WOWOW「劇団☆新感線『修羅天魔~髑髏城の七人 Season極』」天海祐希 / いのうえひでのりインタビュー|“花・鳥・風・月・極”フィナーレへ!天海祐希が示した“0番力”

2018年7月にスタートしたWOWOWの「12カ月連続放送!劇団☆新感線『花鳥風月極&名作選』」。この企画では、17年3月から18年5月にかけて東京・IHIステージアラウンド東京で上演された「髑髏城の七人」の5つのシーズン6作品と、「劇団☆新感線 ゲキ×シネ」から選りすぐりの6本が12カ月にわたってオンエアされている。

ステージナタリーでは、5月6日の「修羅天魔~髑髏城の七人 Season極」の放送に先駆け、演出を手がけたいのうえひでのり、極楽太夫を演じた天海祐希のインタビューをお届け。いのうえと天海の2人が、それぞれの視点から「修羅天魔」を振り返る。

文 / 熊井玲

「劇団☆新感線『髑髏城の七人』“花・鳥・風・月・極”」とは?

「髑髏城の七人」は、1990年の初演以降、さまざまなキャスト、演出で上演されてきた劇団☆新感線の代表作の1つ。2017年3月から18年5月にかけて、東京・IHIステージアラウンド東京のこけら落としとして、“Season花”“Season鳥”“Season風”“Season月”“Season極”が上演された。

“花・鳥・風・月・極”のフィナーレを飾る“Season極”こと「修羅天魔」は、捨之介も蘭兵衛も登場しない完全新作。かつて織田信長に仕えた極楽太夫と天魔王の関係性が軸になっており、凄腕の狙撃手だったが現在は渡り遊女の極楽太夫を天海祐希、関東髑髏党を率いる首領・天魔王を古田新太が演じている。このほか、04年版「髑髏城の七人~アオドクロ」以来の登場となる、三宅弘城演じる贋鉄斎の弟子・カンテツや、竜星涼演じる“無界の里”の人気若衆太夫・夢三郎といった“次世代”のキャラクターも多数登場した。

天海祐希(極楽太夫役)インタビュー

「もしかして、とんでもないことに足を突っ込んでるんじゃないか」って

──オファーがあったときのお気持ちは?

「劇団☆新感線『修羅天魔~髑髏城の七人Season極』」より。©︎2018『修羅天魔~髑髏城の七人 Season極』/TBS・ヴィレッヂ・劇団☆新感線、【撮影:田中亜紀】

4年くらい前に、大阪で劇団☆新感線の舞台を観て、終演後にキャストの方たちとお食事する機会があったんです。中島(かずき)さんといのうえ(ひでのり)さんもいらしたんですけど、その席で(新感線が所属する株式会社ヴィレッヂの代表取締役会長)細川(展裕)さんや新感線の皆さんに「姐さん、生誕50周年記念作品をやりましょう」と言っていただいて。「わーい、うれしい!」なんて喜んでいたら、「実は『髑髏城の七人』の極楽太夫をやってもらいたい」と言われたんですね。私、小栗(旬)くんが2011年に出演したときの「髑髏城」を観ていたので、「(小池)栄子ちゃんがやった役だな」なんて思いながら、「あ、そうですか」ってお返事したら、「あれ、そんなにうれしそうじゃないね」と言われて、そのときはまだピンと来てなかったんです。そこから数年後にまた細川さんから「生誕50周年の話、進んでるからね」と言われて……蓋を開けたらこんなことになっていて!(笑) 「あれ? 私もしかして、とんでもないことに首を突っ込んでるかもしれない」と、そのときようやく思いました。ただその段階では、「修羅天魔」がどういう形になっていくかも決まっていなかったし、そもそも「修羅天魔」というタイトルも付いてなくて、古田(新太)さんほか数名のキャストのお名前を教えていただいたくらいだったんです。

そのあと「うわー!」って思ったのは、“Season花”を観に、IHIステージアラウンド東京に行ったとき。小栗くんから、「姐さん、『髑髏城』やるんですよね。マジ気を付けて下さい! マジ大変です!」と言われて。無界屋蘭兵衛役の山本耕史さんからも「姐さん、本当に気を付けてください」って言われて、「いや、どうしよう。私、とんでもないことに足を突っ込んでるかもしれない……」とまた思って、そのまま劇場の事務所に行ったんです。で、細川さんに「すいません、やっぱりちょっと、出演を見合わせさせてください」と言ったら、「あ、30分前に締め切っちゃったんですー」と言われて、結局逃れられないことになりました(笑)。そのあとも、“Season鳥”の阿部(サダヲ)さんをはじめ、捨之介役の方に会うたび、「姐さん、マジ気を付けてください」って言われて、「いや、でも私、捨之介じゃないから」って言ったんですけど(笑)、とにかくみんなに脅され続けましたね。

──稽古が始まって、劇場の機構や作品については、どのように実感が湧いていったのでしょうか?

