「THE SECOND~漫才トーナメント~2025」で優勝したツートライブが、4月に東京進出する。大阪・よしもと漫才劇場を中心とする劇場の舞台で日々腕を磨いてきた彼ら。芸人仲間やコアなお笑いファンから愛されていたその魅力は今、舞台のみならずテレビやラジオで全国へと知れ渡りつつある。
お笑いナタリーで展開しているよしもと漫才劇場特集4本目は、そんなツートライブの単独インタビューをお届け。バトルライブでの観客票に苦戦し続けた2人が観客審査の「THE SECOND」で大会最高得点を獲得できたのは、ウケるもスベるも経験させてくれたマンゲキのおかげだという。この記事ではブレずに己の漫才を磨き続けられた理由に迫りつつ、年始の大型特番での裏話、劇場での思い出、そして東京進出後のありたい姿について聞いた。
取材・文 / 塚越嵩大撮影 / 井上たろう
本田翼さんとのババ抜き、意味わからんすぎる
──「THE SECOND」優勝以降、東京の番組でもお見かけする機会が増えました。幅広いお仕事に挑戦する中で、ご自身の得意なことや苦手なことなど発見はありましたか?
周平魂 まだ何が得意で何が不得意かはわからないんですが、バラエティ番組やトーク番組も自分の中では「楽しめているな」という感覚はありますね。ウケようがスベろうが。「BABA抜き最弱王決定戦」(フジテレビ系)のような豪華芸能人が集結する番組は得意ではないだろうとは思いつつ、普段いる場所と別空間すぎて楽しかったです。華やかすぎてコントを見ているような感覚になりました。
たかのり あんな華やかなところ、慣れてないからなー。誰とババ抜きしたんやったっけ?
周平魂 俺は本田翼さん。
たかのり 意味わからんすぎるって(笑)。
周平魂 よくわからん状態でヘラヘラしてました。「何これ?」っていう。
たかのり 「坂上どうぶつ王国」(フジテレビ系)に出させていただいたときも、名だたる芸能人の方々が話しかけてくれて、「今、俺どういう空間におるの?」ってなりました。
周平魂 いろんな番組に出させてもらってわかったんですけど、東京の売れている人たちってめちゃくちゃ元気。僕たちも大阪で過酷なロケをしてきましたけど、長時間のスタジオ収録はそれとは別の大変さがあって、若手芸人でもクタクタで帰るんですよ。でも、僕らより年上の売れている兄さんらは3~4時間の収録でも集中力を切らさずしゃべり続けていて、マジですごい。眠くなったりせえへんのかな。
たかのり 舞台に1時間立っているだけでけっこうクタクタになるのに、それ以上に長いもんな。あと、「東京やな~」と思ったのは、芸人だけじゃなくて、タレントさん、アイドルの方、お笑い以外のいろんなジャンルの人がガヤを入れまくっているところ。関西だと(渋谷)凪咲ちゃんくらいしか見たことなかったんですけど、「別ジャンルの人たちがこんなに戦ってんねや!」とびっくりしました。だからこそ自分たちに漫才という軸があってよかったとも思います。テレビで失敗したときに「漫才があるから!」と思えるのはデカくて、漫才が以前より“帰れる場所”みたいな認識になりました。
爆笑ヒットパレードに感激「江戸やなあ~!」
──軸となる漫才でも「新春!爆笑ヒットパレード」(フジテレビ系)のような大型ネタ特番に出演していましたね。
周平魂 「爆笑ヒットパレード」はマジでうれしかったです。あの空間が子供の頃からめっちゃ好きで、毎年録画していたので。長丁場の生放送でお客さんが疲れてきて、空気が重くなっている時間帯も込みで好き(笑)。そんな場所にいられたのがうれしすぎました。
たかのり MCのかまいたちさんが8時間ずっと出ずっぱりじゃないですか。あの体力は見習いたいです。相当な体力ですよ。僕らもエンディングまでいられて、みんなで一緒に“あの歌”を歌えたのもうれしかったです。
周平魂 あれはなんの歌なんですか? 「年の始めの~」ってやつ。番組の歌なん?
