「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」|ピエール瀧も惚れ込んだストップモーションアニメ マジカルだけどミラクルじゃない!メイキング映像で追う果てしない制作過程

「コララインとボタンの魔女」のスタジオライカが贈る新作「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」が11月18日に公開される。日本を舞台にした本作は、主人公の少年クボが三味線を片手に挑む冒険譚! 怪物が潜む洞窟や湖の底へ繰り出すさまが、滑らかなストップモーションアニメで表現されている。

折り紙が鳥のように羽ばたき、落ち葉が集まって船ができる──そんな魔法のような映像群は、決してミラクルによって生み出されたものではない。途方もない量の手作業の積み重ねで成り立っているのだ。本特集では、スタッフによる解説を交えながらメイキング映像をたっぷり紹介。ライカの魔法に惚れ込んだ吹替キャスト・ピエール瀧のコメントや、イラストコラムも掲載している。CGアニメ全盛の時代に、1コマずつ人形を動かし続けるライカの信念とは? 合計114万時間以上を費やしたという、果てしない制作過程に迫る。

文 / 黒瀬朋子(P1~P2)、黛木綿子(P1) 取材 / 金須晶子(P2)
イラスト / 川原瑞丸 撮影 / 小原泰広

  • 「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」メイキングカット
  • 「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」監督のトラヴィス・ナイト。次作の「トランスフォーマー」シリーズスピンオフ「Bumblebee(原題)」で実写映画監督デビューを飾る。

ケタ外れの作業量を経て紡ぎ出された、見たことのない世界

本作の製作は、「コララインとボタンの魔女」で、その名を世界にとどろかせたスタジオライカ。独創性あふれる世界観とこだわり抜いた職人気質、最新技術により、ストップモーションアニメの可能性を押し広げた。ストップモーションアニメは、キャラクターや背景をゼロから制作し、1コマずつ動かしては撮った画をつなげるという途方もない作業によって作られる。本作で、1週間かけて制作された平均尺はたったの3.31秒。総制作期間94週、スタッフ全員で合計114万9015時間を費やして、リアルで壮大な絵巻物語を完成させた。第89回アカデミー賞にて「ズートピア」「モアナと伝説の海」と並び長編アニメーション賞の候補になったほか、2017年11月時点で各映画賞にて83ノミネート。そのうちアニー賞や英国アカデミー賞などで27の賞を獲得している。

イラスト / 川原瑞丸

イラスト / 川原瑞丸

日本文化の魅力を再発見できる、アメリカ人による新しい物語

舞台は、古き日本。主人公の少年クボがひとたび三味線を奏でれば、折り紙が空に舞い、侍やクモ、鳥となって命を吹き込まれ、物語が語られていく。やがてクボは、サルとクワガタとともに、3つの武具を探しに冒険の旅に出る。ライカのCEOであり、本作の監督を務めたトラヴィス・ナイトは大の日本びいき。日本の伝統文化や芸術を徹底分析し、オリジナルの物語を紡いだ。日本昔話に出てきそうな怪しく美しい世界、現代日本人が忘れてしまったような自然や死者とともに生きる古い風習も描き、大人も楽しめる内容になっている。声の出演にはシャーリーズ・セロンやマシュー・マコノヒーなど豪華メンバーが集結した。吹替版では、クワガタをピエール瀧、敵対する闇の姉妹の2人を川栄李奈が担当。村のおばあさん・カメヨ役は小林幸子が演じ、威勢よくクボを応援した。

  • 「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」
  • 「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」
ピエール瀧
クワガタ役 吹替担当
ピエール瀧(ピエールタキ)
1967年4月8日生まれ、静岡県出身。1989年に石野卓球らと電気グルーヴを結成し、ミュージシャンとして活躍する一方で俳優としても多くの作品に出演。現在ドラマ「陸王」が放送中、「アウトレイジ 最終章」が公開中のほか、待機作に「サニー/32」「孤狼の血」などがある。

“ライカ組”に入れてうれしい!ピエール瀧が語る、ストップモーションアニメの魅力

この吹替の仕事は単純にうれしいですね、“ライカ組”に入れて(笑)。もともとストップモーションが好きで、イジー・トルンカや、ヤン・シュヴァンクマイエルの作品をよく観てたんです。そんな中で「コララインとボタンの魔女」を観たときに「今このレベルになってるんだ!」ってびっくりして。それからライカの作品には注目してました。

