止まらないシアターコクーン、5月以降の展開は?
ここでは「これからのシアターコクーン」に注目。2月に行われた会見で発表された通り(参照:2027年の再発進に向け、Bunkamuraが“これからの挑戦”を語る)、2027年度の再開に向けて、大いなるチャレンジが続く。
Bunkamura休館中、シアターコクーンの自主制作公演は止まることなく、シアターコクーン以外の場所で展開される。ただし“シアターコクーンでやるはずだった演目”を別会場でやるのではなく、“作品に合った場所、場所に合わせた作品”を新たに考えて、“今だからこそのチャレンジ”を続けていく。
その中心となる劇場が、4月に新宿に開業する東急歌舞伎町タワー内の新劇場・THEATER MILANO-Za。休館の翌月、5月にTHEATER MILANO-Zaのこけら落とし公演として、COCOON PRODUCTION 2023「舞台・エヴァンゲリオン ビヨンド」が上演される。構成・演出・振付を手がけるのは、世界で活躍するアーティスト、シディ・ラルビ・シェルカウイ。シェルカウイは、2015年にシアターコクーンで初演され、2018年の再演時にはヨーロッパツアーも行った舞台「プルートゥ PLUTO」も手がけている。「それに続く創作を」とシアターコクーン制作陣と話す中で、シェルカウイ自身から「エヴァンゲリオン」のタイトルが挙がってきたという。そこで上演のタイミングを探っていたところ、THEATER MILANO-Zaが「新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に」の旗艦上映館だった、新宿ミラノ座の跡地に建つことから、こけら落とし演目として白羽の矢が立ったのだった。なお今回は、舞台版だけの完全なオリジナルストーリーとなり、出演者には窪田正孝、石橋静河、板垣瑞生、永田崇人、宮下今日子、田中哲司らが名を連ねている。
続けて6月から7月にかけてTHEATER MILANO-Zaに登場するのは、大ヒット映画「パラサイト 半地下の家族」の舞台版だ。台本・演出を手がけるのは鄭義信。鄭は2020年にシアターコクーンに初登場し、シェイクスピア「ロミオとジュリエット」の舞台を関西の戦後の港町に移した「泣くロミオと怒るジュリエット」で好評を博した。今回の日本版「パラサイト」は、設定を1990年代の関西に移しての上演となる。本作には古田新太、宮沢氷魚、伊藤沙莉、江口のりこ、キムラ緑子、みのすけ、山内圭哉、恒松祐里、真木よう子らが出演する。
そしてTHEATER MILANO-Za オープニングシリーズ3作目には、1985年に劇団状況劇場が初演した「少女都市からの呼び声」がラインナップされた。唐十郎作品の上演は、シアターコクーン2代目芸術監督・蜷川幸雄時代にスタートし、2016年から新宿梁山泊主宰の金守珍が演出を手がけている。出演者には安田章大、咲妃みゆ、三宅弘城、風間杜夫らが名を連ねた。公演は7月9日から8月6日までTHEATER MILANO-Zaにて行われ、8月には大阪公演もあり。東京公演のチケットの一般前売りは6月10日10:00にスタートする。なお6月には花園神社の紫テントでも「少女都市からの呼び声」が上演される。
11月に紀伊國屋ホールで上演されるのは「ガラスの動物園」「消えなさいローラ」。本公演ではテネシー・ウィリアムズの自伝的作品「ガラスの動物園」と、別役実が同作の後日譚として執筆した二人芝居「消えなさいローラ」を、渡辺えりの演出で2本立て上演する。「舞台・エヴァンゲリオン ビヨンド」「パラサイト」「少女都市からの呼び声」とは、作品のタイプも会場もかなり印象が異なるが、実はこちらも劇場と渡辺との関係性の中で話が持ち上がった。渡辺は2020年に本多劇場で尾上松也と「消えなさいローラ」を上演しており(参照:渡辺えり×尾上松也の二人芝居「消えなさいローラ」をオンライン配信、新録の対談も)、シアターコクーンでの「ガラスの動物園」との二本立てでの再演を希望していた。あいにくタイミングの問題でその願いはかなわなかったが、シアターコクーン制作陣が作品に合った新たな場所を検討し、“COCOON PRODUCTION 2023”と銘打って紀伊國屋ホールでの上演が決まったのだ。渡辺が演劇を志すきっかけになった作品であり、近年上演される機会も多い「ガラスの動物園」と、その後日譚として描かれた「消えなさいローラ」を続けて観ることができる貴重な機会だ。なお「ガラスの動物園」には、松也と渡辺のほか、吉岡里帆、和田琢磨が出演する。
