“正直に芝居する人たち”でまっすぐ挑むド・コメディ、松本哲也×葉山昴×杉田大祐×佐藤正和が語るゴツプロ!Presents 青春の会「大洗にも星はふるなり」、作者・福田雄一もエール (2/2)

正直で可愛げある人たちが演じる「大洗」

──皆さんが演じる役のキャラクターについても教えてください。

葉山 この物語は、とあるマドンナを巡って、自分こそが彼氏候補だと思った男たちが言い争いになるというお話ですが、僕が演じる杉本は、ちょっとナルシストで、自分は周りとは全然違うと思っている、勘違いしているような男だと思います。映画版では山田孝之さんが演じられていた役で、名優がやっていらっしゃる印象が僕自身の脳裏にものすごくこびりついちゃってるんですけど、今回はそれとは一緒にならないように、自分なりに役を作っていきたいなと思ってはいます。

佐藤 昴は本当にキャリアがあっていろいろ達者なんですが、オーディションでは松本さんがその昴の羽を次々ともいでいく感じで、昴がどんどん追い詰められて「どうしたらいいの?」っていう状態になっていく様が役のイメージと重なり、本当に面白かったです。昴はナルシストって表現したけど、杉本は本当にクレイジーな人物でナルシストのレベルが違うというか(笑)。その杉本が枯れていく様を見るのは本当に楽しみですね。

葉山 ああ、確かにそういう役かもしれないです。最初は皮をかぶっているんですけど、ハプニングや周りに影響されてどんどん狂っていく。ワークショップやオーディションの場だと、僕もどうしても「上手にやりたいな」と思ってしまうんですけど、「そういうのもういいから。そういうのを見たいわけじゃないから」って感じのことを、オーディションで松本さんがおっしゃるので(笑)、自分でもどうして良いかわからなくなっていく感じがありました。結果的にそれが、杉本という役にあっていったのかもしれないです。

佐藤 昴ファンの方は、今回は上手じゃない葉山昴が見られます(笑)。

左から佐藤正和、葉山昴、杉田大祐、松本哲也。

左から佐藤正和、葉山昴、杉田大祐、松本哲也。

松本 台本の最後のほうにあるセリフなんですけど、“海の家で働いている人たちはみんな嘘のない、正直な人たちだ”っていう一説があって、今回それが稽古から本番に向けて大事なキーワードだなと思っているんです。なので、オーディションでも正直に芝居できる人を選んだつもりだし、実際にオーディションで選んだ5人のうち3人は二十代なのでまっすぐに芝居する。杉ちゃんは三十代だけど初舞台なので、やっぱりまっすぐに芝居する。一方で葉山くんはキャリアを重ねてきての39歳だから、正直さがちょっと難しくなってきているところだと思うんです。そこを今回はなんとか正直に芝居しようよ、というのがテーマで。実際、二十代と初舞台の人がいたら、葉山くんもなりふり構ってられないと思うんですよね(笑)。そこが一番大事だと思います。それにコメディって、手だれの人たちとやるとすぐに形がまとまるんだけど、今回は全然それは無理そうな(笑)、全員バラバラの顔合わせなのが良いと思いますね。

佐藤 今松本さんが言ったこと、全部自分にも跳ね返ってくるなあ(笑)。

一同 あははは!

──杉田さんはバイト仲間の1人、猫田役を演じます。

杉田 昴くんが言ったように、勘違いしている人たちばかりが登場しますが、僕が演じる猫田は特に自分に正直な人で、自分のルールがあるというか……器用そうに見えるけど不器用というような、吐いた唾を簡単に飲み込んじゃうような人なのかなと。僕はなんでも身構えちゃうところがありますが、猫田はその場の勢いでポンっとリアクションするのがすごく自分に正直で、いいやつだなとは思います。

松本 「大洗」では、猫田に限らず、登場人物がみんなけっこうひどいセリフを言うんですよ。

佐藤 そうだね(笑)。

松本 だからやっている人たちに可愛げがないとなかなか大変だと思うんですよね。そういう意味では、さっきの“正直さ”の話に通じますけど、杉ちゃんは可愛げがあるので役に合っていると思います。