ピエール瀧が「気に入っている」と語るのがこのワンシーン。「何気なく歩いてて、ふとクワガタがクボを肩に乗せて、振り返るとサルも穏やかに歩いてて……“なんでもないようなことが、幸せだったと思う”……っていう場面ですね(笑)」。

ストップモーションのいいところは、奥にある枝1本とか葉っぱ1枚とか、フレームの隅々まで人の手が入ってること。仮に自分が作るとしたら恐怖しかない!(笑) 「コラライン」のソフトを買ったときに特典のメイキング映像を観たんですけど、夜の花のシーンを担当した人は、1年ぐらい同じ花を作ってたっていうんです。それ、半分拷問じゃないですか(笑)。だけど、すべてがそういう作業の集大成だってところがいい。それをやろうと思うプロダクション、やらせてくれるプロデューサー、そしてお金を出してくれる人たち。そういう土壌があるのがいいなと思います。

「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」の主人公クボは、三味線で紙に命を吹き込みますけど、それってライカがやってることと同じだと思うんですよね。動きもしない人形がライカの魔法にかかると自由に動く。そういう魔法をかけられる人たちが作った作品だと思う。難しく考えずに「物が動く! 不思議だ!」という気持ちで楽しんでほしいです。

キャラクター紹介

クボ(アート・パーキンソン / 矢島晶子)
クボ(アート・パーキンソン / 矢島晶子)
三味線の音色で折り紙を自在に操ることができる独眼の少年。心に傷を負った母親と2人で村の外れに住んでいる。
サル(シャーリーズ・セロン / 田中敦子)
サル(シャーリーズ・セロン / 田中敦子)
もとは木彫りのサルだったが、クボの母親によって命を吹き込まれた。厳しい言葉を交えつつもクボの世話を焼く。
クワガタ(マシュー・マコノヒー / ピエール瀧)
ピエール瀧
クワガタ(マシュー・マコノヒー / ピエール瀧)
何者かに呪いをかけられ、今の姿になった侍。クボの父ハンゾウに仕えていた。ノリは軽いが、弓の名手。
闇の姉妹(ルーニー・マーラ / 川栄李奈)
川栄李奈
闇の姉妹(ルーニー・マーラ / 川栄李奈)
クボの叔母にあたる不気味な姉妹。クボの目を付け狙い、不思議な力で襲いかかる。
月の帝(レイフ・ファインズ / 羽佐間道夫)
月の帝(レイフ・ファインズ / 羽佐間道夫)
クボの祖父で闇の魔力を持つ男。クボの片目を奪い、父ハンゾウを殺した。
カメヨ(ブレンダ・ヴァッカロ / 小林幸子)
小林幸子
カメヨ(ブレンダ・ヴァッカロ / 小林幸子)
クボと同じ村に暮らし、何かと面倒を見てくれる老婆。クボの三味線芸のファン。
「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」
2017年11月18日(土)公開
ストーリー

三味線の音色で折り紙に命を吹き込む不思議な力を持つ少年・クボ。幼い頃、闇の魔力を持つ祖父に片目を奪われたクボは、母親と逃げ延びた先の村でひっそりと暮らしていた。父親のハンゾウは、2人を助けるために命を落としたという。ある日、叔母と名乗る“闇の姉妹”に襲われたクボは、身を挺して守ってくれた母親から「3つの武具を見つけに行きなさい」と告げられる。母によって命を吹き込まれた木彫りのサルと旅を始めたクボは、道中出会った陽気なクワガタとも協力し、武具を探し出していく。そんな中、クボは祖父である月の帝から執拗に狙われる理由が、母の犯した悲しい罪にあることを知る。

スタッフ

監督:トラヴィス・ナイト
脚本:マーク・ハイムズ、クリス・バトラー
音楽:ダリオ・マリアネッリ
アニメーションスーパーバイザー:ブラッド・シフ

キャスト

声:アート・パーキンソン、シャーリーズ・セロン、マシュー・マコノヒー、ルーニー・マーラ、レイフ・ファインズほか

日本語吹替:矢島晶子、田中敦子、ピエール瀧、川栄李奈、羽佐間道夫、小林幸子ほか