ウエストランド井口と作家飯塚が語る「今月のお笑い」

今月のお笑い 43本目 [バックナンバー]

ウエストランド井口と作家飯塚が語る「2026年1月のお笑い」

解散きっかけで売れるカムバック、仲間を増やす井口、渡辺銀次の丁寧な生活、「爆笑ヒット」濱家のMC

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大ストーリー時代の到来

井口 おにぎりがまたおにぎりになった(※)。

※編集部注:昨年12月に「XENO」に改名した金の国・渡部おにぎりだったが、名前を選んだ理由が企画の意図に反していたことやパッと見で読みづらいことなどが物議を醸し、芸名を元に戻した。

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飯塚 今っぽいニュースだなと思いました。コント師ってキャラクターがなかなか伝わらないけど、おにぎりくんってなんか妙なヤツだなっていうのは伝わったと思います(笑)。改名して戻しただけで、何にもなってないけど、意味はあった。

井口 普通に嫌な奴ですからね(笑)。DMでライブ誘ってくるので。

「2025年10月のお笑い」参照。

飯塚 ネルソンズの単独ライブのチケットが400枚余っていて、本人たちが土下座して「来てください」って懇願して、芸人さんたちもそれに反応し、結果完売したというニュースがあって、面白いだけでは来てもらえない時代なんだなと思いますね。蓮見くんも言っていたけど、何かストーリーがないと来てくれない。

井口 大ストーリー時代の到来ですね。しゃらくさい時代になったなあ。

飯塚 ネルソンズの単独ライブに毎回行っている人もいるだろうけど、SNS上の話題になっているものにしか興味を持たない人もいっぱいいる。そういう点ではさみしい。

井口 うーん。単独ライブがそもそもなんなのかもよくわかんない(※)ですけどね。

※編集部注:井口は単独ライブ自体をやりたくない派。男性ブランコと「単独ライブ」の意義について語り合った「2023年11月のお笑い」を参照。

飯塚 でもネルソンズくらいの知名度と実力があったら単独ライブが売れてないと悲しいじゃん。

井口 ザ・マミィも単独ライブのチケット売り切れるまでYouTube配信とかやっていましたけど、テレビで活躍している人が中途半端なゾーンに入って、テレビで観ている人もライブのファンも来ないっていう状況はありますよね。

飯塚 そのゾーンはあるよね。本当に熱狂的で、ずーっとついてきてくれるファンがいればいいけど、ある程度まで応援したら「売れてよかったね」ってスッと離れていく人もいるから、それを捕まえておくのが大変なんだろうな。

こっちが言われた嫌なことは消えない

飯塚 ドンデコルテの渡辺銀次さんの丁寧な生活が人気を博しているのが新しいなと思いました。ネギ油からチャーハン作ったり、シャツをアイロンがけしたりする動画がすごく見られている。これも今っぽいと思うんだけど、「ラジオが面白い」とかより、人として素敵な部分が観ている人に刺さっているんだろうなと。

井口 でも、イメージがガチガチに固められないといいなと思いますけどね。「こういう人だ」っていう思い込みで本人は動きづらくなるので。ブランディングってけっこう紙一重というか、それしかできなくなっちゃったらつらいじゃないですか。その場では人気になるけど、のちのち勝手にがっかりされたりもするし。だから早めにぶち壊しておいたほうがいいと思うんですよ。ブランディングもクソもない風にしておかないと。やす子しかり、大変じゃないですか。イメージに振り回されて。

──井口さんもそういう経験があるんですか?

井口 ないようにしているというか、ブランディングなんてそもそもないです。むしろ、最初は勝手にめちゃめちゃ嫌われていたから、逆に今いいのかもしれないですけど。人の意見なんか変わるんだから、わざわざ発信するなよって思いますね。そのときこっちが言われた嫌なことはずっと消えないわけじゃないですか。僕に「つまんねえ」とか言っていたくせに、別の一面を見てあとから「大好きだ」とか言われても、「つまんねえ」と言われたことは消えないので。自分を疑ってほしいですね。「こういう人」と勝手に決めつけないで見ないと。というか、みんなバカになっちゃって、「こういう人」というカテゴライズがないと見られないのかもしれないですね。この人はいい人、この人は真面目な人、この人は優しい人っていう決めつけがないと、テレビが見られなくなっている気はします。だからその人がちょっとでもイメージと違う動きをしたら変なことになるし。逆にイメージが決めつけられているから、何をやってもそう見られちゃったりもするし。もっと柔軟に考えてほしいですけどね。

