ウエストランド井口と作家飯塚の「今月のお笑い」。

今月のお笑い 13本目 [バックナンバー]

ウエストランド井口と作家飯塚が語る「2023年5月のお笑い」

THE SECOND、あのちゃんを離すな!、ライスプチブーム、井口も焚き火で語りたい

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ウエストランド井口と構成作家・飯塚大悟が、毎月のお笑い界の出来事を勝手に振り返る連載「今月のお笑い」。2023年5月はなんといっても「THE SECOND~漫才トーナメント~」を中心に、井口とあのちゃんとの絡み、爆笑問題が出演したK-PRO「行列の先頭」、さらば青春の光の無双感、ライスのプチブーム、や団の顔ファン、「焚き火で語る。」に呼ばれないなどの話題が出た。連載開始から1周年を迎え、このたびヘッダーイラストを刷新。年末にはまたイベント開催できるように、2年目もどうぞよろしくお願いします。

構成 / 狩野有理 ヘッダーイラスト / 清野とおる

※取材は5月31日に実施。

出るとご利益のある連載です

──今回の記事が連載2年目の一発目になります。

井口 けっこうやってる気がするけど、意外とそうなんですね。

──ということで、新しいヘッダーイラストを前回から引き続き清野とおるさんに描いていただきました。じゃーん。

飯塚 ヤマタノオロチになってる!(笑)

井口 すごいなあ!(笑)

飯塚 前回のボロボロの四畳半でしゃべってるのよりは進化したってことなのかな?

左がシーズン1のイラスト、右がシーズン2のイラスト。

左がシーズン1のイラスト、右がシーズン2のイラスト。

井口 進化……したんですかね? バケモノにはなってますけど(笑)、また描いていただけたのはうれしいです。2年目はこの新しい絵でやっていくわけですね。

──これでやっていきますよ。連載を1年続けてみてどうでしたか?

井口 これをやり始めてから状況としては劇的に変わりましたね。そういう意味では縁起がいいのかもしれません。

飯塚 この連載がきっかけで「つぶぞろい」(※)を復活させましょうと声をかけてもらえましたし、「つぶぞろい」出演者のウエストランドは「M-1」優勝し、三四郎は「THE SECOND」で活躍し、なんとなくいろんなことが繋がっていて。そのへんはうれしいです。

※編集部注:飯塚が2011年から自主開催していたお笑いライブ。三四郎、ウエストランド、ラブレターズらが出演していた。今年1月に東京・草月ホールで「つぶぞろい2023 ~みんな売れて大復活ライブ~」開催

井口 この連載に出た人はみんな上り調子になるって、こじつけでも言っていきましょう。最初のゲストはダウ90000の蓮見だったわけですから。

飯塚 今はもう忙しくて呼ぶのは申し訳ないからね、蓮見さん。

──この連載に登場して以降、ダウ90000は大活躍です。

井口 ニッポンの社長の辻くんとか、令和ロマンのくるまも今大人気じゃないですか。まあ、別にこれに出ようが出まいが普通に売れていくであろう人たちでしたけど(笑)。

飯塚 これからも爆売れ確定の人をギリギリのタイミングで呼んでいこう。

──2年目も年末に公開取材イベントをやりたいと思っていますし、この連載発のネタライブもやってみたいので、いろいろとよろしくお願いします。

ウエストランド井口(左)と飯塚大悟(右)。

ウエストランド井口(左)と飯塚大悟(右)。

飯塚 井口くんは今日この前はシアターマーキュリー新宿に出ていたんだよね。

井口 そうです。オープン記念興行の千秋楽で。

飯塚 まだ行ったことないんだけど、どうだった?

井口 めちゃくちゃきれいな劇場でした。公演によるんでしょうけど、客席がすごい明るくて、全然笑ってない人とかもすごいよく見えましたね。強い気持ちでやるしかないぞってみんなで話してました(笑)。

飯塚 ここからどういう劇場になっていくだろうね。(劇場の運営を手伝っている)スラッシュパイルの片山さんが盛り上げようとがんばってる。

井口 今って劇場が増えていて、ライブも無数にあるって若手が言っていたので劇場も大変なのかもしれませんね。ちゃんとした人からそうでない人まで(笑)、いろんな主催者がいるから気をつけたほうがいいって聞きました。

