誰も知らない、新たな“アリス”をあなたの街にお届け!田中夢羽・池上季実子・ROLLY・吉田要士がミュージカル「ALICE~不思議の国のアリスより~」に込める思い (2/2)

ROLLYにとってミュージカルの“家族”は、終わりがあるから美しい

──今回の「ALICE」は、11月から来年1月にかけて、東京公演以外にも、青森・愛知・大分・岐阜・熊本・大阪・長崎など全国を巡演します。津々浦々に作品を届ける醍醐味とは?

池上 最高ですよ。いつも「地方には来ないんですか?」と皆さんにお声がけいただくんですが、舞台って東京・大阪・京都・名古屋が主流ですよね。本作のように、もっと広く、さまざまな土地に自分たちが乗り込んでいって、生の芝居、生の歌声をお届けできるのはすごくうれしいですし、ワクワクします。東京までは難しいけど、隣の県や街程度なら来られる方、おばあちゃんやおじいちゃん、この作品が人生で初めての舞台鑑賞になるような方たちもいるかもしれない。たくさん刺激をもらって帰っていただきたいですし、そういう時間を私たちが提供できるのなら、それは光栄なことです。

吉田 僕たちも自信を持ってお届けできる作品ですし、舞台を初めてご覧いただく方にも、もってこいな作品だと思います。ファンタジックで音楽的にもきらびやかで素敵だし、ミュージカルならではの要素が詰まっていて、ハートの女王はどうして恐ろしい女王様になったのか、というオリジナルで豊かなストーリー性がある。公演が終わってから、三世代、四世代でご飯を食べながら感想を語り合って、コミュニケーションを深めていただけるんじゃないかなと思います。

──いろいろな都市で1回や2回限りの公演を上演しては移動し、また上演しては移動するというのは、俳優にとって負担が大きいのではないかと思うのですが。

田中 「クリスマス・キャロル」というミュージカルで昨年、おととしと全国を回らせていただいて、会場ごとにキャパが違うので、毎回リハーサルをするのは確かに大変ではあったんですが、その場所だけの作品を作れると思ったらすごく楽しいですし、その時間も愛おしいと感じられて、私は好きでした。

ROLLY ロックバンドだと、ツアー公演はよくあるんですよね。ただ、ツアーが終わってもバンドは続いていくし、メンバーも変わらない。一方でミュージカルは、同じメンバーで何カ月か稽古すると、その瞬間、家族になるんです。でも、終わりがあるところがまた美しくてね。千秋楽が終わったら次の日からは会わなくなる。寂しいけど、その美しさが僕は好きで。このときだけの家族でいろいろな場所に遠征に行くのは、僕としても久しぶりですし、楽しみです。

左から吉田要士、田中夢羽、池上季実子、ROLLY。

左から吉田要士、田中夢羽、池上季実子、ROLLY。

あなたは誰を主役にする?決めるのはお客様

──誰も知らなかった、「不思議の国のアリス」の前日譚がさまざまなメッセージと共に描かれる「ALICE」。お客様に特に観ていただきたい部分はどこですか?

田中 それぞれの登場人物に葛藤や使命があり、いろいろな愛の形がちりばめられているので、どんな人でもきっと共感できる部分があると思います。それにアリスは、劇中で描かれるさまざまな“人生の形”を否定することなく、真っすぐに受け止め、認めるんです。まるで自分のことのように相手の人生を大事にする、アリスの大らかさを感じていただけたらうれしいです。

吉田 僕は、ミュージカルだからこそできる表現や歌、ダンス、音楽が組み合わさったときに、観ている方の感情が何倍にも膨れ上がると思っていて。ぜひそれをこの作品で楽しんでいただきたいです。

ROLLY 私、姉が2人いるんですが、子供の頃に2人の姉と「長靴をはいた猫」を観に行ったことがあるんです。それからしばらくは「長靴をはいた猫」ごっこをしていました。この公演を観た子供たちにもぜひ、「ALICE」ごっこをしてもらえたら。

池上 観ていただきたいところは、もちろん全部ですよ! 舞台でしか感じられない華やかさや、声の強弱、いろいろなものを五感いっぱいに感じて帰っていただきたいですし、我々は毎日稽古をして、パワフルに臨みますので、そのパワーを受け取って「また行きたい」「行って良かった」と思っていただけたら。タカラヅカを観た人が目をキラキラさせて劇場から出て来たり、昔、ヤクザ映画を観たおじさんたちが映画館から肩で風を切って出て来たりしていた感じが、最近のテレビや映画にはない気がするんです。「ALICE」を観て、ウサギのように飛び跳ねる子供がいたり、女王のセリフをふざけてマネする人がいたり、それぞれに楽しむ様子があって良いと思う。舞台って残酷で、私がいくらセリフを言っていても、アリスしか観ないお客様もいれば、帽子屋ハッターしか観ないお客様もいるんです。お客様が主役を決めるというのも、舞台の面白いところ。自分にとっての主役は誰になるのかと考えながら、その時間を目いっぱい楽しんでいただきたいです。

プロフィール

田中夢羽(タナカユメハ)

2000年、長崎県生まれ。2016 MISS TEEN JAPANで、準グランプリに選ばれる。特技はギター弾き語り。趣味は編み物、油絵、デッサン。2021年に三ツ星キッチン「12人の〇〇な女優たち」に出演したほか、ミュージカル「クリスマス・キャロル」では2022年・2023年公演でマーサ役を演じた。

池上季実子(イケガミキミコ)

1974年、NHKのスタジオ見学中にスカウトされ、NHK少年ドラマシリーズ「まぼろしのペンフレンド」でデビュー。1975年の「はだしの青春」で映画デビュー後、1977年に大林宣彦監督の映画「HOUSE ハウス」で初主演した。NHK大河ドラマ「草燃える」、映画「陽暉楼」「華の乱」、テレビドラマ「男女7人夏物語」など代表作多数。舞台出演も多く、近作に新派特別公演「八つ墓村」大阪公演、Alexandrite Stage Produce「CHICACO」、舞台「後鳥羽伝説殺人事件」など。

ROLLY(ローリー)

大阪府高槻市出身。1990年、すかんちのVo&Gtとしてデビュー。バンド解散後はソロアーティストとして活動。音楽活動にとどまらず、ミュージカルや舞台などで活躍する。主な出演作に、「ロッキー・ホラー・ショー」「三文オペラ」、ミュージカル「ビッグ・フィッシュ」(白井晃演出)、「ア・ラ・カルト」シリーズ、「こどもの一生」など。12月21・22日、東京・パルテノン多摩にて「Christmas with ROLLY! 2024」を開催する。

吉田要士(ヨシダヨウジ)

1972年、神奈川県生まれ。イギリス・ロンドンにて声楽を学び、1998年に劇団入団。幅広いキャラクターを演じ、看板俳優として活躍した。近年の出演作に、ミュージカル「Now. Here. This.」「クリスマス・キャロル」「クラスアクト」、東宝ミュージカル「ゴースト」「マイ・フェア・レディ」など。