ウエストランド井口と作家飯塚の「今月のお笑い」

今月のお笑い 34本目 [バックナンバー]

ウエストランド井口と作家飯塚が語る「2025年2月のお笑い」

「R-1」に喝!、「THE SECOND」、8年ぶり「イロモネア」、愛されるしずる、エバースVS井口

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ウエストランド井口と構成作家・飯塚大悟が毎月のお笑い界の出来事を勝手に振り返る連載「今月のお笑い」。誰よりも「R-1グランプリ」を盛り上げてきた井口の準決勝敗退が決まってから最初の取材は、もちろん「R-1」への文句から。ベスト32が発表された「THE SECOND~漫才トーナメント~」、8年ぶり復活「ザ・イロモネア」、因縁の(?)エバースと井口の対面といった話題が出たほか、ざわざわしているお笑い界に陰謀論的な考え方を持ち込む人々への警鐘も。

構成 / 狩野有理 ヘッダーイラスト / 清野とおる

※取材は2月26日に実施。

「R-1」審査、本当によーく考えた?

井口 「R-1」の話からします? いちいち話して盛り上げる気もないんですけど(笑)。

飯塚 でも井口くん、あらゆるところで「R-1」の話してるよね。

井口 結局、僕が一番「R-1」の話題を振りまいてますからね! 今回僕は準決勝で落ちましたけど、準決勝の審査員にピン芸人の人が入っているじゃないですか。もちろん実際どうかはわかりませんけど、心情的にはピン芸人を通したいんじゃないかなと思うんです。僕が審査員だったとしてもコンビの片割れには入れないだろうと思いますし。だからもう、「R-1」は真面目なピンの奴らだけでやっとけよ!って感じですね。

ウエストランド井口と飯塚大悟

ウエストランド井口と飯塚大悟

飯塚 コンビの片割れで言うと、さや香・新山さんが受かってる(※)。

※編集部注:ハギノリザードマンは「R-1グランプリ2025」開幕時点ではベルナルドの正式結成を発表していなかったため、ここでは数えない。

井口 「1人は入れとこう」ってことじゃないですか? 去年もコンビ、トリオで決勝に行ったのはお抹茶1人でしたし。まあわかりませんけどね。ただ、よく考えずに「あ、はいはい。井口のこれはなしね」というふうに切られている気もしたんですよ。だからどうやっても受からないです、僕は。

飯塚 実際にどういう話し合いが行われているかはわからないけど、「ウケてたけど、これは違うよね」「大会としては通せない」っていう判断はどの賞レースにもありそうだよね。

井口 イメージで切られてるんですよ、たぶん。「待てよ、これ意外といいんじゃないか?」っていうところまで考えずに決められてちゃってる。よーく考えたら僕を通してもいいと思うんですよ。

飯塚 その尺度は人によって違うから、実際は意見が割れたりもしたんじゃない? 「井口さんめっちゃウケてたし、いいんじゃないですか」って言う人もいると思う。

井口 割れたのかなあ?

飯塚 割れたかどうかだけ知りたい?

井口 知りたいです。もし僕を支持してくれてる人がいたなら、会いに行きたいですね。今年の「R-1」は予選動画を上げまくるっていうわけわかんない動きをしていますけど、僕としては助かりました。

飯塚 動画がないとウケたって言い張ってるだけになるもんね。井口くんのネタが一番再生されていて、「こんなに面白いのに落ちたんだ!」っていう反応も多い。

井口 再生回数1位は僕の準決勝ネタですからね。

飯塚 「R-1」を支えてるね(笑)。

井口 本当にそうですよ。吉住がラジオで僕のことを言ってくれていたのだけが救いですけど、僕としては「本当にもう知らねえぞ!」っていう気持ちですよ。あとルシファー(吉岡)さんとか、一緒に戦っている人たちは好意的でしたね。受かるんじゃないかとも言ってくれていて。

飯塚 井口くん的にも「M-1」で優勝したときのネタで佐久間(宣行)さんの名前を出すとか、大会批判みたいなことを言うとかは、「今自分が賞レースでやっていい笑いだな」という感覚があったと思う。実際それをやって優勝したことでより自分の感覚に自信がついたと思うから、「R-1」で通らなかったことに疑問を持つのもわかる。