飯塚 シアターマーキュリーやナルゲキによしもとの芸人さんも出るようになって、交流戦的なライブができたりすると、もっと盛り上がりそうだね。最近は舞台やライブ配信だけで食えてる芸人さんも増えてるけど、劇場のレギュラーメンバーに入れていないクラスのよしもと芸人さんは大変って聞くし、ほかの事務所だったら自分で勝手にライブに出たりできるんだろうけど、よしもとだと月に1回のバトルライブのチャンスに懸けて「今月はダメだった」「来月またがんばろう」みたいな生活になってくる。この前ツーナッカンさんと三日月マンハッタンのツーマンライブがあって、ツーナッカンさんは「自分たちは本当にくすぶってる」って言ってた。だいぶ若手に混じってバトルライブに出ているみたいで。「THE SECOND」でこんなに面白くて腕のある人がいるんだって思ったので、いろんなチャンスがあってほしい。

井口 そういう人たちにとっても「THE SECOND」が始まった意味がありますよね。

なんといっても「THE SECOND」の話

井口 どうでした? 飯塚さんは。

飯塚 一番デカいなと思ったのは、全員が応援されているムード。例えば去年の「ツギクル芸人グランプリ」に芸歴20年クラスの芸人さんも出ていて、ルール上もちろんOKなんだけど、どうしてもお客さんは「この人たちが出ていいの?」という雰囲気になっちゃうんだよね。「M-1」もそうで、売れている人やファイナリスト経験者より新しい人を応援する空気がある気がする。「THE SECOND」はそれがないのがよかった。

井口 全員損してない感じでしたよね。「M-1」と違って誰が最下位とか、ウケてなかったとかもなく、みんな出たことがプラスになっていると思います。

飯塚 あとは、三四郎やランジャタイ、スピードワゴンが出場したのは大会にとって大きかった。くすぶっている人たちだけが参戦していたら「枯れている大会」みたいなイメージが付いていただろうし、マシンガンズが人気者のランジャタイを倒して上がってきたことにも価値があったと思う。

井口 売れっ子が参戦しているからこそ大会が華やかになるし、下剋上ができるわけですからね。

──売れている人でもやっぱりネタで認められたいんだなというのも感じました。

井口 テレビのイメージが強い三四郎とかスピードワゴンさんのネタがちゃんと面白いんだって知られるきっかけにもなったと思います。三四郎は「M-1」ラストイヤー以降も毎年単独ライブをやっていて、そこでももちろん面白いネタをやっているんですけど、「THE SECOND」に出ることになってから明らかに賞レース用に研ぎ澄まされた感じがありました。「あ、三四郎ってこうだった」っていうのが蘇ってきて、それを見ちゃうと、やっぱり芸人もスイッチ入りますよね。

飯塚 今回の三四郎みたいな固有名詞をバンバン出すああいうネタって、本当に簡単にはできないんだよね。若手すぎると生意気だし、先輩すぎると偉そうだし。三四郎の憎めないキャラクターがあって初めて成立するネタだから、そのへんももう少し評価されてもいい気がする。

井口 スピードワゴンさんも毎月「東京センターマイク」を主催して今の若手と同じ舞台に立ってきたからネタの精度がめちゃくちゃ高い。そういう人がちゃんと活躍していたのがうれしいです。

飯塚 スピードワゴンさんは平場のキャラクターと地続きで漫才ができるのがすごい。賞レースで世に出ても、その後のバラエティでイジられてキャラが剥がされたりすると、今までやっていたネタができなくなっちゃうこともあると思うんだけど、小沢さんも井戸田さんも平場のキャラが漫才とピタッと一致しているんだよね。

井口 個人的には、スピードワゴンVS三四郎は一番当たってほしくない2組でした。ここを三四郎が勝ち上がったのでこのまま優勝あるんじゃないかと思ったんですけど、それをマシンガンズが下して、もうこれマシンガンズが優勝するぞ!?みたいな雰囲気になったじゃないですか。決勝2組のネタが終わった時点でもマシンガンズが勝ったんじゃないかというくらいウケてたと思いましたけど、一晩置いたら「あれが優勝なわけないか」ってなりました(笑)。

飯塚 でも、あの瞬間は「マシンガンズ優勝なんだ」って思ったよね。

井口 そうなんですよね。よーく考えたらそんなわけないんですけど(笑)。

飯塚 「どちらかが優勝する」となったときに、お客さんの審査が厳しくなったのかもしれない。それまで両者に3点つけてた人も、最後くらい仕事して帰ろうと思ったかも知れないし。そのへんの審査員心理まで考えるとキリがないけど。

