
今月のお笑い 33本目 [バックナンバー]
ウエストランド井口と作家飯塚が語る「2025年1月のお笑い」
野田クリスタルを褒める、赤ちゃんは昔から友達、年末年始のネタ番組、「弁論」への反応
2025年2月10日 18:00 45
赤ちゃんはダークサイド
飯塚
※編集部注:ネコニスズ舘野のこと。2023年8月から赤ちゃんになったと本人談。
井口 実は赤ちゃんっていろいろ複雑というか難しいですからね。芸歴20年やってきてこれ(赤ちゃん)になった、という面白さが基本にあるけど、一般の人は別にそんなのも知らずに“赤ちゃん”として面白がっているわけで。それこそネットのおもちゃというか、ネットミーム的な存在になっていて、X上では可愛がるノリが生まれていますけど、ここからどうしていくのがいいんだろう。だから、瀬戸際です、もう(笑)。ただ長年やってきたからこそ仲間が多いっていうのは強みですよね。それこそヤマゲンさんは見取り図と仲がいいとか。
飯塚 井口くんもよく言ってるけど、やっと友達として舘野さんの名前が出せるようになった(笑)。
井口 今まで僕も(三四郎)小宮さんも隠してたんでね(笑)。いないことにしてましたから。
飯塚 (井口と小宮の)写真を撮ってるほうにいるんだよね。映ってはないけど、画角の外に赤ちゃんはいたっていう。
井口 今までエピソードトークには出てこなかったんですけど、ようやく出せるようになりました。本当に昔から一緒に遊んでましたから。
飯塚 赤ちゃんがファンアートになってるのも見た。
赤ちゃんは昔からの友達
井口 今は「赤ちゃんかわいい」になっていますけど、変に好感度が上がりすぎないようにしないと。小宮さんとか僕とか(モグライダー)ともしげさんと仲いい人だぞ?っていうのはみんなに言っておきたいです。ダークサイドの人間なので。
飯塚 「がっかりしました」ってなるからね。
井口 今はまだ、「本当は赤ちゃんなんてクズなんだよ」って言っても「クズなエピソード聞きたい!」ってなりますけど、そういう次元じゃないから! 人の悪口しか言わない側の人間ですからね。勝手にがっかりしないでください。
飯塚 でもやっぱり、40歳を過ぎてブレイクするのっていくら実力があっても難しい。「THE SECOND」で優勝して、とかはあるかもしれないけど。錦鯉は“おじさん芸人”になれたけど、錦鯉がいるから中途半端な“おじさん芸人”が弱くなっちゃって。
井口 まさのりさんのせいで40歳くらいではまだおじさんじゃない、みたいになってますからね(笑)。
飯塚 だから40歳を過ぎてから“何か”になるのがすごく難しくなっている中、舘野さんはすごい強引な方法で“赤ちゃん”になった。
井口 おじさんに逆行して(笑)。真逆のものですからね。
飯塚 「なんなのそれ?」って周りから思われてもやり続けたら何かになれるっていうのは面白いよね。でも、あれって赤ちゃんじゃないよね? 3歳児くらいじゃない?(笑)
井口 曖昧なんですよ(笑)。響きがいいんでしょうね。「赤ちゃん」のほうが。
紹介仕事が増えてきた
井口 ストレッチーズの貫太とかに聞くと、ネコニスズはライブでウケまくってる状態らしくて。「タイタンライブ」でもウケているし、特に「M-1」前の“キテる感”は完全にありました。今回「おもしろ荘」で優勝できたのは大きいですよね。ただ爪痕を残すだけとはまた1つ違いますから。 ポスターとかで「優勝」って書けるのは大きいので、営業とかにも呼ばれやすくなるでしょうし。それで言うと、(「ガキの使いやあらへんで!」の企画)「山-1グランプリ」(日本テレビ)ではレーズンダイナマイトが優勝したんですよ。年始のそういうコンテスト系の企画で2つもタイタンが優勝するなんて、ちょっと前では信じられないことに今なっていて。まあ、
飯塚 タイタンで営業とかも行けるようになりそう。そういえば、「さんまのまんま」(関西テレビ)の芸人紹介コーナーの先取りっぷりがすさまじくて。
井口 「マジで知らねえよ!」って思われるのと、「もう知ってるよ!」って思われるのと、どっちがいいのかみたいな話になってきますよね。
飯塚 でも、赤ちゃんの次はヤマゲン氏の達者な部分もこれから見つかって、もう一段階評価されるだろうね。二段ロケットになってる芸人は強い。
井口 すぐそっちになるんじゃないですか? ここからまたテレビで一緒になることが増えそうですし。最近は僕もそういう仕事が増えてきましたね。
──そういう仕事とは?
