映画「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」 PR

「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」|ピエール瀧も惚れ込んだストップモーションアニメ マジカルだけどミラクルじゃない!メイキング映像で追う果てしない制作過程

アニメーションスーパーバイザー ブラッド・シフに聞く スタジオライカ 5つの魔法と唯一無二の信念

ブラッド・シフ
MTVの「Celebrity Deathmatch(原題)」などのテレビシリーズを手がけた後、2005年に「ティム・バートンのコープス・ブライド」でアニメーターを務める。スタジオライカ設立後は「コララインとボタンの魔女」「パラノーマン ブライス・ホローの謎」「The Boxtrolls(原題)」に携わった。また2009年のウェス・アンダーソン監督作「ファンタスティック Mr.FOX」でも原画を担当している。アニメーションスーパーバイザーを務めた「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」は、第89回アカデミー賞長編アニメーション賞と視覚効果賞にノミネートされた。

表情は4800万通り、俳優顔負けの繊細な演技をする人形たち

本作の人形たちは、動作が滑らかなうえに、とても表情豊か。夕日を浴びた横顔や、目の中に揺らめく篝火が映るなど、本当に命が吹き込まれているかのように見えてくる。「人形の骨格はスチールでできていて、ワイヤーやホイールで動きを固定できるようになっています。1秒24コマ。24回分のポージングが可能。特に腕の部分はとても繊細な演技ができるんです。人間の体ができることはほぼできますし、人には不可能な動きもできます(笑)」とシフ。表情を変えるには、従来は頭部を丸ごと入れ替えていたが、ライカでは3Dプリンタを使い、顔の上部と下部を分けてプリントすることで、微細な表情の変化を表現。さらに針のような細いスティックでまぶたや目玉も少しずつ動かしていく。そうして作られたサルの表情は3000万通り、クボはなんと4800万通り! 「僕らは人形のことを『小さなヴァンパイア』と呼んでいます。スクリーンで皆さんに観ていただく彼らの動きは、すべて僕たちが動かしているのですが、実際に彼らはアニメーターの命を吸い尽くして動いていますからね(笑)」。

  • 少しずつ違う、クボの表情パーツ。
  • 人形の表情パーツを外した状態。
  • 人形の表情パーツを外した状態。
  • 針のような細いスティックで目玉やまぶたを動かし、目の表情を作る。

25万枚の紙で作る船や4.9mの骸骨!創意工夫を詰め込んだダイナミックな美術

巨大兵士像が倒れた雪原や水底に沈む大目玉のお化け群、月夜に照らされる怪しい杉林など、大掛かりなセットも本作の魅力。シフいわく「セット作りは撮影に入る1年前から始めるんです」というから驚きだ。ストップモーションアニメでは、水の動きを表現するのが難しいと言われているが、本作では冒頭から荒れ狂う大波が登場し観客を圧倒する。「水の部分はVFXで作られていますが、ライカの場合、CGで表現するときも、実際にあるアナログなものを参考に作っているんです。例えば、立てたカードをドミノのように倒していくと、その一連の動きは波のように見えますよね」。また、波の動きに似せたスティック状のものが動く装置を作り、その上に黒いビニールを載せて複雑な光の反射を作ることで、リアルな水面を表した。どれほどの試行錯誤の末にそのアイデアにたどり着いたのだろうと、メイキングを見ると胸が熱くなる。中盤に出てくる木の葉の船は、実際に人が乗れる小舟くらいの大きさで、25万枚のカラーペーパーを使い彩られた。目玉のセットも、人間が目の前にしてもひるむほど巨大。刀探しで出会う骸骨の身長は4.9m、ストップモーション史上最大の大きさで、ちょっとしたビルのようなのだそうだ。

  • 25万枚のカラーペーパーで彩られた木の葉の船。
  • 身長4.9mの巨大骸骨。
  • 光る仕様になっている巨大な目玉のお化け。

アクションムービーさながらのリアルな動きを徹底追求

繊細な表情に並び、驚かされるのはキャラクターの動きの滑らかさだ。あまりに自然でストップモーションアニメであることを忘れてしまうほど。「絵コンテに沿って人形を動かすのですが、『パラノーマン ブライス・ホローの謎』(2012年)から、まずはアニメーターが自分の体を使って演じたものをビデオカメラで撮影し、その映像をもとに人形に動きを付けるようにしているんです」。アクションや殺陣など、特殊な動きはそれぞれの専門家にアドバイスを仰いだ。例えば木の葉の船上で、サルと闇の使いがアクションスターのごとくアクロバティックな動きを熱演(!)しているが、「あのシーンのためにロサンゼルスに飛び、マーベル作品でスタントマンとして活躍しているアーロン・トニーさんとともにアクションを作って撮影しました」。この船上のシーンだけで19カ月もかかったらしい。また、盆踊りをダンサーたちに指導したのは、当時90歳の日本人振付師サホミ・タチバナ。「どのシーンでも極力リアルに見えるように動きを作っていきたかったんです」とこだわりのほどを語った。