井口 「優勝を決める」と思って採点すると、そうですよね。準決勝で最高得点を取ったマシンガンズが決勝で最低得点取ってるわけですから。「ネタがない」って言っちゃうと「この人たち用意してないんだ」と評価が下がることもあるんですかね? マシンガンズはああいうスタイルだからネタがないもくそもないんでしょうけど。現場でも裏は「マシンガンズ優勝」みたいな空気になっていたらしいですね。

飯塚 言ってたね。ギャロップのネタ中、フリのところで「笑い声がない、ってことはいける……!」みたいな(笑)。そのあとドカンとウケたのに。

井口 みんなもう記念写真とか撮ってて。のんきなもんですよ(笑)。

飯塚 マシンガンズの、生放送中にエゴサしてそれをネタに組み込んでいくのとかは痺れたな。西堀さんの空気を察する力がすごかった。「(ボケが)弱いな」って感じたらすぐそれを言うし、現場で判断してやっていく能力がすさまじい。

井口 それはもっと伝わってほしいですよね。ネタが決まりきってない状態であそこに立つ怖さったらないですから。ライブですら怖いのに、テレビの生放送の賞レースでやるって相当ですよ。

飯塚 昔から、よしもとの芸人さんってネタをきっちりやって、アドリブはあんまり入れない印象がある。よしもと以外だとそのときの感じでアドリブ入れて、それによってネタがぐっちゃぐちゃになる人もいるんだけど(笑)、けっこう文化が違うなと思っていて。

井口 僕らも10年前、賞レースだったときの「THE MANZAI」でネタ中に「エレキテル連合が……」とか言っていたらよしもとの人が面食らってました。

飯塚 「そんなことネタで言っていいんだ?」みたいな。

井口 「ウケればいいんだね」って驚かれたのを覚えてます。

飯塚 よしもとの人には「漫才の様式美、こうあるべき」っていう考え方があるのかもしれないね。マシンガンズが「THE SECOND」でやっていた、「紙を持つ」のがいけないことみたいな見方もそれに通じると思うんだけど、ネタ中にほかの芸人の話題をバンバン入れるとか、三四郎、ウエストランドみたいなタイプってあんまりよしもとにいない気がする。

井口 「THE MANZAI」の頃はけっこうそういうタイプがいたと思うんですけど、そこから1回落ち着いてよしもと以外もちゃんとしたネタをやりだして、また揺り戻しというか、「そうだ、僕らの得意技はこれだった!」となっている気がしました。僕らが「M-1」で「佐久間さーん!」とかをやって、「こういうのやっていいんだった」って思い出してもらえたのかもしれませんけど(笑)。

どっちが勝ちか、三日月マンハッタン仲嶺だけ計算速い

──井口さんはいつもの仲間たちとご覧になっていたんですよね。

編集部注:三四郎・小宮、モグライダーともしげ、浜村凡平太らと集まって賞レースを鑑賞するのが井口の恒例。

井口 ともしげさん、スーパー三助さん、アイアム野田さん、かもめんたる槙尾さん、三日月マンハッタン仲嶺さん、浜村さん、ネコニスズ舘野さん、あと開発くんと観ました。曲もカッコいいし、煽りとかもほどよい感じで、盛り上がりましたね。あの、得点の分布図みたいなのが「どっちだ!?」ってなるのもわくわくしました。

──絶妙に勝敗がわからないんですよね。

井口 決勝だけはわかりきった状態でCMまたいだのでつらかったですけど(笑)。

飯塚 あの採点システム、自分ってこんなに暗算できないんだって思うよね(笑)。何点が何人って全部出ているのになんでわからないんだ。

井口 本当にプチ情報ですけど、仲嶺さんだけは計算できるんですよ。内訳が出た瞬間に勝敗わかっちゃうから、みんな冷めてました(笑)。ベテランが多いからか、平場が楽しいのもよかったです。小宮さんがトークのところで無双していたり、ライブのような安心感があったのはほかの賞レースとは違う楽しさでしたね。

飯塚 いい意味でピリピリ感がなかった。

ウエストランド井口(左)と飯塚大悟(右)。

ウエストランド井口(左)と飯塚大悟(右)。

──大会後、三四郎には会えましたか?

