劇団青年座 青年座研究所ってこんなところ! 七転び八起き、研究生奮闘記|実習公演ビフォーアフター、研究生による座談会&稽古レポート

岸田國士の台本に悪戦苦闘中

──今回の実習公演では岸田國士の作品「動員挿話」と「歳月」を、各2チームに分かれて上演します。稽古を観させていただいて、演出家の磯村純さんからの指摘1つひとつに皆さんが悩み込んでいる印象を受けました。実際、同じシーンを何度も何度も繰り返し稽古していましたよね?

江澤蛍

江澤 読み稽古から立ち稽古に入ると、新しい感情も出てきて、その新鮮さを楽しみたいんですけど、いつも精一杯になってしまって……。

葛山 今回は短いセリフで会話するのではなく、長いセリフが多くて、読みの段階では読んでいればよかったものが、立ったときに自分が何を考えて、どう動くか、頭を回さないといけないので苦労しています。

老川 自分がやりたいように動くと相手役を無視することになってしまうので難しいです。

小松 僕は相手役としっかりキャッチボールをして芝居することが課題です。

──小松さんは磯村さんから「動きが“C-3PO”みたいになってるぞ!」って言われてましたね(笑)。

小松 まだ役を模索中で、演じるうえで目的が定まらないまま「動かなかきゃ!」と思ったら右往左往して、“C-3PO”みたいになっちゃいました(苦笑)。

──あれ? もしかして右手、ケガしてますか?

小松亮太

小松 はい……役作りの一環で安達くんと一緒に筋トレしてたら、右手がグキッと……。

安達 次の日に「全治3週間」と連絡が来ました。

──自主トレも大事ですが、気をつけてくださいね(笑)。安達さんは「動員挿話」で友吉役ということで、小松さんと同じ役なんですよね。

安達 本読みの段階では磯村さんから「セリフを江戸弁にしてほしい」と言われ、変換できるサイトで江戸弁に変えました。稽古で間違えながら格闘している感じです。

田邉 私と老川は「歳月」で同じ八州子という役を演じます。老川の演技を観るのはとても勉強になりますね。

老川 私は勝気な八州子、田邉はしおらしい八州子というアプローチです。どんな方法で演じても、大事な部分は磯村さんから共通してご指摘をいただきます。

葛山 中身に関しては僕たちの自由に作らせていただいてます! 役を深めていく作業は、あくまで個人作業という感じで。

──磯村さんは、皆さんからすると、どんな演出家ですか?

安達 面白い……明るいおっちゃんです(笑)。

葛山 磯村さんは1年目、本科の実習公演「夏の夜の夢」で演出をしてくださり、セリフの授業も見てくださっていました。僕たちは公演の稽古が始まってからも午前中に基礎的な授業があって、そこで先生方から発声や身体の使い方について「まるでなってない!」と言われ、午後は稽古でダメ出しを受け……授業と稽古をどういうバランスで両立していくか? という壁には全員がぶち当たってるんじゃないかな。

report 3 10月9日 立ち稽古①
さて、いよいよ今日から立ち稽古。本番では着物を着て舞台の上に立つため久しぶりに自前の着物に袖を通す。袂を持ち、湯呑みを出す場面は、私が公演に出演させていただく上で、一度は経験してみたかった所作のひとつだったのでワクワク、ドキドキした。しかし、着物を着て動くということにおぼつかなく、日本女性として恥ずかしいことのないようにがんばらなくっちゃ!と思う。(脇山杏菜)
report 4 10月12日 立ち稽古②
荒立ちが終わり、セリフも動きも不自然さがなくなってきました。しかし、覚えたことを言い、決まった段取りをなぞってしまうもどかしさを感じながら日々稽古が続いています。
今はまだ動きを探ることに神経を使っている部分が多く、役同士のコミュニケーションが取れていないように感じます。来週からいよいよ小屋入り。仕込み、衣裳合わせがあり、本番と同じ衣裳、小道具、セットで稽古が始まります。現状打破となるか。(野中雄志)

得意もあれば不得意も

──実習公演は日頃のレッスンの成果を発揮する場でもありますよね。青年座研究所には発声や声楽、セリフ、ダンス、アクションなど12種類の基礎カリキュラムがありますが、それぞれが課題に感じているレッスン、または得意なものはありますか?

江澤 私はダンスの授業が好きです。毎回振りが違って、曲に合った身体の使い方を楽しめます。

葛山 ダンスは好きなんだけど苦手だな……身体が硬いので。研究所のレッスンは身体を使うことが多くて、「自分の身体がここまで思い通りにならないものか!」ということを日々痛感させられる。

田邉 私も身体を動かすことが苦手で、ダンスとなると音楽やテンポに合わせるので、ちぐはぐになってしまう。それを課題に感じてます。好きなのは発声の授業。“うわべでしゃべるセリフ”と“相手を意識したセリフ”がすごく違うということがわかるんです。

左から安達絹二郎、葛山陽平、小松亮太、江澤蛍。

安達 発声の授業で新しい発見があると、稽古で試してみたくなるよね。僕が最も苦手なレッスンは身体の使い方を勉強するアレクサンダー・テクニークかな。姿勢が悪くて、腰を反っちゃう癖があるので。

老川 私もアレクサンダー・テクニークと、それを応用するムーブメントが不得意。20数年生きてきた身体の癖を直すためにどうしたらいいか? 具体的につかめなくて。

小松 僕はとても音痴なんですが最近声楽が好きになりました。技術的なことを教えていただき、実践したら同期から「音程がよくなった!」と言われて自信がついたんです。 何より音楽の楽しさを知って、歌うことが大好きになりました(笑)。

──さまざまなハードルがあるんですね。実習公演の本番で皆さんがどのように成長しているのか楽しみです。

report 5 10月17日 立ち稽古③
荒立ちでセリフが入ってくるようになると本読みの段階よりも相手や周りをもっと意識するようになりました。そして距離感や位置関係、視線などによって人間関係がより見えてきます。そうすると、どうして自分の役がこのタイミングでセリフを発するのか、発さないときは何を考えているのか想像しやすくなり、役のディテールが増え、少し近づくことができた気がします。作品の良さ、それぞれ役の良さを伝えられるようがんばります!(亀山明奈、舟橋祐希)
report 6 10月23日 仕込み
いや~仕込みました。「岸田國士集」稽古場での稽古が終わり小屋入り……。
今回で仕込みは本科から含めて3回目ということもあり、とってもスムーズに作業が進みました。セットが立って今回の公演のイメージが膨らみ、みんなワクワクしながら仕込みの作業をしていました。これから自分たちで立てたセットでの通し稽古が始まります。
このセットが私たちのイマジネーションをサポートしてくれます!
この舞台で稽古をするのが楽しみです!!(須賀龍之介、山本悠貴)
「劇団青年座研究所」
劇団青年座研究所

劇団青年座研究所は、これまでに1000人を超える卒業生を演劇界・芸能界に送り出してきた。その特徴は充実したカリキュラムと多彩な講師陣にある。基礎的な身体訓練から実践的な俳優訓練まで、経験豊かな講師陣が俳優としての才能を導き、舞台、映像の現場で活躍できる人材の育成を目指している。劇団青年座研究所では青年座や演劇界を背負って立つ若い力、新しい感性と強い意志を持つ俳優志望者を募集中。2018年度本科入所試験は、1次募集を2018年1月20日(土)、2次募集を3月1日(木)に実施。実習科の入所試験は、2月28日(水)に行われる。募集要項・願書の請求は公式サイトで確認を。