左から佐藤正和、葉山昴、杉田大祐、松本哲也。

左から佐藤正和、葉山昴、杉田大祐、松本哲也。

──そして佐藤さんは、海の家の撤去を勧告にしやって来る、弁護士の関口役を演じます。

佐藤 僕はこれまで3回マスター役を演じていて、関口役は初めてです。マスターは登場人物の中で、ズレてはいるけどクレイジーではない役。でも関口は、ほかの人たちとは違ったスイッチでクレイジーになる役なので、そこが面白くなきゃいけないよなと思っています。最近はあまり“面白くしなきゃ”ということを考えるような役をやっていなかったので、面白くしなきゃって考えると不安です(笑)。それに、ブラボーカンパニーの作品を、自分がプロデュースして別の演出家で上演するということも、今回僕の中では大きいです。ブラボーカンパニーのメンバーに、今回の舞台を「面白い!」って言わせたいじゃないですか。そのためにどうするかっていうことはずっと考えながら稽古を進めていくようになる気がします。

──俳優としての佐藤さんに、松本さんが期待していることはありますか?

松本 オーディションのことで頭がいっぱいで、佐藤さんのことまでまだ考えが至ってないんですけど(笑)、佐藤さんとマスター役の井上さんには、脳みそじゃなくて身体で体現してもらい、みんなを引っ張っていってもらいたいなと思いますね。関口役についても、マスター役を演じている佐藤さんは、普段の佇まいとかからなんとなく想像がつくんですよ。でも関口役を演じる佐藤さんは想像がつかない(笑)。どう演出していくかは、これから考えます。

佐藤 怖い怖い(笑)。

一同 あははは!

松本 でも今日話をしていて、配役のバランスがすごく良かったんだなって実感しました。うん、確かにいいバランス!

左から佐藤正和、葉山昴、杉田大祐、松本哲也。

左から佐藤正和、葉山昴、杉田大祐、松本哲也。

──台本上には、いわゆる時事ネタも入っています。初演から18年、台本には手を入れるのでしょうか?

松本 いや、台本は基本的に変えずにやります。2024年ではない、本作が生まれた2006年頃の話なんだ、というふうにお客さんの意識を持っていかせられるか否か、ということじゃないですかね。みんなでタイムスリップするような感じになるというか。

青春だな…と感じられる1時間40分に

──本作では夏の海の家のバイトで知り合った面々がクリスマスに海の家で再会する、という形で物語が進行します。ところで皆さん、夏のバイトの思い出を教えてください!

佐藤 僕は学生のとき、いわゆるリゾートバイトというか、ホテルの住み込みに友達と行きましたね。保養所みたいなところで2週間、配膳の手伝いとか部屋の清掃とか。

一同 へー!

佐藤 昼間は割と空いてて何をしてもいいっていうのと、3食ついて温泉にも入れるのが良かったな(笑)。

葉山 そういえば僕は、夏休みに家庭教師のアルバイトをやったことがあります。小6と中1を教えていたんですけど、勉強が嫌いな子供たちに誘われて一緒にゲームをやっているところを生徒の親御さんに見つかって、めちゃくちゃ説教されました。

佐藤 それはそうだよ!(笑)

葉山 ですよね(笑)。

左から佐藤正和、葉山昴、杉田大祐、松本哲也。

左から佐藤正和、葉山昴、杉田大祐、松本哲也。

杉田 若いときの話ではなく昨年のことですが、知り合いのお店で「FUJI ROCK FESTIVAL」の出店の手伝いをしたんです。最初は楽しそうだなと思ってたんですけど、暑さも厳しいし、ちょうど朝までやっているエリアの店だったので、お客さんが沖縄そばを求めて1日中並んでて……あれは大変でした。でも最後終わったときに部活感っていうか、みんないい大人でしたけどスクラムを組んで「俺たちやったな!」って言い合ったのが楽しかったですね。

松本 僕はあまり、夏のバイトの思い出ってないですねえ。

──そうなんですね。海の家でバイト、という経験は皆さんないですか?

一同 ないですね。

松本 最近の海の家は、昔と違ってクラブみたいなんだよね?

葉山 そうみたいですね。せっかくだから、海の家、取材に行きたいですね。

佐藤 そうだね、みんなで海の家、行きたいね!

