初めての舞台作りで、支えられていることを改めて実感した
──植田さんは今年でアーティストデビュー5周年を迎えます。今回のアルバムでは「自分がフィルターになって曲を届けたい」とのことですが、俳優として歌唱する際とアーティストとして歌唱する際に違いはあるのでしょうか?
全然違いますね。例えば大人しいキャラクターとして歌うのと僕自身が歌うのは、やっぱりまったく違う印象になります。それにお芝居の一部として演技しながら歌うのと、ライブやイベントでもともとある楽曲を歌うのとでは目的が異なるので、おのずと歌い方も変わってきますね。演じながら歌うときは役に寄り添うけれど、アーティストの自分が歌うときは“全部自分”で良い。むしろ“自分の色”を提供するべきだと思って歌っているかもしれません。
──2022年には俳優生活15周年を迎え、「はじまりのカーテンコール~your Note~」(参照:植田圭輔の初演出作「はじまりのカーテンコール」スタート)では初めて舞台の原案・演出を手がけました。ゼロから舞台を立ち上げる経験をしたことで、今後の活動に何か変化はありそうでしょうか?
「はじまりのカーテンコール」を経験して思ったのは、演出家と俳優とで、肩書きが違ってももの作りの根本は変わらないのかもしれないな、ということです。僕はもともとチームワークを大切にしてお仕事をしてきましたし、カンパニー全体の雰囲気や共演者の調子の変化がつい気になってしまうタイプ。俳優としての自分は、共演者の様子に気付いたところがあっても、本人に伝えるかどうかは全体の状況を考えて判断しています。でも演出家としては、全体のために伝えるべきことは伝えたほうが良いですし、客観的な立場だからこそわかることもあるので、できるだけ本人に話すようにしていましたね。
原案・演出を経験したことで、以前よりもっとよく周りが見えるようになりました。音楽も舞台もそうですが、何かを生み出すには本当にたくさんの人の支えが必要です。「はじまりのカーテンコール」では、人と人の関わりや周りのサポートがあって創作ができるということを、改めて知ることができました。だからこそ周囲への感謝の気持ちがさらに大きくなったし、「これから自分がプレイヤーとして舞台に参加するときは、もっと人に優しくなれそうだな」と思います。
僕たちを支えてくれる音楽を1曲でも知ってほしい
──アーティストとしても俳優としても節目を迎えた植田さんは、これからどんなところを目指していくのでしょうか?
“続けられるようにがんばる”のが目標ですね。プレイヤーとしての自分が好きなので舞台に立ち続けたいですし、チャンスがあれば今後も楽曲を生み出したいです。長くお仕事を続けていると、どうしても自分自身の気持ちや環境が変化していくので、モチベーションを変わらずキープするという難しさを今改めて感じていて。だからこそこれからも、今までやってきたことを持続していけるように走っていかなくては、と思います。
──走り続ける植田さんのお姿を、これからも楽しみにしています! 最後に、「RE」を楽しみにしている方々にメッセージをお願いします。
僕がカバーすることによって、既存の曲の新しい魅力や解釈を見つけてもらいたいですし、単純に「この曲が好き」と感じてもらえたら良いなという思いを込めて歌わせてもらいました。オリジナル曲「gene」は先日イベントで初めて発表したのですが、改めて歌詞を味わったら「ああ、あの役に対してこういうことを言っているんだ」と感じてもらえるのではないかと思います。
僕はCDデビューをしてから1・2年目までは「自分の言葉をつづらなければ、僕が歌手活動をやる意味はないかもしれない」と思っていたのですが、今は考えが変わりました。音楽は舞台や物語に寄り添ってくれるもので、僕たち表現者は音楽に支えられていている。だから僕がお仕事を通して出会った素敵な楽曲を、少しでも世の中に広めるお手伝いができたら良いなと。そんな願いを込めて「RE」を制作したので、ぜひ皆さんのお好きな解釈で楽しんでもらえたらうれしいです。
プロフィール
植田圭輔(ウエダケイスケ)
1989年、大阪府生まれ。2006年、第19回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストのファイナリストに選ばれ、2007年のデビュー舞台「少年陰陽師《歌絵巻》」で主演を務めた。主な舞台出演作に「舞台『弱虫ペダル』」シリーズ、ミュージカル「ヘタリア」シリーズ、「舞台『K』」シリーズ、「おそ松さん on STAGE –SIX MEN’S SHOW TIME-」シリーズ、「王室教師ハイネ-THE MUSICAL-」シリーズ、舞台「文豪ストレイドッグス」シリーズ、「MANKAI STAGE『A3!』」シリーズ、舞台「鬼滅の刃」シリーズ、「ワールドトリガー the Stage」シリーズ、「舞台『東京リベンジャーズ』-血のハロウィン編-」など多数。2023年には音楽朗読劇「四月は君の嘘」、ミュージカル「ヘタリア~The Fantastic World~」、舞台「文豪ストレイドッグス 共喰い」、「『ワールドトリガー the Stage』B級ランク戦開始編」が控える。