「『ワールドトリガー the Stage』B級ランク戦開始編」植田圭輔・溝口琢矢が示す、玉狛第2のチーム力

葦原大介のSFアクションマンガ「ワールドトリガー」(集英社)を原作に、2021年にスタートした「ワールドトリガー the Stage」(以下ワーステ)がいよいよ第3弾を迎える。今作で描かれるのは、原作の中で名エピソードと名高いB級ランク戦だ。脚本・演出を手がける中屋敷法仁の「『ワールドトリガー』しましょう!」を合言葉に、ワーステの世界を作り上げてきた空閑遊真役の植田圭輔、三雲修役の溝口琢矢に、「『ワールドトリガー the Stage』B級ランク戦開始編」に臨む思いを聞いた。

取材・文 / 興野汐里撮影 / 堀内彩香

演じるうえで感じる“心の疲弊度”

──2021年に初演「ワールドトリガー the Stage」、2022年に第2弾「『ワールドトリガー the Stage』大規模侵攻編」が上演されました。近界民ネイバーと呼ばれる異世界からの侵略者と防衛組織・ボーダーの戦いを描いた本作で、植田さんは近界ネイバーフットからやって来た空閑遊真、溝口さんは玉狛第2(三雲隊)を率いるボーダー隊員・三雲修をそれぞれ初演から演じていますが、役に対する意識で変化した部分はありますか?

植田圭輔 関わる登場人物が増えて周りの環境が変化したり、目指すべきものが明確になったり、原作のシナリオ通りにキャラクターの心情の変化を表現できているんじゃないかなと思います。遊真としては、遠征選抜試験チームのメンバーに選ばれなければならないという思いや、楽しむことを忘れずに、玉狛第2の一員として戦うんだという感覚が強くなっていますね。

植田圭輔

植田圭輔

──植田さんにとって、ワーステにおけるテーマの1つが“楽しむこと”なのでしょうか?

植田 僕自身というより、遊真というキャラクターを通してのテーマですね。遊真は、亡くなった父親の友人に会うために近界から地球へ来ましたが、今は「三雲隊を勝たせて、全員で上に行く」という新たな目標を持って、修や(雨取)千佳と戦っている。なので、今まさに遊真は楽しんでいる最中なんじゃないかなと思います。

──修たちとの出会いによって、遊真の気持ちに変化が生じたんですね。溝口さんはいかがですか?

溝口琢矢 初演、第2弾を経て感じたのは、修を演じているとすごく疲れるということですね。身体的な疲労というより、“心の疲弊度”が高いというのかな。「B級ランク戦開始編」の台本を読ませていただいたんですけど、今回も修はやっぱりずっと必死なんです。逆に言うと、もし疲れなかったとしたら、たぶんどこかで楽をしてしまっているんだろうなと。なので、今回もしっかり疲れる必要があるなと思います。

溝口琢矢

溝口琢矢

──植田さんも、遊真を演じるうえで精神的な疲労を感じることはありますか?

植田 遊真を演じるときはむしろ心が疲れないように心がけています。セリフを話していて涙があふれてしまいそうになることもあるんですけど、感情を発露してしまうと遊真ではなくなってしまうので。

溝口 修は人間臭いところやもろい部分があるけれど、遊真は強い。遊真と修の対比をうまく表現するのが、(ワーステの)真ん中に立たせていただいている僕たち2人の役割なんじゃないかなと思います。

皆さん、「ワールドトリガー」しましょう!

──過去作のBlu-ray / DVDに収録されているワーステのバックステージ映像を観ていても、和やかでありながら、熱く作品作りに臨んでいるカンパニーの雰囲気が伝わってきます。演出の中屋敷さんを中心に、良い形でクリエーションをされているのだろうなという印象を受けました。

植田 ワーステの現場はもはや部活ですね(笑)。

溝口 ははは! 特に中屋敷さんと圭輔くんはマブダチみたいな関係だなと思って眺めてます。

植田 中屋敷さんがすごいのは、演出プランの明確さ。「ここにこういう映像が入って、ここにこういう照明が入るから、こういうオーダーでいきましょう」というふうに、最初の段階から頭の中でイメージができあがっているんです。