さらに、公演とは別軸で、シアターコクーンは大きな挑戦を始める。それが「コクーン アクターズ スタジオ」だ。松尾スズキが、芸術監督就任時から掲げていた目標の1つで、“若手を対象とする演劇人の養成所”を新たに創設する。2024年度レッスン期間は2024年4月から2025年3月で、Bunkamura館内で行われる。主任を松尾が務め、受講者は演技はもちろん歌、ダンス、マイム、時代劇の所作、コントまで、演劇に関わる多様なジャンルのレッスンを受けることができる。なお講師にはオクイシュージ、ノゾエ征爾、杉原邦生など劇場にゆかりのある面々が名を連ねている。「コクーン アクターズ スタジオ」の応募受付は4月1日から6月23日。詳細は劇場公式サイトで確認しよう。
休館中も止まることなく……いや、休館中だからこそ、新たな挑戦をし続けようと意気込むシアターコクーン。今後の展開にも注目しよう。
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THEATER MILANO-Zaこけら落とし公演 / COCOON PRODUCTION 2023「舞台・エヴァンゲリオン ビヨンド」
2023年5月6日(土)~28日(日)
東京都 THEATER MILANO-Za(東急歌舞伎町タワー6階)2023年6月3日(土)・4日(日)
長野県 まつもと市民芸術館2023年6月10日(土)~19日(月)
大阪府 森ノ宮ピロティホール原案・構成・演出・振付:シディラルビシェルカウイ
舞台版構成台本:ノゾエ征爾
上演脚本:渡部亮平
出演:窪田正孝、石橋静河、板垣瑞生、永田崇人、坂ノ上茜、村田寛奈、宮下今日子、田中哲司 / 大植真太郎、大宮大奨、渋谷亘宏、AYUMI、森井淳、笹本龍史、渡邉尚、高澤礁太、権田菜々子
歌唱:山脇千栄(東京・長野公演)、阿部好江(大阪公演)[太鼓芸能集団 鼓童]
スウィング:伊藤わこ、大知
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THEATER MILANO-Zaオープニングシリーズ / COCOON PRODUCTION 2023「パラサイト」
2023年6月5日(月)~7月2日(日)
東京都 THEATER MILANO-Za(東急歌舞伎町タワー6階)2023年7月7日(金)~17日(月・祝)
大阪府 新歌舞伎座原作:映画「パラサイト 半地下の家族」
台本・演出:鄭義信
出演:古田新太、宮沢氷魚、伊藤沙莉、江口のりこ / キムラ緑子、みのすけ / 山内圭哉、恒松祐里、真木よう子
青山達三、山口森広 / 田鍋謙一郎、五味良介、丸山英彦、山村涼子、長南洸生、仲城綾、金井美樹©︎ 2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED
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THEATER MILANO-Zaオープニングシリーズ / COCOON PRODUCTION 2023「少女都市からの呼び声」
2023年7月9日(日)~8月6日(日)
東京都 THEATER MILANO-Za(東急歌舞伎町タワー6階)2023年8月15日(火)~22日(火)
大阪府 東大阪市文化創造館 Dream House 大ホール作:唐十郎
演出:金守珍
出演:安田章大、咲妃みゆ、三宅弘城、桑原裕子、小野ゆり子、細川岳、松田洋治、渡会久美子、藤田佳昭、出口稚子、板倉武志、米良まさひろ 、宮澤寿、柴野航輝、荒澤守、山﨑真太、紅日毬子、染谷知里、諸治蘭、本間美彩、河西茉祐、金守珍、肥後克広、六平直政、風間杜夫