十代から八十代まで、世代の幅広さもカンパニーの魅力
──本作にはさまざまなバックボーンを持つパフォーマーが集いました。バレエダンサーたちの踊り、舞踏家の踊り、歌舞伎俳優の尾上眞秀さんと、森山さんが皆さんに求めるものは少しずつ違うのではないかと思いますが、どのようなことを意識されていますか?
森山 そうですね、少しずつ違うものを求めている部分は、一応、あります。でもそれぞれでありながら、互いに融合できるような部分を見つけられたらいいなと思っているので、特別違いを意識せず稽古を進めています。ベクトルの向きは違うかもしれませんが、皆さん同じ強い思いと敬意を持っていますし、僕自身、若い頃から舞踏家のような身体を持ちたいと思うと同時に、バレエダンサーのような身体も取得したいと欲張っていた人間の1人なので(笑)、あまり踊りの出自で分け過ぎたくないなと思っています。
──麿さんは皆さんと共演されてどんな印象をお感じになっていますか?
麿 バレエの方たちとピタッとくっついて踊るとか、対峙するようなシーンはあまりなくて、たとえば座敷童子として僕とすれ違うダンサーがいたりはしますけれど、いわゆるクラシックの踊りというのではないし、“妖怪”という設定があっての森山さんの振り付けなので……。対外的にはもちろん、舞踏とクラシックバレエがどう絡み合うのかということがあると思いますが、それは当然のこととして、そこでちょっとした化学反応が起きて“ハラハラ感”が生まれればいいなと思っています。「遠野物語」だからと言ってあまり土俗的に地べたをはいずり回る動きだけじゃ面白くないし、人間は欲望で飛翔したりというダイナミズムがあるので、バレエダンサーの方の跳躍にも大きな意味があると思いますし。……ただ、僕はいたずらしたいんだよな。バレエダンサーに対するコンプレックスがあるから。
──え、そうなんですか?
麿 バレエの方たちは跳べたり、くるくる回ったりするから。でもその思いは、作品で生かせるんじゃないかなとも思っています。そういうのは当然振付の中でもあって、たとえば主役の石橋さんが飛べないようにと、足を持って引き摺り回そうとしたりするんですけど、そういう振りに、二重の意味が出てくると思うんです。1つはさまよえる青年のイニシエーションとして、もう1つはバレエダンサーのイニシエーションとして。もしかしたら森山さんは、ある意味ちょっと意地悪に考えてるんじゃないかなあと思ったりもするのですが、あまり激しくやると喰ってるように見えてしまうかもしれないし……いや、でももっとやって、青年がもっともっと悲惨になって、それがいかに浄化されていくか、というふうにすることもできるかもしれない。
森山 そうですね、もっと喰ってもいいかもしれないですね。
麿 いずれにせよ「遠野物語」に描かれる不気味さと、浄化がもっと表現できたら、さらに面白くなるんじゃないかなと思っています。
──リハーサルを拝見して、舞踏手たちは山や土、バレエダンサーは風のようだなと感じました。その中で眞秀さん演じる少年Kは光のようだなと。眞秀さんの存在感について、お二人はどのように感じていらっしゃいますか?