井口 自分でも「さすがに無理だったか」と思いつつも、動画が上がって「これ上げてもいいんじゃない?」みたいな視聴者の反応を見ると「やっぱそうだよな?」っていう気がしました。ネタに関しては、ちゃんと予選の前日に飯塚さんに電話して「謝罪とかどう?」「じゃあそれにします」っていうので作りましたからね。

飯塚 前日にその状態からよく仕上げたよね(笑)。

井口 でもまあ、叫ばずにやるっていうネタは僕の中ではやったことがなかったし、それであれだけウケたのは収穫ではあります。

飯塚 一応言っておくと、フジテレビの謝罪会見の前の予選から井口くんはこのネタやってるからね。準決勝の動画だけ見ると会見に合わせたみたいに思っちゃうけど。

井口 そうなんですよ。準々決勝のときはちょうど同じ時間帯に1回目の会見をやっていて、準決勝はあの会見の直後だったから触れないわけにもいかなかったっていう。

飯塚 あの会見をイジってると思われてしまったっていうのも、落ちた理由としてちょっとだけあるかもしれない。

井口 そういう不運もあったのかどうなのか。NEW PIER HALLは何回も出ているし(※)、「これは行ったな」っていうのがわかるんですよ。複数回受かったことがある人ならなおさら。

飯塚 普段お笑いをやる劇場と違うから、初めてやる芸人さんだとウケ量が把握しにくいんだよね。

井口 今回もウケ的にはその域に達していただけに、落ちてびっくりしましたね。だから結果発表直後の全員のインタビューに僕の怒号が入っちゃいましたけど(笑)。「はぁ~あ」って感じですよ、もう。

飯塚 「ふざけんな!」というより、「シュン……」って感じだよね。

井口 「もういいよ……」と。呆れてます、こっちは。

※編集部注:「R-1グランプリ2025」の準決勝が行われたNEW PIER HALLは「M-1グランプリ」準決勝の会場でもあり、井口にはなじみのあるステージ。

決勝進出者発表後の井口

ファイナリスト9人VS井口

──決勝進出者の顔ぶれはいかがですか?

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井口 文句は言ってますけど、じゃあこいつを落とせよ!っていう人は別にいないんですよね(笑)。

飯塚 ここまで来たらルシファーさんに優勝してほしいよね。

井口 7回連続決勝進出ですからね。ルシファーさんと吉住はやっていることの次元が違うっていうくらいの実力者ですし。

飯塚 若くて人気があって勢いのまま優勝、というよりは、今年は本当に地肩勝負な気がする。近年勝っていない、1人コントの人の優勝が見たい。1人コントは賞レースで勝てないから、わかりやすい大喜利系でいっぱいネタを詰めたほうがいいんだっていう風潮にならないでほしいし。

井口 でも正直、ファイナリストたちは僕との戦いですよ。ゴースト的な感じで僕がいるので。

飯塚 マリオカートみたいな(笑)。

井口 再生数1位の僕に勝てるか、ですね。「井口のほうが面白いじゃん」になったらそれまでですから。

飯塚 今回の大会はそういう戦いなんだ? 井口VSファイナリスト9人っていう。

井口 「これは井口より面白いな」って納得させないと。何より、この9人より僕が一番「R-1」のことを言っているわけですし。なんかいろいろ言ってたら、2020年の敗者復活で一番ウケたのに落ちたこともムカついてきました。受からせる気がないんですよ。とにかく僕のことが嫌いな「R-1」。

飯塚 「R-1には夢ない」って言ったこと、本当に根に持ってるのかもね(笑)。

井口 でもよーく見たら、「ドリーム」とか書いてあるんですよ。じゃあもう使うなよ! 僕の「夢がない」って言葉。

飯塚 まあ、とにかく決勝は楽しみ。

井口 決勝の日も空けてましたからね。今のところはみんなで観ることにはなってます。「みんなで観るほどか?」っていう気もしますけど(笑)。一応ルシファーさんが出るので。

飯塚 毎回の賞レースで、当然のように井口くんの仲間がファイナリストにいるよね。

井口 それもすごいことですよね。昔は関係ない人が出ている決勝をみんなで集まって観て、ただ悪口言うだけの催しでしたけど(笑)。今はちゃんと応援する会になってますから。あとは、審査員が誰なのか。2枠シークレットにしているってことは「おっ!」という人なのか。

──井口さん審査員説はないんですか?

