
今月のお笑い 35本目 [バックナンバー]
ウエストランド井口と作家飯塚が語る「2025年3月のお笑い」
まだ納得いかない「R-1」、佐久間一行のメガネ、ザセカの審査、井口の仕掛け人仕事
2025年4月3日 18:00 29
構成
※取材は3月29日に実施。
友田オレの優勝で閉幕「R-1」
──「R-1グランプリ」の決勝がありました。
井口 決勝は面白かったし、よかったと思いますけど、納得はいっていないです。
──何にですか?
井口 なんで僕が落とされなきゃいけないんだってことですよ(※)。
※編集部注:井口は準決勝で敗退している。その話は「2025年2月のお笑い」でたっぷり語ったはず。
──まだそこなんですね。
飯塚 決勝を観たうえで、「これなら落ちてもしょうがないな」とは思わなかったってこと?
井口 これだったら僕がいてもよかっただろ、とは思いましたね。今までの「R-1」って、漫才師が漫談をやったら落とされる暗黙のルールみたいなものがあった気がするんですよ。それなりの漫才師だったら1人でしゃべれるので。今回で言うと(さや香)新山が漫談だったわけですけど、今までダメだったのになんで急に新山が受かって、なんで僕はダメだったんだよ? ただ、予選のネタ動画がYouTubeに上がっているおかげでいろんな人に「あれ面白かったのになんでダメだったんだろうな」って言われたのは救いでしたね。(おぎやはぎ)矢作さんや(FUJIWARA)フジモンさんとか、普段「井口なんだお前!」とかしか言ってこないような先輩たちが観てくれたのはうれしかったし、だからこそ本当に納得いかないです。
飯塚 確かに、井口くんが決勝にいてもよかったかなとは思った。もっと大会をぶっ壊すような、全然違うタイプの人が出てきたら違う面白さもあったかなって。
──飯塚さんは決勝をご覧になってどうでしたか?
飯塚 今回は特にいろんなネタが入り乱れてるなと思いました。1人コントあり、漫談あり、チャンスさんあり、フリップあり、細かすぎて伝わらないモノマネもあって、なんでもありなぐちゃぐちゃした中で、友田オレさんがドーンと行ったじゃないですか。1本目の演歌歌手のネタは歌い始めるまでに1分くらいかけて、ボケにしたら3つくらいしかないけど、すごく独特な空気感があった。これだけいろんなタイプの芸が集まっていたからこそ、世界観のあるネタが余計に際立った気がしました。
井口 思わず口ずさんじゃうネタですしね。
飯塚 子供が「♪ないないなないななーい」(2本目のネタ)って毎日言ってる(笑)。そういうネタって強いよね。
井口 僕らもルシファー(吉岡)さんを応援しながら観てましたけど、「ルシファーさんが優勝だ!」と言いつつみんな友田オレの歌を自然と口ずさんでたので、じゃあ友田オレが優勝だろ!っていう(笑)。耳馴染みもいいし、くだらないことを真剣に言う面白さもありましたからね。
飯塚 芸歴制限が廃止されてから初めて芸歴10年未満の人が優勝した。友田オレさんは学生時代から「ABCお笑いグランプリ」決勝に出たりして変に注目されすぎちゃったから、やりにくい時期もあっただろうと思うけど、まだ3年目とかなんだよね。
井口 そこは新しい風が吹いてよかったですよね。そういえば、友田オレが事前のインタビューか何かで「R-1をくさすノリを俺がやめさせる」みたいなことを言っていて。それが僕のことかどうかはわかんないですけど、よく考えてください。僕が言うまでは誰も(「R-1に夢がない」と)言ってないんですよ。「R-1」をくさすノリが一般的になったから「手前の笑い」とか言うけど、もともと奥底にあったのを僕が引っ張り出したわけで、僕以降に「R-1」をくさしてる奴と一緒にするな! だから僕に言うのだけは間違ってるぞ、と思いました。
飯塚 でも友田オレさんは井口くんへというより、「R-1」を下に見る風潮が嫌でやめさせたいって言っていた気がした。井口くんみたいに表立って言わないけど、そう思ってる人に向けてるのかなって。