左から溝口琢矢、植田圭輔。

左から溝口琢矢、植田圭輔。

左から溝口琢矢、植田圭輔。

左から溝口琢矢、植田圭輔。

溝口 今回の「B級ランク戦開始編」の中に、勝利を思い描く力の強さにまつわるエピソードが出てくるんですが、中屋敷さんはワーステにおける“勝利への確信の持ち方”が僕たちとは違いますよね。

植田 確かに。しかも、ただ思いが強いだけじゃない。

溝口 そうなんですよね。しっかりと具体性を持って物事を進めていくことが大切だということを示してくれている気がします。僕たちがその気持ちに適当に応えていたら、中屋敷さんはやっていられなくなっちゃうと思う。

植田 発狂するかもしれない(笑)。

溝口 (笑)。安心感があって居心地も良いけど、お互いにプレッシャーをかけ合えるのが良い座組の在り方だと思うので、一緒に作品を作るうえで理想的な作り方ができていると思います。僕、中屋敷さんの「皆さん、『ワールドトリガー』しましょう!」っていう言葉がすごく好きなんですよ。「みんなの中に『ワールドトリガー』に対する愛があるでしょ? その愛をちゃんと表現しようよ。そうしたらこの舞台は成功するから」というメッセージだと受け取っているんですけど、その言葉にいつも鼓舞されています。

映像出演に声の出演、観客を巻き込んだ演出も?

──“「ワールドトリガー」する”、とても良いフレーズですね。前作「大規模侵攻編」が開幕した際、溝口さんが「派手な戦いが多くなっている」とおっしゃっていましたが、ボーダー同士の模擬戦の様子を描く「B級ランク戦開始編」では前回以上に激しいバトルが展開しそうです。

植田 僕、かなりやんちゃ小僧なので(笑)、バトルが大好きなんですよ! B級ランク戦には「ワールドトリガー」らしさが詰まっているので、「ようやく来たー!」という感じがしています。

溝口 今回はセリフよりも動きで表現するパートが多そうですよね。中屋敷さんも「動ける人を集めました」と言っていましたし。でも、修に関しては指示するシーンが多そうなので、身体よりも口をたくさん動かしている気がします(笑)。

初演では「『ワールドトリガー』の世界を舞台でしっかり表現できた」という自信が持てたと同時に、課題もたくさん見つかって。第2弾ではそれをどう打破するかにチャレンジしました。第3弾に挑戦することへの不安はやっぱりあるんですけど、ワーステのど真ん中には中屋敷さん、圭輔くん、(其原)有沙ちゃんがいてくれるから、大丈夫だと思える。強い絆で結ばれたメンバーでワーステを作ってきた自負があるから、そこがブレなければ第3弾も良い作品にできるんじゃないかなと思います。

左から植田圭輔、溝口琢矢。

左から植田圭輔、溝口琢矢。

──また、今作には、迅悠一役の高橋健介さん、太刀川慶役の近藤頌利さん、風間蒼也役の廣野凌大さん、緑川駿役の高橋陸人さん、佐鳥賢役の山内涼平さんが映像出演するほか、レプリカ・林藤匠役の鯨井康介さん、烏丸京介役の田村心さん、嵐山准役の小南光司さん、雨取麟児役の櫻井圭登さんが声の出演で参加します。実際に出演するキャスト以外の方が参加することも、本作のポイントの1つになりそうですね。

植田 B級ランク戦では、指令役であるオペレーターがものすごく重要な役割を担っていると思うんです。彼らが映像出演や声の出演で参加するということで、原作をご存じの方には「あのシーンがあるのかな?」と期待してもらえるんじゃないかと。戦闘員がいて、オペレーターがいて、解説者もいるので、映像出演や声の出演をする人がいた方がより効果的な演出になると思うんですよ。この構図、めっちゃ“「ワールドトリガー」できそう”な予感がしませんか?

溝口 ね! すごく“「ワールドトリガー」できそう”! しかも、今回は観客がいる会場で戦っている設定なので、お客さんを巻き込んだ演出が入るんじゃないかなと予想しています。