井口 生放送のあと小宮さんが来るまで待って軽くみんなで飲んで、次の日も三四郎、モグライダーと営業で一緒でした。やっぱり、いい顔してましたね。やりきった感というか。「M-1」と違って負けても悲壮感も出ないですし。2本やれたことをとにかく喜んでました、小宮さんも相田さんも。

飯塚 三四郎のネタはウエストランドへのアンサー漫才だったね。「M-1」でのなりふり構わない戦い方を見て、火がついたところもあるんじゃないかな。

井口 それをもうちょっといろんなところで取り上げてほしいんですけど。

飯塚 「ウエストランド大好きだよ」ってとこは、本音すぎてお客さんもビックリしてた気もしたけど(笑)。

井口 いやー、ウエストランドオマージュのところのウケはほかの部分に比べて若干弱かったような気も……(笑)。直前のライブとかでやっていたときはめちゃくちゃウケてたんですけど、当日のお客さんに僕たちの関係性が伝わってなかったのかもしれないです。

──「ノックアウトステージ16→8」ではウエストランドオマージュの部分も爆発的にウケていました。

飯塚 生放送っていうのと、松本人志さんがいることでちょっとハードルは上がっているのかもしれませんね。予選のほうが普段のライブの雰囲気に近かったと思います。あと、ダウ90000の蓮見さんが三四郎のやるネタを知っていたらしくて、自分の名前が出るところで「どうかウケてくれ!」って祈りながら見てたって。「M-1」の佐久間(宣行)さんと同じ心境(笑)。

編集部注:佐久間宣行プロデューサーはウエストランドが「佐久間さーん!」と言うことを知ったうえで妻と「M-1」決勝を見ていたそう。

総合演出が矢面に立つこと

飯塚 今、井口くんが言う「あぁ~」系(※)の人の、「佐久間さーん!」が「日置さーん!」になってて。

※編集部注:芸人の裏側を知ったときに「あ、あ、あぁ~! こんなに考えてたんだ~!」というリアクションを取るお笑いファンのこと。「3月のお笑い」で登場した言葉。

飯塚 「THE SECOND」の総合演出を担当した日置祐貴さんが、事前のインタビューで演出意図やなぜこういうシステムにしているのかをしっかり自分で発信していて。予選の頃はお客さん投票とお客さんにコメントを求めることに対して、けっこうネットが荒れていたじゃん。

井口 そうでしたね。

飯塚 ネガティブな意見も多かったけど、意図を理解したら「日置さーん!」になった(笑)。

──採点理由を聞くことで芸人への「納得感」とお客さんの「責任感」を持たせたかったとインタビューで話されていました。

飯塚 僕もいくつかの賞レースに作家として携わらせていただいてますけど、改めて(演出意図を)言うのって大事なんだなと感じました。賞レースって、やっぱり荒れるんですよ。その中でスタッフが大会を背負って表に出るのはすごく勇気がいると思うけど、その覚悟はほかの賞レースも見習ってもいいんじゃないかなと思いました。

井口 見ているほうとしては、「自信を持ってやっているんだろうな」って思えるのがいいのかもしれないですね。出てきて説明できないってことは、理由もなく適当にやってるのかなと思われかねない。誰がやっているのかわからないのも批判がボコボコ出てくる原因というか。意見があるときに「この人に言えばいいんだ」ってわかっているほうがいいような気がします。

絆が生まれた大会

──第1回を経て、出場者は今後「THE SECOND」対策みたいなものを考えて大会に臨むようになるでしょうか。

飯塚 それが進んでいくと競技化してしまいますよね。「THE SECOND」は競技化していないのがいいから、どうなんでしょう。

──どういうネタが勝つか、という傾向は今回ではわからなかった気もします。

井口 マシンガンズみたいにその場のことを言う人が強いけど、結局はちゃんとした人(=ギャロップ)が優勝するという難しさ(笑)。ギャロップさんも途中でめちゃくちゃする奴と当たっていたら負けていた可能性もあったわけじゃないですか。マシンガンズと準決勝で当たっていたら、違う結果になっていたかもしれない。タイマンだし、(優勝まで)3試合だし、勝ち方ってないですよね。

飯塚 小沢さんは「M-1をやったから負けた」ってYouTubeで言っていました。お客さんを巻き込む“ライブ”をやれたかどうかで勝敗が分かれたと。

井口 ただ、次回以降も出場するメンバーはほとんど変わらないだろうから、毎年やるっていうより3年に1回くらいがよさそうな気はしますけど。優勝までに3本必要ですし。

飯塚 仮に来年マシンガンズが出てもああいう感じだろうしね。この芸歴の人たちが、ゼロから新しいフォーマットを作って……とかはまずなさそう。

井口 出ても出なくてもいい空気があるなら毎年でもいいですけどね。「M-1」って出なきゃいけない感じがあるじゃないですか。「M-1」に出ない判断をしたってことはよほどの別のことがあるんだろうと思われちゃうので。