井口 じゃあいいか。まあ、実際僕は「R-1」に出てるし盛り上げてますからね。(友田オレが)どんな奴かはまだ全然知らないですけど、まあ、いい奴ではあるとは聞きましたよ。
審査員・佐久間一行の細やかな気遣い
飯塚 ファイナルステージは全員フリップを使ったネタだったね。
井口 僕からしたら、なんで2本目ないんだよ?っていう。そう考えたら、やっぱり2022年の「M-1」(※)はすごかったなって思いますね。
※編集部注:2本目のウケが大爆発してウエストランドが優勝した大会。
飯塚 まだ言う?(笑)
井口 どこにも見せたことがないネタがまだあったんだっていう、すごさ! それくらいみんなやってほしいですよ。正直、賞レースって2本目で息切れしての優勝ばっかりなので。2本はあってくれよって思います。息切れ系はやめてほしい。
飯塚 去年「キングオブコント」で2本目ダメ出しされたラブレターズとかね(笑)。
井口
飯塚 1本目があれだけ作り込んだものだったから、2本目が余計にシンプルに見えたのかもね。
井口 なんかカメラワークも変だったし。どうなってんだよ。
──そして今回は審査員が5名から7名に変更されました。
井口 異種格闘技なので、審査員は多いほうがいいなと思いました。
飯塚 あまりにもネタのタイプが違いすぎるから、審査するのは難しいよね。例えばチャンス大城さんって、ネタでもあるし……。
井口 もう“人”ですもんね。
飯塚 そうそう。生き様とか、「こんな大舞台で何してんの?」みたいな部分もあるから、それと作り込まれたコントをどう比べればいいんだろうって自分なら悩みそう。でも、審査員ごとに好みが分かれていてよかった。
井口 そのほうがいいですよね。「M-1」や「キングオブコント」はだいたい近い点数になっちゃうから。好みが分かれることで「(点数が)この人は低い、でもこの人は高いぞ!」とかがあって、最後まで結果がわからないのはよかったです。
飯塚 審査員がいろんなジャンルのピン芸人だから、それぞれ認められないラインもあったと思う。「これは自分もやってきたことだからそんなに難しいことじゃないな」とか、その逆で「これは自分にはできない」とか。歩んできた道のりが審査に出ているなと思った。
井口 ルシファーさんがバカリズムさんの最高得点だったので、それは本当に救われるしうれしいだろうなと思いました。審査にこれだけばらつきがあると、そういうよさもありますよね。コントでバカリズムさんに評価されたら一番うれしいでしょうから。
飯塚 あと個人的には、
「R-1」が終わっても続く…井口の戦い
飯塚 ルシファーさんと
井口 それはあるかもしれないですね。
飯塚
井口 賞レースで勝つためにそうしなきゃいけないっていうジレンマもありますよね。
飯塚 あと僕は、準決勝で落ちたけどお抹茶の「ラメ忍者」が好きで(笑)。あんなのが決勝にいてもいいなと思った。前回の「かりんとうの車」よりも若干ビジュアルもがんばっていて。前回はB級、C級感が強くて、その面白さが決勝で伝わらない部分があったけど、今回は完成度をちょっぴり高めてきてた気がする。
井口 ふかわさんとかも準決勝のウケだったら決勝行っててもよかった気がしますね。準決勝の審査員には「ここまでっしょ」と思わずフラットに見てほしいです。「井口は落ちるとして……」みたいな考えはやめてほしいですね。
飯塚 準決勝のネタがYouTubeに公開されるから、審査員もリスクを背負ってるよね。
井口 先月も言いましたけど、準決勝の審査員の中で僕を買ってくれてた人はいたのか。いたなら会いに行きたいですけど。
飯塚 前回話して、「僕は井口さんに入れました!」っていう連絡はないんだ?
井口 今のところないです。ってことは満場一致でダメだったってことですかね(笑)。まあ、ファイナリストのネタもYouTubeに上がったので、僕はまだそこでバチバチやっていきますよ。
飯塚 まだ井口くんの準決勝ネタが再生回数1位だからね。
井口 抜かれないようにがんばります。
飯塚 何をがんばるの?
