お笑いナタリー記者が振り返る、2025年に書いたライブレポート

2025年に掲載したライブレポートの中から印象深かった公演をチョイスし、執筆を担当したお笑いナタリー記者が振り返ります。

お笑いナタリー編集部

無尽蔵のバイタリティを感じさせる芸人たちのライブ3選

「これは行っておかないと後悔するぞ」と思って取材したライブ、そして取材後に「これは広くオススメしたいな」と感じたライブのレポートを紹介します。（記者・成田邦洋）

「ハリウッドザコシショウのものまね100連発ライブ！SEASON5収録ライブ」

ハリウッドザコシショウさんは毎年夏の「ミニ単独ライブ」ツアーにも精力的に臨んでいますが、「ものまね100連発ライブ」はDVD収録のため約2年に1回ほどのペースで開催されているもの。モノマネ100連発をするだけ、というシンプルなライブではありますが、実際には一度大ウケしたりザコシさん本人が気に入ったりしたネタがこれでもかとリピートされるなど、とても100連発どころではないです。ザコシさんのパワー、スタミナ、声のデカさ、ジャンプ力など驚異的な体力と根こそぎ笑いをかっさらおうという無尽蔵のバイタリティにいつも圧倒されます。

「アメトーーク初ライーーブ」

過去にもお笑いフェス「LIVE STAND」などでリアルイベントが行われたことのある「アメトーーク！」ですが、「ライブ」と銘打ってホールで本格的に実施するのは2025年が初めてだった様子です。昼夜2回公演のうち「ザキヤマ＆フジモンがパクリたい-1グランプリ」「アメトーーク常連芸人」が行われた昼の部をレポートしました。ザキヤマさんとフジモンさんのベテラン2人が会場の客席後方から登場するサプライズもライブならでは。「パクリたい-1GP」で展開された数々の即興芸に笑わされ続けました。

「クリスタルジム移転1周年記念大感謝祭～最強トレーナーは俺だ！～」

マヂカルラブリー・野田クリスタルさんが軸足を置いている活動の1つがクリスタルジム。多くの芸人が働くこのジムの「神7」を人気投票で決めようという「クリスタルジム神7総選挙」の結果発表がライブ内で行われ、かけおち・青木マッチョさんが見事1位に輝きました。相方の赤木細マッチョさんも青木マッチョさんの隣で大喜び。またこのライブ内ではマッチョ芸人たちがYシャツ姿で一言述べてポージングするという趣旨の「ワイシャツボディコンテスト」も開催され、客席と生配信の視聴者による投票で、やはり青木マッチョさんが優勝。結果的に2冠を達成し、ブレイクタレントとしての人気を裏付ける結果となりました。野田クリスタルさんが終始前のめりの姿勢でこのライブに参加していたのも印象的です。

変なライブ3選（と、もう2選）

東京03、シティホテル3号室、シソンヌなど、クオリティの高い単独ライブを取材する機会が多かった1年。その一方で、癖あるライブにもたくさん足を運びました。その中から3本のライブレポートを紹介します。（記者・狩野有理）

「野田クリスタル 初コンサート in TOKYO DOME CITY HALL」

マヂカルラブリー・野田クリスタルさんのソロコンサートが無観客配信の形式で初開催。この公演の前、有楽町で開催されていたグレープカンパニーの若手No.1を決める「ザ・葡萄王」の取材があり、冒頭には間に合いそうになく生配信を観ながら水道橋へと急いだのですが、到着するとまさかの配信トラブルが発生しているとのこと。おかげで1曲目から通してレポートが可能となりました。来る12月31日（金）には「野田クリスタル初セクシーカウントダウン in TOYOTA ARENA TOKYO」が東京・TOYOTA ARENA TOKYOで（もちろん無観客で）開催されるので、再度チェックしておくとよいかもしれません。

「真空ジェシカ VS イルカ in 新江ノ島水族館」

真空ジェシカとイルカたちによる“ネタ対決”イベント。観客による判定の結果、ありネタではなくこの日のための新ネタ（＝特別パフォーマンス）を用意したイルカが真空ジェシカに“圧勝”しました。祝日でしたが、夕方の江の島は思ったより混雑しておらず、集合時間前に一瞬立ち寄った浜辺でボーっと眺めた穏やかな海と、親子やカップルや観光客の楽しそうな姿、イルカの水槽越しに見た陽が沈んでいく様子も記憶に残っています。ちなみに1月5日（月）まで再配信中です。