──出場者や観ていた芸人、ネットなどの反応を見るに、絶賛が多いように感じました。

飯塚 お笑いファンには深く刺さったのかなとは思いました。「M-1」のほうがいろんな人が観ているからいろんな意見が出るわけで。

井口 毎回、「漫才じゃない」とか「傷つけない笑い」とか、「さや香が優勝だ」とかいう意見が出て、それがあるからいいですもんね。

飯塚 そういう論争が起きるのって、お笑い自体にさほど興味がない人も観ているからなんだよね。「THE SECOND」は立ち上がったばかりの大会で、まだライト層まで届いていないから、そこまで批判がないのかなと思います。芸人界隈では激アツだったけど。

井口 芸人が一番好きな大会ではありました(笑)。

飯塚 歩んできた道のりとかも乗っけて見てるから感動するけど、初見の人がマシンガンズのネタを見たらどう思うんだろう。

井口 「適当にやってるなあ」って感じに見えるんですかね。

飯塚 初見の人に見せてみたいね。10代の子とか集めて、「THE SECOND初見鑑賞会」。それだと誰が優勝するんだろう。

井口 全然違う結果になるかもしれませんね。

──三四郎を見てスイッチが入るというお話がありましたけど、井口さんはまた戦いたい気持ちになってきました?

編集部注:前回、「『M-1』にまた挑戦したい気持ちが1%くらいはある。実際出はしないけど」という話が出ていた。

井口 「THE SECOND」は(「主要漫才賞レースで優勝経験がないこと」が出場資格だから)出られないんであれですけど。

飯塚 出ていいってなるかもしれないよ。今のハマカーンが出たらどうなるんだろうってすごく気になる。ルールとはいえ、出られないのがかわいそうな気もするし。

編集部注:ハマカーンは「THE MANZAI 2012」で優勝しているため、「THE SECOND」の出場資格がない。

井口 相当怒ってたらしいですよ。「出てえよ!」って(笑)。でも、なくはないですよ、その気持ちも。勝負している人はカッコよく見えますし。実際は本当にしんどいから絶対出ませんけど。そう思うのって、ネタを作ってるからなんでしょうね。いいネタができたときに賞レースで披露できる喜びがなかったりもするので。まあ、とにかく「THE SECOND」はどの大会より気楽に楽しめました。自分が出なくていいし、出ているのは先輩だし。「R-1グランプリ」は出ているのが後輩だから、嫌なんで。

──嫌なんですか?

井口 新しいスターが出てきたら嫌じゃないですか。

──あ、そういうことか。マシンガンズ滝沢さん発信の「#自撮りおじさん」が盛り上がっていたり、出場者同士によるツーマンライブが開催されたり、いい派生が多いのも「THE SECOND」ならではです。

飯塚 対戦だから、絆がめちゃくちゃ生まれるみたいですね。三日月マンハッタンも、「16→8」で負けたテンダラーさんと飲みに行って交流を深めていて。

井口 だから、ちょっとうるさかったですよ。仲嶺さんがテンダラーさんに肩入れしすぎていて。

飯塚 「負けた人の分も勝たなきゃ」っていう思いも乗っかって、より熱い戦いになっていたよね。コントよりむき出しの人間同士で戦う漫才のほうが、そういう気迫がネタに乗っかってくる気もするし。

井口 でも、僕らの番組「VSウエストランド」(ABCテレビ)に「M-1」の亡霊として出てくれてたギャロップさんが勝ってよかったですよ。あやかれる限りあやかっていきたいです。

──“幼なじみ“ですもんね。

編集部注:ウエストランドは「ぶちラジ!」#577にてギャロップとの関係について「親友であり戦友、生まれと年齢と育った環境は違えど幼なじみ」という暴論をぶち上げている。

井口、あのちゃんから手を離すな!