井口 誰かを紹介する役というか。(にゃんこスターのスーパー)3助さんの生態を紐解くとか、昨日は(かもめんたる)槙尾さんの紹介でみなみかわさんと僕が呼ばれて。この前は「アメトーーク!」(テレビ朝日)でルシファー(吉岡)さんと一緒になりました。
飯塚 テレビマンも、呼んだはいいけどどうすればいいかわからないことがあるから、扱いに慣れてる人は必要なんだと思う。
──井口さんがもともとよく知っていた芸人さんが今テレビで紹介されるようになってきたっていうことですよね。
井口 確かにそれはありますね。今キテる人、まあ3助さんとかキテない人もそうですけど(笑)、キテほしいと思われている人たちとちょうど知り合いだったっていう。あとは浜村(凡平太)さんですね。浜村さんが大道芸やってるっていうのだけ書いといてあげてください。
──お元気なんですか?
井口 なんか元気みたいですよ。僕も元気じゃないのかと思ってたらめちゃくちゃ元気らしくて。大道芸やってるから明るくなったんじゃないですか?
飯塚 暗い大道芸は切ないもんね。
井口 大道芸は明るくなきゃいけないから。明るくなったんですよ。
──浜村さんの大道芸はどこで見られるんですか?
井口 ライブでやってるみたいです。大道芸ネタみたいな。
──いつか浜村さんを紹介する日がくるかもしれませんね。
井口 もうあとは浜村さんだけなんでね。
山名が河本になれなかったのではなく谷が井口に達してない
──先ほど少し名前が出たベルナルドが正式結成を発表したのも今月です。
井口 特に知っていることは何もないですけど、正式に組む以外ないと思っていたので、「やっと組んだか」っていう感じですけどね。
飯塚 ハギノリザードマンさんは「細かすぎて(伝わらないモノマネ)」で安定して強いけど、あの番組の企画からほかの仕事に繋げるのって意外と難しいから、いいタイミングでコンビになったと思う。組み直しって大変だと思うのでがんばってほしいです。
井口 どれだけ面白い人同士が組んでも、まあコントは違うかもしれませんけど、漫才はいきなり面白くなるってなかなかないですからね。
──なぜですか?
井口 なんなんでしょうね? 関係性がないから笑いづらい、とかなのかな。関係性がなくていいようなネタだったらいいのかもしれませんけど、関係性が見えないとどうしてもうまく伝わらなかったりするので。そういえば、
──正式なコンビになっているんですかね?