井口 今のところないんですよね。唯一、それに賭けてるんですけど。落ちたということは審査員なのかなとは思ってますよ。

賞レース情報

仲間もたくさん「THE SECOND」ベスト32

──「THE SECOND~漫才トーナメント~」のベスト32も発表されました。

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井口 流れ星☆たきうえさんが例によって怒ってましたけど。

飯塚 落ちて怒るって、井口くんと一緒じゃない?

井口 それが本当に嫌だったんですよ。たきうえさんと一緒にされたくないなと思って、怒りも収まりました(笑)。(32組の一覧を見て)え、アモーンが受かってるんですか!?

飯塚 アモーンはあれなんですよ。ウエストランドやラブレターズが出てて、僕がネタ見せ作家をしてた、例のお笑いライブに出てた人たちです。

──そうなんですか! 昔からの仲間だったんですね。

井口 そうなんですよ。でもエル・カブキドドんとか、よしもと以外のライブで一緒にやってた人たちが残ってますね。モグライダーとドドんは一緒にK-PROでユニットライブをやっていましたし。

飯塚 ドドんの石田くんって松山大学の落研で、僕がスタッフをやっていた大学お笑いの大会に出ていたから、「え、もうSECONDなの?」って驚いた。学生のイメージだったから、今何歳なんだ?っていう。けっこうそれが衝撃的で。まだ若手だと勝手に思って。

井口 2人とも信じられないくらい見た目変わんないから(笑)。それも怖いんだよな。

飯塚 ななまがりもそうだけどね。大阪芸大の落研にいる頃に大学お笑いの大会に出ていたのを見ていたから、もうSECOND世代なんだなって思う。

井口 三拍子さんが残っているのもうれしいですね。ずっと漫才をやってきた僕らのお兄さん的な人たちが意外とこれまで賞レースに引っかからなかったので、ここでようやくっていう思いはあります。

飯塚 あとは、やっぱリニアじゃない? 初代「井口-1」優勝者(※)。

※編集部注:2024年に開催した「今月のお笑いネタライブ!!~審査員は井口だけ~」でリニアが優勝。審査員井口は94点の高得点を付けている。

井口 そうでしたね(笑)。人力舎では本田兄妹も。リニアと本田兄妹は一緒に「大船的お笑いハニービー」に出てたので。そう考えると僕の知り合いがけっこういますよ。

飯塚 「SECOND」ってそういうものだからね(笑)。世代的に井口くんの仲間がエントリーするものだから。

井口 そうか。ただやめてないだけか!(笑)

飯塚 よしもと以外がけっこう受かってはいるね。モグライダーは本来「SECOND」向きな気がする。整ったネタじゃないほうが強かったりするから。

井口 しかも「M-1」で早めに落ちちゃってパワーが相当残ってると思うので、かなり強いでしょうね。

飯塚 あれ? チャーミングって解散してなかった?(※)

井口 解散したはずですけど、「SECOND」が夢を与えたんじゃないですか?

※編集部注:チャーミングは2018年に解散し、2023年に再結成

飯塚 はりけ~んずさんも残ってる。

井口 はりけ~んずさんが賞レースで戦ってるってすごいなあ。熱くなりますね。

飯塚 いろんな賞レースの予選MCをやってるから、ある意味、賞レースファンにとっては一番有名な人かもね。

井口 僕も「M-1」と「R-1」でお世話になってますから。いつも優しい言葉かけてくれるんですよ。

「M-1」準決勝を盛り上げるはりけ~んず

飯塚 はりけ~んずさんって芸歴的に一度も「M-1」に出られてないんだよね。第1回から「M-1」予選のMCをしてる。

井口 すごいよなあ。これが「THE SECOND」の面白さでもありますよね。

飯塚 ダイタクも活躍しそうだったよね。いろんなネタを持っているから、いろんな戦い方ができそう。ウエストランドも向いてるだろうと思った。「M-1」の4分ってきっちり仕上げた作品性が求められがちだけど、「THE SECOND」の6分ってアドリブなんかも入れられる地肩の強さとかも必要だと思うから。

井口 参加資格上は出られませんけどね。でも、インデペンデンスデイが生きてたらなって思っちゃうなあ。リニアと本田兄妹と、大船でやってたメンバーですし。芸風的にも一番「THE SECOND」に向いてたのに。