たかのり 違うよ! もともとある歌や。
──番組の締めに歌うのが恒例となっている、お正月の歌「一月一日」ですね。
周平魂 あと生で見た爆笑問題さんの色気が半端なかった! 単独ライブでやるような攻めまくったネタはテレビではできないから、「ヒットパレード」でやるのは新ネタなんですって。太田さんって、途中でつまずきながらも最後には必ず会場を爆笑させるじゃないですか。漫才終わりでCMに入ったときにパッと顔を見たら、ちょっと涙目になっていて。泣いているとかじゃなくて、やりきったあとに涙目になっている感じ。芸人だったらわかる現象なんですけど。その状態で「あそこ噛んじゃったなあ」とか言っているのが痺れましたね。東京のど真ん中で何十年もやっている人らが、ああいう大きな番組でいまだに戦っているのを初めて目の当たりにしたから。で、それをウエストランドさんとかが「どうせ年明けのラジオで『悔しい』とかずっと嘆くんでしょ!」みたいにイジって、爆笑問題さんも「うっせえよ!」と返しているのもまた「江戸やなあ~!」と思いました(笑)。
たかのり 東京のお笑い番組っていう空気やったね。
周平魂 大阪の空気感は備えたまま、今後は新しく“江戸”の漫才師のみなさんと絡める機会があるかもしれないと思うとうれしいです。舞台でもご一緒させてもらいたいなあ。あと、ナイツさんが前日の紅白歌合戦のことをネタに入れていたので、ひな壇で塙さんの隣に座ったときに「あれはいつ作ったんですか?」と聞いたら、「昨日、紅白を観ながら作ったんだよ。朝、台本を持ってきて土屋とネタ合わせして……」って教えてくれて。こんな会話ができている状態が信じられへんし、めっちゃ感慨深かったです。でもトークコーナーに入ると横にはロングコートダディ、紅しょうが、ギャロップさんとかがおって、「『もっともっとマンゲキ』(かつて漫才劇場で開催されたいた名物ライブ)やん!」と思いました。かまいたちさんMCのライブでこんな並び、ようあったもん(笑)。
たかのり 熊元プロレスが噛んで爆笑をとっている感じも「もっともっとマンゲキ」やったな。
周平魂 トークコーナーはいつも通りという感じで、気楽で楽しかったです。
たかのり 東京で仕事をするたびに、大阪芸人の多さに安心します。これもマンゲキから毎年スターが生まれているからこそ。感謝です。
マンゲキができてみんな仲良くなった
──お二人が芸を磨いてきた「よしもと漫才劇場」について聞かせてください。大阪若手の劇場が5upよしもとから漫才劇場になって何が変わりましたか?
たかのり よしもと漫才劇場がオープンするとき、僕らはちょうど活動をお休みしていた時期だったので、最初からマンゲキ所属ではなかったんです。5upよしもとのメンバーは基本的にそのままよしもと漫才劇場に所属できたんですけど、僕らは「UP TO YOU!」というオーディションライブから所属を目指しました。
周平魂 5upよしもと時代はバトルライブの日々だったんですけど、1軍になったことはなくて、2軍と3軍の狭間でずっとグラグラしてました。よしもと漫才劇場になると、ランクの入れ替え戦がなくなって所属メンバーが固定されたので、しばらく落ちることはないという安心感がありました。上の世代の兄さんからするとシャバく見えるかもしれないですけど、それによってみんな仲良くなったよな?
たかのり せやね。殺伐さがなくなって楽屋ならではの“ノリ”も生まれやすくなりました。
周平魂 あと土日の寄席公演が始まって、よりライト層のお客さんも来てくれるようになりました。
たかのり 5upよしもと時代は、バトルライブではウケてもなんばグランド花月の舞台や営業ではまったくウケないみたいなことがよくあって。例えばネタに「チケ売りしていて」というくだりがあったとして、ライトな客層には「チケ売りって何?」という感じで全然伝わらないんですよ。でも土日の寄席公演のお客さんに向けてネタをやるようになって、その感覚のギャップは徐々に埋まっていきました。
周平魂 若いお客さんが中心の5upよしもと、老若男女が来るNGKの中間のような劇場がなかったから、尖りまくった漫才がウケづらいってことをみんな知らなかったんですよ。今の若手は寄席公演があるおかげでだいぶ早く気づけると思います。「土日であのネタかけてみよう」とやってみて、すぐどうなのかがわかるので。それによって芸人としての視野が広がったと思いますね。
──入れ替え戦から解放された安堵感もありましたか?