井口 誰も知らないでしょ(笑)。「M-1」の鬼になるとは言ってましたけど。
飯塚 逆に、1月は解散発表も多かったですね。
井口 そうだ、パンポテ解散を僕らと比べて語るけっこう奴がいるんですよ。山名が“じゃないほう”だとして、そう考えたら
飯塚 解散するコンビってきっと、どちらかが相方に期待することがあって、そこを責めちゃったりするシーンが生まれるんだろうけど、ウエストランドはそれが決定的にないよね。
井口 まったくないです。期待もしてないし。相方と協力してやっていくって自分が決めたんだったらやるしかないじゃないですか。相方のせいにするんだったら「R-1」挑戦してこいよ、かかってこいよって思います。「R-1」も出ないで相方の文句言ってるやつは意味わかんないですよ。じゃあお前も違うよ? 結果出してないくせに相方に怒ってるってどういうつもり? なんで自分が正解だと思えるの?っていう。
飯塚 コンビの解散が発表されると「あのときにM-1行ってたら……」とか、仮定の話をする人もいるけど、仮にそうだったとしても解散する人はするし。世に出ていることはきっと一部だけだから、解散の理由を憶測で語ることにあまり意味はないのかなって思う。
井口 まあ解散って本当に、99.99999999%不仲ですから! みんなそんな期待しないでください。
飯塚 でも元ダイヤモンドの野澤さんは「一言で不仲って言われるとなあ……」って言ってた(笑)。
井口 関係あるか! なんにしろ、2人でやるなら2人でがんばるしかないし。そうじゃないなら1人で結果出すしかないっていうだけですからね。みんなどうするんでしょうね。誰かと組むのか、ピンでやるのか。
飯塚 この連載でもいつも言ってるけど、そんなに重く捉えなくていいんじゃないかなと思う。もちろん本人たちは大変だろうけど、見ている側は「またやりたくなったら組めばいいんじゃない」っていうくらいの気持ちでいれば。
井口 惜しんでもしょうがないですからね。
「耳の穴」に東野幸治
飯塚 「耳の穴かっぽじって聞け!」(テレビ朝日)で、ゲストの
井口 どこかで言っていたことはあるのかもしれませんけど、センセーショナルな話でしたね。考え方としては確かになって思いました。要は、ダウンタウンさんのもとでやっていたら一生そのポジションから抜けられないから、ダウンタウンさんがいない世界だと思ってやるっていう。観ている側としては「そういえばあの時期、一緒に出てなかったかな?」くらいの感じですけど、そんなふうに決めていたんですね。
飯塚 ものすごく上昇志向があるってことだよね。今の芸人さんにはあんまりない考え方。井口くんが爆笑問題を共演NGにするようなものだから。
井口 ちゃんとそういうことも考えてやってきた結果、実際に今って東野さんが無双していますもんね。東野さんとか南海キャンディーズの山里さんにもゲストで来てもらったんですけど、もちろんとんでもなく面白いし、そういうスイッチを入れてきてくれるからうれしいです。
飯塚 2人みたいな第一線で活躍している人たちって、ちゃんとめちゃくちゃ面白いことを言うか、「そんなことまで言ってくれるんですか!?」みたいなことを惜しみなく言ってくれるけど、最近の若い芸人さんたちはトーク番組を自分たちの自然体を見てもらう場だと思ってる人も多いのかなって気がする。昔なら「ここでハネたい」「爪痕残したい」ってよくも悪くも意気込んでたと思うけど。
井口 特に「耳の穴」は「本音の番組です!」ってはじめから言っているから、先輩たちは1個ギアを入れてやってくれてるんだと思いますけどね。ただ、「バラバラ大作戦」自体がどうなるかわからないじゃないですか。1年で番組が終わる可能性があって、その評価基準もよくわからない中、「ひっかかりニーチェ」は僕がゲストで行った回が一番再生されてるって聞いて。それでそっちが存続して「耳の穴」が終わったら意味わかんないですよ。
──「ひっかかりニーチェ」での井口さんの評価も「耳の穴」に含んでほしいですね。
井口 そうなんですよ。それはこっちの潜在能力としてカウントしてくれないと、敵に塩送ってるだけだから。(「耳の穴」で共演している
「弁論」への反応
──
飯塚 ほかの芸人さんたちがやっていることと全然かぶってない芸ですよね。だからこそ多くの芸人さんが絶賛したんだと思います。それに、袴田事件という冤罪事件をテーマにしていて社会的意義みたいなものもあって、広めることに意味があると思った人が広めようとした結果、ちゃんと話題になった。内容もいわゆる「弁護士芸人」というステレオタイプなスタンスより、弁護士として本気でスタンダップコメディに挑んでいる感じですごくよかったし、「R-1」で見ていた感じより、こっちのほうが本来あるべき姿なのでは?とも思ってしまいそうではありました(笑)。
井口 僕は見てないんですよ。めちゃくちゃ褒められてて嫌だったんで(笑)。まあ、ご存知面だけしなければいいですよ。「どうも、弁論でござい」みたいなことにならないように見張ってはいます。
飯塚 今回の現象でちょっと思ったのは、以前「サンドウィッチマンの病院ラジオ」(NHK総合)も、当初SNSでの評価が高かったんですよ。サンドウィッチマンが病院内にラジオ局を構えて、患者やその家族の話を聞くっていう意義深い番組なんですけど、面白さにもう一枚社会性が乗っかると、それを褒める自分も素晴らしいものになった気になるれし、自分が見つけた感もあってSNSですごくバズるなって。「弁論」もそういうコンテンツになっている部分もあるだろうなって思いました。
井口 自分まで高尚なものになっていると思っちゃうっていうのはありますよね。こたけはすごくてもお前はなんにもすごくないんだから、そこ勘違いするなよっていうのは思います。そういうネタでもやろうかな? まあ、挑戦し続けることはいいことですからね。「R-1」とかで同じネタばっかり何年もやっているような奴らよりはちゃんとしてますよ。
よくわからない話
飯塚 あとこれはよくわかんないんだけど、太が勝手に「M-1」にエントリーしたの?
