お笑いナタリーで展開しているよしもと漫才劇場の大特集2本目は、人気・実力ともに東西の劇場で中心的存在となっているエバースとカベポスターのインタビューをお届け。この夏、初の4マンゲキ(難波、森ノ宮、渋谷、神保町)合同イベント「オールマンゲキTOKYO」でMCとしてタッグを組む2組の相性を確かめつつ、それぞれの劇場への思いや自分たちの立ち位置をどう捉えているか、聞いた。
「オールマンゲキTOKYO」は東京・IMM THEATERで8月12日(火)、13日(水)に行われる「夏のマンゲキ2DAYSジャック in IMM THEATER」の2日目のプログラム。エバースとカベポスターのほか、アイロンヘッドとツートライブ、金魚番長と例えば炎がMCを担当する。なお1日目には「マンゲキネタ祭りTOKYO」「カベポスター・ダブルヒガシ・天才ピアニスト・フースーヤの推してまえ!ワチャラチャ忍忍 TOKYO」も実施される。イベント詳細はページ下部に記載。
取材・文 / 狩野有理撮影 / 浜村晴奈
エバースは尊敬する後輩です
──まずはエバースのお二人、先日は「ABCお笑いグランプリ」優勝おめでとうございます!(取材は7月12日に実施。)
エバース佐々木 カベポスターさんが獲った賞を僕らも獲れて、後輩としては感無量です。
カベポスター浜田 かわいい奴やなあ。
カベポスター永見 そんなふうに思ってくれてたん? うれしいわ。
エバース町田 カベポスターさんが優勝された回って2位との差がけっこうあったじゃないですか。
浜田 あのときは令和ロマンにけっこう差つけてたな。
──調べたところ21点差でした。
町田 僕らもけっこう大差で優勝だったんですよ。カベポスターさん以来の。
浜田 何点差?
町田 15点です。
永見 よくやったな!
町田 けっこうそういうの気にするほうなので(笑)。カベポスターさんは9年目で獲ってるんだ、とか。僕らはラストイヤー(10年目)だったんですけど、あの日は“最後にもぎとる力”っていうのを見せられたかなと思います。
──では「オールマンゲキTOKYO」でMCとしてタッグを組むお二組の相性を探っていきたいと思います。互いの印象をお聞かせいただけますか?
浜田 エバースは尊敬する後輩です。
町田 適当ですか?(笑)
浜田 いや、ほんまに! やっぱり漫才が面白い。普段そんなに永見としゃべらないんですけど、4年くらい前にエバースの漫才の話をしたのは覚えてて。
佐々木 えーうれしい。
永見 去年の「M-1グランプリ」決勝でやってたネタをそのときの予選でやってて。
浜田 「ここが面白かったな」とかいう話、マジであんまりせえへんけど、エバースの話だけはしてて。今後ライバルとして戦わなあかんコンビなんやろうなとはすごく思っていました。会話のキャッチボールがめちゃくちゃ上手で。ただ「相席食堂」(ABCテレビ)にエバースが出ていたのを観たら、町田のお父さんはキャッチボール下手でした(※)。
佐々木 それガチのキャッチボールです(笑)。会話のキャッチボールもあんまりできてなかったけど……。
※編集注:エバースは「街ブラ-1グランプリ」のロケで町田の実家を訪問。最後に町田が父とキャッチボールしながら会話する場面があったが、町田の父はほぼ全球キャッチできず千鳥が「ちょっと待てぃ!!」ボタンを連打していた。
永見さんが意外に帰りたがらない
──エバースのお二人はカベポスターにどんな印象をお持ちですか?
佐々木 本来はライバルだと思わなきゃいけないと思うんですけど、憧れに近い先輩です。2年しか芸歴の差がないので、「憧れ」とか言ってちゃいけないんですけど。だから最初にカベポスターさんのライブに呼んでもらったときはめちゃくちゃうれしかったですね。「M-1」現役世代で一緒に戦っている、ネタでちゃんと勝負しているコンビって感じです。
浜田 おおー。ありがとう。
永見 僕は性格が悪いので、逆にそうじゃない人(ネタで勝負してないコンビ)が気になるなあ。そうじゃない人を聞いて、安心したい。
浜田 くれた花束だけ受け取っとけよ(笑)。
──ツーマンライブも一緒にやっていますし、けっこう仲は深まっているのでは?
永見 でもまだ町田の待ち受けきっかけ(※)でしか話せてないので。
町田 これ、説明がややこしいんですよ。※印で書いといてください。
※編集部注:町田のスマホのロック画面がデフォルトの月の画像だったため、永見の提案で“町田の好きなもの(=しゃぶしゃぶ)と月の画像”に設定しようという話になったが、そんな画像はネットに落ちておらず、スーパームーンの日に月としゃぶしゃぶの写真を撮影することに。カメラマンを田津原理音に依頼するところまでは永見がセッティングしたが、撮影当日に浜田の体調不良によりカベポスターが東京に来られなくなり、町田と田津原、そしてあまり関係のない佐々木の3人で撮影を敢行した。
──交流してみてわかったことはありますか?
永見 YouTubeとかで町田がいろんな先輩と絡んでるのを見て「あ、こいつナメてええ奴なんや」ってわかってから、より声かけやすくなりましたね。
町田 確かに最近永見さんそうですよね。「ABCお笑いグランプリ」の「おめでとう」も僕だけには言ってくれないですし。
永見 佐々木がすごかったからさ。佐々木に言っといて、「おめでとう」って。
町田 今自分で言ってくださいよ!(笑)
佐々木 何回か一緒にごはんに行かせてもらってわかったのは、永見さんが意外に帰りたがらないんですよ。お酒が深くなってきたときに「もう1杯だけいい?」って言うのが実は永見さん。すぐ帰りそうなイメージだったんですけど、「そっちのタイプの人なんだ!」と思いました。
町田 それは意外でしたね。「明日始発やけど、まあ行けるか」って後輩を誘ってて。
永見 でもすぐ帰りたいときはほんまにすぐ帰るよ。
──楽しい場には長くいたいんですね。
佐々木 浜田さんには「M-1ツアー」のときにお寿司に連れて行ってもらったんですけど、その場にスタミナパンのトシダさんもいたんですよ。その中だとトシダさんが一番先輩なのに、浜田さんはトシダさんの分もおごってあげてました(笑)。
浜田 ほんまや。あいつなんやねん(笑)。けっこうな値段したで?