周平魂 自分たちが面白いと思う漫才を追求する姿勢はずっと同じなので、「戦いから解放された」という感覚はあまりなかったかな。でも“自分たちが面白いと思う漫才”をより広く伝えるために鍛錬する場ができたとは思っています。まあ、僕らは土日の寄席でスベりまくっていたんですけど(笑)。
たかのり スベりすぎて、周平魂が見取り図・盛山さんにテープでグルグル巻きにされて、「舞台に謝れ」って言われたこともありました(笑)。
周平魂 ただ「これはスベるんや」とすぐ気づけるので、「じゃあどうすればええんやろ」と修正に至るスピードが速まったのはデカかったです。
1回だけブレかけた
──「THE SECOND」で優勝したときに「とにかくライブでの客票に苦戦してきた」という話をされていましたよね。
たかのり 僕らはほんまに客票が入るタイプじゃなくて、10組中でダントツでウケても2位か3位。普通ウケやったら絶対に上位には入らない。なので「THE SECOND」のベスト32でジャルジャルさんに勝てたときはびっくりしました。ずっと人気で劇場を沸かせてきた人たちなので、僕たちが勝てるなんて普通はありえないんですよ。
周平魂 観客採点のバトルで勝てるのなんて初めての経験やったな。
──客票に苦戦している状態でも、自分たちのスタイルを貫けたのはなぜですか?
周平魂 最初はムカついてましたけど、あるときから客票は入らないものだと開き直っていたのがよかったかもしれないです。なんぼウケても「客票なんか入るかぁ!」と思ってましたもん。僕らの悪いクセでもあるんですけど、ウケればええやろと思って下ネタ入れたら、案の定まったく客票が入らない。でもいまだに意味わからんなあ……なんで下ネタやると票が入らなくなるんやろ? 「バカにしやがって!」と思うんですかね?(笑)
たかのり 不思議なもので、ずっと劇場にいると「この人はずっと上にいて落ちひんやろな」という人もわかってくるんですよ。でも、なぜか自分たちが勝つ方法だけがわからない。
周平魂 ずっとわからんままです。いまだに解明できていない。「THE SECOND」もなんで高得点になったのかわかってないです。
たかのり でもマンゲキがなかったら優勝なんて絶対に無理でした。舞台数はいただいていたので、それでバイトも辞められたし、「THE SECOND」前に劇場を卒業していたらけっこうキツかったと思います。
周平魂 あ、思い返せば1回だけブレかけたときありましたわ!
──それはどのような?
周平魂 僕ら、新ネタをおろす単独ライブを10年以上毎月やっているんですけど、集客できなかった時点で打ち切りなので、若手時代は毎回必死にビラ配りして、街行く人に声をかけまくってお客さんを集めていたんですよ。男女関係なしのナンパみたいな(笑)。そういうことをしていると無意識レベルで、来てくれた人たちを楽しませるための“寄せた”ネタを作ってしまうんでしょうね。あるとき、自分たちの本来のスタイルとは違うポップ寄りなネタを作ってしまって、しかもそれがバーンとウケたんです。ここが運命の分かれ目やったと思うんですけど、「これ、あかんな」と思って次の月はめちゃくちゃ攻めたネタを作ったんですよ。
──ウケたのに、「あかんな」?
周平魂 なんかシャバいというか、客観的に見たときに「この単独ライブ面白くないな」と思って。だから「お客さん減らしにいくしかないわ」とたかのりと話して、わざとめちゃめちゃ攻めたネタを6本やって、鬼スベりしました(笑)。お客さんはバーンと減ったんですけど、濃いネタを求めるお客さんもついてくれていて、それが今に繋がってると思います。そこからミルクボーイさんらとのユニット「漫才ブーム」も始まって、恥ずかしい漫才はできないという意識は今も大切にしています。
たかのり ミルクボーイ駒場さんは僕たちが全然結果が出てないときにも「ツートライブ面白いけどな」と言ってくれていたので、そこで芯を保てていた気はします。
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楽屋の“渦”の中心に躍り出た芸人は売れる