「第1回もう中学生大会11」

大会実行委員会のもう中学生さんが考案した奇想天外なゲームやアトラクションに、何も聞かされていないゲストの芸人たちが挑戦する催し。2019年2月に初開催され、今回が11回目。初回からレポートしていると、唐揚げをもみもみしながらの入場行進や、各出場者のネタにちなんだ「○○斉唱」（例えば、ジョイマン高木さんなら「ナナナナ斉唱」、ですよ。さんなら「あ～いとぅいまてん」斉唱、囲碁将棋・根建さんなら「シビック、自分で買いたいんすよ俺」斉唱）なども恋しいですが、最近はそれらを省いて楽しさを競技に集中させるなど、アップデートが施され、このイベントをよりよくしようと心血を注ぐもう中学生さんの真心を感じます。

追加の2選

「超Super無限ヤジマリー。～初シュン!!蛇さん口からシャーシャーシャー！ヤジマリ腰からシューシューシュー！有楽チョーチョーチョーチョーイイ感じ～」

「溜口スーパーSUMMERショー ～BACK TO THE GUCHITAME～」

謎の輝きを放つスーパースター（スカチャン・ヤジマリー。さん、ラブレターズ溜口さん）のもとに、彼らの魅力に惹きつけられた仲間たちが集うことで成立するトンチキイベント。どちらも「高熱の日に見た夢のよう」と評され、終わったあとには何も覚えていないという、ライブに足を運ぶことの醍醐味を体感できます。

今年も“変なライブ”、つまり最高のライブを数多く取材しました。その熱をテキストと写真で読者のみなさんに伝えられるよう2026年もがんばります。

さまざまな理由でグッときたライブ3選

トンツカタン森本さんのツッコミが神がかっていた「タイマン森本THE LIVE～真夏の3番勝負～」、今まで観た初単独ライブ史上一番ネタが洗練されていたCITY初単独ライブ「CYAN-シアン-」、とんでもなく豪華だったチョコレートプラネット20周年記念ライブ「ULTRA SWEET GALAXY」など、候補がありすぎて非常に迷いましたが、特にグッときた3本を断腸の思いで選びました。今年もたくさん笑わせていただきありがとうございました。（記者・塚越嵩大）

「ノーセンスユニークボケ王決定戦」

お笑いナタリーでは第1回から、個人としては第6回から17回連続でレポートに入っている「ノーセンスユニークボケ王」。カオスなボケの応酬で酸欠になるくらい笑わされ、終わった瞬間に「これをどうまとめればいいのだろうか」と毎回絶望するハチャメチャなライブです。今回は1年2カ月ぶりと少し期間が空きましたが、出演者たちは変わらずキレキレで、記事に書くのを泣く泣く控えた発言も盛りだくさんでした。会場の熱気がすさまじく、終演してステージの照明が落とされても、薄暗い舞台上で踊り続ける出演者たち。それぞれの珍妙な衣装も相まって、レイヴパーティのようでした。世知辛いニュースばかりの俗世を忘れられる、今年一番元気をもらえたライブです。

「ありがとう∞ホール！笑顔のFINAL LIVE」

今春、19年の歴史に幕を閉じて渋谷よしもと漫才劇場へと生まれ変わったヨシモト∞ホールの最終日公演。高校生のときに「AGE AGE LIVE」にハマっていたため、「まさか記者として∞ホール最後の日を取材するとは」と感慨に浸っていました。ラストのサンシャイン坂田さんの魂の叫びは本当にすごかったです。記事を読み返すと、若干エモく書きすぎている気もしましたが、あの場にいてエモくならない人なんていないだろうとも思います。良い劇場でした。

「ポテトカレッジ単独ライブ～完全燃焼～」

ポテトカレッジのコモダドラゴンさんが「キャパ1000は売れる芸人ならみんな通る道」との理由でキャパ約1000人のきゅりあん 大ホールを押さえたと聞いたときは、シンプルに「大丈夫か」と思いました（すみません）。しかし全然大丈夫でした。お二人は地道な手売りの様子をSNSで発信し続け、ド派手なライブを大成功で終わらせたのです。全ネタが面白いのはもちろん、最後のバンド演奏も素晴らしく……。お笑いライブというより、ポテトカレッジが主役の映画みたいでした。