飯塚 「イロモネア」の審査が物議をかもしていた件もありましたけど、「千原ジュニアの座王」(カンテレ)で特別審査員を務めた有田(哲平)さんが「座王」ファンに叩かれていて。有田さんってプロレスが好きだから、同じ対戦を何度もやらせたり、その場で面白くなることをいろいろ仕掛けたりしていて、僕は好きだったんですけど、「座王」も「M-1」化していて、本当に競技だと思っているのか「こんなことだったら特別審査員の制度をなくしてほしい」みたいな意見も見かけた。番組側が面白くなるだろうと思って有田さんを呼んできて、有田さんに審査員を任せる回なんだから、それでいいんじゃないかなって思うし、1億総ともしげ化(※)の流れを感じた。

※編集部注:その場で起こることを楽しむより「こうするほうが正しい」と主張して指示を出してくる人が増えている現象のこと。「2025年9月のお笑い」参照。

井口 「レッドカーペット」の収録のときに、「なんで満点じゃないんだよ」と言っている芸人がけっこういて、え?と思ったんですよ。本当にどうでもいいじゃないですか、満点だろうか中笑いだろうが。カットされちゃいましたけど、僕も審査員に向かって「何シビアに審査してるんだよ!」とか言ってたんですよ。「レッドカーペット」の審査なんかゆるくていいし、でも別にシビアでもいいし、なんでもいいじゃないですか。中笑いで大賞を獲ることもあるだろうし、本当にどうでもいいのに、「レッドカーペット」の審査に文句を言うくらいみんなおかしくなっちゃってて。過敏になっているのか、本当に1億総ともしげ化状態。「ともしげさんにはなるまい」と思って踏みとどまってほしいな。嫌じゃないですか、ともしげさんになるの(笑)。

飯塚 そうだね(笑)。

井口 もちろんやっているときは満点とか○を目指しますけど、本当にはどうでもいいし、どうなっても面白ければいいのに、マジになってますよね。

飯塚 ただ、「バラエティなんて真剣に見るなよ」と言われることがあるじゃん。確かにそういうことが多いけど、本当に内容に問題があることもあるから、それを一緒くたにして「真剣に見るな」ってなるのも違うなって思う。1個1個いろんなケースがあるから。「粗品のロケ」にともしげさんが出演してたね。

井口 ともしげさんと赤ちゃん(ネコニスズ舘野)のライブ(「ともちゃん赤ちゃんごきげんライブ」)をやっていて、なんかともしげさんが変な動きしていてたんですよ。なんだ?と思ったら、僕は気づいたんですけど、たぶん粗品の真似をしてて(笑)。

飯塚 あはははは(笑)。

井口 急にお客さんに悪態ついたりして。みんな「どういう意味?」ってなったと思うんですけど、ともしげさん、粗品になろうとしてます。クリスマスプレゼントをお客さんも一緒に交換するみたいな企画で、お客さんのプレゼントをイジろうとしてて。持ってこさせておいてそんなことしたら、とんでもないことになるじゃないですか。

飯塚 粗品さんが太客をイジるみたいなこと?

井口 それです!

飯塚 影響受けてるんだ。

井口 衝撃ですよ。

「愛がある」とは?

飯塚 「爆笑問題カーボーイ」(TBSラジオ)に鬼越トマホークがゲストで来て、爆笑さんがいろいろ言われて悲しんでいるリスナーがいるのをSNS上でけっこう見かけて。

井口 あいつら、けっこう言いすぎなんですよね(笑)。前に「カーボーイ」に出たときは鬼越の大暴れでめっちゃ盛り上がりましたけど、4年くらい経っているからちょっと状況が変わっていたというのはあると思います。僕らの4年って短い気がしますけど、小学6年生が高校1年生になるくらいの期間じゃないですか。価値観とかも変わって、ウッと思うリスナーもいたのかもしれませんね。