左から佐藤正和、葉山昴、杉田大祐、松本哲也。

左から佐藤正和、葉山昴、杉田大祐、松本哲也。

──これまでたびたび上演されてきた「大洗に星はふるなり」ですが、2024年版はどんなところが魅力になりそうでしょうか?

葉山 まずはオーディションで選んでいただいたので、その責任感を持ってやりたいと思っています。作品的には、ブラボーカンパニーさんがやってきた歴史もあるし、映画版もあるし、ものすごい期待値が上がる公演だと思いますね。また福田さんと松本さんの世界観って全然逆のイメージがあって……パワーとテンションで笑いをとっていく福田さん、緻密に計算された人間模様や人物造形が魅力の松本さん、この2つがどのような化学変化を起こしてどういう方向性に持っていけるかが見どころです。ぜひたくさんの方に観に来ていただきたいです。

杉田 もう全部昴くんが言ってくれましたが(笑)、本当に福田さんと松本さんという、笑いに対して真逆のお二人の顔合わせが最大級の魅力だと思いますし、僕含めオーディションで選んでいただいた5人はみんな真面目なので、そこにどう喰らいついていくか。本番が、どのように出来上がるのかを楽しみにしていただけたらと思います。

松本 魅力はこれから稽古する中で見つかっていくでしょうけど、目指していきたいなと思うのは正直さと爽やかさ、清々しさ、気持ちよさ、懐かしさ。1時間40分くらいの作品ですが、いろいろなことを忘れて純粋にゲラゲラ笑えるもの、心がちょっと軽くなって帰れるようなものにしたいと思っていています。

佐藤 稽古場で出すものは出していき、実際に舞台を観たお客さんが「わあ、これまとめるの大変だったろうな、演出でどうにか収めたのかな」ってくらいのお芝居になるとうれしいなと思っています。つまり、松本さんに引き出されるんじゃなくて、溢れ出たものを松本さんが収めた、というくらいになりたいなと。そして、青春の会だけに、「青春だな」という笑いのお芝居になるといいなと思っています。

左から佐藤正和、葉山昴、杉田大祐、松本哲也。

左から佐藤正和、葉山昴、杉田大祐、松本哲也。

作者・福田雄一が、青春の会にエール!

大洗は僕にとって、とても大切な作品です。舞台もそうですが、僕の映画監督デビュー作でもあります。こうしてたくさんの皆さんに再演してもらえることはとても嬉しいです! 特に役者さんがみんな若いというのが嬉しいですね! 僕のブラボーカンパニーは役者がみな50を過ぎてしまってさすがに大学生の役は出来なくなってしまいました。笑笑。たくさんのお客様に楽しんでいただけることを願います!(福田雄一)

プロフィール

松本哲也(マツモトテツヤ)

1976年、宮崎県出身。日本映画学校・俳優科を卒業し、2010年に小松台東を旗揚げする。以降、全編宮崎弁で書かれた「デンギョー!」をはじめとする劇団公演や、外部への書き下ろし・演出・出演、テレビドラマの脚本なども手掛ける。近年の主な作品に「左手と右手」「シャンドレ」「オイ!」など。

葉山昴(ハヤマスバル)

1985年、神奈川県生まれ。テレビドラマや舞台を中心に活動。近年の主な出演作に舞台「白虎隊 ザ・アイドル」、二人芝居「ふたりよがり」、wag.「物語ほどうまくはいかない物語」、東京印「雨月」など。

杉田大祐(スギタダイスケ)

1986年、静岡県生まれ。モデルとして活動をスタートし、CMなどに出演。その後俳優としてテレビドラマや映画に出演。今回が初舞台となる。

佐藤正和(サトウマサカズ)

1970年、福岡県生まれ。1990年に福田雄一と共にブラボーカンパニーを旗揚げ。またゴツプロ!にも所属する。さらに2020年に井上賢嗣と青春の会を立ち上げた。主な出演作にテレビドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズ、「半沢直樹」「おじさんはカワイイものがお好き。」、映画「HK/変態仮面」「銀魂」、近年の主な出演作にゴツプロ!「イノレバカ」「無頼の女房」、ゴツプロ!Presents「父と暮せば」など。