飯塚 井口くんがあのちゃんにハマってる話を。

井口 そうだ、そうだ。それは言っておきたいです。もともとあのちゃんは「歯並びが悪い人が好き」と公言していて、たびたび僕の名前を出してくれていたんですよ。で、この前「あのちゃんねる」に呼んでもらって、めちゃくちゃされてます(笑)。けっこう再生されていていい感じだったのに、次のゲストの粗品がとんでもない再生回数を叩き出していて、「やめてくれよ」と思いましたけど。でも、その後も僕となんの関係もない映画のPRイベントでも僕の名前を言ってくれてたので、なんとかこのまますり寄っていきたいですね。

飯塚 僕は「あのちゃんねる」を観て、「井口くん、絶対あのちゃんを離すな!」と思ったんだよ。フワちゃんはすぐ離しちゃったじゃん。

井口 光の速度で売れていったんで。僕がすり寄るより速く芸能界へ消えていきました。

飯塚 やっぱり、井口くんにはむちゃくちゃやってくれる人がいたほうがいい。東野さんとかベテランに好まれるのも大事だけど、若くて、失礼な扱いをしてくれて、それが許される人をなんとかして捕まえていくべきだよ。

井口 そうですね。まずはあのちゃん専属芸人としてやっていきたいです。

飯塚 あのちゃんはアーティストだから、ただ爪跡残そうとむちゃくちゃやってくる人とは違うしね。

井口 ワードセンス抜群の人だからいい感じに言ってくれるんですよ。

──歯と歯の間隔が空いている歯並びを「墓場」と言い表されていましたね。

井口 視聴者の人も喜んでくれてるみたいでうれしかったです。「意外とこの2人が合う」みたいな意見が多くて。普通に僕の歯を映しただけだと気持ち悪がられるけど、あのちゃんが喜んでいる顔が一緒に映ることで成立しているんですよ。

飯塚 歯がポップになったね、初めて。

井口 ここに来て歯が生きてくるとは。社長に「矯正するのはまだ早いわ」って止められてましたけど、本当に需要があった(笑)。とはいえ、これも「M-1」優勝していなきゃ出られてもいないわけですから。

飯塚 肩書がないと呼びにくいもんね。「M-1」王者の歯をイジるのと、歯が変という理由だけで呼び出すのじゃワケが違う。

小ネタみたいなニュース3連発

飯塚 小ネタみたいなニュースが何個かあるんですけど。

井口 なんですか?

飯塚 「浜村さん、鍵アカウントを作る」。

井口 そんなことになってるんですか?

飯塚 浜村さんが酔って変なツイートしちゃって、ちょっとしたところで話題になってて。“酔い用”っていう鍵アカを作ってた。あと、「マキオカリーがYOSHIKIまで届く」。「櫻井・有吉THE夜会」(TBS)でみちょぱが紹介して、YOSHIKIが食べてた。マキオカリー、みんな紹介するからけっこうテレビに出てくるよね。

井口 僕らだけでも4、5回は紹介してます(笑)。「おすすめランチ教えてください」って言われてもないので、マキオカリーにすがるしかない。

飯塚 「パーマ大佐、森のくまさん動画誤って削除」。

井口 これは痛快でしたねー。

──井口さんは「ぶちラジ」でもよくパーマ大佐のことを言っていますけど、そもそもなんででしたっけ?

井口 いやー、顔ですかね(笑)。

──顔!

井口 「フリースタイルティーチャー」(ABEMA)を本当に観てほしいです。相手のラップを聴いてるときのパーマ大佐の顔が一番ムカつくんで(笑)。

飯塚 ムカつくパーマ大佐を見るために、河本くんはABEMAプレミアムに入ったって言ってたもんね。

ウエストランド井口(左)と飯塚大悟(右)。

ウエストランド井口(左)と飯塚大悟(右)。

「行列の先頭」に爆笑問題

井口 「行列の先頭」に爆笑問題が出て、最終回かと思うようなスペシャルな回になりました。「THE SECOND」決勝を控えてバチバチに仕上げていた三四郎とスピードワゴンさんも出ていたし、「M-1」チャンピオンの錦鯉さんと僕ら、ストレッチーズ、ママタルトとか若手もいれば、アルコ&ピース、ぺこぱとかテレビの人もいて。(K-PRO代表の)児島さんが燃え尽き症候群になっちゃうんじゃないかというくらいの。

飯塚 オープニングアクトでパーパー・ほしのディスコが歌ってたね。

井口 それ以外は最高でした! 最後に爆笑さんが出てきて、もちろんどっかんどっかんウケるんですが、これが信じられないことに、このためにネタ作ってきてますからね。時事ネタにK-PROとか児島さんを絡めて言ったりしていて。

──キュウとまんじゅう大帝国も含めてタイタンメンバーが多いのも特徴的でした。

井口 まさかこういうライブでタイタンが一番多くなるとは。

飯塚 そういえば、タイタンに新しい人が入ったでしょ?