飯塚 「お笑いの日」のさんまさんと太田さんの漫才の話もラジオの中で出ていたけど、リスクしかない中、あれだけのキャリアの人がネタを作って出ることが僕はすごいと思うんだけど、少し下の世代から腐していいものになっているのがけっこうショック。「そっちのほうがウケちゃうんだ」とかも含めて、ちょっと悲しかったな。そっちがウケちゃうともう反論もできないしね。あと太田さんが言っていた、「お前ら『愛がある』って言えば何を言ってもいいと思ってるだろ!」というのが芯食ってるなと思った。「愛があるから」という言葉で称賛する人たちに僕もずっとモヤモヤしていて。愛があるかどうかなんて他人にはわからないし、愛があれば何でもやっていいのか、とも思うし。

井口 リスペクトが薄れているっていうのはありますよね。すごい人たちがすごいことをしているってならない。それだけでも意味があるわけじゃないですか。そういうのは消えつつある気はします。

──すごさが伝わっていない?

飯塚 伝わっているか伝わってないのかわからないけど、なんでも“無敵の人ムーブ”できるほうが強いじゃないですか。「そこ踏み込んだんだ!」っていうのが評価されるから。だから誰かに腐されて傷ついても、自分がいいと思ったものは自信を持って口にしていくしかない。

千鳥・かまいたちのすごさ

井口 「爆笑ヒットパレード」のトークコーナーのときに改めて思ったんですけど、NON STYLEの石田さんが衣装をケムリに借りようとしたけどサイズが合わないから、くるまのを借りようとしたらくるまはよしもとじゃなかった、みたいな話をしていて、僕はひな壇で「だからこういうところにもいないのか~」とかぶつぶつ言っていたんですよ。そしたら濱家さんが「井口、なんや?」って聞いてくれて。考えたらかまいたちさん、千鳥さんっていつもそういうのを粒立ててくれるんですよ。なんにも思わない人は思わないし、「変なこと言ってんな」でスルーする人もいるじゃないですか。そこを、「はい! はい!」と手を挙げているわけじゃないことも拾ってくれるから、僕からしたらすごくやりやすいし、ありがたい。「火曜は全力!華大さんと千鳥くん」(カンテレ) でもそうですけど、「どうしたんや」と囃し立ててくれる。

飯塚 今さら言うことではないけど、濱家さんってすごいよね。能力が本当に高い。

井口 大悟さんも「チャンスの時間」(ABEMA)でなんとなく僕が言ったことをもう1回言わせてくれますし、ひな壇に大勢芸人がいる「芸人総選挙」(TBS)でも、いつも通り僕がぶつぶつ言い続けていたら大悟さんが何回か振ってくれたんですよ。「ともしげさんなんか天然キャラなわけないだろ!」とか言ってるのを引き立てようとしてくれる。大悟さんのほかにもMCがいたので、全部とはいかなかったですけど、アイコンタクト的に感じた場面がありました。

飯塚 あと、「華大千鳥」では大悟さんがノブさんイジりのきっかけをくれるよね(笑)。「井口なんやったっけ?」みたいな。

井口 僕としては加速してさらに言えばいいから助かります(笑)。千鳥さん、かまいたちさんのそこの能力ってあんまり世間からは言われてない気がしますけど、本当にすごいし、僕のやり方には合ってるからありがたいです。

飯塚 大MCになる人って能力も大事だけど、ミーハーであることも大事だと思って。例えば女優さんが来たときに「うわーかわいい!」「来てくれてうれしい!」って素直に言えるかどうか。ノブさんや濱家さん、ニューヨークとか、「しゃべくり007」(日本テレビ)の人たちって全員それができる。それって意外と難しいけど、トップMCになるには照れずにやれるほうがいいんだろうね。

井口 僕なんか単純にうれしいし、すごいって思うので、(「わー!」とやらない芸人に対して)「思えよ」って思いますけど。昔は「笑っていいとも!」(フジテレビ)とかでも、よくわかんなくても「わー!」とかやっていましたから。わーってなってたほうがいいじゃないですか。