編集部注:1月14日放送の「にけつッ!!」(読売テレビ)でケンドーコバヤシがウエストランド河本が勝手に「M-1グランプリ2024」にエントリーしたが芸歴15年の制限を超えているため出場できなかったというエピソードを披露していた。1月25日放送「工具大好き」(TBSラジオ)で本人が語っている。
井口 ああ、それは僕もよくわかってないのでいいですよ。ノーコメントで!
飯塚 触れたくない?
井口 そうっすね。まあ、なんとかしたいっていうのがあるんじゃないですか?
飯塚 ひと笑い作りたかった?
井口 というより、やっぱ焦りはあるんじゃないですか?
飯塚 本当に出ようとしたわけじゃないでしょ?
井口 いや、出ようとしたんじゃないですかね? こっちに質問が来てもめんどくさいんで、僕には聞かないでください!
「R-1」で毎年同じネタするな!
飯塚 「R-1」も予選のネタ動画上げはじめたね。
井口 「R-1」もどんどん「M-1」に寄せていってわけわかんなくなってるっていうのはあります(笑)。これが出る頃には「R-1」の決勝メンバーも決まってると思いますけど。
飯塚 予選のネタ動画を公開するのって、芸人さん的にはどうなの?
井口 僕が思うに、同じネタを禁止してるんじゃないかなって。みんな毎年同じネタばっかりやるんですよ、ピン芸人すら。日々何してんだよ?って思いますけど、それの対策でもあるのかなという気はしました。僕は全賞レースその年のネタでやるっていう主義だから、次の年にネタを取っておくとかもしないでほしいし、「翌年の自分に懸けろよ!」って思いますけどね。いいネタができたからそれを超えるネタが作れないみたいな人もいますけど、作り続けてほしいです。あと作り続けてる僕は偉いだろ、とも思うし。
飯塚 またそこに戻るんだ(笑)。
お知らせ
当連載「今月のお笑い」が書籍化されることになりました! 宝島社さんから6月に発売予定です。続報をお待ちください。
プロフィール
井口浩之(イグチヒロユキ)
1983年5月6日生まれ、岡山県出身。2008年、河本太(コウモトフトシ)とウエストランドを結成。2013年4月に「笑っていいとも!」(フジテレビ)のレギュラーに抜擢され、最終回まで不定期で出演した。2012年から2014年に「THE MANZAI」認定漫才師。「M-1グランプリ」では2020年に初の決勝進出を果たし、2022年に優勝! ラジオ形式の番組「ウエストランドのぶちラジ!」をYouTubeなどで配信中。とろサーモン久保田とのレギュラー番組「耳の穴かっぽじって聞け!」(テレビ朝日)は毎週火曜26:34~。タイタン所属。
飯塚大悟(イイヅカダイゴ)
1982年4月13日生まれ、新潟県出身。テレビ、ラジオの構成作家。現在の担当番組は「サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん」「家事ヤロウ!!!」(テレビ朝日)、「水曜日のダウンタウン」「クレイジージャーニー」(TBS)、「ヒルナンデス!」(日本テレビ)、「オードリーのオールナイトニッポン」(ニッポン放送)など。書籍「深解釈 オールナイトニッポン~10人の放送作家から読み解くラジオの今~」(扶桑社)。
「つぶぞろい2025 ~漫才王とコント王とその他の王たち~」
FANY Online Ticket、PIA LIVE STREAMで2月10日(月)21:00までチケット販売、23:59までアーカイブ配信。
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