Dance Dance Dance @ YOKOHAMA 2018 / 近藤良平&MIKEY|ダンス界の異端児が初対談

大前さん、平山さんと僕でしかできないことを(近藤)

──近藤さんは今回、ガラを2作品上演されます。コンドルズでは過去作品の名シーンを組み合わせたもの、「近藤良平・ヨコハマ・ガラ」は大前光市さんや平山素子さんとの共作「intermezzo-本気のはしやすめ-」をはじめ、過去作品を集積したものとなります。

近藤 今回のコンドルズで一番のトピックは、野外ステージでやるということで。

MIKEY 象の鼻特設ステージ?

近藤良平

近藤 そう、わざわざそういう場所をDDDのために作るんだけど、そこでやるんです。海外では野外でもやったことがあるけど、いわゆるステージではないことが多いので、それが見どころですね。もう一方の作品では、僕がこれまでいろいろ関わってきた、例えば大前さんや平山さんと作ったものや、バレエダンサーを使って作った作品など、僕が創作したいろんな形のものを並べて、楽しんでもらえたらなと。あんまりクソ真面目にやっても面白くないので、自分なりのスタイルに変えつつ、野外のステージを楽しんでいただけたらなと思ってます。

──大前さん、平山さんとはどのようにクリエーションを進めていらっしゃるのでしょうか。

近藤 以前一緒にやったときは、3人とも土壌が違うところで活動しているので何ができるかを探っているうちに本番が来たという感じがあったので、今回はもう1回それを掘り下げてみようと。せっかくだからこの3人じゃないとできないことをやってみたいと思ってます。大前さんは面白くて、大阪人なのでケロっとしてる(笑)。でもパラリンピックの閉会式に出場していろいろ取り上げられることになったことで、本人的には思うこともあるみたいで。今回彼は車椅子で踊るんだけど、車椅子を背負って義足でやって来て、稽古場で車椅子を組み立てて乗るんです。彼にとっては、車椅子がパフォーマンスに使うものにすぎないと言うか、1つの衣装とか小道具と一緒なんだよね。対する平山さんは知る人ぞ知るテクニシャンで(笑)、奇跡的なくらい踊れる人です。年を重ねて「いつか動けなくなる」ってことに対して、より吹っ切れたのがカッコいい。そういう良さを、特に今の平山素子に感じます。

リズムから踊りが生まれる

──お二人はご自身で作曲もされるダンサーですが、動きと音の関係についてはどのように考えていらっしゃいますか?

左からMIKEY、近藤良平。

MIKEY 私はまずリズム体からですね。もともと日本囃子っていう踊りをやっていたんですけど、そこではまず踊りの前に楽器が全部弾けるようにならないと踊らせてもらえないんです。小さい太鼓から大太鼓(おおかん)っていう大きな太鼓、最後は笛ってひと通りお囃子の楽器を覚えて、それでようやく踊りをさせてもらえる。お囃子にもいろいろな音の種類があるんですけど、例えば獅子舞と狐が踊るときには“テンツクテンツクテンテンテン”ってリズムがあって、その最後の“テン”で狐は絶対に止まらないといけないんですね。でもそれには太鼓のリズムをちゃんと覚えてないとダンサーは止まれない。私の中で、音と踊りのルーツはそこにあるので、オリジナル音源で踊るようになっても、音と言うよりはリズム体をまず聴いて踊りを作るということをしてます。なので、まずリズムがありそこにグルーヴが生まれ、その上にメロディなりコードが乗って、最後にダンスという形で考えますね。

近藤 今日やったパフォーマンスもオリジナルの曲でしょ?

MIKEY はい。

近藤 あの曲も音と言うよりリズムだよね、今言っていた通りに。しかもそのリズムをすごく器用に、気持ちいいくらいに密に取るのがすごいね。今のいい話だよね。そこから来てるのかー!って面白い。僕も、今こんなに長くやってるからダンサーのふりをしてるけど(笑)、ダンスをうまく踊りたいとかそんなふうには思ってなくて。もともと南米で楽器を弾いてたので、「コンドルが飛んでいく」とか、“ジャカツクジャカツクダダダダ”とかって、リズム楽器やリズム弦をみんなで演奏するほうが実は好きですね。僕らが似てるところはそこかもしれない。音はヒップホップでもジャズでもよくて、例えば“タタタタタタン! タタタン!”なのか、“デデデジャーン! デデデデ!”なのかが大事。音楽とダンスがかなり密接にあるんです。もちろん全部音楽から動きを作るわけではなく1枚の絵から踊りが生まれることも、能で踊ることもあるんだけど、それでも音楽の部分は大事と言うか、好きだなって気がする。家にもトイピアノとかピロピロ鳴る楽器とかそういうものばっかりあるし、楽器ばっかり触ってるしね(笑)。

──MIKEYさんも最近の公演では確かに歌の分量が多かった気がしますが……でも踊り続けてください!

MIKEY はい(笑)。ダンスが好きでゲゲゲイを好きになったと言ってくれる人も多くて、もっともっとダンスが観たいという声をけっこう聞くんです。でも私は天邪鬼なので(笑)、そういう声があればあるほど踊らなくなっていくという部分はあるんですけど。

衣装のモチーフに“制服”

──コンドルズは学ランがトレードマークですが、東京ゲゲゲイもセーラー服やナース服など、制服をモチーフにした衣装が印象的です。制服を衣装のモチーフにするこだわりがあれば教えてください。

左からMIKEY、近藤良平。

近藤 僕たちはショボい理由で、始めた頃はダンスの衣装を選ぶことすら面倒くさかったっていう。

MIKEY あはははは(笑)。

近藤 だって大変じゃない? 考えるのが。それでみんなが共通して持っているものが学生服だったので、理由はそれだけ。例えば氣志團のようなカッコいい発想もなくて、標準学生服(笑)。それをたまたまずっと着てたら楽だなってことになったんですよ。今は着ると「本番だ」って気持ちになるし、確かにしっくりくるから楽だなと思うけど、着始めたのはたまたま。でも、たまたまだけど大事にしてる、結局は。

──前から伺ってみたかったんですけど、学ランって踊りにくくはないんですか?

近藤 動きづらいんじゃないですか(笑)。動きにくいし破けるし、ホラ(と膝のツギハギを見せる)。でも学生がこれを着て遊ぶわけですから何にでも対応するってことで(笑)。ただね、暑いですよ、やっぱり。インドネシアのバリ島で公演したときはものすごく暑くて、公演を早く切り上げたことがあるくらい。

──今回のコンドルズ公演も8月10日の野外ですよね……。

MIKEY うわーキツい!(笑)

近藤 そうそう(笑)。でも夜だからね。昼間だったらお客さんもキツいから!

MIKEY 私はたぶんなんですけど、中学生とか高校生になると男女ってバッと区別されるじゃないですか。男子なら学ラン、女子はセーラー服とかって。「あなたはこれを着てください」って選択肢が決められる。私はトランスジェンダーではないけど、「セーラー服いいな」ってあこがれててずっと我慢してたんですよね。でも大人になったから着られる(笑)。だから子供のときにできなかった夢を叶えてるって感じです(笑)。


2018年8月7日更新