森山 光のようですよね、キラキラと……光の種というようなイメージはあります。僕はいつも舞台をやるとき、“種植え”をする気持ちで取り組んでいて、たとえば若い子たちが何かをつかみ取る瞬間が見られたり、その場を作っていくことが楽しくて。彼もこれからの歌舞伎役者で、これから歌舞伎をやっていく中でいろいろな体験が歌舞伎により生かされてくると思いますし、でもすでに歌舞伎役者としてのプライドをしっかりと持っていそうな感じがびしびし伝わってくるので(笑)、種の1つを今植えるようなことができたらいいなと思っています。
またこのカンパニーは、世代の広さも魅力だと思うんです。麿さんの世代がいて、眞秀さんの世代がいて、これほど幅広い世代が場を共有する時間はものすごく尊いと思いますし、それこそが伝承ですよね。その場に入れることに僕もワクワクしています。ここで眞秀くんが何を感じるのか、10年後この公演を彼がどういう風に体験として思い出せるかということが楽しみです。
脈々と続く日本の踊りを通し、“これから”につながる
──今回、森山さんはシシ踊り(鹿踊・獅子踊)を習われたと聞きました。シシ踊りは400年以上前から遠野に伝わる郷土芸能で、鹿や獅子など四つ足の“霊獣”たちを表現した踊りだそうですが、実際にシシ踊りを体感したことで、森山さんが発見したことがあれば教えていただきたいです。
森山 シシ踊りの稽古は遠野に行って一番時間を費やした部分なんですが、その土地で受け継がれてきた舞踊を、普段ダンスをしていない方たちから習うことは、すごく刺激的でした。板澤しし踊り保存会の皆さんに連日稽古をつけていただいたのですが、僕たちダンサーとはまったく違う感覚で踊りをやられていて、太鼓が鳴ったらみんなが寄ってきて踊り始めるんです。その感覚にはうらやましさを感じました。で、終わったら一緒に酒を飲んで……皆さん「それが目的です」と言いながら、ふざけ合うようでありつつ真剣に踊っている姿がすごく新鮮で刺激的でした。
「踊る。遠野物語」ではこのシシ踊りを一番のメインにしたいと思い、新しいシシ踊りをと考えて習いに行ったのですが、結局原型に近い踊りをバレエダンサーたちにもやってもらうことになりました。もちろんアレンジはするんですけど、そこでもらったものを大事にして、ちゃんと届けたいなと思って。と同時に、特攻隊員である“私”が許嫁に「会いたい」と思いながら亡くなっていった思いを踊りによってどう昇華させるか、踊りとは何たるかを考えていく中で、遠野でたくさん見聞きして感じたことを、シシ踊りのシーンにぶつけたいなと思います。
森山 ちなみに数日前、「GIGAKU」プロジェクト(編集注:古代の仮面舞踊劇「伎楽」に着想を得て、新たな“GIGAKU”を住民たちと生み出すプロジェクト。森山は同プロジェクトの芸術監督として関わっている)で奈良の明日香村に行った際、実は偶然麿さんにお会いしたのですが(笑)、伎楽では獅子舞が演じられるんですね。そういった“シシ”とのつながりを学ぶ中で、遠野のシシ踊りの独特さも感じましたし、脈々と続く日本の踊りにつながることで「これから」も同時に感じることができるんじゃないかと。シシ踊りのエネルギーをお客さんと出演者が共有し合うことで、この作品を締めくくれたらと思っています。
髙野 実は森山さん、板澤しし踊りの皆さんに奥伝を授けてもらったんですよ。普通、よその人には教えてくれないものなのですが……。
麿 そうですよね、大事なお祭りの踊りは、よそから来たやつに教えるものか、という意地があるでしょうから。
髙野 シシ踊りの踊り手さんたちは、普段、昼間はそれぞれ別のお仕事をなさっていて、祭りの時期が近くなると、夜な夜な集まって練習なさるのです。見た目は少しいかついお兄さんたちで、最初は「東京からダンサーとやらが来た、どれどれ」というような感じもあったのですが(笑)、森山さんが真摯な態度で臨まれたので、奥伝まで教えてくれたのかなと思います。
森山 1年半前に1回目に遠野に行ったときは、ただただ圧倒される感じだったのですが……。
髙野 2回行ったのが良かったですね。
森山 そうですね。稽古は皆さん基本的に庭でするんですけど、ゴツゴツとした場所で踊っていて。僕もそこで引いてはならないと思って、お返しに即興で踊りました。太鼓をガンガン鳴らし、砂利の庭で膝を擦りむきながら踊って、ふと見上げると満月が輝いていて……。
麿 みんな、子供のときからその村に伝わる踊りをやっているわけでしょう?
森山 そうなんです。でもみんな細かくは教えてくれないし、みんなちょっとずつ違うんです(笑)。
髙野 お囃子たちも、皆さんちょっとずつ音がずれていたりもするんだけど、それも気持ち良さにつながっていくというか。
一同 あははは!
