ここでは6月9日(日本時間)に発表される第78回トニー賞で、ミュージカル作品賞候補に挙がった5作品を紹介する。
「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」
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第40回グラミー賞で最優秀トロピカル・ポップ・パフォーマンスを受賞した名盤「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」のレコーディングと、参加したミュージシャンたちの人生を舞台化した新作。演出をパブリック・シアターの共同芸術監督で常任演出家のサヒーム・アリが手がける。1950年代のキューバ革命から40年後、再集結した仲間たちが悲しみを乗り越えて音楽史に残るアルバムを作り上げる様子が描かれる。キューバを誇る歌手オマーラ・ポルトゥオンド役のナタリー・ベネチア・ベルコン、演出のアリに加え、脚本・装置・衣裳・照明・音響デザインでノミネートされるなど、総合的に高く評価されている。
©Matthew Murphy
「デッド・アウトロー」
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“そんなバカな!”な驚きをエンタテインメントの興奮と感動に包んで届けてくれると話題の、オフブロードウェイ発のミュージカル。2024年に数々の演劇賞に輝いた同作がトニー賞レースでも主演男優賞、助演男優賞など7部門にノミネートされた。31歳で警官隊に射殺された強盗エルマー・マカーディは、死して大きな転機を迎える。遺体の引き取り手がない彼は、検死官の費用回収のために防腐処理ののち展示され、さらには売買が重ねられて蝋人形館やお化け屋敷を旅することになり……。オリジナル楽曲賞にノミネートされたデヴィッド・ヤズベック&エリック・デラ・ペンナによるウィットに富んだ歌詞も好評だ。
©Matthew Murphy
「永遠に美しく…」
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親友であり大女優のマデリン・アシュトンに婚約者を奪われた作家のヘレン・シャープ。ヘレンが復讐を企み、落ち目のマデリンが若さにすがりつこうとする中、2人の前に謎めいた女性ヴァイオラ・ヴァン・ホーンが現れ、“新たな生(と死)”を差し出して……。1992年に公開されたブラックコメディ映画をクリストファー・ガテリの演出・振付で軽やかにミュージカル化した本作。ヴァイオラ・ヴァン・ホーン役を演じる元デスティニーズ・チャイルドのミシェル・ウィリアムズの快演も注目を浴びるが、物語の核となってバトルを繰り広げるマデリン役のメーガン・ヒルティ、ヘレン役のジェニファー・シマードが好演を見せ、2人そろってミュージカル主演女優賞にノミネートされた。
©Matthew Murphy and Evan Zimmerman
「メイビー、ハッピーエンディング」
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2016年に韓国で初演、日本でも2020年に上演され、このたび独自演出でブロードウェイ入りを果たした韓国発のミュージカル。引退したヘルパーロボット、オリバーの恋心を描きつつ、彼の視点から、“何が人を人たらしめるのか”を問いかける心温まるストーリーが展開する。韓国とアメリカのクリエイターがタッグを組み、マイケル・アーデンが演出を担う今回は、マンガのコマ割りを背景に映し出すような演出で舞台となる近未来の韓国・ソウルを表現。また、ノスタルジックな楽曲が、観客の郷愁をかきたてると評判だ。主演ダレン・クリスのミュージカル主演男優賞のほか、オリジナル楽曲賞、オーケストラ編曲賞など計10ノミネートを飾った。
©Matthew Murphy and Evan Zimmerman
「オペレーション・ミンスミート」
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2019年にイギリス・ロンドンのフリンジで誕生した、ミュージカル・コメディ・ユニットのSpitLip(デヴィッド・カミング、フェリックス・ヘイガン、ナターシャ・ホジソン、ゾーイ・ロバーツ)のデビュー作。2024年のローレンス・オリヴィエ賞でミュージカル作品賞を獲得したミュージカルコメディが、ブロードウェイでも好評を博し、トニー賞の賞レースに参戦だ。第二次世界大戦時にイギリス軍がドイツ軍をあざむくために実行した“ミンスミート作戦”を題材に、5人の出演者が87もの役を演じ分け、観客を笑いの渦へと誘う。仕事熱心な女性秘書ヘスター・レガットを演じるジャク・マローンがミュージカル助演男優賞にノミネートされている。
©Julieta Cervantes