飯塚 「THE SECOND」でインデペンデンスデイ見たいね。

井口 死んでる場合じゃないよ! 本当にもう。

「2023年4月のお笑い」でも語られているインデペンデンスデイ

飯塚 生きてるぽ~くちょっぷは落ちてるけど。

井口 ぽ~くちょっぷ落ちたんですか!? (今年1月開催のライブ)「つぶぞろい」のときウケてたのに。なんなんだよ。

飯塚 ぽ~くちょっぷ、通らず。

ぽ~くちょっぷ

ぽ~くちょっぷ

井口 もう、生きてるだけじゃないですか! 生きて、解散してないだけ!(笑)

飯塚 大切にしろ! 命を。生きてるんだから。

井口 本当にね、「THE SECOND」の人たちには健康にとにかく気をつけてほしいです。まだ決まっていませんけど、対戦の組み合わせ次第なところはありますよね。

飯塚 組み合わせ抽選会のMCはこれまで令和ロマンがやっていたけど、今年は誰がやるんだろう。

井口 またマヂカルラブリー(※)になるんじゃないですか?(笑)

※編集部注:マヂカルラブリーは「M-1グランプリ2024」の決勝進出者発表会見、反省会や打ち上げ配信のMCを務めている。ちなみに今年の「THE SECOND」の組み合わせ抽選会は令和ロマン・ケムリとガクテンソクが務めることが3月3日に発表された。

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8年ぶり復活「ザ・イロモネア」

飯塚 8年ぶりに放送された「ザ・イロモネア」に今回初めて構成作家として関わらせもらったんだけど、自分が20代の頃から観ていた番組に入れるってすごく感慨深くて。「セットこうなってるんだ」とか思いながらやらせてもらった。

井口 ちゃんと盛り上がっていましたよね。8年ぶりでしたけど、古さとかはまったく感じませんでした。

飯塚 視聴率もよかった。ここ数年、「イロモネア」に似たような企画を各局でよく見たけど、やっぱり「イロモネア」のあの「観覧客100人の中から審査員をランダムで5人選ぶ」というルールが秀逸で、あれを超えるものがこの8年で生まれなかったんだろうと思う。

井口 緊張感とバカバカしさとちょうどいいバランスですよね。別に、変なことになってもいいし。

飯塚 ミスってウケて、クリアになったりもするしね。

井口 めっちゃウケても1人だけ笑ってないとかもあるし、運と実力のバランスもちょうどよくて。有吉(弘行)さんとかバナナマンさんが出ているのもすごいですよね。

飯塚 ウッチャンナンチャンMCだから出たいっていう思いはあっただろうね。非よしもとの人たちの活躍が印象的だった。ずんさんは久々にコンビでいるところを見たけど、ちゃんとネタが強いっていうところを見られたのもよかったし、劇団ひとりさんのネタを見られる機会ってあまりないから、「やっぱり面白いんだ」って改めて思った。

井口 レギュラー放送が終わってから出てきた若手と、当時のチャレンジャーが一緒に出ているっていうのがまたいいですよね。

飯塚 「イロモネア」自体は8年ぶりだけど、南原さんは「ネタパレ」(フジテレビ)をやっているし、内村さんは「ぴったり にちようチャップリン」(テレビ東京)をやっていて、普段からいろんな芸人さんと共演しているから、絡みの部分がスムーズだった。その芸人さんがどういうキャラで、っていうイチからの説明は不要だから。

井口 若手もウンナンさんとの距離感がわかっている感じでしたね。

飯塚 収録を観に行ったんだけど、ウンナンさんの特徴なのか、本当に放送のまんまだった。変なところで盛り上がっちゃってグダグダするとか無駄な部分が一切なく進んで、全部が使われどころになっていて。達人のMCっていう感じだった。また特番でできることになったらいろんな人のパターンも見てみたい。ウエストランドのパターンも。

井口 怖いですけどね。一瞬出ることを想像してみたんですけど、大変だろうなって思いました。

飯塚 でもどんな手を使ってもいいわけだから、意外と向いているのかもしれない。モノマネやって、ウケなかったことに対して文句言うとか。いろんな方法があるよね。作品を見せるだけじゃなくて。

井口 作品性とかはまったくないので、もし出るなら力技でやることになるでしょうね(笑)。

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飯塚🤓 @iizukakun

今月も!感想を引用リポストしてもいいんですよ。記事のラストには書籍化のお知らせとライブのお知らせも。 #今月のお笑い https://t.co/UM0WoDTIGI

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