髙野 その稽古を経て、踊り手の皆さんと本気度が響き合ったような感じがありました。それで、シシ踊りの中でも彼らが見せ場として行う、一番激しい踊りを森山さんに授けてくださって。それは供養の踊りなんですよ。お盆などの時期に死者の供養のため、真ん中に大きな柱を立て、それを神木のようにして周りをぐるぐると回りながら踊るものなんですけど、それがこの作品の最後と非常にマッチするなと。
麿 そのまま特攻隊員の内容みたいだな。“向こうの人たち”に通じるような。
髙野 まさに魂振りというのか、踊りの原点を見るような感じがしましたね。決してプロの稽古場では味わえないエネルギーが民俗芸能にはあります。
想像を超えるクリエイターたちの思いと熱意
──本作ではスタッフワークの多様さも魅力の1つです。横尾忠則さんが手がけたポスタービジュアル、絵本作家・森洋子さんが手がけた紙芝居の絵(編集注:関連企画として本作公式サイトで森山版「踊る・遠野物語」紙芝居が公開され、その絵を森が手がけた。語りは麿が担当している)も話題を呼びましたが、衣服と繊維を通したアートデザインを手がける眞田岳彦さんが舞台美術・衣裳を、ロックやジャズ、現代音楽など多様な音楽とコラボレートする尺八奏者の中村明一さんが音楽監督・作曲を手がけられます。
森山 今回、スタッフワーク面でも「遠野物語」に皆さまがいろいろな思いや熱を込めてアプローチしてくださっているので、それが最終的にどのように舞台に集約されるのか、僕も楽しみです。横尾さんと森さんのイラスト1つとっても、絵描きのお二人が「遠野物語」に対してまったく違うアプローチをしていますよね。こういうことってあまりないと思いますし、それぐらい、みんながこの作品に懸命にアプローチしてくださっている感じがすごく楽しいです。
──リハーサルでは、中村さんの尺八が始まった瞬間、稽古場の空気が変わるのを感じました。
森山 中村さんは「遠野物語」にそのまま出てきそうな雰囲気を持った方で、「この人しかいない!」と思って、非常に衝撃を受けました。
麿 中村先生の尺八の音が鳴り、それなりの衣裳を着て舞台に立てばもうそれだけでいい……というのが僕の思想ですから、音に包まれるというか、誘われるというか、抗うことなくそのままスッと立っている姿を見てもらえればと思っています。ただ、音のきっかけが取りにくいのは困っていますね(笑)。音楽的な才能がないとね、難しいらしいんだよ(笑)。そこにちょっと苦労していますが、うちのダンサーでそこに鋭いやつがいるので助けてもらっています。
森山 眞田さんともどれだけお話ししたかわからないくらい、コンセプトの部分からかなりお話ししてさまざまなアイデアをいただきました(笑)。ちなみにチラシビジュアルの撮影のとき、麿さんたちが和紙で衣裳を作っているのを見て、僕はもちろん、眞田さんもかなり刺激されたようで、その思いはほかにも波及していきました。
──森山さんご自身も、劇中で使うお面の制作をされたそうですね。
森山 ついつい作ってしまいました(笑)。それぞれが越境しながら作品に向かっていくのが好きで、自分のポジションについては各自責任を持ちつつ、それがクロスするのが良いと思うんですよね。
──最初に髙野さんが「遠野物語」を舞台にと思われた思いが、今具現化されつつあると思いますが、プロデューサーとしてどのような手応えを感じていらっしゃいますか?
髙野 確かに「遠野物語を舞台にしよう」と言い出したのは我々なんですが、そこから森山さんの世界がどんどん広がっていって、当初想像もしなかった奥行きが生まれていく。その過程がたまらなく楽しいんです。当然劇場に入るその日まで、本当の所舞台上で何が起きるかは森山さんの脳内にだけあるのですが、でもこちらも毎回“次に何が出てくるんだろう”というワクワクがあります。演者もスタッフも、その未知の部分を信頼しながらついていく。みんなが森山さんの人柄と感性を信じて、互いに支え合いながら1つの方向を目指している。その空気がまさに稽古場で育っているのを感じます。なので、僕自身もまだお客さんと同じように、本番で何が起きるのかを楽しみにしている立場です。作品がどんな形で立ち上がるのか、その瞬間を待ちながら、チーム全体が同じ熱を共有しているのがすごくうれしいですね。
──それぞれのクリエイティビティがぶつかり合いながら共鳴し合う、まさに踊りでしか表現できない作品世界となりそうです。
森山 僕にとってクリエーションとは、踊りとそれ以外がセットになったものなので、皆さんがそのような意識で向き合ってくださるのがうれしいですし、僕自身いろいろなインスピレーションをもらっています。僕のカラーということではなく、それぞれの思いがぶつかり合って「踊る。遠野物語」が出来上がってきている。そのことが楽しいし、そうでなければ「遠野物語」の世界観は表現できないんじゃないかとも思います。
プロフィール
森山開次(モリヤマカイジ)