井口 まあまあ、どうせすぐやめると思いますよ。

飯塚 (笑)。

編集部注:「タイタンの新人はすぐやめるから仲良くしない」というのが井口の口癖。

単独もYouTubeも面白いさらば

飯塚 さらば青春の光の単独「すご六」を観に行きました。まあ、ただただ面白かったってだけの話なんですけど(笑)。とにかくコントが面白いのはもちろん、単独期間中に撮ったというYouTube「西成に落ちてる物ビンゴ」も面白くて。単独で2万人動員して、地上波のMCもやって、YouTubeで刺激的な企画をやってるさらばの無双感がすごいなと。

井口 なんでそんなに単独やるんですか? 「面白いものを作りたい」っていう純粋な欲なのかなあ。

飯塚 バカリズムさんもそうだけど、こんなに忙しい中、単独もクオリティが高くて本当にすごい。やっぱり「ナメられたくない」みたいな気持ちもあるんじゃない? (単独を)やってないと、「やってないんですね」って言われるだろうし。さらばの場合、おそらくコンビで「ゴールデンのMC」みたいな像が今のところ見えてないんだと思う。テレビのど真ん中が活動の軸じゃないとしたら、やっぱり自分たちの武器はネタなんだっていうのはあるんじゃないかな。

──ウエストランドも単独は毎年はやらないにせよ、新ネタは嫌だと言いつつ作り続けるわけじゃないですか。忙しい中「ぶちラジ」もやり続けていますし。

井口 ネタを作り続けるのは嫌ですけど、やっぱり漫才やってないと変なことにはなっちゃうと思うんですよね。本当に嫌ですけど、まったく作らなくなったら本分がぶれてくるというか。「漫才工房」もそろそろやらなきゃだしなあ……。

──次はいつですか?

井口 6月7日(水)です。9日(金)が「タイタンライブ」なんで。

編集部注:「漫才工房」は明日6月7日(水)14:30開演。会場は東京・西新宿ナルゲキ。6月9日(金)開催「タイタンライブ」を全国の映画館で同時生中継する「爆笑問題withタイタンシネマライブ」のチケットはチケットぴあ・ローソンチケットで販売中。

──もうすぐじゃないですか。

井口 「タイタンライブ」にマシンガンズが出るんですけど、流れ星☆も出るのでどうしようかなと思ってます(笑)。

すっごいじわじわライスブーム

飯塚 今年も「キングオブコント」に関わらせてもらってるんですが、この前開催発表会見があって。いつもアナウンサーさんがやるMCを今年はライスさんが担当して、すごい面白かったです。ライスさんが今ちょっと来てますよね。ライスブーム。主に関町さん。すっごいじわじわと。

井口 確かに今いろんな番組でイジられてるのを見る気がします。

──会見でもイジられていて、みんなに愛されている感じがしました。

飯塚 会見ではネルソンズ青山さんが「水曜日のダウンタウン」(TBS)のドッキリの話をいろんな人にしてるって言ってた。

編集部注:「トリオ芸人、1人抜けてポンコツと2人きりになったらそいつとはコンビ続けない説」の検証で、“エース”の和田まんじゅうが抜けても青山は“ポンコツ”とされる岸と2人でコンビ継続の道を選んだ。

井口 いやー、好きですよね、本当に。

──あれ? なんで怒ってるんですか?

井口 そういうエピソードがあるとすぐ「いい人」ってなるじゃないですか。そんなの一番簡単なんだから。そういうのが好きなんですよね、お笑いファンは。「こいつとじゃなきゃやっていけない」みたいなコンビ愛。

──(笑)。

飯塚 会見に出ていたや団も、今「カッコいい」って言われてるみたいですね。

井口 や団の顔ファンはすごいですよ。営業に行ったらすごいファンアート描かれているし、「有吉の壁」(日本テレビ)の「KOUGU維新」に入ってほしい、伊藤さんと中嶋さんはイケメン枠で、本間さんはやんちゃ枠で、って言われていて。……イケメン枠!? よく見ろよ! 先入観のなさって怖いですよ。ただのおじさんだから。

飯塚 マシンガンズ滝沢さんもイケメンってなってる。

井口 いい加減にしてくれよ。どこが和牛の川西さんなんだよ。真逆だろ!