  • 「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」より、船上で激しいバトルを繰り広げるサルと闇の姉妹の1人。

葛飾北斎や黒澤明のエッセンスも!深い理解のもとに描かれた日本文化

監督のトラヴィス・ナイトもライカスタッフも宮崎駿作品をリスペクトしており、日本の伝統文化のリサーチにはことさら力を入れた。コンサルタントに付けたのは、「思い出のマーニー」「怒り」など80本近くの作品で英語字幕翻訳を担当し、通訳としても多くの映画人をサポートしてきた後藤太郎。灯籠流しや盆踊りなどの場面は、現代日本人にとっては忘れかけた風景を思い起こさせる。監督は、日本文化に独自の解釈を加え、わびさびや未完成の美学を取り入れたと話している。美術班がイメージのもとにしたのは、葛飾北斎や歌川国芳の浮世絵、1997年に没した木版画家・斎藤清の「会津の冬」シリーズなど。着物の生地の染めや織りも研究し、村人たちの着物の柄はひとつとして同じものがないという徹底ぶりだ。黒澤明の影響を受けた監督は「七人の侍」に敬意を表し、クボの父ハンゾウを三船敏郎に似せて作った。「監督とは参考にした作品は多少違いますが、私も黒澤映画の『七人の侍』や『赤ひげ』を観て、キャラクターの所作や物腰の参考にしました」とシフ。「この作品はライカのスタッフ全員からの日本へのラブレターなんです」。

  • 経年劣化もリアルに表現された着物の制作風景。
  • 「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」より、灯籠流しのシーン。村人たちの着物は1つひとつ違う柄になっている。
  • 「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」より、折り紙で作られたハンゾウ。
  • 盆踊りの提灯が灯った村のセットを歩くスタッフ。

懐かしくも古びない力強いストーリーと、ストップモーションアニメの可能性

ストップモーションの高い技術ばかりがどうしても注目を集めてしまうが、ライカがもっとも大事にしているのは「物語」。いつまでも心に残り続ける、人生の真実を描いた物語を監督は探していた。そこで出会ったのが日本の寓話にインスピレーションを得た本作の脚本だった。折り紙の魔法を使い、物語を語り続けるクボ。シフは「クボは、『E.T.』や『グーニーズ』『スタンド・バイ・ミー』などの少年らしい遊び心を持ったキャラクターを参考にした」と語っている。クボが数々の試練にさらされながら、物語の力を知るというストーリーは、語り継がれる力強い物語を作ろうとしているライカの姿と重なる。「僕らのスタジオは、ほかの人が手がけていない新しいことに次々チャレンジしています。CGの出現によって、ストップモーションアニメは食われてしまうんじゃないかと言われていた時期もありますが、そんなことはまったくありません。アニメーターのレベルも上がり、まだまだ可能性は広がっている。だから、やめられないんです」。

  • ブラッド・シフ
  • 「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」
  • 「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」

メイキングフォトギャラリー

  • 人形の表情パーツ。
  • クボの表情パーツ。
  • サルの人形を制作する様子。
  • クワガタの人形を制作する様子。
  • 闇の姉妹のマントを制作する様子。
  • 闇の姉妹のマントを制作する様子。
  • クボの衣装を制作する様子。
  • 人形に衣装を着せる様子。
  • セットを制作するスタッフ。
  • セットを制作するスタッフ。
  • セットを制作するスタッフ。
  • 提灯を制作する様子。
  • 目玉のお化けを制作する様子。
  • 人形に動きを付ける様子。
  • セットに入り込んで作業するスタッフ。
「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」
2017年11月18日(土)公開
ストーリー

三味線の音色で折り紙に命を吹き込む不思議な力を持つ少年・クボ。幼い頃、闇の魔力を持つ祖父に片目を奪われたクボは、母親と逃げ延びた先の村でひっそりと暮らしていた。父親のハンゾウは、2人を助けるために命を落としたという。ある日、叔母と名乗る“闇の姉妹”に襲われたクボは、身を挺して守ってくれた母親から「3つの武具を見つけに行きなさい」と告げられる。母によって命を吹き込まれた木彫りのサルと旅を始めたクボは、道中出会った陽気なクワガタとも協力し、武具を探し出していく。そんな中、クボは祖父である月の帝から執拗に狙われる理由が、母の犯した悲しい罪にあることを知る。

スタッフ

監督:トラヴィス・ナイト
脚本:マーク・ハイムズ、クリス・バトラー
音楽:ダリオ・マリアネッリ
アニメーションスーパーバイザー:ブラッド・シフ

キャスト

声:アート・パーキンソン、シャーリーズ・セロン、マシュー・マコノヒー、ルーニー・マーラ、レイフ・ファインズほか

日本語吹替:矢島晶子、田中敦子、ピエール瀧、川栄李奈、羽佐間道夫、小林幸子ほか