1973年、神奈川県生まれ。21歳よりダンスを始める。2005年ソロダンス「KATANA」でニューヨークタイムズに「驚異のダンサー」と評され、2007年ヴェネツィア・ビエンナーレ招聘。2013年新国立劇場ダンス公演「曼荼羅の宇宙」で芸術選奨文部科学大臣新人賞、江口隆哉賞、松山バレエ団顕彰・芸術奨励賞受賞。同年文化庁文化交流使。主な演出振付に、新国立劇場バレエ団「竜宮」、全国共同制作オペラ「ドン・ジョヴァンニ」、東京2020パラリンピック開会式など。ダンサーとして国内外の芸術祭や舞台「千と千尋の神隠し」カオナシ役、NHK-BS「GIGAKU!踊れシルクロード」などに出演している。
森山開次official (@kaiji_moriyama_official) | Instagram
麿 赤兒(マロアカジ)
1943年、奈良県生まれ。ぶどうの会を経て、1964年に舞踏家・土方巽に師事したのち、唐十郎と出会い1965年に状況劇場の設立に参画。1972年に舞踏集団・大駱駝艦を旗揚げ。“天賦典式”と名付けられた様式で、国内外に広く知られるようになる。舞踏家として精力的に振付・演出・上演し続けている一方で、俳優としてもさまざまな作品に出演。舞踊評論家協会賞や文化庁長官表彰、ダンスフォーラム賞大賞、第1回種田山頭火賞、文化庁芸術祭賞大賞を受賞。著書に自身の半生を描いた「麿赤兒自伝」など。
舞踏 | BUTOH | 麿赤兒率いる大駱駝艦天賦典式公式サイト DAIRAKUDAKAN/TEMPUTENSHIKI Official Site
髙野泰樹(タカノタイジュ)
ファーストライト・キャピタル株式会社でキャピタリストとして未上場企業への投資業務及びファンドレイズ業務を担当後、株式会社K-BALLET(主宰:熊川哲也)にて事業戦略および企画立案を担当し、Bunkamuraとの共同プロジェクト「K-BALLET Opto」の立ち上げに携わる。のちに株式会社東急文化村へ転籍し、舞踊企画全般並びにオーチャードホール芸術監督補佐を務める。また、株式会社K-BALLET社外取締役、一般財団法人 熊川財団事務次長を兼任。
石橋奨也
舞踏・コンテンポラリーの表現を体感し、自分の表現をより深いものに
──石橋さんが演じられる特攻隊員役について、どんな思いを抱えた、どのような人物だと捉えていらっしゃいますか?
特攻隊員のドキュメンタリーをいくつか見ましたが、実際に飛んでいった人たちが抱いていたであろう恐怖や後悔の念は計り知れません。その中で、穴澤さん(編集注:福島県出身で、知覧から出撃した実在の特攻隊員)が婚約者に宛てた手紙の最後で「会いたい 無性に」という気持ちを表現できればと思います。
──これまでのお稽古の中で印象に残っているのはどんなことですか? 演出・振付・構成の森山開次さんの言葉や、共演者の方とのエピソードなど特に印象的だったことがあれば教えてください。
森山さんの表現に関するストイックさには驚かされました。雪女のシーンでは“私”が気が抜けたかのようにずっと座っているのですが、その際に特攻隊員は瞬きしない方が良いか聞いたところ「瞬きはせず、その影響で涙がでたらなお良い」と言われました。森山さんご自身も、過去の出演作品では、片足で立ち続けたり、瞬きをせずに極限まで身体を使って表現されていて、その全てを犠牲にする姿勢に感銘を受けました。他には、舞踏の方と初めて共演し、バレエと異なる身体の使い方や迫力に圧倒されました。
バレエが重力に逆らう浮遊感を表現するのに対し、舞踏では身体の重みを表現するので、このキャップが作品にどのような影響をもたらすのか楽しみです。
──K-BALLET Optoは“ダンスの深層を探る”ことをテーマにしたシリーズです。今回、石橋さんが挑戦したいと感じていること、あるいはすでに感じている手応えなどあれば教えてください。
役柄上、受けの演技が多くなると思いますが、一辺倒な演技にならないようボキャブラリーを増やしていきたいです。舞踏とコンテンポラリーの方々の表現をしっかりと体感し、そこから自分のバレエを通して、より深い表現ができるように努めたいと思います。
プロフィール
石橋奨也(イシバシショウヤ)
青森県生まれ。K-BALLET TOKYOプリンシパル。13歳よりバレエを始める。2010年、ゴー・バレエ・アカデミーに留学。2011年、同アカデミーの中国公演に参加。2012年、同校公演で「コッペリア」のフランツを踊る。2013年5月にK-BALLET COMPANY(現・K-BALLET TOKYO)にアーティストとして入団し、2022年6月にプリンシパルに昇格した。K-BALLET Opto第2弾「プラスチック」では「ビニール傘小町」に出演した。
大久保沙耶
自分なりの表現を探り、創り上げる過程を楽しみたい
──大久保さんは許嫁役ほかを演じられます。石橋さん演じる特攻隊員役とのシーンでは、どのような女性だと捉えて演じていらっしゃいますか?