井口 告知とかもして。僕の評価としては「井口が決勝に残れないなんておかしいな」と言われ続けていくしかないですからね。
飯塚 やっぱり井口くんが一番「R-1」を告知してる(笑)。
年々増す「THE SECOND」観客の審査員感
──「THE SECOND~漫才トーナメント~」はベスト16が出ました。
飯塚
井口
※編集部注:リニアは2024年に初開催した「今月のお笑いネタライブ!!」で優勝。審査員井口は94点の高得点を付けている。
飯塚 大会が3年目だからか、点数をつけるお客さんたちの審査の傾向が変わってきてる気がした。アモーンやチャーミングは盛り上がってたけど、点数は冷静というか。「お祭り的な盛り上がりとネタの完成度は別」みたいに、お客さんの審査員感が増してる。お客さんが審査してコメントもするから、「みんなで良い結果にしよう」みたいな謎の一体感があるのが独特。
井口
飯塚 VS形式だからこそだけど、ザ・ぼんちを見たあとだと……。
井口 ともしげさんが賢く見えますよね(笑)。
飯塚 レジェンドのパワーがすごいんだよね。
井口 ザ・ぼんちさんはヨシモト∞ホールに出たりして仕上げてきているらしいです。すごいですよね、その情熱が。(「R-1」に出場した)ふかわさんもそうですけど、ベテランになってから挑戦するってなかなかできることじゃないですよ。
飯塚
井口 MCとして賞レースの予選を盛り上げてきた方が、プレイヤーとして出て結果出すってカッコいいです。
飯塚 予選を観ていてちょっと気になったのが、大舞台慣れしてない人の弱さというか、お客さんや世の中の空気感を掴めてない感じがあった気がした。自分の話題とか、内輪っぽいことを言って、お客さんがピンと来ていないみたいな。
井口 ああー。ご存知系(※)ですね。
※編集部注:身近なコミュニティでおなじみの掛け合いなどを初見の観客もいる大きな舞台でやってしまう芸人のこと。
飯塚 そのへんの感覚が、井口くんの言う「究極の客観視」。
井口 “ご存知”はなかなか治らないですから。
飯塚 そのあたりが、いろんなお客さんが来るような大きいライブに慣れてないのかなと思った。
井口 よしもと以外だと、ドドん、リニア、マシンガンズ、母心、ハンジロウが残っているわけですね。
飯塚 でも全員負けちゃう可能性もある。
井口 それだけは避けてほしいです。
飯塚 全員よしもとになったら?
井口 もう見ないです(笑)。
飯塚 過去にないんじゃない? 全員よしもとの決勝って。
井口 変な話、1組は絶対入れるじゃないですか。「THE SECOND」だとそれができないから、どうなるかわかりませんね。
粗品の審査
──「ytv漫才新人賞」では
井口 それよりも
飯塚 粗品さんの審査はロジカルだし、予選から全部見てるから熱量もあってよかった。後輩たちにもっと面白くなってほしいという思いを感じた。でも「粗品の審査が的確!」みたいな感想や記事のほうが多く目にして、そればっかりになっちゃうのは違うのかなって。
井口 粗品も望んでることじゃないでしょうしね。粗品は「これが面白い、これはまだまだだ」っていうことを世の中にわからせたくてこういう審査をしているのに、「粗品がすごい」になっちゃうと本末転倒というか。
飯塚 今って、SNSとかで「自分はここが面白かった」と言うのが怖くなってる気がして。「粗品さんが評価したものと自分は逆だ」って言いづらい雰囲気がある。面白かったって思ったなら自信を持って言えばいいのに。
井口 いつも言ってますけど、みんなが何も考えなくなっちゃったんですよ。これからは何事ももっと自分で考えて生きなきゃダメなんだよ! 世間が反対しそうな人には反対するけど、反対しなさそうな人には反対しないっていう感覚になっちゃってますからね。
飯塚 「M-1」にはこれまで松本(人志)さんがいて、「M-1」=松本さんだから、松本さんの言う言葉が強かった。それで言うと、今回は粗品さんが認めていないものは勝つのは難しそうだなという空気になったし、もうカリスマみたいな存在になってる。
井口 若手からしたら粗品に認められたいんでしょうね。僕らが松本さんに思っていたような感覚を粗品に持ってるんだと思います。ただややこしいのが、ネットの時代になっちゃったので、当時は松本さんが50点とかつけてもそりゃ本人は苦しいけど、その場のことだったじゃないですか。今は視聴者も一緒になって「ほら見ろ」みたいになりかねないので、お前は粗品じゃないからな!?っていうのは肝に銘じてほしいですね。
飯塚 フースーヤの話に戻すと、ようやく1個認められた証ができたのはうれしかったしよかった。個人的にはマジで意味わかんないことをやっていたときの昔のフースーヤも好きなんだけど、たぶん「それは漫才じゃなくて、ギャグじゃない?」って言う人を黙らせる方法をすごく考えてマイナーチェンジしてきたんだろうなって思う。
井口 難しいですよね。世に出て自由になれば好きなネタをできるけど、そのためにはまず賞レースで勝たなきゃいけない。となったら賞レースに寄せたネタを作らなきゃいけない部分もある。全部無視して好き勝手にやるのもいいけど、そうすると何も出られないし、お金も稼げない。
飯塚
井口 審査員もですけど、賞レースのMCは本当に大変ですからね。
飯塚 あと、関西の賞レースってあんまりピリピリさせすぎないような演出をわざとしているのかなっていうのが気になって。今回は出場者の親が別会場に来ていて、中継でつなぐ場面があって。お祭り感も出すことでバランスを取ってるのかなと思いました。
井口「皆目見当違いが!」
ウエストランド井口 @westiguchi
読んでねー!!
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