飯塚 滝沢さん、以前「水曜日のダウンタウン」の検証で死ぬほどケータリング持ち帰ろうとしてたからね(笑)。

井口 それを思い出せよ! ただのケチくさいおっさんだから。

飯塚 あと、ちょっとずつラブレターズが「チャンスの時間」(ABEMA)に出てる。

井口 そうなんですよ。ルシファーさんが聞いてきましたもん。「ラブレターズってなんか売れてます?」って。気になるらしくて。

飯塚 売れてはないけど(笑)。

井口 売れてはないですけど、自分たちが観ている範囲で出てきてる感はあるってことですよね。「チャンスの時間」に出て、佐久間さんの番組に出て、みたいな賞レース以外で売れるルートの話を前回しましたけど、それに乗れるかもしれない。

井口と誰が焚き火で語ればいいですか?

井口 最近気づいたことなんですけど、僕らって「M-1」チャンピオン史上初のネタに定評がないコンビだなっていう。焚き火(※)のやつとかに全然呼ばれないじゃないですか。

※編集部注:テレビ朝日のYouTube「動画、はじめてみました」の企画「焚き火で語る。」のこと。別のコンビの片割れ同士がお笑いについて語っている。

──ああー。

井口 なんでこんなにネタに定評がないんだろうと思って。「THE MANZAI」でも認定漫才師なのに。誰からもネタのこと聞かれないし、なんにも考えてないと思われてる感がすごい。だから気軽に「うちの番組のあるなしクイズお願いします」って言われると思うんですよ。

飯塚 「焚き火」に呼ばれないのは、テレビ局の人にファンがいないと思われてるのもあるんじゃない? でも、実はいるじゃん。井口くんがファンを「はしゃぎすぎるな」って管理してるから、一般の人に見えてないだけで。

──お笑い論を語っているイメージがないとか?

井口 それはありますね。あと、「M-1」のくだりで自分から言っちゃってるせいで、誰もネタの分析してくれなくなっちゃいました。していいのに。

──「焚き火で語る。」に出たいんですか?

井口 出たいですよ。書いといてください。

飯塚 誰と話したいの?

井口 意外な組み合わせがいいんですかね?

──小宮さんは?

井口 いやー。なんか違うでしょ。ふざけて終わりますよ。

──マシンガンズのどちらかはどうです?

井口 見るかなー? その「焚き火」。滝沢さんならイケメンだってことで見てくれるか。

飯塚 じゃあここでアイデアを募集しよう。井口くんと誰の組み合わせだったらちゃんと再生回数的に貢献できますってテレ朝に提案できるか、読者のみなさんから募ろうよ。

井口 お願いします! やっとこないだ、納言の幸ちゃんの「やさぐれ酒場」に出してもらえて。あれも「M-1」獲るまで頑なに呼んでくれなかったんですよ。幸ちゃんが名前を出してくれても、「ああいう人は……」みたいな感じだったらしいんで(笑)。

飯塚 たべっ子どうぶつのリス(※)のぬいぐるみをゲットして写真上げてくれているファンもいるのにね?

井口 僕だっているんですよ。お願いしますよ。

※編集部注:井口にそっくりと言われているキャラクター。

ウエストランド井口(左)と飯塚大悟(右)。

ウエストランド井口(左)と飯塚大悟(右)。

井口浩之(イグチヒロユキ)

1983年5月6日生まれ、岡山県出身。2008年、河本太(コウモトフトシ)とウエストランドを結成。2013年4月に「笑っていいとも!」(フジテレビ)のレギュラーに抜擢され、最終回まで不定期で出演した。2012年、2013年に「THE MANZAI」認定漫才師、2020年に「M-1グランプリ」ファイナリストとなる。2022年、「M-1グランプリ」優勝! チャンピオンとして大忙しの日々を送っている。ラジオ形式の番組「ウエストランドのぶちラジ!」をYouTubeなどで配信中。タイタン所属。

飯塚大悟(イイヅカダイゴ)

1982年4月13日生まれ、新潟県出身。テレビ、ラジオの構成作家。現在の担当番組は「ヒルナンデス!」(日本テレビ)、「サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん」(テレビ朝日)、「水曜日のダウンタウン」(TBS)、「ヤギと大悟」(テレビ東京)、「トークィーンズ」(フジテレビ)、「オードリーのオールナイトニッポン」(ニッポン放送)など。書籍「深解釈 オールナイトニッポン~10人の放送作家から読み解くラジオの今~」(扶桑社)。

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清野とおる @seeeeeeeeeeeeno

ウエストランド井口さんと作家の飯塚大悟さんの「お笑い」をテーマにした対談連載のイラストを、今回も担当させてもらいました。
めちゃくちゃ面白い連載なので、めちゃくちゃオススメです🌹 https://t.co/HPlrkpTS6D

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