許嫁と特攻隊員が海辺で再会するシーンがありますが、その場面は私がこの作品の中で一番好きなシーンです。私の思う許嫁(響子)は、常に前を向いて歩む、凛とした強い女性です。
響子は、1人とぼとぼと海辺を歩きながら帰らぬ特攻隊員のことを想い抱く中、彼(=魂)と出会います。
遠野物語第99話と内容が完全に一致するわけではありませんが、自分なりの響子像と思い合わせています。
「あなたを想う気持ちは確かにあり、あったが、私はもう私の道を生きている。」と辛い気持ちをグッと堪え彼の元を立ち去る姿に響子の強さを表現しています。
──ここまでのお稽古の中で特に印象に残っているのはどんなことですか? 演出・振付・構成の森山開次さんの言葉や、共演者の方とのエピソードなど特に印象的だったことがあれば教えてください。
印象に残っているのは、開次さんとのリハーサルの過程そのものです。新しく振り付けするシーンの稽古の始めには、必ず座ってお話しする場が設けられました。そこでは、役柄や背景、表現の意図などについて丁寧に共有してくださいました。開次さんは常に意見にオープンで、私たちダンサーを尊重してくださいます。
ある時、リハーサル中に急に開次さんが手を挙げて、「皆さん、困っています!!」とおっしゃったことがありました。作品を創る過程の中でもちろん迷いが出ることがあると思うのですが、それを率直にシェアしてくださることが嬉しく、またその場の一体感を生んでいると感じました。
常に穏やかで誠実なお人柄に、日々学ばせていただいています。
──K-BALLET Optoは“ダンスの深層を探る”ことをテーマにしたシリーズです。今回、大久保さんが挑戦したいと感じていること、あるいはすでに感じている手応えなどあれば教えてください。
今回のK-BALLET Optoでは、舞踏家や歌舞伎役者の方も参加されていることから、ダンスに留まらない“表現”という枠での挑戦だと思っています。普段はクラシックバレエを踊ることが多いのですが、クラシックには基礎があり型があります。ある意味“正解”があるということです。しかしこの作品では振付は決まっていますがその中での表現の方法は無限大だと思っています。普段交わることのない表現者たちに感化されながら、自分なりの表現を探り、本番までに創り上げていく過程を楽しみたいと思っています。
プロフィール
大久保沙耶(オオクボサヤ)
大阪府生まれ。K-BALLET TOKYOソリスト。7歳よりバレエを始める。2007年、プリンセス・グレース・アカデミーに入学。2010年にオランダ国立バレエ、2023年に東京シティ・バレエ団に入団。同年11月にK-BALLET TOKYOにソリストとして入団した。
尾上眞秀
少年Kは踊っているうちに感じてくる役
──眞秀さんは少年K役を演じられます。どんな人物だと感じて演じていらっしゃいますか?
あの世とこの世の間で存在している少年K。どのような役とは的確に言えませんが、踊っているうちに感じてくるんだと思います。
──ここまでのお稽古の中で、特に面白いなと感じているシーンがあれば教えてください。
大駱駝艦の方たちが“おもしろいぞー”と言いながら踊る所、森山さんのかっぱ踊り、ぼくも踊る最後の群舞(シシ踊り)。
プロフィール
尾上眞秀(オノエマホロ)
2012年、東京都生まれ。寺島しのぶとローラン・グナシアの長男。祖父は尾上菊五郎、おじは尾上菊之助。2017年に歌舞伎座「魚屋宗五郎」の魚屋丁稚与吉で初お目見得。2023年に歌舞伎座「音菊眞秀若武者」で、初代尾上眞秀を名乗り初舞台。