──トシダさんは今もアルバイトされているそうですから。
浜田 先輩のくせに、とにかく敬語で下から下から来るんですよ(笑)。
東京で浮足立ってスベる可能性
──MCを4人でやるということですが、どういう役割分担になるでしょうか?
浜田 確かに。どうなんねやろ?
町田 わかんないっすね。けど、安心はさせていただきます。カベポスターさんが後ろにいてくれればなんとでもなると俺はけっこう思ってます。
浜田 じゃあ町田が前衛なんや?
町田 なんかしなきゃってとき、先陣は俺が切ったほうがいいとは思うんですけど、俺が前に出て変な感じになってもカベポスターさんがなんとかしてくれる。しかもお二人とも処理がうまいし、一緒にスベってもくれそうだし。
永見 でも俺は「処理」よりも「無視」のほうがうまいからなあ。めっちゃきれいな無視できるんですよ。
町田 いや、でも俺も「前出る」とか言って全然出ない可能性あります(笑)。
──佐々木さんはどんな動きを?
佐々木 隙間を見つけて、一言ボケいくっていうのをやりたいです。
浜田 自分の仕事ちゃんと言ったやん(笑)。でも、それしてもらえたら助かるわー。MCが一番欲しいんですよ。ボケなしで説明終わったあとの隙間の一言って。
町田 それを浜田さんが拾ってくれれば完璧じゃないですか。
──チームワークよくできそうですね。
浜田 ただ、大阪でやるときは落ち着いて楽しくいい感じでできるんですけど、今回は東京なので浮足立って僕がボケたくなっちゃってめっちゃスベる可能性はありますね(笑)。そうなったらエバース頼むわ。
佐々木 そしたら僕らもっとテンパりますよ(笑)。
永見 じゃあテンパりあいで高めあうか!
このライブを盛り上げて金返します!
──渋谷のよしもと漫才劇場ができる前の今年2月には大阪で3劇場による「オールマンゲキ」がありました。そのときはどうでしたか?
浜田 僕らは世間知らズの椎木くんをフィーチャーしたようなコーナーをやったんですが、「東京もこんなストロングなお笑いをやってんねや」と思い知らされました。そしてそれを大阪に持ってくるパワーもある。このコーナーは僕らが神保町に行ったときもやっていて、めっちゃウケてたんですよ。で、場所が大阪に移って大きい会場になった途端、こんなに伝わらへんねやってことも含めて勉強になりました(笑)。
佐々木 神保町では盛り上がったんですか?
浜田 嘘みたいにめちゃくちゃ盛り上がってた。配信も延長したし。
永見 だから、あれはちゃんと「嘘」って思わないとな。
浜田 俺は幻影を追ってたんや(笑)。そのときは知らへん後輩と絡んだりもして、できたこともできなかったこともあったから、それを今回の「オールマンゲキTOKYO」に生かしていけたらいいなと思います。こういう大きいイベントになると普段とは違うお客さんも来てくれるので、「よく見せたい」という気持ちが勝って変なときに変なことを言ってしまう自分がいるんですよね。その経験は生かしたいです。気持ちを抑えます。
佐々木 前回はバッテリィズさんと1公演MCとして出させてもらったんですけど、なんかあんまりしゃべってなかった気がします。あれだけの人数が集まって平場が強い人とかもいると、自分があんまりしゃべってない瞬間があって。「今俺あんまりしゃべってないな」と思いながら舞台に立ってました。
永見 それも冷静に思えるくらいしゃべれてなかったんや(笑)。
佐々木 今しゃべりだしたら「こいつ今のところ一言もしゃべってないからがんばってしゃべったじゃん」って思われるんじゃないかな、とかも思ってました。
浜田 思われてもいいからしゃべれよ!(笑)
──町田さんは覚えていますか?
町田 オープニングで佐々木に「外で町田を見つけたら100円あげます」みたいなノリされて、ずっと楽屋に隠れてるのもあれかなと思って外出たんですけど、誰も声かけてくれなかったです。
永見 覚悟持って出たのになあ。
浜田 じゃあ今回1000円でやる?
町田 やらないです!
永見 「ABC」も獲ったしさ。
町田 賞金、そんな入ってないんです。
浜田 (優勝賞金100万円の半分で)50万やろ?
町田 ……5万円です。
佐々木 なんで5万円なの? 少なくね?
町田 19:1という割合(※)になってしまっていて。……もうやめましょう、この話。
※編集部注:エバースはネタ作りに始まり何から何まで担当している佐々木の負担が大きいため賞金の分配を19:1の割合に設定している。
──町田さんは「ラヴィット!」(TBS)の引っ越し企画で散財していましたけど、大丈夫なんでしょうか?
町田 大丈夫じゃないですよ!
佐々木 家具家電買うのに200万くらい使ってて。
浜田 マジで!?
──佐々木さんにも大金を借りていますが。
町田 このライブを盛り上げて返します!
永見 そんなライブじゃないやろ。
浜田 一攫千金ライブじゃないよ(笑)。
町田 このライブで返すくらいの勢いで!
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先輩に見てもらえる、若手が台頭できる