀杏BOYZに注力してきた。

そうして撮られた膨大な写真がついに銀杏BOYZ初の写真集「純血」としてまとめられる。厳選された345カットは、峯田和伸(Vo, G)、安孫子真哉(B)、村井守(Dr)、チン中村(G)という4人体制の銀杏BOYZとはなんだったのか、そのコアを存分に伝えてくれるだろう。ファンにとってはタイムマシンのようにも感じられるかもしれない。

繰り返すが、村井香だからできたのだ。写真集が完成した今、そこに込められた気持ちを聞いてみた。

取材・文 / 九龍ジョー インタビュー撮影 / 笹森健一

たぶんみんな未来とか考えてなかった

村井香

──もともとハードコアバンドの撮影をしていた村井さんが銀杏BOYZと出会ったのは、前身バンドのGOING STEADYの頃ですよね。

そう、GOING STEADYの頃です。銀杏は初ライブから撮ってますね。

──銀杏BOYZの初ライブが2003年。それからずっとだから写真の枚数もすごいことになってるんじゃないですか?

何枚だろう。2003年から2005年のネガだけで600本ぐらいあって。

──ネガ1本が36枚として、その2年間だけでも単純計算で2万枚を超えてますね(笑)。村井さんの場合ベストショットを選んでどうこうっていうんじゃなくて、とにかくオン・オフ関係なくずっと撮影してましたよね。

最初からそうでしたね。なんていうか、友達……家族……いや、一緒にいたってだけか。同じ景色をずっと一緒に見てた。今振り返ると、ただそれだけだなって思いますね。

──関係者の多くがそうでしたけど、生活がもう銀杏BOYZを中心に回っていたんじゃないですか。

だからこの歳まで結婚もせずみたいな感じなんだと思います(笑)。たぶんみんな未来とか考えてなかったですよね。

銀杏は二度と同じことはしないだろうなって

──ほかのバンドも撮っていたのに、銀杏BOYZにここまで夢中になった理由はなんだったと思いますか?

銀杏BOYZ写真集「純血」収録写真(撮影:村井香)

すごくバカみたいな理由ですけど「ドキドキ」ですかね。リスキーなことに対するジャンキーみたいなところが自分にはあって、ドキドキジャンキーというか。

──でもほかのバンドでもリスキーな状況とかドキドキするようなことはあると思うんですけど。

絶対二度とないなと思ったんです。1回のライブが。もっと言うと、今この瞬間が。同じ会場で来月やったとしても銀杏は二度と同じことはしないだろうなって。イヤな言い方ですけど、2005年のツアーのときも「次のアルバムを出して、またツアーに行こうね」って言ってたけど、どこかで「でも二度とないだろうな」と思ってました。

──常にこれが最後かもしれない、と。

いつ最後になっても後悔しないようにという気持ちでしたね。だからずーっとなんでも撮っていたんだと思います。

写真集「銀杏BOYZ写真集『純血』」
初回限定生産 事前予約締め切り2014年12月10日 / 2015年1月15日発売 / 5400円 / 太田出版

ロックバンド銀杏BOYZの初の写真集が完成。この写真集には写真家・村井香によって撮影された峯田和伸(Vo, G)、安孫子真哉(B)、村井守(Dr)、チン中村(G)の4人の2003年から2014年までの11年間がパッケージされている。
今作にはこれまで公式には発表できなかったものを含む345カットが掲載されているほか、脱退した3人のメンバーの近影や峯田和伸のロングインタビューも収録。4人の銀杏BOYZが残した軌跡を写真とテキストでたどるファン垂涎の1冊となっている。

銀杏BOYZ(ギンナンボーイズ)
銀杏BOYZ

2003年1月、GOING STEADYを突然解散させた峯田和伸(Vo, G)が、当初ソロ名義で「銀杏BOYZ」を始動させる。のちに同じくGOING STEADYの安孫子真哉(B)、村井守(Dr)と、新メンバーのチン中村(G)を加え、2003年5月から本格的にバンドとしての活動を開始。2005年1月にアルバム「君と僕の第三次世界大戦的恋愛革命」と「DOOR」を2枚同時発売し、続くツアーやフェス出演では骨折、延期、逮捕など多くの事件を巻き起こす。2007年からはDVD「僕たちは世界を変えることができない」や「あいどんわなだい」「光」といったシングル作品をリリースし、2011年夏のツアーを最後にライブ活動を休止。しばしの沈黙を経て2014年1月に約9年ぶりとなるニューアルバム「光のなかに立っていてね」とライブリミックスアルバム「BEACH」を2枚同時リリースした。チン、安孫子、村井はアルバムの完成に前後してバンドを脱退しており、現在は峯田1人で活動を行っている。