井口は争わない

井口 なんでだかはよくわからないですけど、「GURU GURU!」に毎日出て、全員(パーソナリティのかが屋・加賀、ダウ90000蓮見&吉原、令和ロマン・ケムリ&福留光帆、エバース)ゆっくりしゃべる機会がない人たちだったからちょうどよかったっちゃよかったですね。

飯塚 鈴木ジェロニモのコーナーに毎回キレてるのが面白かった(笑)。エバースと仲良くなっていたというか、噛み合ってたね。井口くんって実は蓮見くん、エバースの佐々木さん、それこそくるま氏とかと波長が合ってる。

井口 「蓮見なんか何がすごいんだよ!」とよく言っているから本当に争ってると思われたり、対決構造にされたりしますけど、僕は本当に争わない。言っていくしかないですね。争う気もないし、みんなで楽しくやりたいだけなんだから。

──あと、エバースの町田さんは「ルパン三世」がお好きらしいので、井口さんと町田さんも気が合いそうだなと思いました。ルパン対談とかどうです? ルパンから学んだ精神を語ってほしいなと思いました。

井口 嫌でしょ! 町田と対談なんて。

2026年は「明るさが大事!」

井口 そういえば、「アメトーーク!」(テレビ朝日)の芸人矢印トークで、ニッポンの社長・辻のことをいろいろ言ったけど、意外と明るく返してくれるんですよね。ああいうタイプだけど、そういうのもすごい上手で。あれをできるかできないかで、僕からしたらかなり変わってくる。マジで怒るかシュンとしちゃう人がまだまだいる中、辻って明るくいてくれるじゃないですか。

飯塚 センス系っぽく思われがちだけど。

──この連載にも以前ゲストで来てくれましたけど、純粋にお二人に意見を求めたり、質問に答えたりしてくれましたよね。

コラム

井口 結局、明るいのがいいじゃないですか。

飯塚 明るいのが大事?

井口 明るいのがとにかく大事。イジられ慣れてないから冗談でも怖くなっちゃう人もいるじゃないですか。そう思うと、明るく返すのがうまい人とそうでない人ってけっこう分かれるなという気はしますね。

飯塚 なんの明るさなんだろうね。性格というか、楽しそうにしてくれるかどうか。怒ってても、楽しく見えるか。

井口 楽しくしといてほしいですよ。

飯塚 芸人に限らず、全人間そうだよね。

井口 これを読んでいる人はみんな明るくいてほしい! 暗くなって陰鬱になって、怖いことSNSに書き込んでないで。

飯塚  陰キャかどうか、とかじゃないんだよね。そこで諦める話じゃないというか。

井口 そういうことじゃないんですよ。芯の部分。(宮下草薙)草薙とか、明るいじゃないですか。暗いけど。

飯塚 テンションは高くなくてもいいけど、楽しそうに見えるかどうかをがんばるべきだね。

井口 もうそこだから。暗いんだよ、全員! 明るくいてほしいですね。

──2025年は「告知と覇気と感謝と人情」が大事と言ってきましたが、2026年は「明るさ」が大事!というマインドでやっていきましょう!

明るくいこう!

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プロフィール

井口浩之(イグチヒロユキ)

1983年5月6日生まれ、岡山県出身。2008年、河本太(コウモトフトシ)とウエストランドを結成。2022年「M-1グランプリ」王者。「ウエストランドのぶちラジ!」をYouTubeなどで配信中。とろサーモン久保田とのレギュラー番組「耳の穴かっぽじって聞け!」(テレビ朝日)は毎週月曜25:58~。テレ朝Podcast「ウエストランド井口と吉住の孤独アジト」は毎週木曜6:00~配信。タイタン所属。

飯塚大悟(イイヅカダイゴ)

1982年4月13日生まれ、新潟県出身。テレビ、ラジオの構成作家。現在の担当番組は「サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん」「永野&くるまのひっかかりニーチェ」(テレビ朝日)、「水曜日のダウンタウン」「クレイジージャーニー」(TBS)、「ヒルナンデス!」「GoldenSixTONES」(日本テレビ)、「オードリーのオールナイトニッポン」(ニッポン放送)など。大井洋一と出演するポッドキャスト「褒めたいラジオ」(Artistspoken)毎週水曜23:00~配信中。

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