観客のときは毎回、「ステージアラウンドがどんなふうになっているのか、ちゃんと観ないといけない」と思って観始めるんですけど、気付くと「捨之介、カッコいい!」とか「蘭兵衛、カッコいい!」って、観客として心から楽しんでしまっていて(笑)。劇場もアトラクションみたいですごくワクワクするし、あとで自分の身に降りかかるであろう苦難をちょっと忘れて、「こんな舞台に出させてもらえるんだ!」という気持ちのほうが大きくなっていました。そのワクワクが消えたのは、稽古に入って1週間くらいした頃ですね。「なんてことを引き受けてしまったんだろうか……。舞台(の技術)ってこんなところまで進んでいるのか」と。それまで私、新感線って映像と舞台の間にあるような劇団だと思ってたんですけど、今回は舞台機構や映像とのリンクがすごいし、お客さんの集中力を途切れさせないようにさまざまな工夫が施されていて、そのことにも驚きました。

古田さんはお守りみたいな人

──ステージ数が76と、非常に多い公演でもありました。大変だったことは?

「劇団☆新感線『修羅天魔~髑髏城の七人Season極』」より。©︎2018『修羅天魔~髑髏城の七人 Season極』/TBS・ヴィレッヂ・劇団☆新感線、【撮影:田中亜紀】

私、あまり苦労話を言いたくないんですよ。皆さんそこが気になって作品を観てしまうから。ただ、これだけの作品ですから、苦労してなきゃおかしいですよね(笑)。という意味で、“花・鳥・風・月”を支えてきたスタッフの方たちが、お稽古のときから「今、客席が回ってます。あと何秒でセンターがここに来ますよ」とタイミングを計ってくださって、臨場感ある稽古をしてはいたんですけど、実際に劇場に入ってからはやっぱり感覚が違ったので、初めて通し稽古をしたときには魂が抜けてしまいました。「これを76公演もやるのか! 本当にもたないんじゃないだろうか。どうしよう」と思ったことはよく覚えています。でもそんなときも古田さんは飄々としてましたし(笑)、共演者の皆さんには本当に助けられましたね。同じ空間を共に経験している、一緒に闘っている仲間として、お互いを信頼し合い、頼り合って、かばい合って……すごくすごくいいキャスト・スタッフだったと思います。そして何よりもやっぱり、観に来てくださったお客さんの笑顔や拍手に、「今日も無事に終わることができてよかった」と思いましたし、「また楽しんでもらいたい」という気持ちが湧いてきてうれしかったです。……古田さんはね、いてくれるだけでいいんですよ、本当に(笑)。舞台での制する力がやっぱりすごい方ですから、いてくださるとそれだけで本当に安心する。お守りみたいな人ですね。

WOWOWライブ「劇団☆新感線『修羅天魔~髑髏城の七人Season極』」
2019年5月6日(月・振休)15:00~

作:中島かずき

演出:いのうえひでのり

出演:天海祐希 / 福士誠治、竜星涼、清水くるみ / 三宅弘城、山本亨、梶原善 / 古田新太 ほか

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作:中島かずき

演出:いのうえひでのり

出演:古田新太、芳本美代子、高田聖子、橋本じゅん、こぐれ修、逆木圭一郎、粟根まこと ほか

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2019年5月24日(金)24:00~

作:中島かずき

演出:いのうえひでのり

出演:松本幸四郎(当時は市川染五郎)、鈴木杏、池内博之、ラサール石井、高田聖子、三宅弘城、粟根まこと、高杉亘、川原和久、佐藤アツヒロ ほか

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2019年6月放送予定
天海祐希(アマミユウキ)
1967年東京都出身。87年に宝塚歌劇団へ入団し、同年の「宝塚をどり讃歌」で初舞台を踏む。93年に史上最短で月組トップスターに就任し、95年に退団。以降、ドラマ・映画・舞台・CMなどに幅広く出演しており、第33回ゴールデン・アロー賞 演劇賞、第20回日本アカデミー賞 新人俳優賞など数多くの賞を受賞した。主演ドラマ「緊急取調室」第3シーズンが4月にスタートするほか、吉永小百合と共演した映画「最高の人生の見つけ方」が10月に公開される。